撮影日記 2025年11月分 バックナンバーへTopPageへ
 
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● 25/11/27 悪い流れ

 水中を撮影するための重たい機材を背負い、頑張って山道を歩いてようやく目的地についたものの、なにか体調がおかしいので、山をおりることにしました。
 妙に寒く感じたり、逆に急にとても暑く感じたりして、どうしても撮影に集中できませんでした。
 寝たら治るかもと2時間ほど車の中で眠っても、改善されませんでした。しかたがないので、予定を切り上げて帰宅しました。
 
 帰宅後に休養を取る前に、1つだけうまく動かなかった機材があったので、原因を確かめてから休むことにしました。
 その過程で、取り出したレンズに、キャップがついていないことに気付きました。
 カメラバッグの中をざっと一通り見たけど、見つかりません。
 どこでなくしたんやろう?
 しかたがないので買おうかとしたら、約1000円と思ったよりも高価でした。
 普段、お店で食事をするときに、1000円のものを食べるか2000円のものを食べるかと言えば、かなり迷うことを思うと、レンズキャップに1000円払うのが嫌になりました。
 もう少し探してみることにしました。
 そもそも機材を置いてある部屋はあまり明るくないので、カメラバッグの中をライトで照らそうとしたら、今度はライトが見当たりませんでした。
 体調が悪い、機材が上手く動かない、レンズキャプが見当たらない、ライトが見つからない、ととても悪い流れです。
 ライトは、散々探した結果、バッグの中の所定の位置にありました。ただ、いつもは立てているものが横になっていた結果、そこにちゃんとあることに気付きませんでした。
 レンズキャップも、カメラバッグの中にありました。ただ、他のレンズの下敷きになっていて、見えにくい位置にありました。
 ライトもキャップもいずれも黒いのですが、もうちょっと色を使って目立つ製品を作ってもらいたいものです。
 取材先で動かなかった道具は、道具と連動させるスマートフォンのアプリの問題だと分かりました。
 同じメーカーの撮影用品をコントロールするアプリが複数種類あり、間違えたアプリを立ち上げていました。
 やれやれ。
 体調が悪い時に限ってトラブルが起きたような気もするけど、体調が悪いので集中力が低くて、トラブルになっているのかもしれませんね。
 ともあれ、今回に限った話ではなく、何でもないことで戸惑ったり頭で考えていることができなかったりで、「無事是名馬なり」という格言を、最近よく思い出します。



● 25/11/20 便利だけど脆弱

 車内泊の取材の最中に、ポータブルバッテリーが使用できなくなりました。機器を充電しようとすると、電源が落ちてしまうのです。
 物が壊れるのはしかたがないけど、よりによって面倒な物が壊れてくれたもので、
「おもしろくねぇなぁ〜」
 とやる気が削がれました。
 最近の車にはUSBの差込口があるので、車のUSBターミナルで充電できる機器もあるはずですが、USBにもいろいろな規格があり、車の非力な規格では充電できない機器もあるでしょう。
 また、コンセントの差込口が必要な機器に関しては、お手上げであり、ポータブルバッテリーの故障は、ほぼほぼ取材の終了を意味します。
 さらに、帰宅後に修理に出すにしても、重たいし、大きいし、めんどくさいの一言。
 そこで、叩いたらなおらないかな?的な発想であちこち触ってみると、すべての機能が使えないわけではなく、一部だけに不具合が生じていることがわかりました。
 そんな壊れ方ってある?
 果たして、よくよく調べてみると、バッテリーに接続していたある一本のコードに問題があることがわかり、代用のものをつないでみたら、バッテリーは回復し、めでたしめでたし。

 ただ、僕は、ポータブルバッテリーの故障を、全く想定していませんでした。
 そして、ポータブルバッテリーが壊れたら、とてもめんどうであることに、今更ながら気付きました。
 かと言って、大きさと重さと発火等の危険性を考えると、予備を車に乗せるのも抵抗があるし、また予備を買おうにも高価だし・・・
 バッテリーに限った話ではなく、近年は、便利な世の中だけど脆弱でもあり、どんなに快調な時でも常に一抹の不安があり、晴れ晴れしない感じがします。
 頼む!最後までちゃんと動いてくれ、と道具に向かって祈る機会が多くなりました。

 それはともあれ、僕はちょっと前まで、もしも今自分が権力を持った政治家だったなら、国家事業としてバッテリーの開発を進めたいと思っていました。
 さまざまな電子機器を使う際に、頻繁にバッテリーが問題になり、世の中に超高性能なバッテリーが存在したらなぁと感じる機会が多かったからです。
 
 

● 25/11/6 更新のお知らせ

今月の水辺を更新しました。


● 25/11/5 仕事とは?

