撮影日記 2023年6月分 バックナンバーへTopPageへ
 
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● 23/6/30 たいせつなあいまいさ

 



 九州産業大学美術館で開催されている展示を見に行ってきました。
https://www.kyusan-u.ac.jp/ksumuseum/tennji/#tenji1220
 展示作業をする日に、僕は撮影の仕事が重なり美術館に行くことができなかったので、他の参加者のみなさんの作品は言うまでもなく、実は、自分の展示作品も初めて見ました。
 このタイプの展示の面白いところは、全く違うジャンルの作品に触れることができる点です。
 今の時代は求めさえすれば、日常的にいろいろなジャンルの作品に触れることができるのでしょうが、ジャンルが違うと、何か特別な縁でもない限りなかなか目に入ってきません。
 今回の場合は美術館のキュレーターの方が掲げた
「たいせつなあいまいさ」
 という共通のお題が、その特別な縁になります。

 それにしても、本当にいろいろな趣味、考え方、感じ方があるものです。
 いろいろな考えの人がいることは、日常生活の中でおきる小さな衝突の際に体感させられますが、それを衝突ではなく淡々と感じることができるのは、この手の展示に参加することの面白さだと感じています。

 僕は、生き物の生態を捉えたオーソドックスな自然写真を選びました。
 内心は、記録・報道に重きを置いたオーソドックスな自然写真は美術館には場違いだと思っているのですが、経験的には、生き物の生態をとらえた写真は、大多数の人にとってぶっ飛んだ世界だからです。
 果たして、展示全体を眺めてみると、自分がすごく浮いているように感じられるのですが、きっとそれでいいのでしょう。



● 23/6/26 更新のお知らせ

5月分の今月の水辺を更新しました。



● 23/6/21 みつけたよ カニ



 チャイルド本社の月刊誌 サンチャイルド 2023年7月号
 みつけたよ カニ
 全27ページ です。

 月刊誌のむずかしいところは、短期間で作らなければならない上に期限が絶対であることです。
 この本は、企画が決まった時期がやや遅くて、期間的に無理じゃない?と最初思ったのですが、担当の方とは付き合いが長くて人柄を良く知っていたので、上手くいかない箇所が生じた時に安心して相談することができるし、やってみることにしました。
 果たして予定を組んでみると、まさにギリギリで、組んだ予定がほぼほぼ1つも失敗できない状況。
 海の場合は天気に加えて潮もあるので、天候不順だったりするとアウトという状況でした。
 したがって毎回撮影にでかけるたびに、その日予定したシーンを絶対に撮りきる覚悟で出かけました。
 とは言え、生き物の撮影には上手くいかないこともつきもの。
 予定がこなせなかった日は、他の日に予定しているシーン代わりに撮れないか?と検討し、とにかく何かを撮ってかえりました。
 生き物の撮影において、間違えられない、というのはなかなか過酷な状況なのです。
 自分の顔は見えませんが、きっと難しい顔して撮影してたんじゃないかなぁ。
 ともあれ、制作が終われば、いかなる状況であろうが経験値になるし、勉強になります。



● 23/6/14 夜の田んぼで



 上がカエルの外観がよくわかるように撮影したもの。下は夜の雰囲気を重視したもの。
 照明器具は同一で、ディフューズしたストロボ一灯です。ストロボはカメラから切り離して、三脚に固定してあります。
 二枚の写真で違っているのはライトの位置のみ。ライトの高さが変わるだけでこれだけ写真の表情が変わるのだから、写真って面白いなぁと思います。
 物の本には、「ストロボは、安易に複数個を光らせるのではなく、まずは1灯を徹底して使いこなせ」的なことがしばしば書かれていますが、そうだなと最近感じることが多くなりました。1つの照明で撮影しようとすることで、ベストなライトの位置はどこなのか?を感覚的に覚えることができるのです。
 また1灯による照明の良さは、照明器具が1つしかないので簡単に位置を変えられること、つまり写真の表情を変えやすいことです。特にカエルのような生き物の場合は、複数の照明器具をいじっていたら、逃げられてしまう確率が高くなります。

