撮影日記 2026年3月分 バックナンバーへTopPageへ
 
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● 26/3/23 人を忘れる

 多分、SNSの発達で情報過多になっているからだと思うのですが、政治家の話に代表される、「人や社会はこうあるべき」的な話を聞くと、最近妙に疲れます。
 その手の話はだいたいギスギスして、またどれだけ話したところで分かり合えるわけでもありません。
 確か橋下徹さんだったと思うのですが、
「政治は昔だったら殺し合いなのだから、それは当然」
 と言っておられたのを思い出します。
 人のあり方の話はとても大切だけど、僕は、その手の話ばかりの社会には住みたくありません。人の暮らしの中にも、人の秩序ではないものも必要だと感じます。
 何もかもがが人のあり方の話に結び付いている人のことを、世間では「活動家」と呼びます。
 なぜ自然が大切だと思うのか?は、自然愛好家の間でも人それぞれですが、僕の場合は、「人の秩序ではないものも人間には必要」です。
 僕が求めるその自然と、自然の保全活動をしているみなさんが考える自然とは、かなり違った概念でしょう。

 子供の時に、釣りの師匠に、
「師匠はなぜ釣りが好きなのですか?」
 と聞いたことがありました。
 すると師匠は、
「人間というのはね、俺が正しい、人はこうあるべきだと言いたがるくせに、そんなことを考えてない時が一番幸せなんよ。でね、釣りで魚が針にかかった時は、俺が正しいみたいな話は忘れてしまうから、わしは釣りが好きなんや。魚がかかった時はそれどころやないもんなぁ。」
 と話してくれました。
 師匠に連れられた魚釣りが楽しかったのは、おそらく、そんな時間だったからでしょう。
 また師匠からすると、小学生の子供に、人はこうあるべきと主張したところで、話しにはならないでしょう。
 そんな師匠も、僕が大人になるにつれて、「人はこうあるべきだ。」という話が多くなっていきました。
 そういう意味では、小さな子供といっしょに何かをするのは、むしろ大人にとって、とてもいいことなのかもしれません。

 ふと頭に浮かんだのは、生物写真家の森久拓也さんです。
 森久さんは息子さんとともに過ごす時間がとても幸せなので、以前はいつ死んでもいいと思っていたのが、死にたくなくなったのだそうです。
 子供の面倒を見なければならないではなくて、その時間が幸せだから一緒に過ごしたい。
 何かをしなければならないではなくて、それが幸せだからやっているは、森久さんの著作にも表れていて、「光と闇の生き物図鑑」には、義務感や責任感や気合だけでは到達できない何かが写っているように、僕には感じられます。
 また本のプロフィールには、「一児の父」と記されています。 


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● 26/3/20 相撲

 何でもない日常の一コマのはずなのに、妙に心に残り、長年覚えていることがあります。
 僕が中学の時、同級生の安達君が大相撲の話をしたので、相撲をよく見たことがなかった僕は、
「相撲っておもしろいと?」
 と安達君に聞いたら、
「おもしろいよ。」
 と返ってきました。
「誰が強い?」
 と聞いたら、
「隆の里」
 と教えてくれ、隆の里は、のちに横綱になりました。
「他は?」
 と聞いたら、
「まだ番付は下だけど、小錦というとんでもなく強い力士が近々上がってくる。」
 と予想をしてくれました。
 安達君の話を聞いてテレビで相撲を見てみたら、確かに面白くて、その日以降、大相撲の中継を楽しみにするようになりました。
 安達君と話をしたのは、直方第三中学校の下駄箱のあたり。恐らく何かの学校行事で、学内を移動中のことでしょうが、安達君との会話の瞬間のみが、鮮明な記憶として、いまだに残っています。
 当時の力士のみなさんの番付は、横綱が千代の富士、大関は隆の里、琴風、朝潮、若島津関でした。
 その番付から判断すると、1983年のことだったようです。
 僕が応援したのは、大関若島津でした。
 「南海のクロヒョウ」というニックネームの通り、かっこよかったこともあるけど、力士としては体が小さかったこともあり、ついつい応援したくなりました。
 その若島津さんが死去したとの報道があり、ふと安達君のことを思い出しました。
 安達君は、小学校からの同級生ですが、大人びていました。
 深夜にラジオを聞いたりとか、僕とは別世界の人でした。
 風貌は、作家の開高健さんみたいな感じで、文化人のオーラが漂っていました。
 
 なぜか分からないけど妙によく覚えていることは、僕の場合、後々になって、「ああ、そうだったのか!」と心に残った理由が判明することが多いのですが、大相撲の話に関しては、いまだに何も思い当たりません。



