撮影日記 2022年8月分 バックナンバーへTopPageへ
 
 
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● 22/8/26〜31 いい場所

 生き物の写真を撮る人はよく
「被写体を画面の中心から外し、被写体の視線の方向に空間を作るのいい構図」
 などというのですが、実は、図鑑用の写真などは、基本、主要な被写体は画面の真ん中におきます。
 図鑑の場合は生き物そのものを見せたいのであり、趣味の写真で好まれる空間は不要なものだから。
 嘘だ〜、画面のど真ん中に被写体があるのは日の丸構図と言って悪い構図じゃないか、と感じた人は、お手元の図鑑を開いてみてください。ちゃんとした図鑑であればあるほど、それが徹底されています。
 僕は生き物の写真を撮っているので、生き物の写真の例を上げましたが、生き物写真限定の話をしているわけではなく商品撮影などでも同じで、例えばカタログに掲載される商品を説明する写真は、枠の真ん中に置かれます。
 何度かツイッター上で、
「君の写真は被写体が画面の真ん中に写っているから構図が悪いと写真愛好家に指摘された」
 というツイートをみたことがありますが、写真の構図はそんなものではなく、むしろ、そう指摘した人の方が、いわゆる一つ覚えになっている可能性が大です。



 上の画像のように、生き物だけでなく、同時に環境を見せるような写真でも、同じです。
 環境も同時に見せたいからと生き物を画面の中央付近からずらして端に置くと、途端に写真が売れなくなります。また稀に売れても、写真が使われる時には、生き物の位置が真ん中付近になるようにトリミングされてしまいます。
 ここまでは、僕のツイッターのまとめで、ここから先は、なぜそうなるのかの解説です。

 写真の画面の中で、真ん中付近は、一番目立ついい場所です。さらに追加すると、手前と奥とでは、手前の方が大抵の場合、いい場所になります。
 ピンと来ない人は、テレビ番組の画面を思い浮かべてください。タレントさんがたくさん座っているような時に、重要な人は画面の中央付近の前側にいます。脇役は、ひな壇などと呼ばれますが、奥や隅っこです。
 写真を撮る際には、一番重要な被写体は、一番目立ついい場所に置くのが基本です。
 いや、これはカメラマン目線の物言いであり、写真を見る人は、その画面の中のいい場所にあるものを撮影者は見せたいのだと認識します。
 一番いい場所に主要な被写体がちゃんとあるのが、わかりやすくて強い写真なのです。

 ただし、 画面の中の一番いい場所は、写真の絵柄によって違ってきます。中央付近ではない場所が一番いい場所になる場合もあります。
 それをうまく使って、主要な被写体を画面の中央付近から外すような撮り方もあります。
 というよりは、主要な被写体を画面の中央付近から外す場合は、外したその場所が画面の中で一番いい場所になるような状況が不可欠。そして画面の中央ではない場所が一番いい場所になるようなお膳立てがこそが難しく、そこに技術や見識が求められます。
 ちなみに、ちゃんとした出版物に使用されている写真(それしかなく、しかたなく使用された写真は別)で、一番いい場所に主要な被写体がない写真って、いよいよ滅多にありません。多分1%以下でしょう。
 写真の中の一番いい場所がわからないと言われることがあります。
 僕は、その写真を何も考えずにパッと見た時に、人の目が吸い寄せられる場所だと説明しています。



● 22/8/23〜25 スヌート


 画像は、ストロボの光をスポット状にするスヌートと呼ばれる道具です。元々は、洞窟の中で懐中電灯の光のような雰囲気で、生き物たちの写真を撮るために準備しました。

 分解するとこんな感じ。
 画面右のストロボは、元々はニコンのSB-R200でしたが、今はGODOXのMF12です。
 画面左のスヌート本体は、イノンの水中ストロボ用で、真ん中のアダプターは作ったものです。
 スポット的な光を、適切な位置に、適切な広さで当てる時に欲しいのがモデリングライトですが、ニコンのSB-R200もGODOXのMF12も、モデリングライトを内蔵しているので、こうした用途には適します。
 厳密に言うと、モデリングライトとストロボの発光部の位置のずれが原因で、モデリングライトが照らす場所でストロボが照射される位置は若干ずれるのですが。

 問題は、イノンのスヌートはそこそこ高価なことです。それから、取り付けに工作や加工が必要なことも。
 何で日本のカメラメーカーやストロボメーカーは、この手のアクセサリーを準備しないのでしょうね。ニコンのSB-R200には、カラーフィルターを取り付けるためのアクセサリーが準備されていましたが、どう考えてもカラーフィルターよりもスヌートの方がよく使うし、カラーフィルターなんてテープで貼ればいいだけなのに。

