撮影日記 2009年9月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 

2009.9.30(水) トンボの撮影へ

 先週、トンボマニアのみなさんと一緒に撮影した際に、広島県のある場所に赤トンボの撮影に適した場所があった、と教えてもらった。
 そこで、僕もすぐにその場所へと行ってみる予定だったのだが、出発の予定日から天気が下り坂で、雨の日が続いた。
 トンボの場合、気温が低いと活動が弱まり、雨の日に出かけても徒労に終わる確率が非常に高い。生き物の撮影には、気合では解決しないこともたくさんある。

 ただ、天気予報によると、明日だけはお日様が顔をのぞかせてくれることになっていて、その後、また天気が悪くなるという。
 広島までは、燃料や高速道路の料金を考えると、そのたった一日の撮影のためだけに出かけるのはもったいない感じがするのだが、あまりセコイことを言いすぎたり、完璧主義になり過ぎると、結局何も撮影ができずに終わること多いし、今回は出かけてみることにした。

 実は恥ずかしながら、今日みたいな日には、出掛けるべきかどうか結論が出るまでに時間がかかることが多い。
 先に書いたように、燃料代がなぁ・・・とか、たった一日だからなぁなどと、ウジウジしてしまうのである。
 そんな時、ふと思い出すのは、アマチュアトンボ写真家の方々の姿である。
 彼らの多くは、とにかく写真を撮りたいものだから、天気が悪かろうかそんなことお構いなしに出撃し、仮に写真が撮れなかったとしても、場所探しをしたりして、有意義に過ごしておられる。
 もちろん、コストを考えなければならないプロと、そうではないアマチュアの方々を比較するのは無謀なのだけど、それでもトンボが見たい、写真が撮りたい、行きたい!思う情熱だけは負けてはならないような気がする。
 僕は時々、アマチュアトンボ愛好家のみなさんの撮影についていくことがあるが、みなさんの姿にハッとさせられることが多々ある。
 さて、明日は、果たして、本当に予報通りにお日様が顔をのぞかせてくれるのだろうか?
 
 (写真展のお知らせ)
グリーンパーク(響灘緑地) にて写真展を開催します。内容は、先月平尾台で展示したものと全く同じものです。平尾台での展示をご覧にならなかった方は、是非お越しください。
期間  9/12〜10/4  
その他 9:00〜17:30 火曜日休館 入園料100円 駐車場300円
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.29(火) 自動化の波


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 

 楽器の演奏のプロが、その演奏を機械に頼って自動化するなどという話を、僕は聞いたことがない。
 たとえば、ピアノのコンサートに行ってみたら、ピアノが勝手にメロディーを奏でていた、などというのは想像しただけで馬鹿らしい。
 楽器の演奏の場合、たとえ自動化によって同じ音を出すことが可能だったとしても、あえてそれをせず、わざわざ人が自分の体で奏でることに意味がある。つまり、演奏の本質は、ただいい音を出すことではなくて、その音を人が自分の体で出すことにある。

 一方で、多くの写真家は、写真撮影の過程を自動化することを受け入れている。
 たとえば、昔は、人が自分の手でレンズのピントリングを回して被写体にピントを合わせていたのに、近頃では、オートフォーカス(AF)と言って、カメラが機械的にピントを合わせてくれるようになった。
 また他にも、写真の明るさが適正になるようにカメラが自動的にコントロールしてくれたり(自動露出)、手ぶれをしないように、カメラやレンズがぶれを防いでくれる。
 つまり、写真の場合、ピント合わせや、露出決定や、手ぶれを防ぐことなど、昔の写真家が重視しし、訓練によって身に付けていたことは、実は機械任せにしてもいい程度の枝葉末節だったということになる。
 それよりも肝心なのは、どんな内容の写真を撮り、その写真を通して何を主張するかなのだと思う。

 カメラは、新しいものがでるたびに、自動化が進んでいる。
 そして中には、それによって写真がつまらなくなるとか、つまらくなってきたなどと主張する方もおられる。
 が、僕は、決してそんなことはないと思う。
 要は、写真家が、ちゃんとメッセージを持っているかどうかの問題。
 確かに、そのメッセージを持たない人にとっては、機械が進歩して写真が簡単になってしまうことは = 自分が訓練の結果出来ていたことが、機械の進化によって誰にでもできるようになるのだから、つまらないことなのだと思う。
 だが、ちゃんと自分の主張がある人にとっては、それは大歓迎。むしろ自分の主張に集中できるのだから、写真は面白くなっている。

 さて、金魚が餌を食べている様子、といっても、人によって思い描くイメージは異なるに違いない。
 そして、カメラの取り扱いが簡単になることで、その分、その自分のイメージを、これまでよりももっと突っ込んで追及できるようになった。
 いやいや、これからは何かのシーンがちゃんと写っているかどうかよりも、自分が思い描いたイメージの質で、勝負が決まるのだと思う。
 今日は広島県にトンボの撮影に出かける予定だったのだが、天候が思わしくないため、スタジオでの撮影に切り替えた。
 
 (写真展のお知らせ)
グリーンパーク(響灘緑地) にて写真展を開催します。内容は、先月平尾台で展示したものと全く同じものです。平尾台での展示をご覧にならなかった方は、是非お越しください。
期間  9/12〜10/4  
その他 9:00〜17:30 火曜日休館 入園料100円 駐車場300円
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.27〜28(日〜月) 更新のお知らせ

 今月の水辺を更新しました。
 
(写真展のお知らせ)
グリーンパーク(響灘緑地) にて写真展を開催します。内容は、先月平尾台で展示したものと全く同じものです。平尾台での展示をご覧にならなかった方は、是非お越しください。
期間  9/12〜10/4  
その他 9:00〜17:30 火曜日休館 入園料100円 駐車場300円
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.24〜26(木〜土) 研究









