撮影日記 2009年7月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 

2009.7.29(水) 撮影機材の話


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

 ニコンのD3Xに、AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)を組み合わせてスタジオで使用すると、恐ろしいほどの切れ味の写真が撮れる。
 シャープな写真が撮れる、というのは、僕にとってそれだけで愉快なことであり意欲がわいてくるし、今シーズンはこのカメラのおかげで、ずいぶん撮影がはかどったように感じる。
 2400万画素クラスのカメラは、フィルムで言うなら大判に匹敵するなどと言われることがあるが、まんざら嘘じゃないと思う。
 ただし、状況しだいという面もあって、野外で風景などを撮影してみると、2400万画素のカメラでも、大判どころか、645判のフィルムにさえまだ敵わないと思う。
 近頃は、フィルムで撮影された写真を見る機会が減っているが、風景写真誌あたりには、645判や67判のフィルムで撮影された写真が多数掲載されているので、それを見れば、645判や67判のフィルムのすごさは、すぐにわかるだろう。
 ただ、フィルムはフィルムでも、さすがに35ミリ判を使う気にはもうなれない。ということは、もしも645判や67判のフィルムサイズに匹敵するようなイメージセンサーを搭載したデジタルカメラが普及するようなことがあれば、645判や67判のフィルムも色あせてしまうのかな・・・。
 どうなのだろう?

 撮影機材は適材適所が肝心であり、すべて状況次第。
 例えば、僕はニコンのマクロレンズに関しては、105ミリと60ミリとを使い分けているが、状況によって105ミリの画質が優れていることもあれば、60ミリの画質が優れていることもあり、どちらが絶対的に高画質などとは言い切れるものではないし、それを言い切れる人がいたとするならば、それはその人が無知なだけ。
 ニコンの60ミリマクロレンズに関しては、スタジオで写真を撮る人たちの間で評判がいいようだが、なるほど!と頷かされることが多々ある。
 要は、使いこなしが肝心なのだ。
 その60ミリのマクロレンズだが、僕が使用しているものは一世代前のもので、最新のものは、ずば抜けた性能だという噂。
 今日の撮影に使用した105ミリも、D3Xとの組み合わせで実にシャープに写るが、最新の60ミリマクロレンズも試してみたい。
 ああ、レンズが欲しい・・・
 
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.29(水) 縦位置写真


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

「縦位置の写真ってないんですか?」
 と尋ねられた。
 カメラを普通に構えた場合、写真の画面は横長になるがそれを縦に構えるやり方を、横位置に対して、縦位置という。
 実は、僕は縦位置があまり好きではないので、滅多に縦位置の写真を撮らない。
 そこで、
「僕は縦位置が嫌いなんですよ・・・、横位置の写真の一部を縦長になるように切り抜いて使用するのではだめですか?」
 と聞き返してみたら、
「いやいや、それでもいいのですが、せっかく武田さんが撮影した画面の一部だけを切り取ってしまうのだが心苦しかったので、ちょっとたずねてみたのです。」
 と返ってきた。
 
 僕は、本という媒体が好きなので、写真の仕事は可能な限り本に特化したい気持が強い。
 そして、本は一般にページを開いた時に横長になり、本の中で写真が一番大きく使われるのは、その横長の画面いっぱいに写真を印刷するケースだ。
 その場合、一枚の写真を2ページ(1見開き)分の面積に伸ばして使用することになる。

 一方で縦長の写真は、一番大きく伸ばして使用する場合でも本1ページ分の面積にとどまるので、横長の写真ほど大きく印刷されることはない。だから縦長の写真に関して言うと、あまり大きな画像である必要はないし、僕は横位置の写真の一部を縦長に切り取って使用する方法で良しとしている。
 それはともあれ、そう思っていても、せっかく撮影された写真の一部だけを切り抜いて使用するのが心苦しい、と心配りをしてもらえたことは、非常に嬉しかった。
  
 もしもポスターの仕事をするのなら、僕だって、縦位置の写真を撮るだろうと思う。
 ポスターには縦長のものが多いし、しかも巨大なサイズに印刷する場合が多いのだから、横長の写真の一部を切り抜き、そこを拡大して印刷するようなやり方では、画質に問題が生じるに違いない。
 さてタンポポは、夏になり周囲に草丈が伸びると、それに負けじと、背が高くなると言う。今日は、僕としては珍しく、縦位置にカメラを構えてみた。
 

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

 一方、こちらは横位置の写真。
 この写真は、蝶を風景っぽく小さく写すと同時に、場合によって左右を切り捨て、縦長の写真として使うような撮り方だ。
 この撮影に使用したニコンのD3Xは約2400万画素なので、この写真の左右を切り取り、蝶の部分を残して縦長の画面にしても、それでも本の中で使用するには十分な画素数が残る。
 
(撮影機材の話)
 NikonD3X に AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) を組み合わせると、ゾクッとするくらい解像感のある画像が得られる。
 タムロンのレンズでも悪くはないのだが、D3Xのすごさは少々損なわれるような気がする。このカメラの持ち味を引き出すためには、可能な限り最新のレンズを使うのが良さそうだ。
 
