撮影日記 2003年02月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ

2月28日(金)

 撮影用に飼育していたカタツムリの子供が死んでしまった。
 僕は、いろいろな撮影の注文に応えられるように、一通りの大きさのカタツムリを揃えているが、その中から、特に撮影に使う率が高い5ミリから20ミリくらいのサイズの物が、同じ容器の中で原因がわからないまま、4匹死んでしまった。痛恨事だ。
 仕事がうまくいかない時、僕は、落ち込むよりも腹がたつのが普通で、
「このやろう〜!」
 と自分でも訳がわからない程、熱くなり、その熱で解決するタイプだが、今回は、さすがに落ち込まざるを得ない。
 撮影用のモデルは、どんな種類でもいい訳ではないし、大きさ、色の感じ・・・、いろいろと要求がある。そんな要求を満たすカタツムリを、この時期に手にするのは飼育でもしていない限り、ほぼ不可能だし、このままでは仕事が出来なくなってしまう。
 堪えるな〜。人間辞めたい。
 僕が撮影に使っているカタツムリは、ツクシマイマイという種類の子供で、1センチ前後のものだが、大きなものは目立つので、季節がくればそれなりに捕まるが、1センチ程度の小さなものはなかなか捕まらない。そこで、自家製の卵を採卵をして、子供を希望のサイズになるまで育てているのだが・・・

 今月の水辺を更新しました。
  
 

2月27日(木)

 エスエス製薬のエスカップというドリンク剤をもらったので飲んでみると、1時間もたたないうちに、濃い黄色のおしっこがでた。僕は、食べ物や飲み物が体外に出るまでの時間がとても短くて、消化器の検査でバリウムを飲み、レントゲン写真を撮ってもらった時にも、
「あなたはバリウムの動きが速いね〜」
 と驚かれたことがある。
 あっという間に食べ物が外に出るのだから、きっと僕のうんこの中には、まだまだ未吸収の栄養がたくさん含まれていて、僕のうんこには半人前くらいの食べ物と同程度の値打ちがあるかもしれない。
 撮影の時には、その通じの良さがよく妨げになる。ちょっと水分を取っただけで、ここぞ!とカメラを構えているのに、急におしっこが我慢できなくなり、構え直しをすることが珍しくないのだ。
 おしっこなんか、出なければいいのに・・・と腹立たしくなるが、そんなことはありえないし、誰のせいでもないので仕方がないのだが、そんなことで一人で腹を立てているのなんて、僕くらいのものかな?

 今月の水辺を更新しました。
  
 

2月26日(水)

 事務所の通信回線を、ADSL回線に変える準備をしている。回線の工事は明日なので、今日はモデムを準備したり、パソコンに必要なソフトをインストールして設定をしたり、自分でしなければならない作業を終えた。
 これまでは、事務所ではISDN回線を使用してきたが、ISDN回線を使うと1本の契約回線に対して、2つの電話番号をもらうサービスが受けられるので、僕は、その1つに電話を、あとの1つにはファックスを接続している。
 ところが、そのISDN回線をADSL回線に変えてしまうと、2つの電話番号をもらうサービスが受けられなくなり、電話かファックスか、いずれか1つの電話番号がなくなる。
 それは困るので、今回は、パソコン専用のADSL回線を別個に1本契約することにした。パソコン専用の回線なので電話を接続することはできないが、電話回線のように高い契約料を払わなくても、月に800円でADSL回線を使うことができる。
 僕はパソコンにはほとんど興味がないが、最近は、調べ事をするのにインターネットが有効だと感じるようになってきた。インターネットが普及し始めた当初は、何かを調べたくても役に立つホームページが滅多になくて、思ったほど便利ではないと感じていたが、さすがに最近は、無視できなくなってきた。そうなると、やはり高速回線が欲しい。
  
 

2月25日(火)

 博多の大濠公園で、ホシハジロというカモを撮影した。ホシハジロは、餌付け場所などでもっとも多く見かけるカモの一種だが、餌に寄ってくるカモの中でも特に人を恐れない種類で、餌をまく人のすぐ足元まで食べにくる大胆なカモだ。
 あまりに人を恐れないカモの場合は、逆に撮影が難しい面もある。餌場付近で、数種類のカモが入りまざった大集団ができ、目的とするカモだけをきれいに抜きだして撮影することができなくなるのだ。
 その点、大濠公園では、餌付けをしていないので、数種類のカモが入り混じって撮影がしづらいということもない。また、数え切れないくらいの人が常にうろうろしている都会の公園なので、カモたちは人慣れしていて逃げることもないし、500ミリくらいの望遠レンズがあれば撮影ができる。
 
