撮影日記 2024年3月分 バックナンバーへTopPageへ
 
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● 24/3/29 カメ



 新しい住処を検討する際に、大きな足かせになったのが、スタジオと生き物の飼育スペースでした。
 共通点はいずれも、ただだだっ広い空間を必要とすることです。
 広いスペースを確保するのに一番簡単なのは、田舎に行くことでしょう。
 ですが、老人になった時のことを考えると、大抵の用事を徒歩で済ませることが可能な程度の町を選んでおいた方が手堅いでしょう。
 そんな町で、中でも大きな水と陸とを必要とする数匹のカメを飼える場所などとなると、そんなに簡単には確保できないのは、検討するまでもなく明らかでした。
 結論は、今日の画像のやり方です。
 カメの水場を地面に埋め込み、人が歩く場所を確保するために、水場の面積の半分程度に足場を被せました。
 カメに必要な陸地はわざわざ設けるのではなく、建物の周辺のスペースとしました。
 懸念は獣の存在です。
 うちのカメは大きいので、猫やイタチにやられるサイズではないと思うのですが、もしも外来生物のアライグマが周辺に分布をしているのなら、襲われる可能性があります。
 その場合は、覆いを被せるなど、対策を講じる必要が生じます。

 水場用の容器には、簡単に水を抜けるように栓を設けました。
 具体的には底にドリルで穴を開け、風呂用の栓を固定しました。
 開けた穴のサイズは35mm。小さな穴ならともかく35mmもの穴を開けるとなると、容器が割れるとか失敗もあり得るので、嫌な感じがします。
 容器はそこそこ高価なので、穴あけに失敗して買い直しなどというのは、失敗の中でも一番嫌な失敗なのです。
 言うまでもなく、高性能なドリルの刃があれば、作業はより確実になります。
 が、大きなドリルの刃は高価なので、安価なものを選択せざるを得ません。 
 湯水のように金があればなぁ・・・と思う瞬間です。
 


● 24/3/29 引っ越し

 仕事をしながらなので、引っ越しは基本一日に一往復。先日紹介した借り物の日産キャラバンにざっと荷物を積んで、新しい家に運びます。
 車の運転に要する時間は平均すると片道30分くらいなので、通勤している感じに近いでしょう。
 重要なのは、今の時期はいろいろな道具を使うので、運んだ道具がどこへ行ったかわからないのを避けることです。したがって、少量の荷物を運び、すぐにちゃんとした場所に収納します。
 多分まとめて運んだ方が楽なのでしょうが、仕事が多い今の時期はしかたがありません。
 新しい家の方が一回り狭いので収納はよく考える必要があり、日産キャラバン一台分の荷物を運ぶと、毎回1〜2時間くらい要します。
 広さの関係で収納しきれないものは、古い家を解体する際についでに捨てることになるでしょう。

 生活のための道具を除くと、最初は、使用頻度が低い撮影機材を運びました。
 次に使用頻度が低い工具の類。
 続いて使用頻度が低い飼育器具の順に運び、あとに残ったのは、これ、運んでしまって仕事に支障がでないかな?とよく考えなければならないものと、生き物です。
 いざそうなってみると、やっぱり生き物は厄介です。特に水中の生き物を運ぶのは、なかなか骨が折れます。
 ここ数日、体調が悪くて、生き物みたいなやっかいなものを相手にしている場合じゃないと作業を停止していたのですが、回復してきたので今日はプラ船と呼ばれる大きな容器を設置し、生き物を移動させる準備をします。
 プラ船の設置は地面に置けばなんのことはないのだけど、サイフォンで水を抜くときになかなか抜けずあとあと時間を食ってしまうので、手間はかかるけど、高い位置に置きます。
 プラ船1つの容積が180Lなので、約180キログラムもあり、それを安上がりに乗っける台をなんとかするのが今日の任務です。