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.27〜28(月〜火) シオカラトンボ


シオカラトンボ CanonEOS5D EF100mm F2.8 マクロ USM

オオシオカラトンボ CanonEOS5D EF100mm F2.8 マクロ USM

 ちょうど今頃の季節だと思うのだが、子供のころ、母のテニスについていったら、テニスコートの近くを流れる用水路の上に、たくさんのトンボが群れて飛んでいるのを見つけた。
 水路には、車が通れるくらいのコンクリートの橋がかかいて、そこには欄干もガードレールもなかったから、僕はその上から網を降った。
 すると、トンボが網に入らない方がどうかしているというほどの群れ方だったのに、何度試しても、一匹のトンボも捕まえることができなかった。
 そこにテニスを終えたおじさんの一人やってきて、僕の代わりに網を降ると、網の中にはトンボの姿があった。大人ってすごいなぁと思った。
 トンボは、茶色っぽい物が大半で、青いものが少し含まれていた。茶色いものはシオカラトンボのメス。青いのはオスと母に教わった。

 それから何十年かの月日が経過し、あのトンボは、本当は何だったのか、トンボマニアの西本晋也さんに尋ねてみたら、シオカラトンボがそうして群れて飛ぶことはないという。
「おそらく、ウスバキトンボでしょう。」
 という答えが返ってきた。
 では、青いトンボは何だったのか?
 やっぱりシオカラトンボのオスかな?シオカラトンボは、何かに止まっていることが多いが、オス同士の縄張り争いなどで飛翔中のものが、ウスバキトンボの群れの中に紛れていた。僕は、そんな結論を出した。

 が昨日、子供のころに見たのとまったく同じシーンを目にした。
 青いトンボはシオカラトンボではなくて、さらに青が濃い、オオシオカラトンボだった。
 ウスバキトンボはよく群れるトンボだが、特に、雨の合間の晴れ間には、群れの密度が高くなるように感じる。
 そして、ここ数日福岡では大雨が降ったが、久しぶりに雨が収まった昨日は、ウスバキトンボの群れが凄かった。
 そこに、オオシオカラトンボが数匹まぎれて飛んでいた。
 あたりにはシオカラトンボも多くみられたが、シオカラトンボは地面の上や比較的低い場所に止まっていることが多く、ウスバキトンボの群れにまぎれて飛んでいる姿は、ほとんど見られなかった。
 一方、オオシオカラトンボも止まっているものの方が多いのだが、止まる位置はシオカラトンボよりもやや高く、そこからひょいと飛び立つと、ちょうどウスバキトンボの群れの真っただ中になる。そして、飛び立ってから再びどこかに止まるまでの間の継続して飛ぶ時間の長さも、シオカラトンボよりも少々長いように感じられた。
 暇が出来たら、シオカラトンボやオオシオカラトンボを、ちょっと真剣に撮影してみようかな。その日の思い出を写真に表してみたくなったのである。
 
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.25〜26(土〜日) 更新

 今月の水辺を更新しました。
  
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.24(金) 日食の写真

「今電話大丈夫?」
「大丈夫ですよ。」
「君さ、日食の写真撮らなかったの?日食のUPの写真はたくさん撮影した人がいるみたいだけど、君ならちょっと違う写真を撮っているんじゃないか?と思って」
 と問い合わせの電話。
 人とちょっと違う写真を撮るどころか、僕の場合は違いすぎた。みなが日食にカメラを向けているのに、僕は写真を撮らなかったのである。
 あれだけ報道で大騒ぎされると、僕のようなひねくれ者は、無性に無視したくなってしまう。正直に言うと、ちょうどその間、昆虫を探しに出かけており、ちょうどその虫を見つけたばかりだったので日食のことを忘れていた、というのもあるが、仮に覚えていたとしても、写真を撮る気はまったくなかったのは確かだ。
 
 さて、今日は雨が凄かった。
 あまりに北九州の雨がひどいので、ちょっと避難する意味もあって直方の自宅に帰宅をしたら、直方でも雨が激しくなり、水路から雨水が溢れ出してきて、あと少しで車が水没するところまで増水したので、車を急きょ避難させた。
 駐車場の前の道が川になっており、しまった、これはもうアウトか?と心配したが、何とかエンジンが止まることなく、川と化した部分を通り抜けることができた。
 車を安全地帯に置いたあとは、水の中を長靴に水が入らないように注意しながら歩いてみたのだが、深い場所があり、ついには水が入ってきた。
 道路には意外に起伏が多いことに気付かされた。平らだと思っていた道に、浅瀬もあれば深みもあるのだ。
 深さが5センチ違うと、そこを歩いた感じはずいぶん違う。
 僕は時々、淡水で水中撮影をするための機材について問い合わせを受けるが、
「せいぜい30センチ水の中にカメラを沈められればいいのです。」
 というような話をされる方が結構おられるのだが、実は30センチというのは深くて、僕にとってはせいぜいという感覚ではない。水を実際に体験してみると、確かに30センチというと、かなりの水深なのだ。
 それはともあれ、それにしても、凄い雨だった。
  
