撮影日記 2003年05月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ

05月31日(土)

 今週は月曜日からずっと、スタジオで子供の本向けの小動物の撮影をしている。来週も同様のスタジオ撮影を予定しているが、再来週は宮崎で4〜5日間、ホタルの撮影を計画している。
 ホタルは夜間に撮影するが、写真は月の光の影響を受け、月光の明るさは月齢によって変化するので、月の出の時間と月齢も含めて考えたあげく準備をした計画だ。
 その宮崎に出かけるためには、明日〜来週にかけてのスタジオ撮影の仕事を順調にこなさなければならない。スタジオ撮影の出来次第によっては、宮崎に行けなくなってしまうので、明日からの撮影が正念場になる。何とかしたい。

 スキャナーの故障のため、5月分の「今月の水辺」は更新できません。
  
  

05月30日(金)
 時々、アマチュアの方が撮影した写真を見て、「これは敵わない!」と脱帽させられることがある。
 「嘘だ!それならプロなんていらない」と思う人もいるかもしれないが、何か1つ被写体に的を絞って撮影することに関しては、アマチュアの方が有利であることも少なくない。
 プロのカメラマンが、たくさんのシーンを撮影しなければならないのに対して、アマチュアなら、一年中、自分の好きな場所に通い詰めてもいい。プロが効率よく撮影しなければならないのに対して、一枚にかけられる時間は、アマチュアの方が長い。
 僕はある年の冬、2〜3ヶ月間、徹底してカワセミを撮影したことがあるが、その年以降、もう7〜8年、カワセミを撮影する機会はない。すでに写真を持っているカワセミよりも、他に写真が手薄な生き物を撮影したり、撮影依頼のあった生き物を撮影しなければならない。
 それに対して、アマチュアの人の中には、10年以上カワセミを追い続けているような人がいる。1つの被写体との付き合いが長くなればなるほど、自然はすごい瞬間を見せてくれるし、そんな時、プロはアマチュアに歯が立たない。

 今日は、僕が所属する日本自然科学写真協会(SSP)の出版物を紹介したい。
 本は、SSPの会員による約150点の写真と、SSPが一般に公募をした写真の中から入賞した16点で、画像のページは一般公募の大賞。蛇がコゲラを呑み込んでいるシーンだ。
 SSPの中には名の知れたプロの写真家も少なくないが、有名な先生方の写真よりも、文句なしに、一般公募の大賞がすごい。
 僕は、以前野鳥専門の写真家になろうと考えていた頃があるので、作者の解説をとても興味を持って読んだが、コゲラの巣立ちを撮影するつもりで偶然に捉えた写真らしい。
 この写真のように、偶然の要素が大きく、計算して撮れない写真は、仕事としては成り立ちにくいし、僕も、技術と自然に対する知識があれば計算して撮れる写真を狙う傾向が、年々強くなっている。だが、無駄な時間なく、狙って写真が撮れるようになればなるほど、ものすごい偶然との出会いは減っているような気がする。

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05月29日(木)  虫を飼育観察中
 撮影中の虫について詳しくなるために、飼育しながら観察を続けている。飼育といっても、バットの中に土を入れ、逃げられないように柵を作り、餌を入れているだけだが、それを玄関の下駄箱の上に置いている。
 先日、そのための土を庭から取り、バットに入れ、事務所の屋外に置いていたら、猫がその中に糞をしてしまった。きっと、トイレと間違えたのだろう。
 慌てて室内に移し、夜中に覗き込んでみたら、今度は、ゴキブリの赤ちゃんがたくさん入り込んでいた。このまま時間が経つと、事務所の中がゴキブリの巣になってしまう危険性があるので、「ゴキブリキャップ」という、ゴキブリ誘引殺虫剤を置くことにした。
 生き物の撮影でも、スタジオ撮影は簡単だ思われがちだが、やってみると本当に思いもかけないトラブルばかりが起こる。

 以前、カタツムリの孵化の写真を貸し出した際に、「子供が2匹写っている写真はありませんか?」と求められたことがある。残念ながら、そのような写真はなく、生まれたばかりの子供が1匹だけ写っている写真を貸し出した。
 今日は、ちょうど撮影用に取っておいた卵が孵化を始めたので、卵の上を孵化したばかりの子供が2匹で歩いている写真を撮影した。
 僕が撮影に使っているカタツムリの生まれたばかりの赤ちゃんは、殻の直径が2ミリ程度で、撮影の対象としては小さくてむずかしい方に入る。ミリ単位の生き物をカメラの中で拡大してみると、日頃僕たちが見ている大抵の動物たちよりも遥かに動きが大きくて、あっという間に、カメラのフレームの中から出て行っていまう。

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05月28日(水)  

 先日、レンズを中古で探したが手頃な物が見つからなかったと書いたら、「うちの近くのお店で見かけましたよ」と、メールをいただいた。お店に問い合わせてみたら、レンズは僕が使用しているシリーズとは別のもので買うことはできなかったが、どこかで、誰か自然が好きな人が、僕と同じように生き物に興味をもち、そして僕のホームページを訪問してくださったという実感があった。
 もしもホームページがなかったら、恐らく出会えないであろう人の息づかいが感じられることがある。そんな時、ホームページを作って良かったなと思う。

 そう言えば、今年の1月に北海道で一緒にハクチョウを撮影した写真家の門間君も、このホームページがきっかけで友人になった一人だ。
 屈斜路湖の岸辺で、僕は、ハクチョウが次々と飛んでくる様子に、門間君は、飛んでいるハクチョウにはほとんど興味を示さず、湖に浮いているハクチョウの群れにカメラを向けていたが、僕には、門間君がカメラを向けているその場所にシャッターチャンスがあるようには思えず、何を撮影しているのかが分からなかった。
 しばらくして彼のホームページを見ると、その時に撮影された写真が掲載されていたが、群れの中で、カメラの方をじっと見ている若鳥の写真だった。僕が考えもしないようなシーンだった。ハクチョウと言えば、やはり飛んでいる写真や優雅な写真にニーズがあり、僕がそんな売れそうな写真を撮ろうとしたのに対して、門間君は自分が撮りたいものを、自分のスタイルで撮ろうとした。
 プロの写真家はニーズに応えなければならないし、なるべく多くのニーズに応えるために、売れそうな定番のシーンを一通り撮影しておいた方が手堅い。僕は「水辺の生き物」というテーマの中で、そんな定番を1つ残らず撮るつもりで我武者羅に撮影してきたし、それだけに、僕には門間君の撮影スタイルが印象に残った。