● 24/3/25 zerene stacker



 輪郭にハイライトがあると、深度合成の際に像が乱れがちです。具体的には、輪郭部の部分だけ、幾つかの像が重なっているような状態になりがちです。
 その場合、僕が使用している zerene stacker にはレタッチというメニューがあり、手動で調整します。重ねた画像のうち、像を乱している画像の乱している箇所を排除します。
 問題は、レタッチが、なかなかメンドクサイことです。
 そこで、もっと簡単にレタッチできる方法はないのか?と探ってみたら、ありました。

 zerene stacker には、PmapとDmapの2つのモードがあります。
 Pmapは、重ねた画像をすべて合成する単純なやり方です。
 一方でDmapの方では、距離に応じて、合成する部分と合成しない部分とを設定するやり方です。例えば被写体の部分は合成するけど、背景は合成しないなどという設定が可能です。
 よほどに単純に合成できる画像以外は、Dmapを使用するのがお勧めです。

 まずは、Dmapで、ベースになる画像を深度合成します。
 合成したら、画像を拡大して輪郭の乱れをチェックし、乱れがなければそれで終了、乱れがあれば次のステップへ進みます。
 次のステップでは、同じ画像をDmapで再度合成します。ただし今度は、Dmapで合成する範囲を変更します。合成する範囲をグングン狭め、乱れている輪郭の部分だけを合成するように設定し、深度合成します。
 Dmapで合成する範囲を狭めると、輪郭の乱れが起きにくくなります。つまり輪郭の乱れは、ソフトを惑わす情報によって引き起こされていることになります。
 さて、それらの2枚のDmap画像をフォトショップで重ねて、輪郭が乱れている箇所のみ、狭い範囲を合成したDmap画像から取れば、完成です。
 zerene stacker のレタッチを使用するよりは、各段に早いはずです。
 それにしても、なぜ僕は
「メンドクサイな。楽する方法はないのかな?」
 と考えている時だけ頑張れるのでしょう?



● 24/3/23 うっかり


OM SYSTEM OM-1
M.ZUIKO DIGITAL ED 90mm F3.5 Macro IS PRO MC-14

 僕は横着ものなので、深度合成という技術が出てきた時に、これが普及したらめんどくさいなと思ったものです。
 特に道具に変化が生じることに、抵抗がありました。
 まずは照明器具です。
 深度合成はストロボでもできなくはないけど、チャージに時間がかかってしまうので、基本は定常光であり、自然光以外の光を当てるとするならばLEDライトが必要になります。
 それから深度合成をする場合、オートフォーカスのレンズが圧倒的に有利です。
 ただ、やってみると、それはそれで面白くて有効な技術だと感じます。

 ちなみに僕の場合、カメラで行うのはフォーカスシフト撮影までで、合成にはPCを使用します。
 フォーカスシフト撮影の操作はカメラによって操作が異なります。
 OMのカメラの場合は、メニューでフォーカスシフト撮影に設定しておけば、あとは普通にシャッターを押すだけです。
 ニコンのカメラの場合は、メニューでフォーカスシフト撮影を選び、そのメニューの中の開始を選択します。
 フィールドではOMの方式が優れています。
 でもフォーカスシフト撮影に設定されていることを忘れて撮影すると、普通に写真を撮りたいのに、フォーカスシフトが作動してしまううっかりがあります。
 その時に、あっ、フォーカスシフト撮影に設定されてた、とすぐに気づけばいいのですが、原因が思い浮かばない時は嫌な感じがします。
 一方でニコンの方はそうしたうっかりが起きない代わりに、フォーカスシフトの開始にちょっとだけ手間があるので、フィールドには向かないところがあります。
 うっかりが起きない操作になっているのは、とてもニコンらしいです。
 OMのカメラを使用すると、攻めている分、うっかりが起きやすくて、不安を感じることもあります。
「フォーカスシフト撮影に設定されていますよ。」
 とか、音声で警告してくれないかななんて思うことがあります。
 とはいえ、それでもフィールドではOMのカメラを使いたくなるので、操作は良し悪しではなく好みの問題ですが、OMの製品は、速射性を維持しつつ、もう少しうっかり対策が欲しいなと感じることがあります。
 