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.22〜23(水〜木) 無駄な道路

 ある昆虫を採集するために、隣の県へと足を延ばした。
 その虫は、荒地のような場所でよく見かけるのだが、周囲に山がなければならない。だから荒地は荒地でも、町の中の荒地で見かける昆虫ではない。
 山の中の荒地を探してみると、点々とその虫の姿があった。
 人の影響がない場所では、渓流のほとりなどでよくその昆虫の姿を見かける。渓流の流れの周辺には水量の増減の影響で、大きな草木が生えなかったり、小石がゴロゴロしているような荒地的な環境ができるが、本来は、そのような環境に生息する生き物なのだと思う。


CanonEOS5D EF17-40mm F4L USM

CanonEOS5D EF17-40mm F4L USM
 滅多に人が来ない場所。この上には民家もないのに、新たに、こんな立派な林道を作る必要があるのだろうか?
「道路はまだまだ必要だ!」
 と主張する国会議員は少なくないようだが、道路が必要だと主張をする議員は、そんなに道路を作らなければならないのなら、逆に、無駄な道路を作ることを絶対に許してはならないような気がする。
 無駄な道路を作るのを許すと、どうせ道路には何か利権がからんでいるのだろうなどと言われるのがおちだ。
 が、道路族と呼ばれている議員の方々が、そうした主張をするのを僕は聞いたことがない。
 郵政民営化の時にも同じように感じたのだが、
「郵便事業は国が責任を持つべき。」
 と主張する民営化反対の議員たちは、逆に、郵便局の中で生じるお役所的な無駄を絶対に許してはならなかったように思う。
 それに口をつぐんでおいて、郵便局は絶対に必要と言われても、イマイチ説得力がないように思う。


CanonEOS5D EF17-40mm F4L USM

 が、それは人間の立場に立った場合の話である。
 ある生き物は、僕らが考える豊かな自然よりも荒地の方が好きなのだから、それを考えると、自然はどうあるべきかに関して、何が正しいのかが僕はよく分からなくなる。
 荒れ地がなくなれば、数を減らしてしまう生き物だって存在することだろう。
  
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北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.19〜21(日〜火) 山の事故

 もしも心の底から自然や自然写真が好きなら、プロにはならない方がいい、という考え方があるが、確かにそんな面がある、と感じることがある。
 例えば、僕はこう思うという自分の主張をすることと、お金を稼ぐという行為は、しばしば相反する。

 そう言えば、もうずいぶん前のことになるが、ある島へと取材に出かけた際に、夜の林道でフクロウの仲間やシギの仲間を探して車を走らせていると、後ろから数台の車がかなりの速度でやってきて、僕の車にべた付けをされたことがある。
 大変に狭い林道だし、観光客もほとんどいないような田舎だったので僕は状況が全く理解できなかったのだが、ひどく急かすような運転をしかけてくるのだから林道でラリーのようなことでもやっているのだろう、と考える他なく、僕は車を路肩によけ、その数台の車を先に行かせることにした。
 ところがその数台の車は、僕を追い越すと、今度はゆっくりと走り始めた。実はそれはラリーではなく、野鳥観察のツアーだった。
 場所を選ばなければ車が離合さえできないような狭い道なので、僕が先行すると、ツアーの方々は、僕が鳥を見て写真を撮った後にしか鳥を見ることが出来ないので、探鳥にはそれなりに差し障る。
 ガイドをつとめておられた方は、客に鳥を見せるために僕にプレッシャーをかけて、嫌がらせをしたとしか考えられなかった。
 僕が抗議すると、
「そんなこと言われても、知りません。」
 と返ってきた。
 僕はそれ以降、生きもの観察ツアーと言うやつに、嫌悪感さえ感じる。お金が絡むと、だいたいロクなことがない。
 ガイドを務めておられたのは、その島では有名な自然愛好家だった。他にちゃんとした仕事をもっておられるようだが、その島の生き物をまとめた本を出版したり、自然保護にかかわる活動をたくさんやっておられるようだ。
 その数日後だったか、翌年だったか、別の場所でその方を見かけたことがあるが、その時は、個人で撮影にきておられたようだった。そして大変に撮影マナーが良く、僕が林道で見かけた方と同一人物とは思えないほどだった。 
 それを思うと、おそらくガイドという仕事が、そうさせたのだろう。
 先日、北海道でおきた山の事故も同様。お金を取り、日程が決まると、無理をしてでもその日程通りに事を運びたくなる。

 さて、先日出版の企画がまとまったことを書いたのだが、企画が決まって以来、どうも調子があがらなくなってしまった。
 と言うのも、本を出すからには自分の主張を貫きたいし、同時に、最低限、出版社にも、自分たちにも利潤がでるようにしたい。
 時に相反するいくつものことを満たさなければならず、恐らく僕は今、どうしていいのかが分からなくなっているのだろう。
 
