撮影日記 2023年8月分 バックナンバーへTopPageへ
 
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● 23/8/30 引っ越し

 来年以降の仕事や企画の打診が、ここひと月くらいで幾つかありました。
 そんな時、普段の僕は割と安請け合いする方なのですが、今年は、例年とは少々事情が違いました。
 そう遠くないうちに区画整備に伴う引っ越しの予定があり、引っ越しの詳細がどうなるかが決まらない限り、打診に返事ができないのです。

 僕の場合、特にやっかいなのが撮影用に飼育している生き物の引っ越しです。
 今すでに仕事を引き受け撮影用に飼育したり繁殖させている生き物が、引っ越し先でもちゃんと維持できるかどうか。
 それに対して打てる手と言えば、引っ越し先の環境を考え抜いて可能な限り整えることくらいでしょうか。
 それには十分な時間が必要になるわけですが、時間を使おうにも、今度は役所の予定の進展具合というまたまた厄介な要素が加わってきて、ますます予定が立ちません。役所が立てる予定は、ひどくその通りにならないとは聞いていたのですが・・・
 ともあれ、今まで僕がわりと仕事を安請け合いできたのは、安定した環境があったから、と今回しみじみ思いました。
 
 

● 23/8/28 トンボの飛翔



 カメラのストロボを取り付ける箇所に、ストロボの代わりに照準器を取り付けて、飛んでいるトンボを撮影してみました。
 カメラのファインダーをのぞきながら飛んでいるトンボを追いかけると、ピントが合ってない状態ではトンボがぼけて見えなくなるので、その姿を追い続けることがとても難しくなります。
 その点照準器なら、いつでもトンボの像が見えるので、見失うことなく楽に追いかけられるのです。
 実は、照準器を使用するのは初めて。邪道だと思っていたのに、使ってみるとなかなか有効でした。
 まずは、照準器が捉える場所と、カメラのレンズが捉えている場所が同じになるように、照準器を調節します。
 すると、照準器でどこかを見れば、おのずとレンズも同じ場所を見るようになります。
 あとは、照準器でトンボを追いながら、カメラのシャッターを押すだけ。  
 カメラはOM-1を使用しました。
 オートフォーカスにセットしておけば、ピントはカメラが勝手に合わせてくれます。
 さらにOM-1の被写体認識機能を野鳥にセットしておくと、鳥のついでにトンボも認識してくれて、ピントが合う確率が上がります。
 とは言え、飛びまわるトンボを撮影するのは、現実にはそんなに簡単にはいきませんが、トンボくらいの小さなものの場合、人がカメラのファインダーをのぞきながら撮影するよりも、ずっと確率が高いでしょう。
 OM-1には撮影する距離を指定できる機能があるので、1.4〜5Mの範囲のみを撮影するようにセットして、カメラが遠くにピントを合わせようとしないようにしました。
 鍵になるのは、カメラのオートフォーカスの性能です。
 次はニコンのD500で試してみる予定です。



● 23/8/24 カメラバッグの話(2)

 カメラバッグは、撮影に必要な機材を運ぶためのもの。
 だとすると、カメラマンはまず撮影に必要なカメラやレンズを選び、次にそれらの道具が入るカメラバッグを決めるのが順序です。
 でも僕は、先にカメラバッグを決めて、そのバッグに入る機材という観点でカメラやレンズを選ぶことが多いです。
 したがって僕の場合、カメラバッグが変わると、撮影に持っていくカメラやレンズも変わります。
 二ヶ月ほど前に長い間使用してきたタムラックのカメラバッグを引退させジッツオの製品に変えた際にも、普段レギュラーとして持ち歩くカメラやレンズが顔ぶれが変わりました。
 カメラバッグに合わせて選び直した機材を眺めていると、ふと、大学時代のことを思い出しました。
 当時大学院の博士課程に属していたYさんから、ある日、
「おい武田、聞いてくれよ。」
 と声をかけられたのでした。
 魚好きのYさんが魚を飼育するための水槽をペットショップに買いに行ったところ、アルバイトの店員に、
「お客さん、まずは魚を決めないと。魚が決まったら水槽が決まる。」
 と説教をされたというのです。
「先に水槽を決めて、その水槽で飼える魚を飼育するやり方もある。」
 とYさんは怒り心頭でした。
 中身を先に決めるのか、入れ物を先に決めるのか、何だか僕の撮影機材選びと似ているではありませんか。
 山口大学の理学部には博士課程はありませんでしたが、Y先輩は岡山大学の博士課程に籍をを置いて、山口大学で研究をしていました。
 山口大学の千葉先生と岡山大学の山口先生とが親しくて、そういうやり方が可能だったようです。
 Yさんはその博士課程を中退し、ある年、名古屋港水族館に就職をしました。
 カメラバッグをきっかけに先輩のことを思い出してインターネットを検索してみたら、一枚だけ、水族館に勤務中の笑顔のY先輩の画像が見つかりました。
 Yさんは、学生時代から、写真に写る時はいつも満面の笑顔でした。
 Yさんに頼まれてYさんのポートレート写真を撮ったこともありました。
 洞窟愛好家でもあったYさんは、ある時、ど派手な黄色の洞窟探検用のつなぎを外国から取り寄せて購入し、それを着用した姿を撮影して欲しいというのです。
 人物の撮影には全く自信がありませんでしたが、適当に撮影したら、自分でもびっくりするくらいによく写り、Yさんも
「お前は写真上手いな」
 と喜んでくれました。
「カメラがいいんじゃないですかね。」
 と言ったら、僕のカメラを手に取りファインダーをのぞき、
「なんでおまえのカメラは像がこんなに明るいの?昔借りたO君のカメラと全然違うぞ」
 と感想を話してくれました。
 Yさんが以前借りて使ったカメラはオリンパス。一方で僕のカメラはニコン。
 ニコンは伝統的にファインダーが上質で、当時から、ニコンのカメラのファインダーは、他社のものよりも見やすかったのです。