 そしてこれがGODOXのスヌート。
 格安で、しかもアダプターを介してGODOX製のいろいろなストロボに取り付け可能で、実にシステマチック。
 格安と書きましたが、以前は、GODOXのスヌートは他のアクセサリーと抱き合わせ販売になっていて約7000円くらいとなかなかの値段だったのが、中国の通販のアリエクスプレスで、個別に安く買うことに気付き、先日注文してみました。

 さて、ストロボに限らず三脚でもよく思うのですが、日本の製品は機種が違うと大抵パーツも違っていて、部品やアクセサリーが共用できるようになっていません。雲台のパーン棒とか三脚の脚を締めるネジとかストロボ用のアクセサリーは、異なる機種でも共通にしてくれれば、とてもありがたいのに。
 それに対して中国の製品は、実にシステマチック。
 その差は、どこから来るのでしょうね。日本人と中国人の考え方の違い?会社の構造の違い?
 ただ唯一ストロボのバッテリーに関しては、GODOXの製品は共用できるようになっていないのが、また不思議なところです。
 AD200とAD300のバッテリーなどは、バッテリーボックスにきちんとはまらないものの、テープで貼りつけるなどすれば互換性があるらしいのに・・・



● 22/8/21〜22 テクニック



 時々、見本を示されて、同じシーンの写真を撮ってくれ、という依頼があります。
 今回は、水槽の中の金魚の撮影でした。
 水の描写に一か所だけすんなりと真似ることができない箇所があり苦戦しました。最終的にはノーハウが分かったのですが、なかなか高度なテクニックが使われていました。
 どれくらい高度かというと、その写真の件の箇所を、初見で、ああ、こうして撮影しているとわかる人は、第一線で商品撮影の仕事をしているような人ならともかく、自然写真家ではほとんどいなだろうというレベルでした。
 解せなかったのは、見本の写真は、基礎的な技術に関しては失礼ながら決していい写真ではなかったことです。この技術力の人に、こんな特殊で高度でひらめきを要するテクニックが思いつくか?という疑問が残りました。
 ともあれ、撮影終了後に、時々、金魚の糞の写真ってありますか?と時々問い合わせがあることを思い出し、ついでに金魚の糞を撮影してみました。

 撮影に使用した金魚と水草は、二か月ほど前に、チャームというお店で飼育器具を通販で購入する際に、ついでに購入したものです。
 金魚自体は近所のペットショップでも売られているのですが、仕事が多い時期であり、横着をして通販にしたのです。
 小さな琉金にしては高価だったので、やっぱり近所で買うかと若干引っ掛かったのですが、二か月育ててみて、納得。
 とてもいい体型に育ってきました。
 恐らくは、お祭りの金魚すくい用などとは一線を画する、いい血統のものなのでしょう。
 
 

● 22/8/18〜20 更新のお知らせ

 7月分の今月の水辺を更新しました。
 今月は「海辺の緑」です。

 今月の水辺は、実はそれなりに負担になっていて、更新しようとすると、一ヶ月が巡ってくるのが早いなと感じます。
 撮影が慌ただしくて作文しているどころではない月もあるし、止めてしまった方がいいのかなと頭によぎる月もあります。
 でも更新してみると、ああ、やっぱり続けた方がいいと毎回感じます。
 この日記の場合は、勝手にこみ上げてきた思いを書いているだけなので苦はありません。
 でも、今月の水辺の場合はテーマを決めており、そのテーマに沿って自分の思いを定期的に形にしてみることは、まとめるのに長い期間を要する長丁場の撮影で、緊張を維持するのに有効だから。
 そもそも、今月の水辺の更新をやめてしまうことは、自分が掲げているテーマの1つが続かなくなることを意味し、掲げたテーマを放棄しているようではお話になりませんね。



● 22/8/13〜17 就職が決まって 髪をきってきた時

 去年、こんなことやりましょうか、と何となく打ち合わせていた仕事。その季節になっても連絡がないまま、今シーズンの撮影はもうあと少し間に合わないなという時期に差し掛かりました。
 僕は、まあ来年以降やねと切り替え、代わりに、空けておいた時間で自分のテーマで何か撮影しようと構想を巡らせワクワク。ところが、
「去年話したあれ、やりましょう。」
 という話になりました。
 問題は、時間にゆとりがないことです。どれくらいゆとりがないかと言うと、30ページ弱の本の撮影で、すべての撮影が計算通りにすんなりできたとすると、ギリギリ間に合うくらい。
 構想を巡らせていた自分のテーマでの撮影は、取りやめに。ユーミンの名曲「いちご白書をもう一度」の歌詞が頭を巡ります。

 就職が決まって 髪をきってきた時

 浮ついていた自分に別れを告げ、現実に向かう。まさに、そんな心境でした。
 その撮影が始まったのが7月の上旬。少なくとも9月いっぱいくらいまでは、息つく暇もないなと覚悟をしました。
 その場合に、一番の苦難は、気候です。
 穏やかな季節ならともかく、この暑さの中で、中でも日差しを遮るものが一切ないとくに暑い環境での長時間の撮影に自分が耐えれるかどうかは、正直やってみなければわかりません。