● 24/3/19 キャラバン



 訳あって、4月の上旬まで、日産のキャラバンを借りれることになりました。
 ディーゼルエンジンを積んだうちの古い100系ハイエース(トヨタ)と比べると、ガソリン車はとても静かだし、新しい車は振動が少ないし、最近の車は豪華です。
 設計が新しい車に乗ったことがない僕にとって、4ナンバーの車とは思えない乗り心地の良さです。
 もっとも僕の場合、車は辺鄙なところに行く取材の道具なので、壊れにくいみたいなことが重要なのですが。
 日産車には、大昔に一台だけ乗ったことがあり、悪い印象はありませんでした。
 当時は、日産車の評価が今よりも高くて、トヨタと日産とが競っていた時代でした。傾向としては手堅いトヨタに対して日産の方が意欲的。
 スカイラインやフェアレディZみたいな車を作ることに、より力が入っている印象でした。
 今でも、僕にはその当時のイメージがあり、日産は頑張って欲しいメーカーの1つです。

 さて、能登の震災の映像では、地震で生じた段差を乗り越えることができずに動けなくなった車をたくさん見かけました。
 中には、この程度の段差で?というようなケースも見かけました。
 最近の車はよく整備された道路を走ることが前提になっていて、バンパーが低く長く前に突き出していて、急こう配を登ろうとするとバンパーが突き刺さりやすくなっていたり、そもそも、地上最低高が低く、悪路には、明らかに弱くなっています。
 日本の町の道路事情はどんどん良くなっているし、ニーズに合わせているのでしょうが、震災や災害対策として、車は、もうちょっと悪路に強くなる規制をすべきではないかと感じます。
 まあ、僕がこんなところでつぶやいたところで、どうにもならないわけですが。



● 24/3/18 更新のお知らせ

 2月分の今月の水辺を更新しました。
 今月は、本来更新を予定していた日よりも、少々遅れました。
 ここ数ヶ月、「この日に今月の水辺を更新する」と予定していた日に更新できていて、成長したのかなと思っていたのですが、何のことはない、撮影の仕事が少ない時期で暇だっただけだと判明しました。
 いよいよ、生き物たちが活発な時期に突入します。



● 24/3/14 努力

 野外で見られる光の反射に関する物理現象を、先日撮影しました。
 問題は、その現象を、僕が見たことがなかったことでした。そこでまずは見てみよう、と心当たりの場所をウロウロしてみました。
 が、随分探してみても気配すら感じられず、とても見れる気がしませんでした。
 しかたがないので室内に作ったミニチュアで実験をして、どのような条件が整った時に見られる現象なのかを調べてみました。
 すると、幾つもの偶然が重ならなければ観察できないかなり特殊な現象だとわかりました。期限は3月14日。持ち時間から判断すると、第一感は、撮影不可能でした。
 そんな時にいつも考えるのが、どこまで努力をするかです。

 努力と言われたときに、パッと頭に思い浮かぶ「努力は報われる」という言葉は、人が考える理想の社会の在り方であり、人が求める秩序の1つでしょう。
 恐らく、平等とか公平という観念の上に成立している考え方ではないでしょうか。それが平等な状態であると。
 それに対して、世の中には人の秩序ではないものもあるよ、というのが自然の話です。
 したがって、すべてが努力でなんとかなる、というのは、自然の存在を認めていないし、努力を言い過ぎるのは、自然をどんどん小さくしていくことでもあります。
 僕自身の考え方を書くと、人の秩序はとても大切なもの。でも、あまりにも人の秩序に寄り過ぎるのは、好みではありません。
 人の理想通りにはならないことを受け入れるのも、人の秩序と同じくらいに大切なことではないかと思うのです。