 僕が現在制作中の本の中には、洞窟を取り上げたものがある。そして、それらの洞窟は観光洞窟ではないので、中に電気がひかれているわけではないし、全く光がない場所での撮影になる。
 そこで、撮影用に何らかの照明器具を持ち込まなければならない。
 だが、洞窟を奥へと進む途中には匍匐前進のような姿勢で進まなければならないほど天井が低い場所や、体を横にして蟹のように進まなければならないほど幅が狭い場所などもあり、持っていくことができる機材はごく少量に制限されるし、増して、遠くまでを照らすことができるような大きな照明器具などは到底持ち込むことができない。
 すると、写真はどうしても近くを照らして撮影されたものになるし、その結果、洞窟の奥行きを感じさせるような本を作ることが難しくなる。
 さて、どうしたらいいのだろうか?
 ここのところ僕は、ずっとそれを考えていたのだが、洞窟の中を広く撮ることを考えるのではなく、逆の発想でより狭い範囲を撮影した写真を何枚か入れることで、これまでに撮影した写真が相対的に広く見えるようになるのではないか?と思いついた。
 そこで今日は、照明器具に手を加え、スポットライト的により狭い範囲を照らすことができるようにしてみた。
 上の画像は、その過程を紹介したもので、一番下の画像を撮影した照明が完成品だ。
 広い範囲を照らすことができるように照明に手を加えることは、比較的簡単なのだが、その逆に、狭い範囲を自然な感じに照らすことができるようにすることはなかなか難しい。
 
 
(写真展のお知らせ)
グリーンパーク(響灘緑地) にて写真展を開催します。内容は、先月平尾台で展示したものと全く同じものです。平尾台での展示をご覧にならなかった方は、是非お越しください。
期間  9/12〜10/4  
その他 9:00〜17:30 火曜日休館 入園料100円 駐車場300円
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.22〜23(火〜水) 図鑑


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 
 前日に引き続き、トンボ写真家 田中博さんと一緒に大分県の池へ。
 それにしても、田中さんのカメラを持つ手の、なんと上品なことか!特に下からカメラを支える手が、まるで女性を、どうぞとエスコートする手のように見える。
 さらに、右手に巻かれたストラップ。これは恐らく若干突っ張るように巻くことで、カメラを安定させる働きがあるに違いない。
 そして見落としてはならないのは、白いシャツを着ておられること。
 白いシャツがレフ板の役割をして、こうして誰かにカメラを向けられた際にも、横顔が特に引き立つようになっており、写真を撮るだけでなく、写真に撮られることまで考えておられるのだ。
 もちろんそれは冗談であり、本当は、黒い物体を攻撃する性質をもつスズメバチを警戒して、明るい色のシャツを着用しておられのだそうだ。 


NikonD3X Distagon T* 2.8/25mm ZF
 コシナが販売しているDistagon T* 2.8/25mm ZFは僕のお気に入りのレンズであり、マウントアダプターを使用してキヤノンのEOS5Dに取り付け、ずいぶんたくさんの写真を撮ってきた。
 そのお気に入りのレンズを、今回はニコンのD3Xに取り付けてみたのだが、相性はイマイチかな・・・ Distagon T* 2.8/25mmの柔らかさとD3Xの硬さが、お互いに打ち消しあってしまうような印象を受けた。
 僕はここのところ、D3Xに古いニコンのレンズ・Ai Nikkor 20mm F2.8Sを取り付けてよく使用しているのだが、こちらは逆に相性が良くて、古いレンズとは思えないほどの描写をしてくれる。
 デジタルカメラの場合、フィルムを使用するのとは違って、カメラの描写とレンズの描写の相性がある。

 この日は今にも雨が降り出しそうな天気。
 そんな日は、水が画面に映り込む撮影にはあまり適さない。だが、草むらならそこそこいけるということで、今回は、主に草むらの中のトンボにカメラを向けることにした。


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 
 こんなシーンには、ライカの100ミリマクロレンズを使ってみたいなぁ。
 とは言え、ライカのレンズはニコンのカメラには取り付けることができないので、その場合はキヤノンのカメラを使うことになる。
 ライカの100ミリマクロレンズは、過去に一度買おうとしたことがあるのだが、あまりに高価なので、諦めることになった。
 その後時代はデジタルになり、ライカのRシリーズは切り捨てられた形になってそれ用のレンズは随分安くなったし、100ミリマクロも中古なら、20万円を切る値段で買えるようになった。


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) 

NikonD3X Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D

 草むらの中には、トンボ以外にもさまざまな生き物が見られる。
 そして、普段はあまりカメラを向けることがないそれらの生き物を撮影し、帰宅後に図鑑で名前を調べようと試みたのだが、昆虫の図鑑は、野外で撮影された写真で構成されたものよりも、標本を撮影した写真を使用したものがが一番!
 標本の写真で構成された図鑑は、パラパラとめくった範囲では実に味気ないが、本当に何かの名前を知りたい時にはとにかく重宝する。
 標本の写真で図鑑を作る場合、肝心なのは写真がちょっと上手いかどうかよりも、標本がいいかどうかなのだから、写真家としては面白くない。
 だが、図鑑はとにかく種類が分かることが肝心であり、傑作写真で見る人の心を打つことや写真家のロマンは、二の次、三の次。アマゾンのブックレビューなどを読んでみると、図鑑に対しては辛辣なコメントが目立つような気がするのだが、それは恐らく、図鑑では写真家のロマンや本の作りの良さや文化のにおいなどよりも、とにかく分かることが重視されており、それを作り手があまりよく理解できていないからではなかろうか。
 今回の撮影中に、田中博さんから、
「武田さんは図鑑って、考えてないのですか?」
 と聞かれたのだが、僕は、細かいことにはあまり興味がないし、それ以前にロマンを捨て切らないので、図鑑には向かないような気がする。
 
(写真展のお知らせ)
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期間  9/12〜10/4  
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内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.19〜21(土〜月) 池の中に珍獣発見!