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.18(土) 滲み出るもの

 先日紹介した森上信夫さんの「樹液に集まる昆虫」は、中身を読めば読むほど、よくできた図鑑だと思う。
 僕は今、これを車の助手席に置いておき、信号待ちのたびに手に取って読んでいるのだが、すると信号待ちが全く苦にならないのだから素晴らしい。
 それは使い方が違う、と怒られてしまいそうだが、時には、もう少し続きを読みたくて、赤信号が青に変わろうとすることが腹立たしかったりするのだ。とにかく、あっとう間に赤信号が青に変わるのである。
 このような良くできた図鑑は、細かい性格の人にしか作れないに違いない。僕のような大雑把な人間には、まず考えられない仕事だと思う。

 先日、ある場所で、昆虫写真家の海野先生が自らのことを、
「自分は本来は細かい性格なのだけど、意識的に大雑把に振舞ってきた。細かいことを気にするより、大きなことを気にしようと思った。」
 といった風に書いておられるのを読んだ。
「ああ、そうか!そうだったのか・・・」
 今からおよそ15年前、僕が初めて海野先生の事務所を訪ねた際に、先生から、
「武田君は野鳥の写真を撮っているのに、何で僕のところにきたの?」
 と尋ねられ、僕はそれをうまく説明できなかった。
 僕は、当時野鳥の写真家を目指していたのだから、そんな僕が、写真家になりたいと海野先生の元を訪ねるのは、確かに不思議なことである。
 だが、記事を読んで今頃納得。
 僕も元々は細かいタイプなのだが、細かく生きるのではなく、あえて細かい部分を切り捨て、前に進みたかったのである。そして僕はそれを、海野先生の著作の中から感じていたのだ。
 僕は、写真うんぬんよりも、生き方をそこに求めたのである。
 それは、最初から大雑把なのとはまったく別なことであり、僕はむしろ、最初から大雑把な人は、苦手であることが多い。

 僕は、安易に、写真には撮影者の人柄が現れるなどとは言いたくない。なぜなら、写真には技術という側面があり、写真は人柄よりも技術の方に大きく左右されるから。
 だがそれでも、技術を習得したその先には技術を超えた世界もあって、最後の最後は、やっぱりその人の性格が、写真や作品に滲み出るように思う。
 森上さんの細かな作品を見ると、それに感心する自分、大雑把に生きようとしていることを森上さんからしかられたかのような気分になりしょぼんとする自分、いやこれは細か過ぎるやろうと反論する自分・・・、いろいろな自分が一斉に口を開こうとして、収まりがつかなくなりそうになる。

(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.16〜17(木〜金) 改良

 今年からは撮影のスタイルを変える、と昨年末から何度か書いたことがある。具体的には、仕事として生き物にカメラを向ける時間を減らし、その分、自分が本当に表したものを撮影する時間を増やしたいと。
 そんな話を、先日とある取材の現場で、ある編集者に話したら、
「今まで撮影していたような写真もやめないでくださいね。」
 と言ってもらえた。
 ありがたいことである。

 さて、自分が好きな写真を撮り、しかも、これまでこなしてきた撮影も継続するためには、仕事をもっと効率化し、短時間でこれまでと同じ結果を出せるように改める必要があった。
 たとえば、僕は、仕事用の写真を撮るために数種類の生き物を飼育しているのだが、それらの生き物の飼育方法に工夫を施し、なるべく世話の時間が短くなるようにする。
 また、スタジオで魚を撮影する際には、スタジオに水槽を設置し、水槽に水を入れたり水を抜いたりするような作業をするが、それらの撮影のための準備の時間がなるべく短くなるように工夫を施す。
 さらに画像処理の手順を見直し、パソコンの前に座って画像処理をしている時間を短くするなどなど。
 それらの見直しは、できれば昨年のうちに、遅くとも今年の4月くらいまでには終わらせる予定だったのだが、僕は何をしても予定よりも余計な時間がかかる見通しが甘い人間であり、ようやく7月も半ばになったところで、一通りの見直しが終わった。
 あとは、事務所をリフォームして、今はボロボロで使えない部屋を使えるようにして、撮影用のスタジオをあと1つ増やせば、すべてが完了である。
 スタジオを複数持っておけば、並行して幾つもの仕事を進めることができる。

 これからプロの自然写真家を目指そうと思う人は、余程に暇な人か、お金があり余っている人以外は、水辺はやめた方がいいと思う。
 水辺の生き物は、スタジオで標本的な写真を撮るだけでも水槽を設置しなければならないし、水槽も幾つものサイズのものを持たなければならないし、それらの置き場所も必要になるし、飼育スペースだって、陸の生き物とは比較にならないくらい広い場所がいるのだから、お金と場所を時間がかかる。
 特に、写真が上手い人は、僕のライバルにならないように、水辺ではない何かをテーマに選んだ方がいい。
 なんちゃって。