 今日は、一昨日に引き続きスタジオで撮影をしているが、スタジオではその気になれば一日中写真が撮れる。その結果、これでもか!これでもか!と、一種類の生き物に対して、図鑑的な写真〜イメージ写真まで、あらゆるシーンを撮ろうとしてしまう。
 ただ、何もかも撮るという思いが強過ぎて、時には、逆に億劫で、手が動かなくなってしまうこともある。今シーズンは、特にそんな傾向が強いので、「これは撮るけど、これは撮らない」という取捨選択をして、ちょっとばかり自分のスタイルを出してみようかな?と最近考えるようになった。
 今日は、ふと門間君が撮影する様子を思い出し、いろいろなやり方があるものだなと改めて感じた。

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05月27日(火)  タンポポの綿毛
 昨日に引き続き、虫の赤ちゃんの撮影をした。今日は、タンポポの綿毛の茎の部分をよじ登るシーンの撮影だ。
 画像をみて分かる通り、とても細かい作業で、デジカメで日記用の画像を撮るのも一苦労。日記の画像は、小さく撮影したものの一部分を拡大したものだが、この綿毛と虫の赤ちゃんのシーンを645版のカメラでフィルムいっぱいに写し込むのが、今日の仕事だ。
 このワンシーンのために、合計で50枚以上の写真を撮影したが、小さくて、しかも動きまわる被写体の撮影ではピント合わせがむずかしい。日頃僕は、ピント合わせでそれほど苦労する方ではないが、今回ばかりは50枚以上撮影しても、あまり自信がない。

 最近、基本って大切だなと思う。例えば、生き物の写真を撮るのであれば、その生き物のいい表情を捉えることは基本だ。
 どんなにむずかしいシーンを撮影していても、同時に、いい表情を捉えることを忘れてはならないし、たとえ、被写体が小さく、ピントを合わせることでさえむずかしくても、基本は基本なのだ。
 そういう意味で、今回は50枚の中に、ピントがよく合っていて、虫の表情がすばらしい写真が2〜3枚あればいいかなと思う。

 今僕が撮影している虫は、比較的最近、2冊の写真絵本が発売されている。いずれも力作で、一通りの捉え方がその中で出尽くしている印象を受けたが、その2冊となるべく重ならない内容の写真を撮りたいので、僕の今回の仕事は、「童話調」のやさしい雰囲気に撮ってみようかな?と考えている。
 自然写真家が見て、「いいね〜」というような写真よりも、童話作家が見て、「これを原作にお話を書かせてください」と言ってくれるような写真を撮りたい。

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05月26日(月)  青いアメリカザリガニ
  今日は、夕方の時点で、合計で6本のフィルムをスタジオで撮影した。スタジオでは16枚撮りのフィルムを使っているので、一般的な36枚撮りのフィルムに直すと半分の3本程度になるが、それでも、一応、仕事をしたなと感じる量だ。
 今日の主な被写体は虫の赤ちゃんで、長さが1ミリ程度。さすがに小さくて野外では撮影が不可能。そこで、スタジオに持ち込んでみたが、とても目が疲れる。撮影の途中でふ〜とため息をつくと、虫の赤ちゃんをのっけた枯葉ごと、勢いですっ飛んでしまった。

 ここのところ、なんとなく充実していないような不安感を感じるが、僕の場合、複数の仕事が重なっているいる時にそう感じることが多い。
 ちょうど、いろいろなものを撮らなければならない時期なので、そのやり繰りで気持ちが安らがないのはある程度仕方がないが、今日は虫の赤ちゃんの撮影の他に、短時間で終わる撮影を幾つかまとめて片付けることにした。
 まずは青いアメリカザリガニの撮影。
 昨年の秋に生まれたアメリカザリガニの中の1匹が大人になるにつれて青くなってきた。これは遺伝や突然変異ではなく餌に原因があるらしいのだが、資料として撮影をしておこうと育て続けてきた。青いザリガニの写真がバカスカ売れるとは思えないが、僕が引退するまでに1〜2度は多分売れるだろう。僕は、まめな性格ではないので、資料的な写真を撮っておくのがとても苦手だ。
 このアメリカザリガニは、このまま、青いまま維持する予定にしている。
 昨年は、子供が生き物の世話をしている様子を撮影する機会があったが、今年も同じような仕事があるに違いないし、そんな時、子供に生き物をプレゼントすると、とてもいい顔をしてくれる。
 青いザリガニは、子供にとってとても魅力的だろうし、そんな機会のために取って置くことにしよう。  
  

05月24〜25日(土〜日)

 昨日〜今日の九州は、荒れ気味の天候になった。昨日は晴れのはずの天気が曇りで台風並の強風に、今日は、その風に加えて、午前中を中心に雨が降った。
 九州の天気予報って、本当に当たらないな〜。
 今回の取材では、魚釣りを水中から撮影するつもりだったので、釣りをしてもらうために応援を頼んだ。その結果、平日に自由に動ける人の心当たりがなく土曜〜日曜日の撮影になったが、やはり休日は人が多い。
 僕が撮影をする場所は、日頃から人が少ない場所を選んであるので、土日でも撮影そのものには大した影響はないが、食事や温泉に入ろうとすると、あまりの人の多さに逃げ出したくなる。時々、
「温泉に入ったり、いろいろな場所を旅行できてうらやましいですね〜」
 と言われるが、僕は、どちらかというと自宅が好き。
 風呂も狭くてもいいから、好きな時間に好きなように入れる方がいい。ただ、僕の場合は、車で寝泊りをしながら取材をする都合上、仕方なく温泉施設や食堂を利用するが、多くの人はリラックスするためにそこに出かけているはず。こんな人ごみの中で、みんなはリラックスできるのだろうか?と、他人事ながら心配になる。
 魚釣りとあと1つ予定していた田んぼの定点撮影の方は、まだ田んぼに水が入っておらず、また来週出直してみることにした。ちょうど農作業をしているおじいさんにたずねてみたら、来週の日曜日に川の水をせき止め、それから田んぼに水が入るのだそうだ。