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
中国地方の池の中に現れた珍獣のみなさん。
(上)トンボの神様 西本晋也さん
(下)トンボ写真家 田中博さん
楽しいなぁ。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) ストロボ

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) ストロボ 

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

 僕は撮影の際に、とにかく光を重視する。
 そして、光を重視するといっても光の中にもさまざまな要素があるのだが、僕の場合は特に、光の硬さを考えながら写真を撮ることが多い。
 光の硬さ、と言われても、写真を撮らない人には理解が出来ないに違ない。
 そこで簡単に説明すると、晴れた日の昼間の影が強く出る光が硬い光。逆に、曇った日の、ぼんやりとしか影が出来ない光が、柔らかい光である。
 それは、どちらがいいなどという性質のものではなく、被写体によって、硬い光が向いている被写体と柔らかい光が向いている被写体とがあり、僕の場合は、それぞれの被写体を適した硬さの光で撮影することにこだわっている。
 同じトンボの撮影でも、草むらを背景にしている場合と、水を背景にしている場合とでは、適した光の硬さが違ってくるのである。
 
 一方で、適した光を見極めるだけでなく、生き物のいい瞬間を撮りたいと思う気持ちがある。
 例えば、トンボの写真なら、やっぱり飛んでいるシーンはいいなぁと思う。
 ただ、トンボの飛翔写真などは、トンボとの距離やトンボの状態など、条件が整わないと撮影できないので、その生き物の側の条件と光の条件とが共に整った時に、僕は初めてカメラを手にすることになる。
 
(写真展のお知らせ)
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期間  9/12〜10/4  
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内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.17〜18(木〜金) 生臭い被写体

 プロの市場で写真を売ろうとすると、よく写真が売れる人気者の生き物と、そうでない生き物とが存在することを思い知らされる。そして生き物好きの写真家なら誰しも、それを苦々しく感じたことがあるのではなかろうか?
 なんで一部の愛らしい生き物やカッコイイ生き物ばかりを持ち上げるんだ!
 実に怪しからん!と僕だって思うし、世間から拒否されている生き物たちのことも知ってもらいたいと望む。
 だが、だからと言って、例えば、もしも誰かが蛇の写真を使ってカレンダーを制作したなら、僕は、実に安易なつまらない発想だなぁと思う。
 それは料理に例えるなら、大半の人が鼻をつまむレベルの生臭い食品を刺身にして、豪華な皿にもって出すのに近いことだと思う。
 生臭い食品には生臭い食品なりの料理の仕方があるはずで、それを探すことこそが、その食材を大切にすることではないかと感じるのである。

 はたしてカレンダーで、蛇の魅力を伝えることができるだろうか?
 蛇を知ってもらいたいのなら、蛇の魅力が伝わるような、もっと違った見せ方が必要になることだろう。
 洞窟の生き物も、言うならば、その蛇のような存在だ。いや、もしかしたら、蛇よりも受け入れてもらうことが難しい生き物かもしれない。
 さて、洞くつ探検に行ってきた。


CanonEOS5D EF100mm F2.8 マクロ USM
 被写体の後ろ側から光が当たっているような状態を逆光といい、逆光のライトを上手く使うと、とてもドラマチックな写真が撮れる。
 だが僕は、人工の照明を使って撮影する場合に限って言うと、普段は、あえて逆光のライトをなるべく使わないようにしている。
 使わない理由はいろいろとあるのだが、その1つに、ここぞと言う時のために取っておく意味がある。
 ドラマチックな表現は、薬に例えるなら抗生物質みたいなもので、使い過ぎると相手に抗体ができ飽きられてしまうから、僕の場合は、それなしでも見せれる被写体には、なるべく使いたくない気持ちがある。
 逆に言うと、僕が人工の照明を使って写真を撮っているケースで、逆光のライトを使っている時は、被写体に対して特別な思い入れがある場合なのだ。
 
 洞窟の天井には、たくさんのコキクガシラコウモリが住み着いているのだが、このコウモリは大変に神経質な種類で、ただ種類が分かるだけの写真ならともかく、いきなりまともな写真を撮影するのはほぼ不可能。
 そこで今回は、洞窟を見ることに徹した。
 洞窟には、大量のコウモリの糞があり、その一部は、洞窟の中を流れる小さな水流の中にも落ちている。
 そして、その糞の周辺には、ヨコエビの類が多い。
 僕は、そうしたつながりをテーマにすることで、洞窟の生き物たちの写真を、多くの人に見てもらうに値する形に料理したいと考えている。
 

CanonEOS5D EF100mm F2.8 マクロ USM

CanonEOS5D EF100mm F2.8 マクロ USM

(写真展のお知らせ)
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期間  9/12〜10/4  
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内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.9.16(水) 新しいものがいいのか?

 昨日の水中写真はキヤノンのEOS5Dで撮影したものだが、帰宅後にパソコンで画像を拡大して見ると、水や土の質感がとてもよくて、感激させられた。
 EOS5Dは今や新型が発売され1つ前のモデルになってしまったが、その画像の質感や立体感の良さは素晴らしくて、今でも決して古くないカメラだと思う。
 一方で、一昨日の画像はオリンパスのE620で撮影したもの。オリンパスのカメラは、像がシャープに写るのが特徴だ。

 一般に、画像の質感の良さとシャープさは二者択一であり、画像をシャープにすれば質感が悪くなり平面的になるし、逆に質感を良くすれば、画像のシャープさが損なわれる。
 そして、人によって質感を重視する人と画像のシャープさを重視する人とがいるのだが、僕は、基本的には質感重視だ。
 だが時には、僕だって質感よりもシャープさを優先したい時があるので、そんな時には、オリンパスのカメラに活躍してもらうことになる。具体的には、水がひどく濁った水中で生き物の写真を撮るような場合は質感は二の次であり、とにかく、被写体の形が最低限分かることが最優先になる。

 EOS5Dの新型に関しては、身の回りに持っている人がいないので、まだ使用したことがないのだが、雑誌などで見た範囲では、僕が持っている古いモデルよりも画像がよりシャープになり、一方で、質感は悪くなったように感じられる。
 いずれ、誰かに借りて自分で使って確かめた上で、その新型を買うかどうかを判断することになると思う。
 ただ、ここ最近に発売された大半のデジタルカメラの画質は、よりシャープだけど若干質感が劣る傾向にあり、どうも僕の好みとは別の方向に向かっているようだ。つまり、それが売れるということなのだろうが、大半の人にとっては、質感なんてどうでもいいのかな・・・、何が写っているかが分かりさえすれば。
  