 
 さて、7/9日に紹介した金魚は、黒からオレンジ色へと色変わりした。
 このオレンジは、恐らくもっと赤くなるだろうと思うから、まだまだ継続して写真を撮らなければならない。
 僕は今、この一匹の魚を継続して撮影しているのだが、だからと言って、この1匹を隔離して飼うと、金魚の形が変わってしまったり、もしかしたら色も変わってしまうなど様々な変化が起きる可能性があるので、これまで通り群れの中で育てながら、写真を撮影しなければならない。
 そのためには、数十匹魚が入れてある容器の中で、この魚がどれなのかが、分からなければならないし、日々餌を与える時に、一匹一匹魚を見て、区別をしなければならない。
 そうして日々まじまじと魚を眺めるためには、容器を観察しやすくしておかなければならない。
 僕のような怠けものは、ちょっとでも手間がかかることはなかなか続かないから、手間がかからないやり方を考えておかなければならない。
 何かが長続きする人と続かない人。
 これにはもちろん性格があるが、それ以外にも、やり方だってとても重要なことだと思う。
 
(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展


 

2009.7.15(水) 妄想



 昆虫写真家・森上信夫さんの著作は、以前にも紹介したことがある。アリス館から出版された 「虫のくる宿」は、とある宿の明りに集まる昆虫たちを、多少森上さんの妄想も加え、面白おかしく紹介した本だった。
 写真にはいろいろな種類があるが、大きく分けると記録報道の写真とエンターテインメントの写真にに分けられる。科学写真という言葉を耳にすることがあるが、科学写真も、大きく分けると記録報道の写真に分類されるだろう。要するに、事実を事実に忠実に、生真面目に伝える写真である。
 そして、森上さんの 「虫のくる宿」 がエンターテインメントだったなら、今回新しく出版された「樹液に集まる昆虫」は、事実を事実に忠実に伝える内容になっており、同じ人が作った本であるにも関わらず、まったく性質が異なる。
 だから、次に森上さんがどんな本を作ろうとしているのかが、僕には大変に興味深い。
 さて、僕は昨日に引き続き、ゴミの撮影に出かけた。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 僕はコーヒーを滅多に飲まないせいか、水路に落ちている飲み物の容器のイメージは缶コーヒーの空き缶ではない。
 やっぱり、コカ・コーラではあるまいか。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 だが、コーラはコーラでも、ペットボトルのイメージではないんだなぁ。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 そうそう、コーラと言えば空き缶。
 がしかし、僕が思い浮かべるのは、カロリーゼロの黒い缶ではなくて、赤い缶なのだけど。
 カロリーゼロも、少々深読みをしてみると、それなりに面白い。
 飲み物のカロリーを気にし、健康に気を配っているような神経を持った人間が、こうして空き缶を捨ててしまうのだから。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 サッカーボールは小学生かな。捨てたというよりは、遊んでいるうちに水路に落ちてしまったのだろう。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 幼児向けのものは、幼児が捨てたというよりは、親の管理が悪かったに違いない。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)
 口を縛られた袋は、小学生や中学生ではない感じがするし、老人でもないような気がする。
 恐らく、20代〜中年か?
 ただ単に、ゴミの写真を集めるのは面白くないので、その裏にある人の暮らしを妄想しながら写真を撮ってみることにした。

(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.12〜14(日〜火) ゴミ・ゴミ・ゴミ・ゴミ


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF)

 何か1つくらい、僕にも才能が備わっているのではないか?と時々思うのだが、僕は、何にチャレンジしても、それが最初からうまくできたような経験はないし、何かがめきめきと上達したというようなケースも、ただの一度だってなかったように思う。
 写真だっていまだに、はじめてカメラを向けた被写体が、最初からちゃんと写った試しがない。
 生き物だって風景だって植物だって、最初にカメラを向けた時にはいつもボロボロ。それを少しずつ少しずつ修正し、前よりはましになるように改良を重ねるのが僕の毎日。
 ゴミに真剣にカメラを向けたのは、おそらく今日が初めてではないだろうか。そして、はじめて真剣にカメラを向けたそのゴミは、例によって、僕が思うようには写真に写ってくれなかった。 
 たかがゴミの撮影ではあるが、これまた練習が必要なようだ。

 正確に言うと、はじめてカメラを向けた被写体でも、最初からちゃんと写ることもある。
 だがそれは、過去によく似たタイプの被写体を撮影したことがある場合の話。
 そうして考えてみると、確かに、今日撮影したゴミに条件的に近い被写体、具体的には濁った水に浮いている比較的明るい色の被写体を、僕は過去に撮影したことがないような気がする。

(写真展のお知らせ)
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期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.10〜11(金〜土) マクロツインライトMT-24EX


 キヤノンのストロボ・マクロツインライトMT-24EX用の特注の金具が届いたので、さっそくカメラに取り付けてみた。
 同様の金具は数年前から使用しているのだが、僕の記憶に間違えがなければ、その詳細がわかるような画像をホームページの中で見せたことはない。
 見せなかった理由は、同じようなものを使用している人を見たことがなかったので、わざわざ自分から見せて手の内を明かすこともあるまい、と考えたから。
 だがその後、オリンパスからこれをさらに複雑にしたようなものが発売されたので、今回新しく作った改良品は、紹介することにした。 