 ここのところ、生活リズムが狂っていて、昨晩は朝の3時頃に眠りにつき、今日は、カモの撮影をするために5時におきたので、ほとんど眠っていない。さすがに頭がぼ〜として、水に浮かんでいるカモになかなかピントが合わないし、構図も決まりにくい。
 ところが、オートフォーカスの300ミリレンズをカメラに取り付け、オートフォーカスで飛んでいるユリカモメにピントを合わせてみると、機械任せでスイスイとピントがある。機械なので、寝不足も体調不良も関係ないのだ。
 人間の側のコンディションと無関係に、いつでも同じ結果が出せる道具は、仕事の道具としては心強いし、そろそろ500〜600ミリのオートフォーカスレンズが欲しいなと思うが、定価が100万円近くする道具なので、少なくとも新品には手が出ない。
 中古を探すと、キャノンの製品はそこそこ見つかるが、僕が使っているニコンの製品はほとんど見つからないし、たまに見つけても値段が高い。ほぼ同格のレンズを買った場合、ニコンの中古価格で、キャノンだとカメラ本体とレンズ数本が余分に買えるくらいの価格差がある。
 最近はニコンよりもキャノンの方が断然に売れているので、ニコンは品数が少なく価格が高いのだ。
 しばらく今のままの道具を使うことになりそう・・・。
  
 

2月24日(月)

 北海道東部で撮影をすると、天気予報がよく当たることに驚かされるが、九州に帰ると、福岡県の天気予報って、なんでこんなに当たらないんだろう?とつくづく思う。今日は、雨のち午後から晴れの予報だったが、晴れどころか一日中小雨がぱらつく天候で終わった。
 午後からの晴れの予報に期待して、博多湾の今津という場所へ、クロツラヘラサギの撮影にでかけたが、悪天候でカメラを準備するまでもなく一日が終わった。
 クロツラヘラサギは、世界的にとても希少な生物だが、博多湾周辺の数カ所では、冬の間この鳥を確実に見られる場所がある。
 主に湿地のような場所に生息する水辺の鳥で、水辺をテーマとし、福岡県在住の僕としては、しっかりとした写真を撮っておきたい生き物の一つだが、博多湾周辺の交通事情の悪さに耐えられず、これまで僕は、ほんの数回しか、この鳥の撮影にでかけたことがない。
 博多湾周辺は、九州でも一番人口が集中している場所で、渋滞に巻き込まれずに今津まで到着することは、ほぼ100%不可能なのだ。
 ついでに珍しい鳥なので、全国から今津に、この鳥を撮影するために人が訪れる。なんだか無償に反発したくなり、益々足が遠のいてしまう。 
  
 

2月23日(日)

 博多にインド料理を食べに出かけた。僕はインド料理が大好きで、時々そのためだけに出かけることがある。食事の前に、
「何にする?中華?すし?焼肉?・・・」
 といった打ち合わせをすることがあるが、
「インド?」
 とたずねてくれる人に、僕はまだ出会ったことがない。これを読んだ人は、誰か僕にインド料理をおごってください。

 ついでに、カメラの量販店で、やや特殊なコダック社製のフィルムを購入して、デモで置いてあるカメラやレンズを触ってから帰宅をした。
 デモの機材を扱っていると、いろいろな物が欲しくなるが、撮影現場で欲しいものと、今日のようにお店や頭の中で欲しいものと、仕上がったフィルムを見ていて、これがいい!と感じる機材とが、僕の場合は、かなり食い違う。
 撮影現場では、レンズを交換する余裕がないことも珍しくないし、ズームレンズがありがたい。一方で、頭の中で考え始めると、明るい、大口径の、描写に味のあるレンズが欲しくなる。また、仕上がったフィルムを見ていると、645版の機材がいいな〜と思う。結局、いろいろと考えた挙句、645版の機材を使うことになる。
 645版は35ミリ版ほどポピュラーではないので、それほど多くの新製品が発売されるわけではないし、レンズの性能などは、設計が新しい35ミリ版の方がいい。だが、フィルムが大きいだけで、例えレンズの性能が悪くても、645版はよく写る。最新の技術もすごいなとは思うが、フィルムが大きなだけで写真がよく写るなんて、写真って単純だなとも感じる。
  