● 23/8/23 カメラバッグの話(1)



 フィルムの時代から長く長く愛用してきたお気に入りのカメラバッグ・タムラック752が、日本で手に入らなくなったのはもう随分前のことです。
 以降、程度のいい中古をオークションで手に入れては、ボロボロになるまで使い潰してきました。
 でもその程度のいい中古ももはや流通しなくなり、タムラック752は、ほぼほぼ手に入らなくなりました。
 しかたがないので、新しいカメラバッグを購入することにしました。
 野外の撮影現場で壊れたら困るものは、カメラ以上に靴やカメラバッグであり、カメラバッグのショルダーが劣化で取れたり生地が破れたりしたら、とても面倒だからです。

 タムラック752と同じ構造のカメラバッグは僕が知る範囲では存在しないので、全く違うタイプの製品を探すことになりました。
 その中では今人気のシモダが欲しかったのですが、50000〜60000円と高額なのでシモダに似たより安価な製品を探して三脚で有名なジッツオに決めました。
 いろいろなお店で値段を調べてみると、アマゾンの価格では約43000円、ヨドバシでは約40000円。まあ40000円は覚悟しなければならないか・・・と思ったら、ヤマダ電機の通販では36000円台で購入できました。
 何でここだけ安いんだろう?近々製造中止になる製品で、その店舗在庫の処分なのかなと思っていたら、意外にもメーカーからの取り寄せでした。
 そして僕がポチった直後に、ヤマダ電機の通販サイトでは、その製品の取り扱いがなくなりました。
 値段の間違えだった?
 ヤマダ電機とジッツオの輸入代理店の間には便が少ないのか、この時代に通販でこんなに待つのか?という感じで、到着までにやや時間がかかりました。
 が、無事に物は届き二か月くらい使用してみて、なかなかいい製品じゃないか!と感じています。
 ともあれ、カメラバッグが変わったのです。



● 23/8/14 インターネットの話(2)

 以前は、他人のホームページやブログを見ないのは、僕にとってあり得ない勉強不足でした。ところが近年は、自分でも驚くほど見なくなりました。
 巡回する予定のサイトを一堂に集めた「巡回」というフォルダーは相変わらず存在するものの、海野さんの小諸日記を見て、新開さんのブログを読んだらだいたいおしまい。
 他人のサイトを見なくなった理由はいくつかありますが、1つは、ツイッターのような猛烈な拡散力とスピードのメディアが登場して見る必要がなくなったからでしょう。
 最近は、世間のニュースや撮影に役立つ情報の類は、たいていツイッターのタイムラインで知るようになりました。
 本来ニュースを伝える場であるはずのニュースサイトや自然写真に関するサイトは、ツイッターで目にした情報に興味を持ちもっと知りたくなった時に見るものになりました。
 最低限知っておいた方がいい情報が、ツイッターのタイムラインの中だけで得られるようになったわけです。
 ただそれがすべてではなくて、他には、年を取るにつれて以前ほど他人のすることや新しいことに興味がなくなった面もあります。
 これは僕に限らず、僕の身の回りの長く付き合いがあるみなさんにも、しばしば当てはまる印象があります。
 みんな年を取ってきて、日常会話の中で、「あっ、この人言うことが古くなってきた」と感じる機会が増えました。
 興味深いのは、そうして古くなっていくときに、本人は自分が古くなっていることに気付いていないことです。古いかどうかは比較なので、新しいものを知らない人には自分が古いことが分からないのです。
 ということは、そんなことを書いている僕も、間違いなく、古くなっていることでしょう。
 こんな風に人は年を取るんだろうな、なんて思う機会が多くなりました。