 猛暑の中で連日撮影して、気付いたことがありました。
 それは、自分が描いたイメージを撮影するのなら少々暑くても平気なのに、他人が描いた絵コンテ通りに撮影するのは、各段に難しいということです。
 自分のイメージ通りに撮影するのは、いわば自分の手癖みたいなものであまり頭を使う必要はありません。
 ところが他人が描いた絵コンテ通りに撮影するのは、絵コンテの意味を読み取ったり、その通りに撮れない場合にどう逃げるかなど頭を使う必要があり、暑いといい判断ができにくくなるのです。
 ともあれ、その暑さも、これからは少しは涼しくなるのかな。
 撮影は一番やっかいな部分をかろうじて切り抜け、圧倒的に不利な状況だったのが、五分に押し返したくらいまでには前進しました。



● 22/8/4〜12 カメラ

 パナソニックのカメラを一台手放しました。
 手放すと書くと、気に入らなかったと受け止められるかもしれませんが、実はその逆で、お気に入りで大切に使っていたカメラでした。
 自分が好きなカメラと自分の仕事に適するカメラとは、必ずしも一致しません。
 マイクロフォーサーズ機に関しては、今後は、オリンパスを使うことにしました。

 オリンパスの方を選んだ理由は主に2つあり、1つ目は、レンズのラインアップが、小さな生き物の撮影により適しているから。
 オリンパスとパナソニックのマイクロフォーサーズ機は、レンズに互換性があるのですが、手振れ補正に関しては、オリンパスのカメラにはオリンパスのレンズを、パナソニックのカメラにはパナソニックのレンズを取り付けた方がより高性能になり、1つのメーカーに統一した方が有利なのです。
 2つ目は、オリンパスのカメラの防水性の高さです。
 例えばオリンパスのカメラなら、干潟で泥まみれになりながらカニの写真を撮った後は、カメラをシャワーで洗うことができます。
 一方で、手触りとか操作性はパナソニックのカメラがとても優れていて、触っているだけで楽しくなります。それゆえに最近はオリンパスばかりを使っているのに、名残惜しくてパナソニックを持ち続けていたのです。

 1つ、これは残念だなと思うのは、パナソニックとオリンパスはマイクロフォーサーズという共通の規格を採用しレンズに互換性があるにもかかわらず、手振れ補正などの機能は、純正の方が優れていることです。
 共通の規格を採用するということは、オリンパスのカメラにパナソニックのレンズを、あるいはパナソニックのカメラにオリンパスのレンズを取り付けることが想定されており、その互換性がお互いの会社にとって強みになると判断しているはずなのに・・・
 互換性があるではなくて、一応互換性があるでは、共通の規格を採用したメリットが弱くなるじゃないかと思うのです。



● 22/7/24〜8/3 撮影以外の仕事




 何でもないことのようでいて、ストロボその他が、なんでこの向きに固定できないかなぁとなることがよくあります。
 そんな時にあれば結構役に立つのが、上の画像の矢印のようなL字型の金具。ちょうどいいものが売られてないので、時々必要な時に自作します。
 自作と言ってもL型をしたアルミの金具を買って、それに撮影機材でよく使用される1/4インチのネジ穴をあけ、けが防止のために金具の角を取るだけですが。
 アルミは軽いので、ちょっと厚め(僕は4〜5ミリ)の金具を選んで、ちょっと大きめに作ると、強力な固定力が得られます。
 1/4インチのネジ穴を切るタップは、具体的な使い道が決まっていなくても、カメラマンなら持っていればちょくちょく役に立つかも。インチネジを切れるタップはあまり売られていないので、通販で購入がお勧めです。
https://amzn.to/3OVTA1s

 この一週間は、大潮だったので、主に海辺での撮影でした。
 海辺の生き物の観察と言うと、干潮が定番で、普段水の中にいる生き物たちが陸に出てきて観察しやすいのですが、実は満潮もとても重要なタイミングで、海辺の生き物たちの産卵が見られたりします。
 今の時期、うちの近所では、大潮の満潮の時刻は日によって少しずつずれていって夕刻〜深夜。
 したがってこの一週間は、夜の撮影が続きました。
 先日も書いたように、夜間の撮影は体力的になかなかしんどくて、その間は撮影以外のことが滞りがちです。ちょっと機材を改良したいなとか、道具を買い足したいなと思っても、追っつかなくなります。
 厳密に言うと、そのくらいの時間ならがんばれば作れなくはないのですが、夜の撮影と潮のタイミングに自分を合わせることにエネルギーを取られて他のことをやる気にならないし、やる気にならない時にやってもだいたい何か間違えます。
 そして、大潮の時期が終わると、それらの作業に取り組みます。


   
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