 

2月22日(土)

 一昨日、カエルとサンショウウオの卵を採集した山田緑地から
「偶然カスミサンショウウオの親が捕まったので撮影しませんか?」
 という電話があった。
 カスミサンショウウオは、北九州には比較的数が多く、以前にサシバという鷹の子育ての様子を撮影した際に、親が次々とカスミサンショウウオを運んでくることに驚かされた経験がある。
 カスミサンショウウオだけでなく、他にも2月に産卵期を迎える両生類が、九州でも数種類が知られているので、来年あたり、まとめて繁殖の様子を撮影してみようかという気になってきた。
 この2月はカモ類の撮影を予定していたが、天候が思わしくないこともあり結果が出ていない。さらに、先日、カエルの冬眠の様子を撮影して以来、気持ちが野鳥から小動物へと切り替わってしまい、野鳥を撮る情熱が湧いてこない。
 来年の冬は、今度は北海道までは足を伸ばさずに、1月に東北〜北陸あたりでじっくりと水鳥を撮影して、2月は両生類の繁殖というスケジュールでいこうかな?
  
 

2月21日(金)

 学生時代の最後の年、僕はカモを撮影するために北日本に出かけた。もちろん、その時すでに、プロを目指す決意を固めており、その第一歩として水鳥の取材を選んだ。水鳥は餌付けをしてある場所に出かければ、簡単にカメラに収めることができる。最初の一歩なので手堅い被写体を選んだつもりだった。
 撮影場所に関する資料に目を通していると、有名な野鳥写真家のKさんが、「カモ類は撮影がむずかしい」と、何かの本に書いておられたが、他の鳥と違い餌付け場所で近距離から撮れるのだから、そんな馬鹿な!と、その時の僕は思った。
 それから10年近くたつが、いまだに納得できるカモの写真が撮れない。Kさんの、「カモ類は撮影がむずかしい」という言葉の意味がよくわかった。何がむずかしいのか、これは必死に撮ろうとして手を動かした者にしかわからないので、ここには書かずにおこうと思う。
 
 今日は、コガモの撮影にでかけた。福岡県南部の柳川市にコガモが集まる庭園があると聞いたことがあったが、それがどこなのか詳しく調べることができたので、さっそく撮影してみることにした。
 まだ暗いうちに自宅をたち、朝の8時頃現地に到着して、すぐに下見に取りかかったが、光の状態が悪い。一日中逆光になるポジションでしか撮影ができず、いろいろと悪あがきをしたが、どうしようもなく引き上げることにした。
 目の前の数メーターの距離に、コガモが数十羽泳いでいるのだが・・・ もどかしい。

 帰宅する車の中で、突然に体がだるくなり、全身に倦怠感をおぼえた。ここ数日、インフルエンザにかかりかけているのかな?という気がしている。
 ぼーっとしかかりながら運転をしていると、おまわりさんに捕まった。22キロの速度違反だ。罰金15000円が痛い。
 事務所によって、事務仕事をしようと考えていたが、予定を変更して自宅に帰ることにした。インフルエンザには有効な薬があり、発病初期にその薬を服用すれば、ほぼ100%症状を押さえられるらしい。撮影もうまくいかなかったし、おまわりにも捕まった。日頃、滅多なことでは薬も飲まないし、病院の治療も受けない僕がだが、そんな悪いことが続く時には、用心深く、手厚く振舞っておく方がいい。すぐにインフルエンザの特効薬を処方してもらった。
 それにしても、15000円もったいない!これを読んで我こそは・・・と思う人は、仕事をくれるか、お金を寄付してください。
  
 

2月20日(木)

 アカガエルまたは、ヤマアカガエルの卵
 
 昨年夏に写真展を開催した山田緑地に、カエルの撮影に出かけた。山田緑地ではちょうど今頃、アカガエルやヤマアカガエルやカスミサンショウウオが産卵をする。
 原則として採集は禁止されている場所だが、許可をいただき、アカガエルまたはヤマアカガエルの卵と、カスミサンショウウオの卵を採集。早速、水槽に移して撮影をした。
  
 

2月19日(水)