 ギャラリーに新しいページを付け加えました。
 今回は、風景的なページですが、光の具合や物の形などの美術的な美しさではなく、生き物の美しさを捉えようとした写真を選びました。是非、ご覧ください。  
  

05月23日(金)

 今日は移動日。明日、明後日は熊本で撮影する。ちょうど定点撮影中の田んぼに水が入る頃なので、そのついでにあと一泊して、水中から魚釣りの取材をすることにした。
 田んぼの方は曇り、水中撮影の方は晴れがいい。明日は晴れの予報なのでまずは水中で、明後日からは曇ってくるはずなので田んぼで撮影をする予定だ。

 僕は、野鳥の撮影や水中撮影〜スタジオでの撮影まで、大抵のカメラマンよりもレパートリーが広い方だと思うが、幅広く撮影をするためには、それらを上手くやり繰りしなければならない。
 そのために大切なことは、天候に応じて、上手く股をかけて撮影対象を決めることだ。僕は昔から二股が得意なので・・・というのは悪いジョウダンだが、例えば、晴れの日が適した撮影と曇りの日が適した撮影とは両立できる。
 撮影の二股は、恋愛の二股と違って誰かに恨まれるわけではないし、じっと何も撮影せずに待っている時間は撮影のリズムを狂わせることもあるので、なるべく時間が遊ばないように心がけている。  
  

05月22日(木) ワンダーブック6月号(世界文化社)
  もう10年くらい前のことになるが、新潟の瓢湖で、野鳥写真の第一人者・叶内さんに出会い、
 「野鳥の写真を撮りながら全国を回ってるの?」
と話しかけられたことがある。叶内さんの奥さんのお里が瓢湖の付近で、夏は、ほとんど毎年、瓢湖で撮影をして過ごされるらしい。
 色々な話を聞くことができたが、
「写真を売りたいのなら、女性が見て、わ〜!可愛い!と言うような一枚を撮らないとね」
 とおっしゃったことが、特に僕の印象に残った。
 それから身の回りの女性を思い浮かべてみたが、生物学出身の僕の知り合いとなると、女性は女性でも若干趣が違う(ゴメンネ)。
 ある女性は、顕微鏡をのぞいて、「わ〜可愛い」と声をあげる。またある女性は、ホヤをいとおしそうに見つめる。そういえば、教養部の農学の授業で牧場を見に行った時に、先生の説明をよそ目に、足元の草をムギュと抜いて馬に与えはじめた女性もいたな・・・ そんなイメージしか僕の頭の中にはなく、女性は女性でもいろいろあるという結論に達した。
 
 昨日、ワンダーブックの6月号が届いた。冒頭の8ページが僕の写真で構成されている。
 この本を担当された村田さんは、僕の第一印象からして、「女性が見て、わ〜!可愛い!」の「女性」のイメージにピッタリ。その村田さんが、
「これ、ワンダーブックで使いたいですね」
 と僕の写真を評価してくだされば、
「この写真は売れるぞ〜」
 と僕の胸は高鳴り、大金持ちになれるような気がした。
 20日の日記で掲載した「かがくランド」とは、かなりイメージが違うことがお分かりかと思うが、ワンダーブックの方は、可愛い雰囲気に仕上がっている。
 それが、僕のイメージと違って気に入らないのでは?と、当の村田さんは心配をされていたが、小さな小さな子供向けの本なので、可愛く、甘く、やさしく!という編集者の徹底した意図がはっきり汲み取れ、気持ちがいいものだなと僕は感じた。 
  

05月21日(水)

 今日は、スタジオでの撮影の日。来年出版される本のための写真を撮影した。生き物の撮影でも、求められるシーンによってはスタジオで撮影をすることがある。
 例えば、昨日の日記のアマガエルがジャンプしている写真などがそれ。アマガエルがジャンプする速度は大変に速くて、自然の光では写し止めることができないので、特殊な人工の照明を使う。
 そこで、室内に自然を模したセットを組んで撮影をする。他にも、いろいろな技術的な理由で、スタジオを使うことがある。

 スタジオでの撮影は、細か〜い作業なので、時々休憩をいれながら撮影をする。でなければ、精神力の弱い僕は発狂してしまうだろう。
 今日は、休憩時間に、キャノンのデジタルカメラに使用するレンズをインターネットで買おうと探し回ったが、手頃なものが見当たらなかった。
 日頃、スタジオで、本番撮影前の試し撮りに使うデジタルカメラは、オリンパスのE-10を気に入って使っているが、バッテリーの管理がキャノンのD30の方がやり易く、自然とキャノンの方を使うようになってきた。ただ、スタジオで使い易い焦点距離のレンズを持っていないので、50ミリのマクロレンズを買おうかな?と急に思いついた。
 キャノンの50ミリマクロレンズは、それはそれはボロっちい作りで、定価も安い。新品がディスカウントで2万8千円くらいなので、それを中古で買ったら1万円くらいか?と、探してみたが、そんなに甘くはなかった。ボロくて人気がないので品数が少ないのだろう。
 一番安いお店が1万8千円だったので電話をしてみると、「中古は品切れだが新品ならある」という。そのお店は、いつも同じ返事が返ってくるので、きっとそうして新品を売っているのだろうか。どこかに埋もれていないかな?  
  