(写真展のお知らせ)
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2009.9.15(火) 続・一難去って、また一難


CanonEOS5D Distagon T* 2.8/25mm ZF

 水中撮影の機材は、基本的に、海の中で使用するようにできている。だから、それを淡水の水の中の撮影に使うと、思いもかけない問題が浮かび上がってくることがある。
 人様の写真集や雑誌などを見た範囲では海の中ではよく写っている機材が、淡水の水中で使用してみると、あまりよく写らないようなケースが珍しくないのである。
 理由は、水中と陸上の違い、淡水の生物と海の生物の違いを説明しなければならず、長くなってしまうから省略するが、とにかく、淡水の水中で高画質な写真を撮ることは、機材の制限上、とても難しい。
 そこで、同じようなトラブルに頭を悩ませている人がいるのではないか?とインターネットでいろいろと検索してみるが、それっぽいものは、全くヒットしない。
 どうも、そんなことで悩んでいる人間は、この日本にはほとんどいないようだ。
 でも、だからこそ真剣にやる意義があるし、問題が解決できたときには、簡単には、他の追随を許さない仕事ができるだろう。

 つまり、淡水の水中写真はとても難しいが、難しいから逆に簡単でもあるとも言える。
 陸上の生き物の写真を撮ることは、機材が発達した今ではそんなに難しいことではないが、それゆえに今や撮り尽くされている感があり、その中で、新しい写真=今さらわざわざ見る価値がある写真を撮ることは非常に難しい。
 一方で、水中にはまだまだ誰もカメラを向けていないシーンがたくさんあり、写真を撮ることは難しいが、それがクリアーできた時には、新しい世界が切り開ける可能性が高い。

 さて、淡水の水の中で高画質な写真を撮るために、先日から、機材の改良に取り組んでいる。
 と言っても、僕が欲しているのは高性能なガラスであり、ガラスを作る技術でもない限り、根本的に問題を解決することはできない。
 そしてガラスを作ることなどはどう考えても不可能なことだから、結局、市販の機材をいろいろと組み合わせてみて、泥臭く、いい方法を探していくしかない。
 今日は、完璧ではないが、一応問題なく仕事ができるであろう機材の組み合わせを、見つけることができた。
 また、特注のオリンパス用の水中撮影ケースも、改良するために制作者に相談。水中撮影の道具にも既製品はたくさんあるが、既製品の場合は手を加える余地が少なく、いったん壁にぶち当たった時に手づまりになる可能性が高く、それゆえに、僕は特注で作ってもらうのだ。

(写真展のお知らせ)
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2009.9.12〜14(土〜月) 一難去って、また一難


OLYMPUS E-620 ED 9-18mm F4.0-5.6(改造)

 アメリカザリガニと言えば、過去に、水槽を使用して山ほど写真を撮ったことがある。僕はその時に、「いずれ水槽ではなくて屋外でも写真を撮ってみたい」と書いた記憶がある。
 そして今年は、夏の間に、特注でそれ用の撮影機材を作ってもらい、先日から、その屋外でのアメリカザリガニの撮影に挑戦している。
 だが、実際に写真を撮ってみると、機材に、さらなる工夫が必要なことが分かった。淡水の浅い場所での水中撮影は、僕が考えていたよりも、さらにさらに道具が難しいようだ。

 写真は、一応撮れる。
 だが、陸上で撮影された写真のような画質を得ることができない。
 望遠レンズはいい。
 それから広角レンズでも、遠くにピントを合わせる場合はいい。遠くと言っても、水の中だから無限遠にピントを合わせるわけではないし、せいぜいカメラから50センチくらいの距離にあるものは、比較的よく写る。
 ところが広角レンズによる接写で、20センチ以下くらいの距離にあるものを撮影しようとすると、カメラを構える時に、この角度はダメ、あの角度もダメ・・・と、いろいろな制限が付きまとう。
 だから、小さなものを撮ろうとすると、それが顕著になる。
 昔、カワセミが水中で捕食するシーンを撮影したことがあるが、小鳥くらいの大きさがあれば、ほとんど問題はないし、撮影はずっと優しくなる。だがそれが、アメリカザリガニとか、それ以下の大きさのものになると、突然にやっかいになるのだ。
 さて、どうしたものか・・・

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2009.9.11(金) 写真展のお知らせ

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NikonD700 TAMRON SP AF28-75mmF/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO
展示作業中の野村芳宏さん

 野村さんは普段大変にシャイな方なのだが、自分が写真に写ることなどに関しては、あまり苦にならないようだ。
 一方僕は結構厚かましいが、自分が写真に写るとなると逃げ出したくなるし、現に日頃は滅多に写真に写ることはない。
 そんなことを考えると、誰の中にもシャイな部分と図太いう部分とがあり、人の性格は、シャイだとか図太いなどと、どちらか1つには分けられないものなのかもしれない。
 今回のグリーンパークでの写真展は、ケーブルテレビの取材を受けることになった。が、写真でさえ苦手な僕にテレビはあまりに過酷過ぎる。
 ということで、テレビの取材は野村さんに完全にお任せすることになった。
 グリーンパークの会場は、大変に広くて、実にすばらしい。写真は一人10点ずつの合計30点だが、ここならみんなで60点くらい展示し、じっくり見てもらいたい気もする。

(撮影機材の話)
 暗い室内で写真を撮る場合は、高感度での画質がいいニコンのD700が非常に頼もしい。
 僕は時々撮影機材について書くが、それは大抵は本業である自然写真家の立場から書いているのであり、被写体が変わると、機材評だって変わる。
 僕のここのところのお気に入りのカメラはニコンD3Xだが、もしも僕が、報道や室内での撮影が多い取材のカメラマン、スナップ写真をの愛好家だったなら、D3Xを持ちたいとは思わないだろう。その場合は迷うことなくD700を手にするに違いない。
 D700を持つと、室内で写真を撮ることが楽しくなるし、今日は、作業をする野村さんの姿、随分たくさんカメラを向けた。最初は、僕らの活動の記録として撮影していたものが、最後には、人物撮影を楽しんだ感さえあった。