 アマガエルの飼育容器
 
 僕は、年間を通して撮影用のアマガエルを飼育しているが、実際には、アマガエルをスタジオ内で撮影する場合にでも、飼育しているアマガエルをモデルにすることはほとんどない。
 やはり、野外で捕まえたばかりのものが美しいので、大抵は、新しいカエルを捕まえにいく。特に違うのが緑の色合いで、飼育すると、やや緑が黄色っぽくなるような気がする。
 アマガエルは、周囲の色に合わせて体色を変化させるので、飼育容器は、周囲を紙で緑色に覆っているが、本物の植物の緑にはかなわないのだろう。くさむらの中で捕まえたアマガエルの色が一番美しい。
 飼育容器の中で、本物の葉っぱの上で休んでくれたなら、きれいな緑色になるに違いないと考え、観葉植物を容器の中に入れてあるが、アマガエルは葉っぱの上よりも、水入れや餌入れの容器の隅っこの方に隠れ込むことが多い。なかなか葉っぱの上に乗っかってくれないのだ。
 ところが、ここ数日、室内で冬眠をさせずに飼育しているカエルたちが、すべて葉っぱの上で休んでいる。どうした風の吹き回しだろう?
 そう言えば、アマガエルの飼育容器の中に入れてある水入れの水があふれて、ケースの床全体が水浸しになっている。アマガエルは樹上性のカエルで、体が水に浸かるのをあまり好まないので、よじ登った結果、葉っぱの上で休んでいるのかもしれない。
 本当にそうなのか実験をして確かめる必要があるが、いい発見をしたかもしれない。わざわざカエルを毎回捕まえにいかなくても、容器の中で、きれいな緑色のカエルを維持できるかもしれない。
  
 

2月18日(火)

 予定していたくだものの取材が中止になった。撮りたかったくだものがシーズンを過ぎ、すでに木になっていなかったのだ。
 仕事を依頼してくださったのは、とある出版社の、今は現場ではなく管理職についておられる方。スタッフに急な欠員が出たため、いったん退いた現場に急遽復帰されたとのことだった。
 以前にも、ちょっと仕事をしたことがあるが、日頃他のスタッフにダメ出しをする役割を演じておられ、また、長いキャリアをお持ちの方だけあって、独特の緊張感がある。その緊張感がとても刺激的で、いつもの倍以上撮影は疲れたが、仕事をさせてもらって良かったと感じた。
 くだもの自体には、僕は特別な興味はないし、僕のテーマである水辺ともかけ離れているが、そんな緊張感を感じながら撮影をするのは僕のためになる。また、どんな被写体であろうと、理にかなった写真を提供できる技術を身に付けるが僕の目指すところでもあるので、喜んで仕事を受けた。
 ちょっと残念だが、水鳥の取材の際に撮影した約70本のフィルムの整理もまだ終わっていないし、時間にゆとりが出来ると、それはそれで嬉しい。
 今日は、ブローニー版で撮影したフィルムのみ、整理を終えた。
  
 

2月17日(月)

 子供の頃、教わったことの影響の大きさに、ときどきハッとさせられることがある。僕は、父から勉強のコツをたくさん教わったが、
 「数学のようにに頭をひねる教科は、その日の最初に、頭が疲れていない時に勉強しなさい。社会のような暗記科目は、数学の後に、頭が疲れて考えられなくなってから、内容をノートに整理しなさい。内容をノートに整理するのは、頭が疲れてからでもできる」
 と教わった。そして、
 「入試の前一ヶ月くらいになったら、数学の勉強をほとんど止めにして、まとめた暗記科目のノートをひたむきに憶えなさい。数学は短期間で成績は上がらないけど、暗記科目はグングン伸びるし、どうせ早めに暗記しても忘れてしまう」
 と教わった。
 僕は知らず知らすのうちに、その影響を受け、ふと、自分がまったく同じ作業の進め方をしていることに気が付くことがある。例えば、一日の最初に、最もエネルギーが必要な撮影を、疲れて撮影が出来なくなってからはフィルムを整理したり、生き物の世話をしたり・・・
 父の教えは合理的だが、最近の僕は、必ずしもそうではないなと思うようになった。何一つ、疲れてからでもできるような作業などないように感じられてきたのだ。確かにフィルムの整理はいつでもできるが、その整理の良し悪しは、次の撮影の結果につながってくる。やっぱり、頭を使ったいい整理をしなければならない。やればやるほど、手が抜ける場所などないように感じられてきたのだ。
 ただ、子供の頃に染み付いたことの影響は大きくて、父に教わった通りにしなければならない気がして、朝一番にフィルム整理していると、なんだか悪いことをしているような気さえする。