05月20日(火) かがくランド 6月号


 かがくランド(世界文化社)6月号が届いた。全26ページ中、3ページ(田んぼの写真)を除いて僕の写真が使用されている。
 この本の中では、合計で45枚の写真が使われたが、最初に準備された絵コンテの中では、もっと多くの写真が使われる予定になっていた。それを、
「写真の質がいいので、質の良さを生かしましょう!」
 と、編集の清水さんが写真の点数を減らし、一点一点を大きく載せる決断をされ、今日の画像のように、見開きで大きく写真が掲載された本に仕上がった。
 写真の大きさに関してちょっと比較を書くと、岩合光昭さんの写真集に「セレンゲティー」という大きなサイズの本があるが、その中の1ページを占めるライオンの写真よりも、僕の見開きのアマガエルの写真の方が大きい。迫力満点だぞ〜。

 それにしても、「写真の質がいいので、質の良さを生かしましょう!」という言葉にのせられたまま、ちょうど今、来年度の本のための撮影に取り掛かっているが、すご〜くいい写真が撮れるような気がしてくるから僕も厚かましいな。 
  

05月19日(月) スイレン鉢
 ザリガニに脱皮をさせると昨日書いた。
 ちょっとインチキ臭いが、ザリガニを手で押さえて、殻を少しだけそっとはがしてから撮影すると脱皮の撮影ができる・・・冗談冗談。
 僕の事務所には撮影用の水槽が3つある。その中の1つには水草が植えてあり、エビを10匹くらい放している。水草には苔が生えやすいが、エビを入れておくとことごとく苔を食べてくれる。
 そのエビたちが、時にいっせいに脱皮をすることがあり、同じような条件を整えてやるとザリガニも脱皮をするのでは?と考えたのだ。
 今日は、時々ザリガニの様子を見ながら一日待ったが、ザリガニは脱皮をしてくれなかった。エビの方が元々頻繁に脱皮をする生き物なので、エビのようにうまくはいかないだろうなと思ったが、あと何度か同じことを試してみたい。

 待っているだけでは時間がもったいないので、事務所で飼育している生き物たちの世話をした。事務所の片隅に置いてあるスイレン鉢の水を抜き土を取り出し、新しい土を入れ、植物を植え替えた。今までは鉢に直接植物を植えていたが、水を抜いたり、土をすくったり、魚を取り出したり・・・毎年の植え替えが大変なので、鉢の中にちょっと小さな鉢を入れ、来年からは、中の鉢を取り出して植え替えをすることにした。
 スイレン鉢の隣にある赤い蓋をした植木鉢は、ダンゴムシやワラジムシやハサミムシ・・・などが入っている。別に飼っているわけではない。この鉢の中に、生き物たちに与えた餌の残骸や、死んでしまった生き物を入れておくと、見事に分解してくれる。
  

05月18日(日) 

 撮影用のアマガエルを採集するために山口県に出かけた。撮影のモデルになってもらいたいのは、上陸したばかりの小さなアマガエルだ。
 小さなアマガエルは、もしもタイミングが合えば、用水路の壁面などに無数にくっついているので簡単に採集できるが、そうでなければ目立たなくて採集は難しい。そこで、今回は上陸直前のオタマジャクシを採集して、飼育をして小さなカエルに育てようと思ったが、1週間から10日くらい早すぎたようだ。オタマジャクシは、ほんとうに小さなものしか確認できなかった。

 ついでに、豊田という小さな町に立ち寄り、ホタルを撮影するための下見をした。豊田はホタルの名所だが、撮影するのには今一かな?という印象。
 帰宅後は、事務所で明日の撮影の準備をした。

 明日は、うまくいけばアメリカザリガニの脱皮を撮影したい。これまでも偶然に脱皮しかかっているアメリカザリガニを見つけて撮影したことがあるが、今回は、ちょっとばかり工夫をして、脱皮をさせてみる試みだ。
 ザリガニではなく、他のエビを飼育していて、脱皮をする条件が多少わかってきたので、それをザリガニに応用してみたい。正直に言って、明日はうまくいかないかな?と思うが、最終的には要領がわかるような気がしている。
 何事もチャレンジしなければ始まらない。
  

05月17日(土) 姫スイレン
 4月6日の日記の中で、僕の写真が掲載された本のページを紹介したが、その中のアマガエルの写真はうちの庭で撮影したものだ。
 庭にはビオトープ(自然を再現した人工の小さな池)があり、毎年その中にアマガエルが産卵をする。産卵を間近に控えた雨の日は、数匹のカエルが集まってきて、「クワッ、クワッ」と、うるさいほど大きな声で鳴き続ける。
 昨年はそうやって撮影したアマガエルの写真をたくさん使ってもらった。その結果、お勧めできる未使用の写真が少なくなってきたので、今年は、また新しい写真を撮影しようと思う。そこで、今朝から土の入れ替えをして、肥料を加え準備に取り掛かっているが、新しくスイレンを2株加えることにした。

 僕がビオトープを作るきっかけになったのは、花屋さんで売れ残り、安売りされていたスイレンを見つけたからだ。季節外れだったし、もう枯れてるんじゃないの?と思えるほどカラカラでボロボロだったが、土に植え込むと、あっという間に大きくなった。
 他にも、ガガブタという水辺の植物を採集してきて植え込んだ。町のど真ん中にあるうちの庭にイトトンボがやってきた。さらに、アサザを植え、スイレンやガガブタやアサザの花と一緒にアマガエルを撮影した。
 昨年ある出版社に写真を売り込みにいったら、本のページを広げられ、
「これはあなたの写真ではありませんか?」
 と、僕がビオトープの中で撮影した一枚の写真を見せられた。
「この写真撮った人に会ってみたいねとみんなで話をしたことがあるのですよ」
 と僕の写真を褒めてもらい、たくさんのチャンスを与えてもらうことができたが、売れ残った一株のスイレンを買ったことがきっかけになった。残り物には福があるのだろう。

 スイレンはこれからが人気の季節なので、今日買った姫スイレンは残り物ではない。レジで値段を聞かされた僕は固まり、気を失いそうになった。
 一株1800円もした。財布の中に入っていた千円札がすべてなくなった。これは丁寧に育て上げ、また稼がんといかんな〜。
  