 マクロツインライトMT-24EXは、その名の通りマクロレンズに取り付けて使用するためのストロボだ。だから、マクロレンズには専用の取り付け具が準備されていて、それは大変に機能的で完成度が高い。 
 その取り付け具は、ボタン1つで一瞬でレンズに取り付けることができ、他社のもののように、レンズにねじ込む必要がない。
 さらにレンズの下になる部分は平らで、地面の上の生き物の撮影のようなケースでレンズを1センチでも下に下げて低く構えたいときにも、ストロボの取り付け具の厚みが邪魔になることはない。
 なぜ、あとから同様のストロボを発売したよそのメーカーは、このやり方を導入しなかったのだろうか?
 特許なのかな・・・。


 また、ストロボの本体は、カメラに取り付けた際に前に傾いている。だから、アングルファインダーを取り付け、それをのぞきこむ場合にも、ストロボの本体がおでこにぶつかり邪魔になることがない。
 そしてあと1つ追加すると、キヤノンのアングルファインダー(アングルファインダーC)は、他社のものと比べると、ずば抜けて見やすい。
 いったい誰がこうしたアドバイスをキヤノンに対してしているのだろう?このストロボシステムの気の利き方は、良くできているを通り越し、感動すら覚える。
 ただ、マクロレンズ専用のストロボだけに、その他のレンズではこのストロボを使用することが出来ないので、特注のストロボ取り付け具が必要になるのだ。
 


 今回、特注で作ってもらった金具は、まだ未完成であり、あとは塗装を施すことになっている。

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2009.7.9(木) 雨の日


NikonD3X Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D

 先週、雨の撮影に夢中になっていたら、その間に、撮影用に飼育している金魚が体調を崩してしまった。
 金魚は、梅雨時の雨の日に、恐らく晴れた日との温度差から、調子を崩すことが多い。
 調子を崩した時には、塩を入れることになっている。
 塩の量は、飼育水が0.5%の食塩水になるように。0.5%の塩水というと、かなり薄い塩水になるのだが、実際に塩を投入しようとすると量が思いの他多く、一般的な水槽であれば、塩が茶碗一杯くらいにもなり、はじめて塩を入れるときには、こんなに入れて大丈夫か?と不安になったものだ。
 がともあれ、魚が調子を崩して間もない場合、塩はかなり効果がある。
 魚のような生き物は、いったん調子を崩すと、みるみるうちに弱っていく。だから、塩を入れるにしても早期発見が一番。
 が、先週は雨の撮影でそれができず、今年生まれた稚魚を数十匹と、昨年家で生まれた一番いい魚を一匹死なせてしまった。
 発見が遅れた場合は、1つの容器に入っている魚が全滅してしまうことだってある。

 今日も、1つ調子を崩しかけている容器があったのだが、今回はちょうどスタジオで写真を撮っていたのですぐに気付くことができたし、午前中に塩を入れたら、夕刻にはいつも通りの泳ぎにもどっていた。
 今日、調子を崩しかけていた容器には、重要な魚が入っていただけに、冷汗をかいた。
 それは、これから1〜2か月をかけて、色が稚魚の時の黒から、鮮やかな金魚の色へと変化する様子を継続撮影する予定になっている魚だ。

 生まれてしばらくは黒っぽい金魚の稚魚が金魚が色変わりする様子は昨年も撮影を試みたのだが、ことごとくうまくいかなかった。
 まずは、狙いをつけた魚が思ったような色になってくれなかった。具体的には、金魚らしい赤っぽい魚になってほしいのに、白くなってしまう魚が多かった。
 今年狙いをつけた上の画像の魚は、これまでの様子からすると、おそらく赤になると思う。いや、お願いだから、真っ赤に育ってほしい。


NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

 昨年うちで生まれた魚たちは、いろいろな形や色に成長しており、それらはなるべくたくさん写真を撮っておきたいのだが、油断をしているといつ病気で死なせてしまうかわからないことを痛感させられたばかりだから、一匹ずつ今日は池から取り出しては写真を撮ることの繰り返し。とにかく急ぎ写真を撮っておくことにした。

(写真展のお知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催します。是非、御覧ください。
期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.8(水) 考える時間

 念願かなってようやく認められた企画。今回出版されることになった数冊の本がすべて揃うのは再来年の春であり、まだまだ時間があることは、先日も書いた。
 それまでにいったい何をすべきなのだろうか?
 企画が通り興奮が絶頂に達し、とにかく張り切っているところで、それをじっくりと考えてみたかったのだが、ここのところは撮影の仕事が忙しく、そうした時間が得られず、ちょっとばかりもどかしかった。
 今日はようやく、考える時間ができた。
 まずは主題の確認。そして、副題になるものは何かの確認。
 さらに、それらの主題や副題をより明快にしていくためには、どんな写真が必要なのかについて考えを巡らせる。
 そして、その本が売れるためには、何が必要なのか?
 実は、今日は数冊分すべてについて、それを検討する予定だったのだが、結局1冊分が終わったところで頭が飽和し、作業ができなくなった。
 まだまだ時間があるにもかかわらず、武者震いがして、言いようのない焦りを感じる。が、落ち着いて、まずは自分の心の中で主張をしっかりと整理することが先決であろう。