 父が嘘を教えたのではない。今までの僕は、そうして合理的に、少しでもたくさんの作業を詰め込んでやってきたし、そうする必要があった。これからは、そこから一歩前にでるために、質にこだわらなればならない段階に達したのだと思う。
  
 

2月16日(日)

 アマガエルの越冬の様子を撮影した。
 アマガエルは、土の浅いところや、木のうろや、枯れ葉の下などで越冬すると言われている。確かに、屋外で飼育をしてみると、そういった場所で体を縮めて越冬する。
 ただ、土の浅いところにしても、木のうろにしても、そのままでは撮影がむずかしいので、今日はアマガエルが越冬をするような環境を再現した撮影セットを作り、その中に、実際に今越冬しているカエルをおいて撮影した。
 アマガエルが越冬する場所は、一言で言うと物陰のような場所だが、物影の雰囲気を写真で表現するのはむずかしい。例えば、枯れ葉をめくって撮影すると、枯れ葉の下という雰囲気は感じられなくなる。そこで今日は、構図を工夫して、どことなく物陰の雰囲気が感じられるように絵を作ってみた。
  
 

2月15日(土)

 アカハジロ オス

 とある先輩が、
「撮影日記をいつか本にまとめてみたら・・・」
 と言ってくださった。
 僕の個人的な日記が本になるとするならば、それは僕が一流のよく知られた写真家になり、あの人いったいどんな生活を送っているのだろう?どんなこと考えながら撮影しているんだろう?と多くの人に興味を持たれた時だろうから、僕はその言葉を、「一流を目指せよ!」という励ましの言葉として受け止めた。
 本うんぬんは別にして、撮影だけでなく文章にも磨きをかけたいと思うし、時に自分自身に課題を与えてみることもある。
 例えば、真面目な話、コミカルな話、機材に関する話を交互に書いてみようなどと思いつき、チャレンジするのだが、やはり撮影をすることの方が優先され、結局計画倒れになってしまう。まだまだ撮影技術に未熟な点が多く、勉強すべきことが多くて、それだけのゆとりがないのだろう。
 
 写真に興味がない人には面白くないだろうが、今日は撮影機材について書いてみようと思う。
 3週間の北日本取材のフィルムが仕上がったが、その中で、ある一本のレンズで撮影した一連の写真が、僕の目にズバッと飛び込んできた。
 ニコンの AF-S300ミリf4 がそのレンズだが、現像を終えたフィルムをルーペで拡大するまでもなく、驚くほどシャープで、色がいい。昨年の3月に購入し、今回がじっくりと使う最初の機会になったが、このレンズほど「写るな〜」と感じるレンズを、僕は今まで使ったことがない。オートフォーカスの性能もすばらしい。
 今日の画像は、そのAF-S300ミリf4 のテスト中に撮影した一コマで、アカハジロという珍しいカモだが、ハクチョウの撮餌付け場所でカモの大集団にレンズを向け、ファインダーをのぞいたまま待ち、偶然に通りかかったカモにオートフォーカスでピントを合わせて、ただシャッターを押すという撮り方を試した時のものだ。
 僕はシャッターを押す直後まで、アカハジロがまぎれ込んでいることに気付かず、撮影した瞬簡に気が付いた。このレンズには、付きもありそうだ。
  
 

2月14日(金)

 今日は完全休養。
 多くのフリーカメラマンがそうではないかと思うが、僕は、休んでいるときよりも動いている時の方が心が休まる。仕事があって忙しいくらいが、精神衛生上好ましい。
 だがずっと動いていると、動くことに刺激を感じなくなるので、時に休みを作ることがある。だから休みというよりも、メリハリと言った方がいいかもしれない。
  
 

2月13日(木)

 久々に、すごいな〜と息を呑むような写真集に出会った。
 大山行男さんの富士樹海(毎日新聞社)が、その本だが、物の形だけでなく、樹海と大山さんの魂までもが写真に写っている。
 じっくり、エネルギッシュに撮影されたこの本の前では、数ある写真のテクニックや、最新の撮影機材が、ちっぽけな取るに足らないものに感じられる。自然写真の基本は、自然を愛し、自然の中にどっぷりと浸かり、たっぷりと時間を費やすことであると教えられる。