05月16日(金)

 フィルムの整理をした。この春以降、まとまった量のフィルムを整理したのは今日が初めてだ。
 フィルムを整理していて気が付いたのだが、若干カメラの調子が悪い。撮影した写真と写真の間の間隔(コマ間)が、広かったり狭かったりして、ばらつきがある。
 それから、シャッターが開閉する時間(シャッター速度)に狂いが出ていて、正常な時よりもシャッターの動きが遅くなっているような気がする。シャッターの動きが遅くなると、写真が、本来のそれよりも明るくなる。まだ、どうしようもないほどの狂いではないが、ちょい狂いかけているくらいかな?という程度だ。

 僕は写真を始めた当初からニコンを使用してきたが、ニコンの丈夫さは別格で、これまで故障はもちろん、狂いという程度のトラブルも、ほとんど経験したことがない。
 その後、645版のカメラを導入し、ペンタックスを主に使うようになったが、ペンタックスの方は定期的にメインテナンスに出さなければ、少しずつ狂いが出てくる。
 ペンタックスを使うようになって、一時期世界の報道カメラマンの90%近くのシェアーを占めると言われていたニコンのすごさを実感した。
 ニコンだけを使っていた頃には、カメラの狂いというトラブルを体験したことがなかったので、ペンタックスに初めて狂いが生じ、思っていたよりも明るい写真が撮れてしまった時に、僕は自分の技術の未熟さだと思い込み戸惑った。
 だが、2台持っているペンタックスを比較テストすると、そのうちの主に使用しているカメラが狂っていることに気付いた。それからは、定期的にテストをしたり、狂いが生じるものとしてカメラを扱っている。
 ペンタックスはきゃしゃな分、軽くて扱いやすく、価格も安いので、それはそれでいい。道具の特徴を良く知り、その特徴に応じた扱いをすることが大切だ。
 よくアマチュアの人で、「丈夫だからニコンを使ってる・・・」という人がいるが、週に1〜2度写真を撮るだけなら、今市販されているカメラは、どれも大した違いはないと思う。
 だが、一年に数百本のフィルムを消費するほどたくさん写真を撮ったり、雨の中で頻繁に使用したりすると、丈夫さの違いが出てくる。
 僕は、自然写真なので、それほどにたくさん写真を撮るわけではないが、報道カメラマンのように、桁外れにたくさんの写真を撮る人であれば、ニコンでも狂いが生じるのかもしれない。
  

05月15日(木)

 インターネットが普及し始めた頃、大抵のことがネットで調べられる便利な時代が来るという将来を予測した話をよく耳にした。そして、インターネットがかなり普及してきた。
 だが、何かを調べようと思っても、当初大騒ぎされた程便利ではなくて、
「どこが便利なんだ?」
 と思ったりもした。だが、事務所に高速回線をひき、つなぎ放題の契約をしてみると、
「なるほどな〜」
 と感じるようになってきた。インターネットを本当に活用するためには、高速回線+つなぎ放題の環境が最低限、必要なようだ。パソコンの前に座り、画像をスキャナーで取り込んだりする際の待ち時間に、いろいろなホームページを見ていると、なかなか面白い。

 今日は、一日を使ってフィルムの整理をする予定だったが、結局手をつけずじまい。パソコンの前でごちゃごちゃとやっているうちに、一日が終わってしまった。
 パソコンを扱うと色々な試みができるので、つい、そこに時間を費やしてしまう。以前は、その時間は自分のフィルムと睨めっこをしていたので、自分が撮影した写真をみる時間がめっきり減ってしまった。便利になると、失われるものもある。
  

05月14日(水)

 僕の写真が、写真コンテストのような場ではなく、普通の本の中で初めて使われたのは、昆虫写真の海野先生の本の中だった。一緒に撮影に連れて行ってもらった時に、僕が撮影した海野先生の顔写真が、「昆虫の擬態」という本の中で使われ、
「ちょっとシャッター押してよ」
 と言われて撮った写真だったが、印刷物になったことが、とても嬉しかった。
 初めて自然写真の仕事をもらえた時も、嬉しくてワクワクした。だが、その仕事を終え、
「じゃあ、これも撮ってみてよ!」
 と、さらに新しい仕事をもらえた時には、嬉しかったけれども、苦しくなった。
 最初の仕事は、「仕事をください」と自分から求めたが、次の仕事は、「これやってみてよ」と一転して与えられる立場になった。与えられ、そのニーズに答えなければならない時のプレッシャーの大きさは、僕が想像していた以上で、「仕事って辛い」と思った。
 仕事をもらえたことを、どこか恨みたくさえなった。無意識のうちに、その仕事から逃げるための理由を考えもした。
   ギャラが割りに合わないから・・・
   僕の一番やりたいこととは、ちょっと違うから・・・
   僕の考え方と依頼された仕事とが合わないから・・・
などと色々考えたが、仕事が終わってみると、すべて僕の被害妄想で、単にプレッシャーから逃げ出したかっただけだと分かった。
 
 来年度の仕事のためのテスト撮影をしたと、12日の日記の中で書いたが、なんとフィルムの感度を間違えていたことに気が付いた。今日は、そのテスト撮影のやり直しをした。
 たかがテスト撮影でも、それが仕事の一部だと失敗はこたえる。
 仕事だからといって、どうしようもなくむずかしい撮影を要求されることは稀で、大抵は、アマチュアでも技術のある人であれば、撮れるレベルの写真が要求されている。フォトコンテストに入賞したアマチュアの写真にもいい写真はたくさんある。
 だが、それを「こんな写真を撮ってよ」と求められ、そのニーズに答える形で、いつでもコンスタントに撮ることはむずかしい。たかだかテスト撮影でも、たくさん撮っていると誰にでもうっかりがあるし、カメラの故障のほか、いろいろなアクシデントがある・・・ 
  

05月13日(火)