● 23/8/14 更新のお知らせ

今月の水辺を更新しました。



● 23/8/12 インターネットの話(1)


 
 今日の画像は、7/4日に投稿した僕のツイッターの画面を一部切り取ったものです。
 赤丸で囲まれている数字は、この投稿が誰かのPCやスマートフォンに表示された回数で、22万3千回台となっています。
 僕はこの手の数字にあまり興味がないので詳しくないのですが、多分、少ない数字ではないものの、無茶苦茶に多い数字でもないはずです。
 僕のフォロワーはわずか3700人台なので、22万3000から3700を引くと21万9300人となり、この投稿を見た大多数の人は、僕のフォロワーではなかったことになります。
 なぜそんなことが起きるのか?と言えば、ツイッターには誰かの投稿を拡散する機能があるからです。
 上の画像で言えば、青で囲まれた数字がそれ。1515人の人が、「この投稿、みんなも見てよ」と僕の投稿を広め、さらに22人がコメント付きで広めました。
 Facebookにも同様の「シェア」という機能があるのですが、Facebookの場合、「シェア」の機能を使用する人はあまりいません。したがってFacebookに何かを投稿しても、自分の友達の数よりもその投稿が広まることは、ほぼほぼないでしょう。
 Facebookは基本的に友達に対して発信する手段。
 ツイッターは、友達の外にも発信する手段。誰かが言っていることを広める文化だと言い換えてもいいのかもしれません。
 この広める文化は、インターネットに加えてツイッターのようなアプリがあって初めて可能になる過去にはあまりなかったものであり、年配の人には理解ができにくい傾向があります。

 ともあれ、この日僕が投稿したのは、晴れのちゲリラ豪雨のち晴れの風景で、雨上がりに虹が出る動画でした。
 その手の取り留めのない動画が22万3千回表示されるということは、政治的なことなど意見の対立が起きやすい発言をすると、大炎上してしまうことを意味します。
 ツイッターは、今、何がデリケートなのか、世の中の最先端を知るとてもいい手段でもあります。
 生き物の話題の中にも、昔は通用したけど近年は好まれないものがちょくちょくあります。
 僕の場合は、自分の投稿を拡散したいというよりは最先端のことを自分が知っておきたい気持ちが、ツイッターを使用する主な理由です。



● 23/8/9 個性

 「人はひとりひとり全員違うんです。」
 という主張は、平たく言うと個性の話です。個性は、写真みたいな活動をしているとよく耳にする概念です。
 ところがその写真でも、仕事の現場では個性はあまり通用しません。求められるのは、個性よりも共通性です。
 例えばお医者さんが患者さんに薬を処方し、その薬の効果について伝えるときに、
「この薬の効果は、ひとりひとり全員違うんです。」
 と人の個性について説明したならば、薬がどう作用するか分からないということなので、患者さんは困ってしまうことでしょう。
 実際には、人の体はひとりひとり全員違うのだから、当然薬の効き方も全員違うわけですが。
 個性という概念を持ち出すと、しばしば、物が言えなくなってしまいます。
 患者さんはそんなことよりも、今の段階で分かっている部分を教えてよ、と感じることでしょう。
 そこで、
「この薬は通常、こんな効果を発揮します。」
 と一般的な話、つまり共通点について伝えることになります。
 個性の話は、まず共通点の部分がきちんと押さえられた上で、その次にでてくるものです。
 お医者さんが効くと説明した薬が効かなかった時に、
「実は人の体はひとりひとり全員違っているから、この薬が人によっては効かないこともあるんです。ならば別の方法を試しましょう。」
 と。

 写真業界で華々しく成功した人が
「個性が大切。」
 と主張するのは何度も聞いたことがあります。
 でもそうした人たちの作品を見てみると、例外なく、個性以前に共通性の部分がしっかり押さえられています。
 一見、個性が華々しいように見えて、本人もそう思っていたとしても、実は、共通点の捉え方が極めて上手な人だったりします。
 「つぼ」を知っているという言い方がありますが、「つぼ」とは共通点のことです。
 また共通点は、基本と言い換えることもできます。
 
 