 自然の中にも、場所や時間帯によって暗い場所がある。
 だがニコンD700の画質は、自然の中の暗い場所を撮影するよりも、室内など人工的な環境を写すのにより適しているように感じる。高感度撮影の際のノイズを少なくすると、その副作用として画像がのっぺりとして質感が悪くなるが、暗い場所での自然写真の場合は、もう少しノイズが目立ったとしても、質感が欲しいと感じることが多い。
 いやいや、D700は暗い室内では異常なほど写る、と書いた方が正確なのかもしれない。


NikonD700 TAMRON SP AF28-75mmF/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO

NikonD700 TAMRON SP AF28-75mmF/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO

NikonD700 TAMRON SP AF28-75mmF/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO

 

2009.9.10(木) 理屈とは

 先日、あるブログを見ていたら、
「写真は体でおぼるもの」
 とあった。そして話は、
「ところがデジタル時代になってからは、何でも理屈で解決しようとする理系マインドが幅を利かせ過ぎていて、それに不安を感じる。」
 と続いた。
 だがおそらく、その方は理科系のことをご存じないのだろうと思う。理科系の研究には常に技術が付きまとうし、理科系の人は技術をとても大切にする。
 技術とは体得するものであり、理科系の人は職人でもあって、体で覚えることをむしろ重視するのだ。
 僕が大学時代に所属した研究室では蚊を実験材料として使っていたが、蚊に手術を施すことがあった。ところが、蚊は小さくて手術は難しいし、それを可能にするためには練習をして数をこなすことが求められた。そうした体で覚えなければならない手作業は研究の結果を左右する極めて重要なことであり、ほとんどの理科系の人は何らかの手作業を要求される。

 その点むしろ、僕は、文系の人の方が頭の中ですべてを解決してしたがる傾向にあるような気がする。自然写真家でも、理科系出身の人は技術者や職人肌である傾向が強く、文系出身の人は、議論好きで、むしろ理屈っぽい傾向があるように思う。


NikonD3X Ai Nikkor 20mm F2.8S

 さて、地質学の研究者は、なぜ地質について調べるのだろう?
 その動機は人によってさまざまであることは言うまでもないが、多くの場合、その人が、何らかの自然現象の不思議に心を動かされたことから始まっているに違いにない。
 そしてそれは理屈抜きの世界であり、僕はそうした出会いを重視する。

 写真を撮る際にも、その過程をちゃんとたどりたいと思う。
 まずはフィールドを歩き、そこで偶然出会った不思議とか面白いなと感じるものにカメラを向ける。
 ただ、それだけではなかなか本を作ることはできないし、本を作るためには、そこに何らかの物語が必要になる。
 その物語の1つの例が、知識や理屈だ。つまり理屈は、自分の感動を自分だけの世界にとどめないようにするためのもの。言い換えるなら、人との共通理解を得るために必要なものなのであり、基本的に後付けなのだ。
 

NikonD3X Ai Nikkor 20mm F2.8S

NikonD3X Ai Nikkor 20mm F2.8S

 さて、昨日は僕としては珍しく、海辺を歩いてみた。場所は、北九州市内。
 今制作中の本は間違いなく軌道に乗っているので、さらなる新しいテーマを求めての小旅行だ。

 

2009.9.9(水) 水没の危険性


NikonD3X Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D
 金魚は、中国産のフナを品種改良したものだから、子供を産ませると、中にはフナのような尾っぽ(フナ尾)のものが生まれる。上の画像の2匹は、同じ親から生まれた金魚の兄弟だ。
 金魚のブリーダーはフナ尾の魚を捨ててしまう。だから、フナ尾の魚は子孫を残すことができない。
 そうして数百年間、フナ尾の遺伝子をもつ魚を徹底して除外しているにも関わらず、それでもまだフナ尾の魚が生まれるのだから、生き物の遺伝という現象は、大変に興味深い。


NikonD3X Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D
 また、生まれてしばらくは、金魚と言えどもフナのような色合いをしており、やがてある時、色変わりという現象を経て、鮮やかな色の金魚になる。



 僕はここのところニコンのD3Xというカメラを気に入って使っている。渋くて、安っぽくない色合いとシャープな絵が、僕の好みに合った。
 また、画質面で少々扱いにくい点もあるのだが、それが逆に楽しくもある。
 だが、大変に高価なカメラであり、水没の危険が付きまとう水辺では、少々気を使う。

 長靴をはいて水の中に入って写真を撮る場合などは、最悪こけてしまった場合に備えて、こける際の自分の姿を何度も何度もイメージトレーニングする。
 足元がツルンと滑って体勢を崩した時には、カメラを持つ右手を高く突き上げた状態で倒れる。全身はずぶ濡れになったとしても、カメラを持った右手だけは、潜水艦の潜望鏡のように空中に突き上げておくのだ。
 ということは、左肩を下にして倒れた方がいい。
 だから僕は、そうしてベッドに倒れ込む練習を毎晩欠かさない。
 だが実は、危険はスタジオの中にだってあるのだから油断は出来ない。たとえば今日の金魚の画像は、直径60センチの巨大な洗面器の中に魚を入れて撮影したものだが、その洗面器の中にカメラを落せば、間違いなくオシャカになるだろう。
 そこで、カメラにはストラップを取り付けて首にかけ、室内と言えども、決して油断をしないように心掛けている。
 ただ、ストラップは邪魔になることもあるので、金具で簡単に取り外しができるものを使用している。
 


 D3Xの他には、ニコンのD700を使うこともある。
 だがD700は高感度の画質に特化したカメラであり、ノイズは少ないが、シャープな描写ではないし、一般的な用途に使用した場合、逆に画質の面で他のカメラに劣る場合もある。
 だから僕は、もっぱらISO800以上の感度で使用する。
 D700を低感度のISO200で使用した場合、より古いカメラであるD2Xやキヤノンの安価なEOS30Dあたりの方がシャープな傾向にある。
 ただ、白飛びしにくいという優れた点もあって、時には、低感度でもD700をあえて使うこともある。
 もしも画質にこだわるのなら、D700は、そうした特性をよく理解して使用するべきカメラだと思う。
 僕はD700を購入した当初、お気に入りのレンズであるコシナが販売しているカールツァイスのDistagon T* 2.8/25mm ZFを取り付けて使いたかったのだが、D700の大雑把な描写とDistagon T* 2.8/25mm ZFの繊細な描写とは、あまりよくマッチしないように感じられた。