 今年の春から定点撮影をしている熊本県の田んぼを見にいった。これまでに、レンゲが咲き乱れた様子と、田おこしを終えたあとの様子の2カットを撮影したが、そろそろ水が入っているかな?と思い、出かけてみた。
 周辺にはヘビやカエルが多くて、何箇所か湧き水をためた池もある。もうしばらくすると、ホタルも姿を見せてくれるらしい。とても気に入った場所だが、撮影ができるのは今年いっぱいか、来年までで、その後は区画整理が始まる。今は小さな田んぼの集合体だが、それらを大きな田んぼにまとめてしまうのだそうだ。
 熊本から福岡の方向に高速道路を走ると、左手に田んぼがあり、田んぼには1本、2本と柿の木があり、春はレンゲがとてもきれいな場所がある。名もない場所だが、九州在住の人であれば、そう説明すると、
「もしかして、あそこ?」
 と、心当たりのある人もおられるだろう。
 
 僕は人物撮影が不得意だが、今年に入って、もう10軒以上の農家のお宅をたずね、農作業を撮影させてもらった。不得意なはずの人物の撮影も、農作業で働いている人の姿は、なぜか素敵な写真が撮れる。素朴に働く人の姿が僕は好きだ。
 写真を通していろいろな方と接する機会がある。農家の方、林業に携わる方、趣味の写真を撮る方、自然保護に携わる方、地域で働くボランティアの方・・・・僕は、いろいろな主張をして人をひっぱっていこうとする活動家タイプの人よりも、素朴に自分の職業に打ち込んでいる人と過ごす時間が楽しい。
 僕自身も、写真家として、人と自然の関わり方を社会に訴えるよりも、もっと素朴に生き物の性質を人に伝えられる職人でありたいと思う。大学に進学するときにも、農学部のような知識を応用して人に役立てようとする学部よりも、理学部を選んだ。知識が人の役に立つかどうかよりも、その前に、まず生き物について知りたいと思った。 
  

05月12日(月)

 今日は、事務所で、10日・土曜日の作業の続きだ。
 10日の日記の中で、撮影用にある生き物を採集したと書いたが、今日は試しに撮影をしてみた。その試し撮りのイメージを編集の方に見てもらい、今後の撮影の予定を組んでいこうと思う。
 ほんの数カット撮影しただけだが、「いける!」という感触があった。 
  

05月11日(日)

 ここ数日晴れの日が続いたが、今日は雨が降るという予報を受けて、昨晩のうちに島根県に移動をした。撮影の予定は一泊のみで、撮影というよりは遊びの旅行だ。
 ちょうど今の時期、キシツツジが咲き乱れる小さな沢があり、沢とツツジの風景に期待をしてでかけたが、今年は花が少なくて、一枚も写真を撮らずに帰宅をした。去年は、花が多かったので、桜のように一年おきに当たり年とそうでない年があるのかもしれない。
 写真を撮ろうとしてみると良くわかるが、沢沿いの植物の多くは、雨で増水をしても大きなダメージを受けないように、水辺からやや距離を置いて生育することが多い。平常の水位の日に、沢と新緑や花の組み合わせで撮影を試みても、なかなか沢の流れと植物とを1つの画面に収めることがむずかしい。
 そこで雨で増水をして、水が植物に迫っている日を狙う。だが、雨量が多すぎると水がにごってしまう。それから、雨が強過ぎると花が痛んでしまう。とても微妙なのだ。 
  

05月10日(土)

 今日は、撮影用にある生き物を採集した。とても身近な生き物だが、過去に1度も撮影をしたことがない。
 写真は25ページ前後の本として、来年の4月に使われる予定だが、その繁殖期が梅雨時だと言われているので、この初夏に撮影しておかなければならない。
 オス、メスの区別もつかなかったので、まず、それを調べることから仕事が始まった。今日は、その生き物を数十匹採集して、オスだけ、メスだけ、オスメスいっしょの合計3種類のケースに分けた。
 ここ数年は、身近な小動物の生態(生き様)を次々と撮影してきたが、どんな身近な生き物でも生態写真はむずかしい。一通りの生態を写真に収めようとすると、知らないことだらけであることを、改めて痛感させられる。

 生き物を撮る写真家には、自然の美を撮ろうとするタイプと、生き物の生態を撮ろうとするタイプが存在するが、僕は、そのバランスを重視している。絵になっているだけでも、生き物を説明しているだけでもダメ。
 ただ、同時に2つのことは出来ないので、最初にどちらから入るかを決めなければならず、これまで色々な試行錯誤を繰り返してきたが、最近は、生き物の生態の方にウエイトを置いている。
 例えば、アマガエルの写真を撮る時には、まず、繁殖や捕食など一通りの生き様を撮る。その過程で、冬眠からあける時期や、卵を産み落とす時期や、小さなアマガエルが上陸する時期をよく知り、そして、アマガエルに詳しくなってから、今度は絵的な写真を撮ってみる。 
  

05月09日(金)

 フィルム整理を溜め込んでしまうのが僕の悪い癖だと昨日書いたが、他にも直さなければならない癖が幾つかある。
 中でもフィルムの使い過ぎは、お金の問題もあるので直したいが、いざ撮影を始めると、すっかりそんなことを忘れ、ついつい無駄なシャッターを押してしまう。
 植物のような逃げない被写体を撮る時には、
「ん?今のは風で揺れたかな?」
 と不安になり新たなシャッターを押し、逃げるものを撮る時には、
「逃げられるのだから、まずはシャッターを押すことが肝心」
 とやはり、次々と写真を撮ってしまう。要するに、
「これでか!これでもか!」
 と手厚くやり過ぎてしまうのだ。僕のカメラは33枚まで写真が撮れるが、目の前にある被写体の撮影を終え、フィルムが27〜8枚まで撮影されていたとすると、
「どうせだから」
 とフィルムを33枚まで撮りきることは誰にでもあると思うが、そこに新しいフィルムを入れると、
「前のフィルムに、何かトラブルがあったら・・・」
 などと考え、また数枚の写真を撮ってしまう。今度はシャッターチャンスで、一枚でも多くのシャッターを押したいときに、フィルム切れになりやすい。
「さあ、ここから!」
 という時のフィルム切れも、僕には多い。