● 26/3/13 確立されていない仕事の魅力

 自然写真みたいな確立されていない仕事の魅力は、全員が我流で、さらに他人がどうやっているかが、ほぼほぼわからないことです。
 他人のノーハウを、その作品やブログやSNSに記された文章から想像するのを密かな喜びと感じている人は、業界に少なくないでしょう。
 面識がある人なら、疑問に感じたことを、多少は聞くことができます。
 でも全体像となるとほぼほぼ分からないし、分からないからこそ面白いのだと思います。
 昔、タレントの石田純一さんが、不倫は文化と発言し、「世の中にはしのぶ愛みたいなものもある」的なことを言ったのをふと思い出しました。
 表にならないからこそ惹かれる、秘密の要素がある何かです。

 ともあれ、僕は、本の構成を考える際には、パワーポイントのようなソフトで、その日作りたいと思った箇所から順にページを作り、それを足していきます。
 台割的な設計図は作りません。
 台割を作らないと全体像が見えないので、ページ数が合わなくなったりしますが、そんなことは気にせずに、一通りのページを作成し、あとで、指定のページ数に収まるように整えます。



 全体が出来上がったら、毎日、特に頭がよく働く時間帯に、目を通し、その時に感じたことを反映させます。
 やがて、これ以上扱うところがないと思ったら、出版社の人に提出します。
 おもしろいのは、もうできることはないと思っても、編集者に見てもらうと新たに何かが見つかることです。
 編集者の仕事と言えば、形式を整えるみたいな事務的な仕事をイメージする人が多く、またそんな編集の仕事もたくさんあるのでしょうが、僕は、著者が作ったものがもう少し先に進むように、何かを言うのが編集者の仕事ではなかろうかと感じます。
 


● 26/3/4 生き物を相手にするとは



「うまれたよ!ミジンコ」で使用した写真の中には、撮りたいシーンがカメラの前で再現できず、長時間の待機を強いられたシーンがありました。
 トイレや睡眠や最低限の諸々の最中は諦めるとして、その他の時間は、ただひたすらにカメラの横で待ち続けました。
 トータルの待ち時間は、実質2ヶ月以上になりました。
 途中で自動撮影を導入してみたのですが、ミリ単位の生き物の撮影では通用せず、人力に頼るしかありませんでした。
 不思議なことに、しかたなく席を外している時に限って、イベントが起き、写真を撮り逃しました。
 そうして撮影が失敗したことが判明した時には、がっかりしつつも、次の撮影機会まで数日気を抜くことができるので嬉しくもなりました。
 テレビドラマの中で刑事さんが張り込みをするときには、必ず二人組だよな・・・。
 二人で組むことで能率が上がり、一人の時の倍以上稼げるのなら、組む選択肢はありでしょう。
 ただ、二人でも期間が長くなるときついはずだから、理想を言うと三人欲しいし、三人いれば、半永久的に撮影を続けられることでしょう。
 職種によっては三交代システムが採用される理由がよくわかりました。
 おそらくNHKの自然関係の映像などはそうして撮影しているのでしょうから、個人が太刀打ちできるはずもないし、個人は、組織ではできにくいことは何か?を多少意識しておかなければ、生き残るのが難しくなるかも・・・などと考えさせられました。

 カメラの横で待機する際に、いつ何時イベントがはじまるか分からない上に人手が足りない時に困るのが、家の呼び鈴を鳴らされること、電話、人との約束等です。
 中でも訪問販売と宗教団体の折伏活動は、極めて迷惑でした。
 以前は、どんなことを言ってくるのかを知るために多少は話を聞いていたのを改め、ついに、呼び鈴の隣に「お断り」を明記しました。
 それから、うちの場合、荷物が届けられる時にヤマト運輸と佐川急便は宅配ボックスに直行してくれるのですが、郵便局はなるべく手渡ししようと呼び鈴を鳴らすのが困りました。
 SNSなどを眺めていると、小包や宅配の荷物の手渡しを好まれる方もたくさんおられ、おそらく手渡はより丁寧な対応なのでしょうが、生き物を取り扱うような仕事をしている場合は、世間の「丁寧」がありがた迷惑になることがよくあります。
 一般に、まじめな人ほど、それが理解できない傾向があります。
 ちゃんとした社会では、自然に合わせる(何が起きるか分からない状態)などというのは許されないことであり、人は人の秩序に合わせなければならないからです。
 ふと、昔、業界のある方から、
「武田さんはただひたすらに集中をして写真を撮ってください。その他の業務は可能な限り、私どもが引き受けます。我々にできないのは、生き物を見て写真を撮ることだから。」
 とわざわざ言われたことを思い出しました。



● 26/3/2 更新のお知らせ

 今月の水辺を更新しました。



   
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