 今回の企画に関しては、自分一人で完成させることができそうもなかったので、友人である凹山さんに、編集・構成・イラストをお願いした。
 すると凹山さんが、見事にそれを完成させてくださった。凹山さんが作ったものを見た出版社の編集者も大変に驚かれ、
「えっ、何々これ?これっていったい誰が作ったの?」
 とその才能とレベルの高さには感心しきりだったし、本は、すでに出来ているとも言えるのだが、
「それが幼稚なものに感じられるくらいに、さらにさらに完成度を高めよう!」
 と、先日誓い合ったばかりなのである。

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期間  7/1〜8/30
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.7(火) tamrac752

 僕は、フィルードに出て、そこそこの距離を歩きながら写真を撮るタイプなので、カメラを入れるバッグは、肩掛け式のものよりも、リックサックタイプのものを使うことが多い。
 そして僕のお気に入りのカメラバッグは、tamrac752 。
 僕と同じようなスタイルで写真を撮りたいという人が、僕が tamrac752 を使っているのを見ると大抵、
「いいね〜このバッグ。」
 と口にする。名作だと思う。

 tamrac752は自立をするので、ザックを背中からおろしたら、そこらにポンと置くことができる。その点、多くのリックサックタイプのカメラバッグは、縦に長いため、立てて置くことが出来ないものが多く、木にもたれかからせたり、または、寝かせて地面に置かなければならない。
 が、そうすると、背負う部分が汚れたり、雨降りの日などはひどく濡れてしまう。
 また、渓流での撮影の際には、切り立った岩場などでは足場が狭くて荷物を置くスペースが十分に確保できない場合もあるが、そんな場所では、自立するバックは置場が狭くて済むので、実に重宝する。
 そして、背中に背負うタイプのザックとしては、機材がたくさん入るのもイイ。リックサックタイプのものは、体積の割に、意外に量が入らないものが多い。
 ただ数少ない弱点は、腕を通す部分がほつれ易いことと少々高価なこと。さらに、ジッパーが少しだけ弱い。
 もしも価格が安いのなら、ほつれたら買い直せばいいが、定価で50000円を超えるこのバッグは、ホイホイ買う気にはなれないのである。





 さて、うちには古くなってほつれたり、壊れた tamrac752 が2つほどあるのだが、このバッグを修理してくれるとことはないものか?と探してみたら、こんな会社が見つかった。
 そこでさっそく修理を依頼したら、
「うちの職人さんは腕がいいので、任せておいてください。」
 とのこと。
 修理の期間は約10日で、先日修理品が届いたのだが、低価格で、実に見事な仕上がりだから大感激!
 嬉しいなぁ。

 ちなみに、今市販されている tamrac752 は、今回僕が修理したものに比べると、腕を通す部分に車で言うならバンパーのような構造が付け加えられており、ほつれにくいような作りになっている。さらに、材質も変わり、より防水性能が高くなっている。
 一方で、材質の見た目がプラスチックっぽく、安っぽいようにも見える。

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内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.5〜6(日) 感無量(後編)

 以前、昆虫写真家の海野和男先生から、
「武田君は本を出しても、それを送ってこないから、どんな仕事をしているのかがわからないじゃないか!」
 と言われたことがあるのだが、送らなかったのではない。送れる本がなかったのである。
 これまで自分が作った本が、手抜きをしたとか、気に入っていないというのではない。
 僕はこれまで、本作りの際には極力自分を抑え、発言をしないようにしてきたし、自分を表すことよりも、こんな写真が欲しいと編集者から求められる写真を、まずはちゃんと撮ることを最優先にしてきた。
 プロは、まず第一にニーズにこたえられる技術を持っていること、と考えていたのである。
 が、そうして作られた本は、僕がカメラマンとして、歯車の一枚として本作りに参加したということであり、僕の作品とは言いづらかったので、先生に本を送ることができなかった。海野先生がプロの写真家に求めているレベルは、単なる写真の技術者ではないことは、よくわかっていたから。 
 ただ、僕は天才肌の人間ではないので、手順を踏まなければならなかった。だから、まずは技術1点にこだわった。
  
 さて、実は以前、目下の仕事として、カタツムリの図鑑を作ってみたいなぁなどと真面目に考えたことがあるのだが、よくよく考えてみると、カタツムリの図鑑は、全国の愛好家に声をかけ、たくさんの人の写真をかき集めてくればできてしまう。
 それを、たった一人の人間がやったとするならば、それはそれで値打ちがあるとは思うが、その結果何か新しい世界が切り開けるのか?と言うと、ちょっと訳が違うように僕には感じられた。
 それは、新しい世界を切り開くのではなくて、まとめなのだと思う。
 まとめはまとめで、とても大切なことだと思う。でも、僕はプロとして不可欠な技術を習得したその次は、その技術を使って何か新しい世界を切り開きたい。
 もちろん、カタツムリの図鑑を作る機会があれば喜んで引き受けるだろうと思うが、それは僕の仕事の本筋には成りえないに違いない。
 では、ただ新しければいいのか?と言うと、そうでもない。
 僕は、これから先、かなり長い期間を自然写真の世界で暮らすのだから、一発屋では困る。だから、新しいのと同時に、そこからさらなる展開が次々と見えてくるようでなければならない。
 ともあれ、今回の企画が認められたことで、僕はようやくスタートラインに立てたような気がする。