 撮影機材にはそれぞれに特色がある。フィルムカメラにはフィルムの、デジタルカメラにはデジタルの特色があるが、新しい開発の流れは、デジタルカメラ中心になっていくことだろう。そのデジカメの特色は、すぐに撮影結果を見られる点にある。
 ところが、すぐに撮影結果を見る必要がない、じっくりと腰を据える撮影には、パソコンや電源が必要なカメラは足手まといになるし、大山さんの「富士樹海」の撮影に、デジタルカメラは何の役にもたたないだろう。
 デジカメの普及に伴って、これからは「富士樹海」のような凄みのある本は、見られなくなるのではないだろうか?そうなってしまうと、自然の写真の世界がつまらなくなるような気がする。
 最新のデジタルカメラが欲しい!デジカメがあれば・・・と思いをめぐらせている反面、アンチデジタルな思いが僕の心の中にあることに気付かされたし、なぜアンチデジタルなのか、「富士樹海」は、その理由をはっきりと言葉に直してくれたように思う。
 「デジタルカメラがダメだ」
 と言っているのではない。もしも野鳥の写真を撮るのであれば、大半の人にとって、恐らくデジタルカメラの方が適するだろう。自分が表現したいものを、最も有利に表現できる道具を持てばいい。
  
  

2月11〜12日(火〜水)

 僕が小学生の頃、祖母がよく、
「なんで、この子はこんなに成績が悪いのだろう」
 と、泣きながら父に嘆いていたらしい。
 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というが、勉強は、大人になってみると、やれば出来るような気がしてくるから恐ろしい。
 例えば、最近になって突然に、「世界史って面白いな!」とひらめき、「今僕が高校生だったら、ガンガン勉強して、いい点が取れるだろうな!」と、そんな気がしてくることがある。ところが、実際に高校時代の教科書を持ち出してきて、ページをめくると、あまりに書いてあることが多くて、クラッと気を失いそうになる。
 机に向かう作業は、不向きな人には、いつになっても簡単そうで難しい。

 昨日〜今日にかけて、北日本取材の写真を整理している。といっても今年の分ではなくて、去年の写真だ。新しい写真が仕上がる前に、去年の分を片付けておかなければ、とんでもないことになる。
 ずっと野鳥の撮影から離れていた僕が、去年から、また野鳥を撮るようになったが、改めて写真を見てみると、去年は久々だったからだろうか?的がよく絞れていない。
 的が絞れていないと、中途半端な写真が多くなり、たくさんの写真の中からどの写真を抜き出すのか、なかなか決められない。そうなると、今度は、写真の整理が苦痛になる。去年、途中まで整理をしながら、投げ出していた理由がよく分かる。
 昨日は、途中で頭が痛くなって、丸一日整理をする予定が数時間でダウンしてしまった。机に向かう作業は手ごわい。
  
  

2月10日(月)

 「おまえの切れ長の目は朝鮮系の目だ」
と、僕は子供の頃から父に言われて育った。そのせいだろうか、僕は韓国の人に対して親近感を感じるし、韓国の女性に好みのタイプの人が多い。
 今、日本で活躍している人の中では、ユンソナさんが僕の好みだが、テレビに出演しているのを見つけると、ついつい長々と画面に見入ってしまう。
 そのユンソナさんが、つい最近までNHKのハングル講座に講師として出演していたのだが、番組の中で、他の韓国人講師との間で、
「日本の芸能人の中では松たか子さんが韓国の人に人気がある」
 という話しになった。
 単に人気があるだけでなく、松たか子さんのようなタイプの人が韓国人の好みに合いやすいらしい。
 そう言えば、僕も松たか子さんは好みの系統だし、父の言う通り、僕には韓国系の血が濃いのかもしれない。
 昨晩も、ユンソナさんがテレビの番組に出演していたが、自宅にいると、何時間でもテレビを見ることができる。特に、車での長期取材から帰ると、電気のありがたさを身にしみて感じる。
 こうして、パソコンに向かっていても電源の心配をしなくていい。携帯電話もいつでも充電できる。。
 文明ってすごいな〜と思う。
 町の中にいると、田舎の良さがよく見えているが、田舎に行くと都会の良さがよく見える。
 屋久島を撮るあるカメラマンが、
「東京から屋久島に通いながら撮影していた頃は、屋久島(田舎)のことはよく見えていたけれども、都会のことが見えていなかった。屋久島に定住して撮影を始めてからは、都会のこともよく見えるようになった。両方が見えて、初めて本ができた」
 と書いているのを、読んだことがある。
「なるほどな〜」
 と思う。
  