 D3Xが気に入ったので、最近はほとんど使ってないが、キヤノンのEOS5Dは、今でも古くないと思う。
 僕の場合、元々は、ニコンがなかなか35ミリ判フルサイズセンサーのカメラを発売してくれないから仕方なく購入したのだが、画質に関して言うと、今でもトップクラスではないだろうか。
 D700とは画素数などスペック的には近いが、全くコンセプトが異なり、内容的には競合するカメラではないと思う。EOS5Dは、D700とは逆に、低感度で繊細な描写をするカメラだ。
 僕は、ニコンにもそんなカメラが一台欲しいと感じる。小さくて、画素数を欲張り過ぎず、低感度の画質にこだわったカメラが。



 今日は、オリンパスの新製品をプロサービスから借りて使ってみた。
 オリンパスは、僕にとっては隙間を埋めるカメラであり、他のカメラとは用途が異なるのだから、その画質を比較するのは、ややナンセンスなことであるに違いない。
 オリンパスは、サービスが素晴らしい。
 サービスと言っても、物をくれるととかそんな下世話な話ではなくて、一言でいれば、融通が利く点がいい。
 もっともそれは、プロのユーザーが少ないから可能なのかな?近頃、写真用品の会社が次々と合併吸収されているが、大きな会社の一部になってしまうと、途端に融通が利かなくなり、まるでお役所のようになる。

 

2009.9.8(火) きっかけは

 9/2にアメリカザリガニを撮影した場所で、もう一度水中撮影をしてみようと昨日出かけたのだが、今回は水の濁りがひどくて、撮影ができる状況ではなかった。
 これが、水辺の撮影の難しいところ。
 とにかく、生き物そのものよりも、状況に左右される。特に水の中を撮影しようとすると、それが顕著になる。
 だがその結果、僕は生き物そのものよりも、水辺の状況、つまり、環境に興味を持つようになった。そして、自分の撮影の軸を、生き物から環境へと移すことにした。
 
 決定的な出来事もあった。
 ある時、魚の調査のプロにある池を案内してもらった際に、そのプロが、
「この池は、午後になると水泳をする子供たちの影響で水が濁ってくるから、撮影はその前にした方がいいよ。」
 と教えてくださったのだが、僕はその池に潜ってみて、水が濁るのは子供たちの水泳の影響ではないと感じた。
 ではなぜ、午後になると水が濁るのか?
 それは、水草の光合成だった。
 水草は光が当たると水に溶けた二酸化炭素を吸収し、代わりに酸素を放出する。そしてその酸素が水中を立ち上る際に水流ができる。その水流が池の水をかき交ぜ、池の底から泥の微粒子が浮き上がってきて水が濁る。

 朝、お日様が顔を出し、それと同時に水草の光合成が始まり、光合成が最も盛んになる午後の時間帯になると、水の濁りが特に目立つようになる。
 僕にとってはその現象が、生き物たちのこと以上に興味深かった。水草から立ち上る酸素は微量であり、その水流も極めて微弱ではあっても、実はそれも水中の環境に影響を与えているのである。
 ということは、魚が泳ぐ際にできる水流にも、水をかき混ぜる役割があるだろう。水がかき混ぜられることは、おそらくその池にとって、重要なことであるに違いない。
 厳密に言うと僕の場合、環境そのものに興味があるというよりは、そうした生き物と環境とのつながりに興味を感じるのだ。
 

NikonD3X Ai Nikkor 20mm F2.8S

 昨日は、水中撮影を早々に諦め、水路の周辺を歩いてみることにした。
 上の場所は、昔僕の友人が住んでいたアパートの裏手であり、そこには水路の一部がある。
 僕はちょうどそのころアメリカザリガニの撮影をしていたのだが、その水路にたくさんのアメリカザリガニがいる、と友人から教わったのがきっかけで、この場所を知ることになった。


NikonD3X Ai Nikkor 20mm F2.8S

 さっそく水路の生き物の撮影を始めたのだが、まとめの段階になって、はたと困った。水路がいったい何のためにあるのかが、分からなかったのである。
 そこで、水路に沿って歩く小さな旅が始まった。


NikonD3X Ai Nikkor 20mm F2.8S

 するとやがて、狭いながら田んぼが取り残されている場所があり、さらにその上流側にはため池があり、元々辺りが田圃であったことに気付く。
 そして、古くからあたりに住んでおられる方に、
「もしかして、このアパートの周辺は、以前は田圃だったのでは?」
 とたずね、
「そうだよ。この辺は全部田圃だったよ。」
 と返ってきたときには、そうした時代の変化を表現できる本を作りたい、という強い思いが込み上げてきた。

 僕が取材をしている町の水路は田圃が変化したものだが、変化する前の田んぼについても、子供たちに知っておいてもらいたいと感じることがある。 
 だから、古いタイプの田んぼや田んぼの生き物についても、並行して取材を試みた時期があった。
 だが、それは先輩方が作った本を見てもらえばいいのかなと思い直した。なぜなら、実は、僕は田舎とは言え町で育ったので、子供のころに身近に田んぼがなくて、それをあまりよく知らないのだ。
 だから僕の場合、町の水路の本の中でそれなりのページを割いて、先輩方が作った本を紹介すればいいのかもしれない。
 多くの本では、他の本を紹介する際に、ただ本の名前その他が列挙してあるだけで実に味気ないし、工夫が感じられないことが多く、あれでは、別の本を読んでみる気には、なかなかなれないに違いない。
 僕は、もっと血の通ったページを作りたい。

 