 本は数冊セットであり、すべてが揃うのは再来年の春になる予定だ。まだまだ1年以上の時間があるので、その間に本作りを徹底して勉強したい。
 そして、何とかして、売れる本に仕上げたい。

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内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.3〜4(金〜土) 感無量(前編)

 自然写真家と言ってもいろいろなスタイルがあり、中には副業を持っていて、自然写真だけで生活ができなくてもいい、と考えている方もおられる。生き物の調査のような仕事に携わり、それでそれなりの収入を得ていて、経済的には、むしろ写真の方がついでというようなスタイルの方が、結構おられるようだ。
 おそらくそうした人たちにとって、研究や調査も写真と同様に重要な活動であり、写真だけで生活をする必要はないのだと思う。また、ちゃんとした会社や組織に就職をした上で、プロの写真家として活動している方もおられる。
 時々、
「自分も写真家になりたい。」
 という方からお便りをもらったりするのだが、写真家になりたいと思う人は、自分が何をしたいのか、まずははっきりさせる必要がある。その内容しだいでは、フリーの写真家になるよりも、勤めていた方が有利な場合だってあるだろうと思う。
 たとえば、日本中のゲンゴロウを網羅した大図鑑を作りたいと考えているならば、それはおそらくフリーのプロカメラマンにはできない作業だ。オタクなゲンゴロウの写真にニーズがあるとはまず考えられないし、そんな本を出しても利益が出るとは考えにくいし、ゲンゴロウの大図鑑を作るのであれば、自費出版か、それに近い採算度外視のスタイルになるに違いない。
 が、生活費を稼がなければならないフリーのプロカメラマンに、それだけのことをする時間的なゆとりは、なかなかないのである。
 一方、僕の場合は、写真でお金を稼ぐことにこだわっている。僕は、プロ中のプロ、と言われるような写真家になりたい思いが強い。
 そして、それはそれなりのやり方を考えなければ、なかなか自然写真でまとまった量のお金を稼ぐことはできない。もしも純粋に写真だけで生活しようと思うのなら、まずは、それなりの大きさをもった市場で仕事をしなければならない。
 つまり、それなりの大きさのテーマを設定しなければならない。
 
 さて、その大きな市場を求め、自分なりに大きなテーマを設定したのが、何年前のことだっただろうか?
 僕は以前、昆虫写真家の海野和男先生と一緒に、『 都会にすみついたセミたち (虫から環境を考える) 』という本を作ったことがあるのだけど、海野先生の下で本作りに携わっている最中に、自分なら自然をこう見る、という思いがおのずと込み上げてきて、それをそのままテーマに設定したのである。
 そしてそのテーマが、ついに企画として認められた。だから、余程のアクシデントがない限り、それが形になることが決まった。
 企画はそれなりの大作であり、僕の同世代〜10歳くらい上の人たちを眺めてみても、同程度のスケールの本を作った人は見当たらないような気がする。
 ああ、感無量! 
(後編へ続く)

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内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

 

2009.7.1〜2(水〜木) 続・超撥水


CanonEOS5D EF70-200mm F4L USM

CanonEOS5D EF70-200mm F4L USM

 先日買ったばかりのカメラバッグ、超撥水を売りにしているやつの中に撮影機材を収め、雨の中での撮影に挑んだ。
 が、残念ながら超撥水はあまり機能せず。撮影終了後に確かめてみると、雨が激しかったこともあるが、バッグ内部にはそれなりの量の水がしみ込み、しっとりと湿っていた。
 畜生・・・せっかく買ったバッグなのに・・・・お金が無駄に・・・。
 が、さまざまな出費は授業料のようなもの。
 また、僕はお金をけちるのはあまり好きではない。いい写真を撮るためには、それなりの出費が必要になるのは当り前のこと。さらに、僕は自分が時間とお金をかけて撮ったいい写真を使ってもらいたいと望むのと同様に、人が時間とお金をかけて作ったいいものを買い、所有したいと思うのである。
 
 それはともあれ、超撥水という割には、あまりに水に弱いのではないか?一層のこと、バッグの表面をすべてビニル加工してしまえばいいのではないか?カメラバッグに通気性って、必要なのかな?
 いや、ちょっと待てよ。ビニルで全体を覆われているようなバッグなら、カメラバッグにこだわらずにビニル製の入れ物にカメラを入れればいいじゃないか!
 そこでさっそく釣り具屋に向かい、980円のバッグを1つ購入。そのバッグの中に、カメラバッグ用の仕切りを入れ、カメラを入れるための準備を整えた。
 次回、雨の撮影の際に試してみようと思う。

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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2009年7月分


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