 上の夜の雰囲気を重視した方の画像の右奥には、切れていますが、アマガエルのペアーの一部分が写っています。
 実は今日の画像は鳴いているアマガエルを狙っていたわけではなく、奥にいたペアーの産卵を待っている最中に撮影したものです。
 ところが、これが待っても待っても生み始めない。そこで鳴いているカエルを題材にして、光の当て方の練習をしたのです。
 アマガエルは通常夜の間に産卵しますが、件のペアーは明け方近くになっても産み始めないので、一昨晩は午前4時に撮影を切り上げました。
 疑問に感じたのは、なぜ産まないんだろう?ってこと。
 マイナス思考になった時に考えられるのは、目の前のペアーは、すでに産卵済みのメスにオスが抱きついたものだというケースです。
 そこでそのペアーを捕まえて容器に入れて置いたら、なんと!しばらくして容器の中で産卵しました。
 ということは、包接してペアーになっているアマガエルは、100%はないにしても、ほぼほぼ産卵に至るということかな。
 ちなみに翌日の夜は、容器の中で産卵したメスを、数匹のオスと同居させてみました。
 が、容器の中には数匹のオスがいるにも関わらず、そのメスはペアーにはならなかったことから、産卵を終えたメスはペアーにならない?
 だとすると、オスには産卵済みのメスがわかるのか、あるいは産卵済みのメスがオスを拒否するのか・・・
 いずれにしても、カメラマンは、ペアーを見つけたら卵を産むまでひたすらに待てばいいわけです。
 覚悟が決まったので、昨晩は、ひたすらに待ってみました。



 撮影が深夜に至る場合、僕は1時〜かろうじて2時くらいまでは平気ですが、3時くらいになるとは急激にきつくなり、気力を維持できにくくなります。
 そんな時は仲間がいたら最高だけど、僕の仲間は生き物にのめり込んで無茶苦茶なようでいて意外にちゃんとした人が多くて、翌日の仕事に差し障るような観察はみな揃ってしません。
 毎日サンデーな仲間は、なかなか得られないのです。



● 23/6/4 Nikon MC-N10


 右側に写っているグリップ(NIKON MC-N10)をカメラとUSB接続すれば、カメラの右手の機能を、このグリップから操作できます。付属のUSBコードは短いけど、一般にこの手の機器はあまり神経質ではなく5Mくらいのコードでも大丈夫なので、カメラを遠隔地操作可能です。
 まだ試してないけど、恐らく10メートルでも大丈夫でしょう。
 そこでカメラを現場にセットして、5M離れたところから操作しようとすると、グリップ接続時にはカメラの電源が入りっ放しになり生き物が出てくるまで電池が持たないので、いったんグリップをオフにしてカメラをスリープさせます。
 そして生き物が出てきた時にリモコンでカメラをスリープから起こしてグリップの電源を入れると、とても残念なことに、カメラのOKボタンを押さなければグリップを接続できない仕様になっていてガッカリ。
 OKボタンを押すためにカメラに近づくと、せっかく姿を見せてくれた生き物がまた逃げてしまいます。
 カメラに機器を接続した際に、接続しますか?と聞かれ、カメラのOKボタンを押すことに何の意味があるんやろう?接続しようとしているのだから、接続するに決まっているのに・・・
 開発するときに、もっといろいろなジャンルの人に試してもらえばいいのに。
 
 それを回避するには、グリップを接続したままでも電池がなくならないように、カメラに電源供給する必要があり、コードとモバイルバッテリーが増えてしまいます。
 些細なことのようで、フィールドでは意外に煩わしいです。
 特に、可能な限り道具を減らしたい地面がぬかるんでいるような場所では。


   
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