2009.9.6〜7(日〜月) 水の事故



 また子供の水の事故のニュース。今回は、複数の子供たちが遊んでいる最中にその中の一人が溺れ、残りの子供たちは、怒られることが怖くて、それを黙っておいたというもの。
 溺れた子供の家族の方が捜索願いを出して、ようやく事情が分かったのだそうだ。
 傷つくなぁ。
 僕は、できれば本の世界に特化したいと考えていることは、過去に何度か書いたことがある。
 そして、本に特化したい主な理由は、読者との間に距離があるから。
 距離があると、そこに想像や推測が生まれる。「この写真を撮ったのはどんな人なんだろう?」とか、「この人についていくことができたなら、いろいろな生き物を自在に見ることができるのなぁ」とか。
 僕は、その想像や推測が好きだ。
 だから、読者と直接かかわるような活動にはあまり積極的ではないのだが、1つだけ、将来やろうと思っているのは、水辺の歩き方を、子供たちに教えてあげることだ。
 たとえば渓流を歩く際には、ゴム底の靴や長靴などは履いてはならない。岩場を歩くときには、フェルトが底に張られた渓流用の靴を履かなければ、滑って危な過ぎる。
 だいたい渓流で人が死ぬパターンというのは、ツル〜ンと滑って後頭部を打つ。あるいは、そのまま水に流されてしまうというもの。
 また、仲間が水に流された時に、飛びこんで助けようとしてはならないとされている。普通の人が助けようとしても、二人とも溺れてしまうことが常なのである。今年の夏も、そうして二人とも死んでしまった、というニュースを随分耳にした。
 そんな時は、何か木の棒か何かを差し出すような助け方をする必要があり、実は僕の友人が、溺れそうになった別の友人をそうして助けたことがある。
 
 僕が子供の時は、そんなことを教えてくれる大人や友達がいたものだ。
 そう言えば、ザリガニを採集している最中にトンネル状になった土管に入ろうとしたら、
「そんな場所にはガスがたまっていることがあるから入ったら危ない!」
 と注意してもらったことがあったなぁ。
 水辺の本を作るからには、好き嫌いに関わらず、子供たちが水辺で事故に合わないようにすることだけには協力しなければならないと思う。

 

2009.9.5(土) 有料サービス

 DVDディスクに画像データを書き込もうとしたら、どうしても書き込みができず、DVDドライブが認識されていないことに気がついた。
 はて・・・何が起きたのだろう?と考えてみたら、先日、訳が分からないファイルを削除したことが思い当った。
 しまったなぁ・・・、あれは削除してはならないファイルだったのかもしれないなぁ・・・。がしかし、その訳が分からないファイルは3G以上の容量があり、どうしても目障りだったので消してしまったのだった。

 そこで、パソコンのメーカーに電話をしてみようかと思うのだが、あまり気が進まない。
 だいたい、電話でのサポートというやついつも込み合っていて全く怪しからんと思う。あの待ち時間の全く腹立たしいこと、腹立たしいこと。
 がしかし、今日に限っては、それがすんなりとつながったものだから、逆に面食らった。
 僕ははやる気持ちを抑えながら、落ち着いて、落ち着いて、、電話の向こうの担当者方に、まずはパソコンの機種や製造番号などを伝える。
 が、やっぱり世の中は甘くない。
「この時間帯の電話でのサポートは有料の契約を結んでいる方のみで、お客様の場合は、平日のいついつに改めてお電話をかけ直してください。」
 とのこと。どうりで、すんなりと電話がつながったはずだ。
 なんだか差別をされたみたいで、傷つくなぁ。

 しかたがないので、自分が削除したファイルについてインターネットで調べてみたら、どう考えてもDVDドライブとは関係がなさそうだ。
 僕が削除したファイルは、パソコンを休止状態にする際に、メモリー内にあるデータを保存しておくための領域であり、大きいメモリーを積んでいる場合は、その領域も当然大きくなるのだそうだ。
 そして僕の場合は、休止状態を使わないので、全く問題はないはず。
 ということは、DVDの不具合は、何か必要なファイルを削除したなどというトラブルではなくて、機械の故障ではなかろうか?

 機械が故障したとなると、メーカーに送れば、それなりの時間がかかるに違いない。また、お金もそこそこ必要になるだろう。
 結局、故障したDVDドライブの修理はあきらめ、新たに外付けのDVDドライブを1つ購入することにした。
 
 それにしても、電話でサポートを受けるのにもお金がかかるとは・・・
 いやいや、それも受け止め方次第。有料になることで、その時間帯には電話がつながりやすくなる。
 高速道路の無料化、大丈夫か?
 僕は取材の際に、よく高速道路のパーキングエリアで眠るのだが、高速には性質の悪い車が少ないし、それに伴って、パトロール中の警官に、真夜中に車の窓をノックされ職務質問されることもない。
 金を払うだけのことはあるような気もする。

 

2009.9.4(金) 質感描写

 先日、キヤノンから、ハッとさせられるようなカメラが発表された。PowerShot G11というコンパクトタイプのデジタルカメラなのだが、一つ前のモデルよりも画素数が少なくなったことが、僕にとっては驚きであり、非常にうれしかった。

 デジタルカメラの画素数は増える一方だから、新しいモデルの方が画素数が少ない、というのは、おそらく業界初のことではないだろうか。
 デジカメの画素数が増えると、画像はシャープになるが、その副作用として、立体感がなくなったり、質感が悪くなってしまうのである。
 がしかし、立体感とか質感は非常に感覚的なもので、評価がしにくい。その点、シャープさというのは目で見て分かりやすいし、多くの人がシャープな画像に飛びつくのはよく理解できるのだが、僕はやっぱり、立体感や質感がいい画像が好きだ。
 シャープさにとらわれ過ぎない質感のいい画像は、目に優しい感じがする。
 もちろん、それも時と場合によることは付け加えておこうと思う。
 たとえば、街角のスナップ写真などの場合、逆に質感がないような、ちょっとベタッとした絵画のような雰囲気の方が面白いことだってある。
 だから僕が求める質感とは、自然の写真をオーソドックスに撮影する場合の話である。

 また、開発者が、画素数を増やそうとすること自体は、必要なことだと僕は思う。
 なぜなら、技術革新によって今までできなかったことが可能になる場合だってあるのだから、作り手は、それに向けて常にチャンレジしていなければならないと思うのである。
 ただ、そればかりになってほしくない。

 