2月9日(日)

 ようやくゆっくりする時間が取れた。
 天気が良ければ、先月末に新潟で取り損ねた写真を撮るために、都心の公園にカモの撮影に出かける予定にしていたが、天気がわるい。
 今日は、昼寝をして過ごした。気持ちがいい。
  

2月8日(土)

 北日本を旅してみると、「九州には、本当の意味での冬はないな〜」と思う。
 北海道から、昨年はすべて陸路で、今年は一部フェリーに乗ったが、残りの道のりを車で運転してみると、一月から二月の時期に、
「今、ここは冬だな」
 と、その風景から判断できそうなのは広島県以東(山間部など)の地域で、それよりも西に位置する山口県〜九州の場合、気温やその風景は晩秋の延長と言った方が正確だろう。
 九州にすんでいる僕の場合、冬らしい写真を撮るのは年に2〜3日の積雪の日を除いてむずかしい。だから、冬場になるとズドーンと写真の売上が減ってしまう。
 そんな状況を打開するために、水鳥の取材で北日本に出かけてみたり、いろいろとチャレンジしているが、その妨げになるのが、撮影用に飼育している生き物たちの世話で、今回も北海道の3週間の間に、数匹の撮影モデルが死んでしまった。
 北海道まで行くのなら、もっと長く旅をしたいが、3週間くらいが限界なのかな?
 カタツムリなど、冬の間は越冬をしていることになっているが、少なくとも九州では、屋外でも飼育をしてみると、暖かい雨の日など時々目を覚まして活動をするし、食べ物も食べる。完全に越冬していれば、三週間でも四週間でも放っておけるのだろうが・・・
 ただ、4〜6月くらいの時期に、そうやって飼育中の生き物をモデルとして、産卵や誕生などさまざまなシーンを撮影した写真がまとまって売れることを考えると仕方がないのだろうか?
 今日は、少しでもうまい生き物たちの飼い方はないか?と、今までの飼い方に改良を加えてみた。
  

2月7日(金)

 一般的に、一年でもっと自然が美しく感じられるのは、4月〜6月くらいの時期だろう。4〜6月には、そのイメージを伝える写真の需要が多く、僕の写真も売上が伸びる。
 その時期に出版される本は、ちょうど1〜2月に作られるので、この時期には写真を貸し出す機会が増えるが、ちょうど3週間の北日本取材の間に、僕にも、何件か写真貸し出しの依頼があった。
「今、北海道で取材をしていますので、2月上旬に帰宅をしたら写真を送ります」
 と写真の発送を待ってもらっていたので、いそいで写真を送らなければならない。
 写真を選ぶのには、なかなか時間がかかるし、昨晩は早朝の2時過ぎまで、写真発送の準備に時間がかかった。せっかく帰宅をしたのだから、少しゆっくりしたいところだが、もうしばらくの辛抱だ。 
  

2月6日(木)

 無事、北九州に帰宅した。
 今日は、今回撮影したフィルムの中の一部を現像するために博多に出かけた。まずは、一部のフィルムを現像して、その調子を見て、残りのフィルムをどう現像するのかを考えることにした。
 写真のフィルムは、現像段階で指示を出せば、仕上りを若干調節することができる。
  

2月4〜5日(火〜水)

 何気ない誰かの一言で、目がさめることがある。
 北海道から本州にもどるフェリーに乗る直前に、僕は北海道を代表する野鳥写真家・大橋弘一さんの事務所をたずね、写真や野鳥の話しをする機会を持った。
「北海道で、ヨシガモが確実に撮影できるような場所ってありますか?」
 とたずねてみたところ、
「いやね〜、僕の方が教えてもらいたいくらいなんですよ。北海道中心に撮影をしている僕よりも、こうやって全国を回る機会のある武田君の方がチャンスが多いと思いますよ」
 との返事が返ってきたが、その一言で、有名な撮影地ばかりを回り、楽に撮れる写真ばかりを撮ろうとしている自分に気が付いた。
 そう言えば、大橋さんの言う通りだな・・・、フェリーが到着する福井県の敦賀から北九州までの道のりの中で、ヨシガモを探してみようと思い立った。