 プロのカメラマンには、用心深さももちろん必要だが、やり過ぎは良くない。プロには、一回きりのシャッターチャンスと一枚の写真で、ビシッと決めなければならない時もある。たくさん撮る癖が付いてしまうと、一枚一枚の写真に対する集中力が足りなくなる。今年は、その点に気を使って撮影してみようと思う。
 来月、口座から引き落とされる現像料の請求書をみつめていて、そんな風に思った。
  

05月08日(木)

 カタツムリの孵化の撮影に備えて、九州南部取材を早めに切り上げたにもかかわらず、まだ、その卵の孵化が始まらない。たった一匹、帰宅をした日に孵化をしたきりだ。
 その手の待ち時間は、生き物の撮影にはつき物だが、カタツムリのように何度も撮影している生き物の場合は、先が読めるので気が楽でいい。
 代わりに待ち時間にはフィルムの整理をする予定にしているが、こちらは、全く手が進まない。僕は仮に失敗をしても、それをちゃんと修正して、同じ失敗を2度繰り返さないことを日頃大切にしているつもりだが、フィルムの整理だけはどうしてもダメ。溜め込んでしまう。
 人の写真をたくさん見ることも大切だが、それ以上に自分が撮った写真をたくさん見ることがもっと大切なのだが・・・
  

05月07日(水)

 うちで孵化したカタツムリの中から十数匹を残して、残りを、親を採集した場所に放しにでかけたら、小雨の中、今日もたくさんのカタツムリを見つけた。

 撮影によく使うのは、殻の直径が5ミリから1センチくらいのツクシマイマイだが、このサイズのものは以前にも書いたように、野外で採集することはむずかしい。
 京都大学でツクシマイマイを含むカタツムリの研究をしておられるNさんに伺っても、ほとんど捕れないサイズとの話だったので、捕り方うんぬんではなく、見つけにくいサイズなのだろう。そこで、飼育をして、生まれてきた子供たちを撮影に使う。
 ところが、上の画像のカタツムリは、すべて今朝採集したもの。小さなものが5ミリくらいなので、その難しいサイズをうまく捕まえたことになる。コツがわかったのだ。
 ただ残念なことに、この場所で採集できるツクシマイマイは殻がきれいではないので、この小さなものもしばらく育ててからでないと撮影のモデルには使用できない。画面の上の方の、左上45度に向かって上っているカタツムリなどが典型的だが、殻に黒いあざのような模様が見える。これは栄養状態が悪くて殻が薄く、中にあるものが透けて見えている結果で、この場所にすむ9割くらいのツクシマイマイに同様の傾向が見られる。同じ場所で採集したカタツムリたちは、飼育をはじめると、しばらく頻繁にカルシウムを食べる。

 小さなものを野外でまとまった数採集することは難しいと知り、一度は採集をあきらめた。だが、機会があるごとに探してみてコツが分かった。我ながら、あきらめの悪い性格だな・・・と思う。
 その諦めの悪さや、こだわりの強さを、中には褒めてくださる方もいるが、もしも社会の中で円滑に暮らそうとするなら、あまりこだわり過ぎない性格の方がいい。
 生物学の学生の頃、指導教官である千葉先生から、
「研究者になることは、こだわり抜くことです。こだわることを、カッコいいと受け止める学生もいますが、こだわる人は、つまり粘着質なので、とても付き合いにくいものです。研究するって、ある一面そんなことなんです」
 と話してもらったことがある。確かに、
「まあ、いいや!」
 ではなくて、
「絶対に、何とかしてやる!」
 というタイプの人と、もしも喧嘩をしたら面倒なことになるだろう。
 僕は、こだわる性格だが、写真という職業(少なくとも撮影という行為)の中では、それが許されるので、自由でいられる。
  

05月06日(火)

 カタツムリの孵化の撮影に備えて、九州南部取材を切り上げて帰宅をしたが、まだ本格的な孵化が始まっていない。だが、その卵の塊の中で、たった一匹だけ、昨日孵化したものがいるので、帰宅はいい選択だったと思う。
 
 取材先では、携帯電話でしか通信ができないので、パソコンでの作業は煩わしいが、事務所では高速回線が使えるので、ついつい長々とパソコンの前に座ってしまう。今日も、一通りのホームページを見ていると、昆虫写真の海野先生が、NHKの「人間講座」に出演されることが分かった。
 多分、講師の先生が画面の中でこちらを向いて、淡々と話をする番組だと思う。
 僕は、妙に恥ずかしがり屋で、自分のイベントをする時にでも、人に声を掛けたくないという変なところがある。写真展や公演会をするにしても、心のどこかで、人に来てもらいたくない。
 プロは、何かプロ級の技術を持っているだけではプロではなく、その技術で社会と接点を持ってはじめてプロなので、そんなことではダメだなと思うのだが、海野先生が、「人間講座は再放送も何度かあるので、見てください」と書いておられるのを見て、うん、やっぱりちゃんと宣伝して見てもらう努力をしなければ・・・と改めて自分の欠点を感じた。
  

05月05日(月)

 昨日は、寝過ごしてしまったが、今朝はピシャリ4時半に目が覚めた。目が覚める時には目覚ましも何も必要ない。「早起きでまるでお年寄りみたいだ」と笑う人もいるが、僕は本来は早起きが苦手だ。
 ただ、その日撮影する内容が具体的に決まっていて、仕事のイメージが湧き、それをやり遂げれる自信がある日には目が覚める。逆に、予定が決まっていない日や、決まっていても惰性で取り組んでいる時や、内心撮れないだろうな・・・と自信がない時には朝が辛い。
 亡くなられたが、林大作さんという優れた野鳥の写真家がおられ、ずっと以前に追悼の写真集が出版され、その中で林さんと親睦のあったある写真家が、「林さんは日記を読むと、ほとんど毎日四時に起き、撮影をしていたようだ!」と驚きのコメントを寄せておられたが、僕はそれを読んで負けたと思った。
 技術で誰かに負けてもいい。根性で負けてもいい。だが、情熱だけは負けたくないと思う。早朝の4時から撮影の準備をし、それがずっと継続できるのは、根性なんかでは到底無理。情熱のなせる業以外に考えられないように思ったからだ。
 僕の場合は、年々、早起きが楽になりつつある。あてもなく被写体を探してさまよう時間が減り、何か1つ撮影すれば、その過程でまた別の被写体が見つかるというリズムが出来つつあり、ワクワクしながら目を覚ます日が増えてきているが、まだ林さんのような域には達していない。