● 23/8/7 リングストロボ



 昨日紹介したGODOX RING72はLEDライトですが、こちらのサンパック auto DX12R はストロボです。
 購入したのはまだフィルムの時代。
 当時動物写真の登竜門と言われたアニマ賞に応募された作品の中に、魚眼レンズとこのストロボの組み合わせで撮影されたものがあり、それが実に絵になっていて、自分も試してみようと購入しました。
 機材に関しては紙面の中では触れられておらず、僕にはどうやってそれらの写真が撮られたのかが分かりませんでしたが、アニマ賞の関係者の方に聞いてみたら教えてもらえました。
 魚眼レンズには、その構造上、リングストロボは取り付けられないのですが、リングストロボのリングの中に魚眼レンズを入れてしまうような使い方だと聞きました。
 ちなみに、今うちにあるシグマの15mm魚眼レンズ( SIGMA15mm F2.8 EX DG DIAGONALFISHEYE)は、径が太くて、このリングストロボの中には入らないので、当時はもっと径が細い魚眼レンズが存在したのでしょうね。
 カメラマンは、確か篠山紀信さんの助手をしておられた方でした。
 当時、魚眼レンズ+リングストロボの発想がどこから来たのか、頭が柔らかい人がいるもんだと感じたものですが、ポートレートの世界ではリングストロボを好んで使用する人がいるのを知ったのは、割と最近のことです。



● 23/8/6 LEDのリングライト



 マイクロフォーサーズ用LEICA DG SUMMILUX 9mm/F1.7 ASPH.の最短撮影距離は「9.5p」。
 この9.5という数字はカメラの中の画像を記録するセンサーから被写体までの距離なので、レンズの先端からの距離はもっと短くて、最短撮影距離の9.5pで撮影すると、上の画像のように、レンズが被写体に触れそうなくらいの超接近戦になります。
 ここまで接近すると、被写体がレンズの影になってしまうので、普通の照明器具では照明出ません。
 そこでリングライトを使用してみると、リングライトでも9.5pは厳しいのですが、少しだけ引いてやれば実用になることがわかりました。
 その少しだけ引いた画像がこちら。写っているのは鳥の形をした押しピンで、長さが3pくらいです。



 これでもまだ、被写体よりも背景の方が明るくなっているのですが、この程度なら画像処理で対応できるでしょう。
 ちなみに、使用したリングライトはLEDのGODOX RING72です。



 GODOX RING72は、非常に品質が良くて大満足です。
 ただし、いくつか問題もあるので、書いておきます。
 まずは、付属の金具を使用してリングライトをレンズの先端に取り付けた場合、画角が広い広角レンズでは画面の隅っこにリングが写ってしまいます。
 そこで、付属の金具を使用せずにレンズフードにリングを固定しました。
 こんな感じで、リングの中にレンズが入っているような状態です。

 あと1つ、非常に明るいのですが、その分電池の減りが早いので要注意です。
 電池は、専用バッテリーボックスに単三を4本入れるか、他のGODOXのストロボと共通の専用充電池を使用するかの二択の設計。
 しかし乾電池ではあっという間になくなってしまうので、現実的には専用電池が必要でしょう。
 
 

● 23/8/3 OM

 オリンパスあるいはOMのカメラについて何かを書く時には、拡大に有利な規格が採用されている結果小さな生き物の撮影に適することばかりに触れてしまうのですが、実はそれ以外に痛感していることがあります。
 それは、機材の大きさや重さが適当で、写真を撮ることが軽快で楽しいということです。
 OM-1などのカメラボディーは、必ずしも小さく軽いというわけではないけど、心地よく撮影できる適度な重さになっています。
 そして何よりも、レンズが軽いのがとても大きい。レンズが軽いことがこんなに大きく撮影の楽しさを左右するものなのか!と実は驚かされるのです。
 レンズが重たかったり大きいと、それを支えられる三脚が必要になったり、その分他の道具を同時に持ち歩くことができなくなるので、道具の側の事情から「今日は何を撮る」と決める必要が生じます。
 その点OMの道具を使うと、広角レンズ〜超望遠までを同時に持ち歩くことが可能で、その日何の写真を撮るのか、臨機応変に対応できるのです。
 あとは、水に当たり前につけられるようになってくれれば・・・ 現在でもOM-1や一部もレンズでは防水防滴性能が優れていて、うっかり水につけてしまったくらいでは壊れないし、時にはカメラをシャワーで水洗いしたりもするのですが、それをもっと強化して、水深1M以内くらいでいいので、水中でも使えますよとなってくれれば・・・
 ちなみに僕は、風景を撮る時には、より大きなセンサーを採用したニコンのカメラを使用しています。
 風景の場合は情報量が多いのと、写真を大きく使用することが多いので、より高画素なカメラが欲しいから。
 そしてあと1つ、風景の場合は、逃げない被写体なので写真により高い精度が求められ、画面の隅から隅まで撮影中によく見ておく必要があり、高性能なファインダーのカメラが使いやすいからです。
 ニコンのカメラは、フィルムの時代の中判や大判カメラに近い使い方をして使い分けています。


   
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