 自然写真の仕事は、2つの過程に分けることができます。
 1つは、売り込むための写真を撮ることやその準備をする過程です。別の言葉で言うと、契約が存在しない労働です。
 世間を眺めて何に近いか?と言えば、作業内容は主婦に近いと思います。
 2つ目の過程は、撮った写真を売り込んだり、企画が通った本の原稿を書くなど、契約が存在し、写真を現金化する過程です。
 いわゆる「お仕事」であり「ビジネス」です。
 写真撮影でも、出版社から絵コンテを渡されてその通りに撮影しなければならないケースなどは、こちらに属します。

「仕事」という言葉には幅があり、広義には、撮影の準備をすることも、売り込み用の写真を売り込むことも、依頼された写真を撮ることも、原稿を書くこともすべて含まれます。
 でも、通常人が「仕事」という時には、それは、ビジネスの部分を指します。
 例えば、僕がどこかに行って何か写真を撮り、
「僕の写真は一枚一万円で売れるのだから、今日は一万円分の仕事をした」
 と主張しても、なかなか通用しないでしょう。
「それは、買い手が現れて値段がついた場合の話ですよね。」
 と鼻で笑われるのがいいところです。
 そう言えば僕が子供の時、絵が趣味の親戚が武田家に遊びに来たことがありました。
 当時、親戚の絵は、一号三万円と絵画の協会から認定されていました。
 その親戚が、
「今ここに来る途中で、パッと一号の絵を描いたから、今日は三万円分の仕事をした。」
 と言ったところ、あとで母が、
「それは仕事とは言わない。仕事というなら現金化してから言うべき。」
 とつぶやいたのを思い出します。
 母が定義した仕事は、その作業を現金化したら幾らの価値があるのか?ではなく、実際に幾らのお金を得たかというビジネスのことでした。

 労働の部分とビジネスの部分のどちらがつらいか?と言えば、人それぞれでしょうが、多くの人は、ビジネスの部分を辛いと感じます。
 現代人のストレスの大部分は、手を動かす苦労よりも、人の要求にこたえる対人の苦労だからです。お客様は神様であり、神様に接するのは大変なのです。
 そして、僕も、そう感じる典型的なタイプです。撮影という労働は、どれだけ苦労しても、苦ではありません。
 一方で、そこにビジネスが絡むと、突然にしんどくなります。
 ビジネスの部分から目を背けたい僕は、写真を撮ることで「仕事をした」と思いたくなる傾向があります。
 でも、世間はそれを仕事とはなかなか認めないので、自分への戒めとして、昔母が親戚に対して言った言葉を思い出してみたりします。

 主婦は仕事か?という議論もありますが、たいていの場合、それは仕事という言葉の定義の問題です。
「主婦も仕事である」と主張する人は、契約が存在しない労働を仕事に含めていて、仮に私の労働に値段をつけるのなら、という話をしているのに対して、「仕事ではない」と主張する人は、実際にいくらで売れるかのビジネスのことを言っている場合が大半です。
 どちらが正しいわけでもなく、その人の中で、一貫してればいい話です。



● 25/11/3 下手の考え休むに似たり


NikonZ7 NIKKOR Z 17-28mm f/2.8

 魚の撮影で水中に放置したままのカメラの前に、思いがけずカエルがやってきました。やらせでカエルを置こうと思ってもなかなか置けないようないい位置に、いいポーズで。
 僕がいろいろ考えたり妄想する悪だくみよりも成り行きの方がむしろ好結果になるのは、よくあることです。
 それもあり、囲碁や将棋の 「下手の考え休むに似たり」 という格言は、とても好きな言葉です。
 写真に写ったカエルは、渓流に生息するナガレタゴガエル。九州には分布せず、うちの近所では見ることができません。
 夏の間は陸で暮らし、秋に水に入り、水中で越冬します。皮膚が少したるんでいるのは、表面積を増やして水中での皮膚呼吸を盛んにするため、と言われています。
 
 僕は撮影の際に生き物の性質を知ろうとします。そしてそこで得た知識を駆使して、先回りを試みます。
 それでもやっぱり、生き物の撮影は、最後は、偶然が大切と感じることが年々多くなってきました。
 撮影者の意志通りに計算通りに写っている写真よりも、撮影者も予測しなかった何かが写った写真に、より惹かれるようになってきました。
 生き物の撮影に限らず、人の社会でも、議論をして何かを決めなければならないケースは別にして、徹底して自分の意に沿うようにすることが、「僕が僕が、私が私が」という主張が、あるいはそうして成し遂げられたものごとが、嫌いになってきました。
 人の強い意志が働くと、どこかに必ずしわ寄せが行くから。
 またそのしわ寄せは、最後は自分に向かってくるからです。
 
 
   
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