 それはともあれ、件の物理現象の撮影ですが、今回は到底撮影不可能だと早々に諦め、買い物に向かっていたら、なんと!その途中で現象を見ることが出来ました。
 そして運よく車にカメラを積んでいたこともあり、無事撮影できました。
 実はそうして幸運で撮影できた仕事が、僕の場合、決して少なくありません。
 
 

● 24/3/9 企画

 高校野球/甲子園大会の常連校出身の元プロ野球選手が、
「高校時代の試合の話と言えば甲子園大会のことばかり聞かれるけど、実際には、常連校でも予選の方がはるかに厳しい。」
 と話すのを聞いたことがあります。
 これを僕の仕事に置き換えると、
「本の企画が通ってからの作業よりも、アイディアを絞り出して企画を通すまでの方がはるかに難しい。」
 になることでしょう。
 感覚的には、企画を通すまでが7割、企画が通ってからが3割くらいかなぁ。
 数字の割合はともかく、企画を通すまでの方に厳しいのは、僕だけ、あるいは自然写真業界だけの話ではなく、制作の仕事をする多くの人に共通することでしょう。
 それゆえに他人の企画をパクるは論外として、企画を考えた人や企画を通した人を粗末に扱うような振る舞いも、制作の現場では軽蔑されます。
 先日、あるテレビ番組の原作になったまんがの著者の方が、番組化の際に粗末な扱いを受けたことをきっかけに自殺してしまいました。それに対して多くの作家が抗議の声をあげたのは、記憶に新しいところです。

 でも正直に言うと、実は僕の中にも、アイディアを重視できにくい面があります。それよりも労働や実務の方が、ずっと大変で本質であるような気がする時が。
 例えばブランド品につけられた値札を見た時なんかがそうです。
 僕にはその値段がぼったくりで、むしろコピー商品の方が良心的な価格であるような気がすることもあります。
 あるいはよく世間で耳にする、経営者と労働者の対立、すなわち経営者が労働者よりもはるかに高額なお金を得るのはおかしいという意見も、わかる気がします。
 そう感じるということは、僕自身もどこか、企画力やアイディアの重要性を理解できていないところがあるのでしょう。

 そんな僕が、やっぱりアイディアって重要だと思い知らされるのが、自分で企画を立ててその企画を売り込む作業をする時です。
 一言で言えば、厳しいのです。
 それは、人からNOを突き付けられる不安であり、いわゆる挫折に結びつきやすく、写真撮影が上手くできないみたいなストレスとはまた質が異なります。
 
 

● 24/3/6 NIKKOR Z 20mm f/1.8 S



 僕が愛用しているニコンのカメラは、一度レンズの規格が変わったので、古い規格のものを新しいものに置き換えているところです。
 今回は、暗い場所で撮影するためのレンズの入れ替えです。
 新たに届いたレンズは、故障がないことを確認する程度に試し撮りしただけですが、その範囲だけでもいいレンズの予感がします。
 代わりに手放す古い規格のレンズは、大変に高価なレンズでした。
 どれくらい高価かというと、中古で手放す際の価格が、今回新たに買ったレンズの新品価格と大差ないかより高価なくらい。
 なぜそんな高価なレンズを買ったのかというと、暗い場所、中でも星を撮影するレンズにはより高い性能が求められるからです。
 その点、ニコンの新しいカメラの規格では広角レンズの設計が有利になるので、そこまで高価なレンズでなくても、同等の結果が出るのではないかと期待しています。

 今回僕は、以前よりも安価なレンズに置き換えたわけですが、中には、「高級品は値崩れしにくいので、中古市場が活発な撮影機材に関しては、結局安上がりになる」という意見もあり、これはあながち間違えではありません。
 買った値段から売った値段を引くと、確かに高級品の方がお得感はあります。
 ただ僕の場合、高価なレンズがカメラバッグに入っていると、どうも落ち着きません。その結果、せっかくの高性能なレンズも置いていくことが多く、肝心な時にレンズがないというお粗末な結果になりがち。
 僕には、ほどほどのものが合っているのです。