 ヨシガモは珍しいカモではないが、そう多い鳥でもない。渡り鳥なので、渡りの途中で身近な川や池でも見られるが、安定して、ここに行けば確実に撮影できるという有名撮影地がない。それでも、山陽には比較的記録が多いので、今回は山陽の、ため池が多い地域を探してみることにしたが、あっけないほど簡単に見つかった。
「あ、いた・・・。」
 2匹の美しいオスの姿が、僕の目に飛び込んできた。すぐそばにはメスが2匹寄り添っている。僕が狙っているオスメスが寄り添っている写真が撮れそうだ。
 車を近づけると、岸辺にいたカモが警戒していっせいに池の奥の方へと泳ぎ始めたが、ヨシガモの数がぞくぞくと増え、全部で7つがいがその池の中で見られることがわかった。
 ただ、予報によると、これから数日間の天気が悪い。天気が回復すれば、同じ山陽の山口県でも撮影したいものがあるので、今回は場所の下見を十分にした上で、いったん帰宅をすることにした。
 太陽の向き、一日の鳥の動き、どの程度まで近づけるか・・・撮影に必要なことを確認し、北九州へと車を走らせた。
  

2月2〜3日(日〜月)

 島根県日御碕

 2月1日の23:30分に出発予定のフェリーは、結局、翌日の3:30分頃北海道の苫小牧東港を出発した。敦賀到着は、2月2日の23:00。出発が遅れたものの海は穏やかで比較的楽な船旅になったが、あまり根を詰めるようなことをして船酔いしてしまうと面倒なことになるし、長時間の船旅はとくかく何もすることがないのが耐えられない。
 敦賀到着後、すぐに高速道路にのり、兵庫県まで移動をしてパーキングエリアで一泊し、今日2月3日の朝は伊丹市の昆陽池でカモを撮影。さらに高速道路で島根県の出雲まで移動をして、夕方にはウミネコの撮影を試みた。
  
 北海道には韓国や台湾からのお客さんが多くて、今回僕が撮影をした屈斜路湖などは、おとずれる外人と日本人とが半々くらいではないだろうか。
 韓国や台湾からの観光客は、女性が大変におしゃれで、男性が究極にダサいことが多い。大半の女性は今の日本人とほとんど変わりないが、男性は、まるで2〜30年前の日本のおじさんを見ているようだ。
「ほ〜」
 というくらい、きれいな感じのお姉さんと、
「うわぁ〜」
 と顔をしかめたくなるほどダサダサのおにいちゃんがカップルになっていたりするので、つい見てしまう。
「おもしろいものだな・・・」
 と僕は思っていたのだが、今日、昆陽池でカモの撮影をしていると、関西の雰囲気が、なんとなくアジアからの観光客の雰囲気に似ていることに気がついた。
 昆陽池で散歩をしている女性は、大抵おしゃれで、
「さすが神戸の近くだな・・・」
 などと思うのだが、男性は大変にダサい。
 いつも暇そうにブラブラしている、小汚い格好のおじさんの雰囲気そのものなのだ。
 フェリーに乗ると、一気によその土地へと移動をするので、その土地ごとの文化や特徴が強く感じられる。
  

2月1日(土)

 昨晩のうちに、今日2月1日のフェリーに乗るために、札幌まで移動をした。やや天候が荒れ気味で、各所で通行止めになる可能性があったため、早めの移動だ。
 北海道では、道路事情が良ければ、九州では考えられないほどの距離を短時間で走りぬくことができるし、道路事情が悪ければ、これまた九州では考えられないほどの時間がかかってしまう。
 フェリーに乗るなど、決まった時刻までに到着しなければならない場合は、焦るとろくなことにならないので、早めに到着しておくに限る。
 今日は、札幌の西岡水源池でキツツキの仲間他、小鳥を撮影したが、僕は、最近水辺にテーマを絞っているので、山の鳥を撮影するのは本当に久しぶりのことだ。
 西岡水源池では小鳥に餌付けをしてあり、アカゲラ、ヤマゲラ、コゲラ、ミヤマカケス、シジュウカラ、ヤマガラ、ハシブトガラ、ゴジュウカラ、シマエナガなどを、比較的簡単に撮影することができる。飛行機を使って北海道に2〜3日出かけ、確実に撮影したい人にはお勧めの場所だ。
 ただ、西岡水源池での撮影は、今回の取材の中ではおまけみたいなものなので、気合の入り具合はイマイチ。そんな時は、不思議なくらいに寒さがこたえる。

 フェリーは、2月1日の23時30分発、敦賀行きに乗船するが、船はすでに遅れており、出発は2日の早朝4時30分頃になりそうだ。
  
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影メモ 2003年02月


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