 今日は、宮崎県でBEKKOUサンショウウオを撮影した。ローマ字を混ぜたのは、数が少ないサンショウウオなので、インターネットで検索をされ、業者などによる採集のための時期の情報を与えないため。僕も、はじめての被写体だったが、30分くらい探すとコツがわかり、次々と卵や卵を守る雌を見つけることができた。
 車に帰ると留守電とメールがあり、撮影用のカタツムリが孵化しそうだとの事務所からの連絡。明日はオオルリを撮影する予定にしていたが、仕方なくキャンセルして、福岡に引き返すことにした。
  

05月04日(日)

 いつもは早起きの僕だが、今朝は目覚めが悪くて、8時に目的地に到着した。風景のカメラマンなら、気の早い人は撮影を終えてしまう時間だ。目覚めの悪さは、ここ数日の風邪のせいだろう。ただ、かなり回復してきたので、撮影そのものには差し障りはない。

 風邪をひいたらひいたで、結構楽しい。むしろ、あまり真面目に心配されたりするとがっかりする。男性が病気の時に女性が心配して、それが縁でカップルが成立したなどという話しを聞かなくもないが、僕は全く逆で、いつも通り、何があっても大げさではない人が好き。
 ふと思い出してみると、僕の35年の人生の中でも、何度かそんな経験がある。調子が悪いという時に、「それは大変。何かしてあげたい!」と言ってくださった方がいて、嫌いな方ではなかったが、その瞬間に、これは合わないと、逃げ出すことを考えはじめた。
 そんな自分を、
「僕は、冷めた女の人好きだね」
 と友人に話したら、
「それを言うなら、控えめな素朴なタイプの人でしょう」
 と笑われた経験がある。

 体調が悪い時に、いつもと同じ計画で撮影にのぞむのは無謀だ。それなりの工夫をする。
 日頃よりも予定を少なくして一箇所に多くの時間をかけたり、日頃行かないような場所を思いついたりもする。それが、いい結果を生むこともあるし、そんな状況に応じた撮影が出来た時には爽快だ。
 僕は、感性で何かを成し遂げる人よりも、理論派が好きなので、日頃、直感で写真を撮るのではなく、一日一日いい判断をすることを大切にしている。ピンチの時には、その人の判断力が問われるので、自分にどんな判断ができるのかに興味があるのだ。
  

05月03日(土)

 今日は車が多いな〜。連休の前半とは大違い。
 大分県で撮影をした後、熊本県でも撮影をする予定だったが、熊本県での目的地が九州では有名な渋滞をする場所だ。渋滞をしてただ車に乗っているだけなら、その時間は無駄になる。
 それでは・・・と、大分県のみに的を絞ろうかと考えはじめると、やっぱり2箇所とも撮りたい気持ちになる。
 人によって違うのだろうが、僕の場合、こんなケースでは前もってちゃんと決めておかなければ、大体ろくな結果にならない。大分県で撮りながら次を考えたり、車の運転をしながら考えたりすると、結果、すべてが中途半端に終わってしまう。行こうか?戻ろうか?と、同じ道路を迷いながら、何度も往復することもある。
 だが、それが分かっていながら最後まで迷う日がある。今日もまさにそれ。
 
 今日は、大分県での目的地に到着する前に、いい被写体にめぐり会え、ほとんどそれで、主な時間を過ごすことになった。
 大分県の山間の田んぼで、ご夫婦が仲良く農作業をしておられた。周囲の風景もすばらしい。田んぼの一年を今年のテーマにしている僕には願ってもない被写体だ。
 ついでに、農家の方に、お茶までご馳走になった。日頃、物をもらうのが大嫌いな僕が、今日は、それが嬉しかった。
 僕は、本当に近い、親しい知人やたっぷり話しをするチャンスのある人からは、物をもらいたくない。話しをすることや、意見を交換することで結びつきたい。だから、贈り物攻勢をされるのが好きではない。
 だが、滅多に会わない人が相手の場合は、ちょっと違う。今日は、農家の方が、自分達の田畑や作業のようすに、僕が興味をもったことを喜んでくださった。その気持ちが、お茶から伝わってきて、僕も嬉しかった。
 夜になってから、熊本県まで移動した。事故渋滞の他は、目立った渋滞もなかった。
  

05月02日(金)

 今日から取材に出かける予定だったが、体調不良が直らず、明日の朝に出発することにした。
 今日は、撮影機材や取材のアイテムに小さな改良を加えるなど、体の具合が悪くても出来る仕事で一日が終わった。何かをしていると、不思議ときつくないが、直ったか?と喜び勇んで体温を測ってみると38度以上あり、明らかに病気だ。
 この5月の上旬には宮崎にある大崩という山に登り、途中の三里ヶ原で渓谷を撮影したかったが、この計画は中止。大崩には何箇所か難所があり、稀にだが滑落する人もいる。また、撮影機材を持って歩くには、かなりハードな場所なので、病み上がりには無理との判断だ。
  

05月01日(木)

 ひどい風邪をひいてしまった。喉と鼻の奥が熱く、まるでインフルエンザのよう。父も母も似た症状なので家族からうつされたと思うが、みんな1週間〜10日ほど苦しんでいる。苦しい週になりそうだ。
 僕は色が白いのでよく病気がちに思われがちだが、仕事に差し障るような体調不良は滅多にない。久しぶりのことだ。
  
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2003年05月


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