● 24/3/5 アングルファインダー



 ストロボのアクセサリーシューを足場にしたL字型の金具を使い、ニコンZ8でアングルファインダーを使用できるようにしてみました。
 使用したアングルファインダーはキヤノンのアングルファインダーC。それからL字型の金具に取り付けてあるシルバーの部品は、アングルファインダーCに付属の接眼部のパーツから取りました。



 このやり方ではストロボが使えなくなるのですが、僕にとってのZ8の魅力はスピード。
 ストロボを使うとそのスピードが損なわれてしまうので、Z8は自然光でスピード重視で撮影するカメラと位置付けました。 
 アクセサリーシューの代わりにカメラの三脚座を足場にすれば、ストロボも使用できるようになりますが、パーツが大きくなるので野暮ったくて、正直、あまり使う気になれませんでした。
 今なら、いずれ検討してみようと思っているのですが、カメラに取り付けるLブラケットを足場にするようなやり方もあるでしょう。



 因みに、こちらはOM-1用。
 やはりキヤノンのアングルファインダーCの接眼部のパーツからシルバーの金具を取り外し、OM-1用のアイピースに固定しました。直接は付けられなかったので間に一枚板を挟み、それぞれを板にねじ止めしています。
 OM−1用のアイピースは、板にねじ止めする際に丁寧に作業をすれば、ロック機能を生かしたままにできます。
 自作パーツでありながら、カメラに取り付けた際にはロックがきくという優れものになります。



● 24/3/3 LAOWA社

 映像用品ショーに参加した「LAOWA社」の方が自社の製品を紹介している動画を、ユーチューブで見ました。
 LAOWA社は中国のメーカーで、日本製にはない魅力的なスペックのレンズをたくさんラインアップしています。
 驚かされたのは、動画の中でレンズについて紹介していたのは社長さんであり、何と!社長さん自らがレンズの設計に関わっているのだそうです。
 日本の製品が、メーカーが作っている印象を受けるのに対して、LAOWA社の製品はカメラマンが作っているかのような印象を受けるのですが、なるほど!そもそも社長さんが技術屋さんなんですね。
 LAOWA社の製品の魅力の源がどこにあるのか、その一端を垣間見る動画でした。
 キヤノンとかソニーとかニコンくらいの大きな組織になると、トップは組織運営のプロになるのはしかたがないのでしょう。
 一方で、小さな組織はどこで勝負すべきか、具体的には製品やコンテンツで勝負すべきだと考えさせられる動画でした。

 LAOWA社の他には同じく中国のGODOXなども、これってカメラマンが作ってるんじゃないかと思わせるような、痒いところに手が届く製品を生み出しています。
 そうした会社が大きくなっていくときに、製品にどんな変化が起きるのかは、興味深いです。
 やがて、いかにもメーカーが作っているような製品に変化していくのか、それともやっぱりカメラマン目線であり、それが中国人の物づくりなのか。
 それはともあれ、僕が日本の政治家にガッカリさせられるのは、人を引っ張る立場になりたい人が圧倒的に多くて、何かの専門家や技術屋さんが少ない印象を受けることです。
 日本でトップレベルに農業に詳しいとか、トップレベルに福祉に詳しいみたいな人が大臣になってもらいたいと望むわけですが、現実には人間関係を駆使して大臣になる人が大多数です。
 当選何回とか、どれだけ派閥に貢献したとか・・・そのすべてを否定するつもりはないけど。