2009.9.3(木) 撮影機材の話

(撮影機材の話)
 昨日、水中撮影にオリンパスのE620を初めて使用してみたのだが、なかなか面白いカメラであると感じた。オリンパスのカメラは、他社のものに比べる画像を記録するセンサーのサイズが小さくて、それで不利になることもあれば有利になることもあるが、とにかく他社のカメラにはない魅力があった。
 ただ、オリンパスはレンズの種類があまりにも少なすぎて、特殊な用途に使用する場合は、レンズの品揃えに物足りなさも感じる。特に、単焦点の広角レンズがないのが僕には困る。
 同じ水中撮影でも、深い場所での撮影なら、魚眼レンズが用意されているからそれを使えばいいのだが、魚眼レンズを使用すると、カメラを水中撮影用のケースに収める際に、水中ケースのレンズ部分が巨大になってしまい、浅い場所にはカメラを沈められなくなるのだ。
 仕方がないから僕は、ED 9-18mm F4.0-5.6 というズームレンズを使用しているのだが、ズームレンズの場合、最短撮影距離が単焦点レンズよりも長くて、小さな生き物の撮影にはそのままでは使い辛い。
 そこで、より被写体に近づけるように、レンズを改造をして使用してみることにした。
 ただ、そうした改造をすると、かなりレンズの性能が悪くなることが分かった。どうも、レンズの最短撮影距離を短くすると、その影響で性能は、悪くなってしまうようだ。

 そう言えば、昔コンタックスのカメラ用に販売されていたディスタゴンT* 18_F4 MMは、歪が少なくて非常に性能がいいと言われていたが、最短撮影距離がかなり長かったことを思い出した。
 ディスタゴンT* 18_F4 MMは、f値が暗いこともあるだろうが、コンタックス用のレンズとしては随分価格が安かったし、買ってみようかなと何度か考えたことがある。
 だが、結局いつも最短撮影距離の長さがひっかかって、買うまでには至らなかった。
 
 

2009.9.2(水) 季節感


OLYMPUS E-620 ED 9-18mm F4.0-5.6

OLYMPUS E-620 ED 9-18mm F4.0-5.6

 僕は生き物と季節の関係には興味があるが、季節感(季節のイメージ)には、ほとんど興味がない。だいたい僕は、季節感などというのを楽しめるほど、洒落た人間ではない。
 だが世間では、季節感はとても重要なものであり、それ抜きで自然写真の世界で生計を立てるのは、ほとんど不可能ではないかとさえ思える。
 たとえば、雨とカタツムリの組み合わせの写真があったとするなら、僕にとって重要なのは、そんな日にカタツムリがどんな暮らしをしているか、つまりカタツムリの性質についてだけど、世間で重要なのは雨の方であり、カタツムリは、雨のついでに過ぎないことが多い。
 すると当然、生き物の写真が使用される時期も季節に左右される。
 カタツムリの写真なら、梅雨の頃に出版される本によく掲載される。

 それに合わせて、自然写真家が忙しい季節とそうでない季節とができる。
 僕の場合、7月下旬から8月中旬は、依頼されて撮影しなければならないものが多いが、8月下旬〜9月になると、一転してパタリと暇になる。
 そんな暇な時に、これはどうしても撮りたい!と思えるような被写体に出会えた時には、とても幸せな気持ちになれる。
 
 さて、僕がここ数年テーマにしている町の水路では、アメリカザリガニは、それほど数が多くない。さらに、見かけたとしても、水中写真が撮れるような場所では、あまりお目にかかることができない。
 ところが先日、そのアメリカザリガニが、水中写真を撮影できそうな場所に多数いるのを見つけた。
 そこで今日は、町の水路の中に降り、アメリカザリガニにカメラを向けてみた。
 先月末に紹介した、プルーフ製の水中撮影用のケースの中にオリンパスのデジタルカメラ・E620を入れて、はじめて本番の撮影で使用してみたのだが、非常に出来が良くて気持ちがいい。
 
 

2009.8.28(金)〜9.1(火) 案内

 昆虫写真家の新開孝さんを案内して、2日ほど、北九州市内のフィールドをウロウロをすることになった。
 ところが僕がここ数年主に撮影している場所と言えば、町の中の水路だったり、洞窟の内部だったり、森の中の水たまりだったりして、一般的に言うと、カメラを持って出かけて楽しい場所ではないので、どうにも自信がない。
 僕の場合は、撮影そのものを楽しむことよりも、そこで撮影した写真を使って本を作ることを目的としており、僕は、誰かをフィールドに案内して撮影そのものを楽しんでもらうようなガイド的なことがあまり得意ではないのだ。
 そこで1日目は、トンボ愛好家の西本晋也さんにお願いをして、トンボのフィールドを案内してもらうことになった。
 西本さんは、撮影を通してトンボを楽しむことを目的としておられるので、人にトンボを楽しませることも非常に上手いのだ。

 2日目は、一転して僕が普段写真を撮っている場所を見てもらった。
 まず森の中の水たまりへ出かけ、次に、町の水路を案内する。
 その間、僕と新開さんが共有したのは、そこにどんな生き物がいるかではなくて、その場所をどう料理してまとめるかの本作りのことだったり、どうやって生き物や自然のことを人に理解してもらうか、要するに、いかにして自分たちが社会との接点を持つかの話だ。
 
 さて、新開さんがお越しになった時の画像を日記に載せようとしたら、一枚も新開さんの写真を撮っていなかったことに気付いた。
 僕が2日間で撮影した写真と言えば、アマガエルを数枚撮影しただけ。
 僕は仕事以外で写真を撮るのがあまり好きではないので、普段はスナップ写真などは滅多に撮らないし、観光地などで、
「すいませ〜ん、シャッターを押してください。」
 などと求められてもお断りしたり、その雰囲気を察して、声をかけられる前に逃げてしまうことが多い。
 がしかし、今日の日記などには何か画像が欲しいので、今朝は、前日新開さんを案内して歩いた町の水路をもう一度同じように歩き直し、前日目にしたシーンを再現するかのようにシャッターを押してみた。
 

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 どこに生き物がいるか、分かるかな?


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 何をしているのかな?


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 何の卵かな?


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 
 
   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2009年9月分


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