● 24/3/2 得意不得意

 僕は、カメラマンのタイプ的に言うと、オールラウンダーです。自然写真の使用料で生活している日本の自然写真家の中では、もしかしたら一番守備範囲が広いかもしれません。
 それでも得意不得意があり、苦手なのは建物と人物です。
 建物は、極まれに、例えば水族館とか、博物館みたいな場所での撮影があります。
 そうした被写体は逃げるわけではないので、何か写るには写るけど、上手くないなぁと毎回思います。
 何が苦手なのかよくよく考えてみると、「直線」の存在です。多分、僕は直線があまり好きではないのだと思います。
 「直線」は、自然界にはほとんど存在しません。
 人物は、だいたい、年に何度か撮影する機会があります。
 人物の場合は、写る人の気持ちがあるので、建物のように時間をかけて撮影することができない難しさがあります。
 過去には、依頼されて撮影したものの、恐らく僕の写真が良くなかったからでしょう、その写真が使用されなかったことが、覚えている範囲では3度ありました。
 さすがに最近は、使われないような写真にはならないものの、今でも分かって写真を撮っている感覚はありません。
 以前はゴールがどこにあるかがわからなかったのが、最近はゴールの在り処はわかったものの、ゴールへの道筋は見えない感じです。
 しかたがないので我武者羅に写真を撮り、その結果、いつの間にかゴールについていたというような仕事のやり方です。
 それはともあれ、また人物を撮影することになりそうなので、今回は、それ用の道具を1つ買ってみて、少々練習してみましょうか。



● 24/3/1 タブレット

 思いがけず印税が振り込まれていたので、取材用のタブレットを新しいものに更新しました。これまで8インチを使用してきたけど、老眼が進んで持ち歩いても見る気がしなくなっていたので、今回11インチにしたら、良く見えます。
 もっと早く更新するべきでした。
 僕は、現場では調べ事をしない方だと思うのですが、あくまでも状況次第。
「カタツムリハンドブック/文一総合出版」の取材などは、取材先でとにかく調べまくりました。
 その際にはタブレットがとても便利で、以降、必ず持っていく道具の1つになりました。
 それでも見にくくなった古いものをなかなか更新しなかったのは、言うまでもなくお金がないが第一ですが、第二に、設定が面倒もありました。
 ところが今回の買ったものはUSBコードでスマホと接続したら、アプリも含めてほぼほぼ丸ごとコピーされるようになっていて驚きました。

 字が見えない対策としては老眼鏡を使う手もありますが、僕は昔から目の前に物があるのが嫌いで、どうも眼鏡が馴染みません。
 同様に苦手なのが、顕微鏡をのぞくことです。目の前に顕微鏡の筒があると、頭が痛くなってしまうのです。
 困ったのは、顕微鏡を使用して細胞をスケッチする大学の実習でした。
 仕方がないので、ちらっと覗いてあとは記憶でスケッチしたら、「絵がいい」と当時助手だったM先生から絶賛されました。恐らく実物を見ない方が描くことに集中できるので、上手な絵が描けるのだと思います。
 困ったのは、
「う〜ん、実に絵がいい。」
 とM先生が、まるでマンツーマンのマークのように僕の後ろによくやってくることでした。
 さすがの僕も、先生の前では見ないで適当に描くことができず、顕微鏡をのぞくふりをせざるを得ませんでした。
 まあ今なら、
「僕は山下清みたいに、一度みたらその通りに描けるんです。」
 などと出まかせを言うところですが。
 やがて4年生になり、研究室に配属される際に、廊下でM先生から、
「君はどこの研究室を選んだの?」
 と聞かれたので
「環境生物学にしました。」
 と答えると
「あの凄い絵が生かせないじゃない。」
 と残念がられました。
 でも実は、決して謙遜ではなく、僕は絵が下手くそなのです。
 
 ともあれ他にのぞき込むものと言えば、カメラのファインダーも、形によっては苦手です。
 所有したことがあるカメラではソニーのRX100シリーズなど、覗き窓が隅に寄っている機種はダメでした。


   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2024年3月分


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