撮影日記 2022年4月分 バックナンバーへTopPageへ
 
 
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● 22/4/27〜29 科学の話

 生き物は、同じ親から生まれた兄弟でも、一匹一匹全部違います。それを、
「これは同種ですよ。差異はノイズです」
 と同じにするのが分類学です。
 分類学に限らず、自然科学は基本的にみんな同じ。物事の共通点(本質)だけを抽出し、その他の差異をノイズとして排除します。

 それに対して、犬や猫などの動物を飼うのは、ある意味真逆の行為です。なぜなら、同じ両親から生まれた兄弟でも、飼い主にとっては全くの別物だから。
 近年は「科学で社会を納めるべき」と主張する人も少なくない時代ですが、そんな時代に科学とはある意味真逆の行為である犬や猫を飼う人は増えてるのは、もしかしたら、科学の物の見方に対して、人が社会がバランスをとろうとしているのかな?
 僕は、何となくそんな気がしています。
 反ワクチンの人なども、そうでしょう。
 僕がワクチンを打ってもいい理由は、治験の結果、同じ人間である他の人がワクチンを打っても大丈夫だったからです。でも人は全員違うという見方をすれば、僕がワクチンを打っても大丈夫かどうかは分からないということになります。
 
 科学に馴染みがない人は、中学の数学を思い出してみてください。
 数学では公式を用いて問題を解きます。
 つまり、たとえ数字が変わっても、同じやり方で問題が解決できますよ、同じことですよ、ということ。
 でも中には、数字が変わると、それが同じことだと思えない人がいます。数学が苦手な人です。
 僕は、科学の考え方が好きなので、数学の公式が理解できない人が、逆に理解できませんでした。
 でもそんな僕も、英語の文法で、英文にはSVとかSVOとかSVOCなどの型があります。型さえ知っておけば、あとは表面的に単語が変わっているだけで同じことなので、英作文は同じですよ、と言われても、どうしても同じには感じられませんでした。
 それを思い出すと、科学の物の考え方が馴染まないという人の気持ちも、よく理解できたりします。



● 22/4/24〜26 更新のお知らせ

3月分の今月の水辺を更新しました。



● 22/4/23 写真の役割分担


 イトミミズの撮影中に、泥の中で何かがモゾモゾしているのを見つけました。多分、シオカラトンボのヤゴだろうと掘り起こしてみたら、やっぱりそう。
 そこで、一匹持って帰って、白バック写真を撮ることにしました。

 白バック写真は、何のために撮るのか?と言えば、僕の場合、生き物の生息環境を表すためです。
 本の中で白バック写真を使えば、その生き物の形態をしっかりと見せることができるので、その分、その他の写真では、形態の描写に執着する必要がなくなります。その結果、野外で撮影する写真なら、野外ならばでの背景を見せることに力を入れることができるのです。
 白バック写真では生き物の形態を、フィールド写真では、生き物の生息環境を見せる役割分担みたいなものです。
 役割分担をするということは、白バック写真ではよりしっかりと形態の描写を、フィールド写真では、よりしっかりとした環境の描写を目指すことになります。



● 22/4/16〜4/22 もっと写る道具を



 もうずいぶん前のことですが、イトミミズの撮影に、大変に苦労をしたことがありました。
 子供の頃に家の周りの排水溝の中でよく見た生き物だけに甘く見ていたら、清潔になった今の世の中では、なかなか見つからないのです。
 見つけたとしても、狭くて暗い枡の中だったりして、撮影ができません。
 そのイトミミズを、撮影しやすい場所でたまたま見つけたので、撮影にチャレンジしてみました。
 恐らく写真を趣味にしている人の感覚では、イトミミズなんて・・・と思われるでしょうが、撮影の条件としては非常に難易度が高い被写体です。
 まずは、水の透明度がそんなに良くはないこと。
 それから、イトミミズは、細くてやや透明で描写が非常に難しく、おまけに常に激しく揺れるように動くこと。
 くっきり写ることに関しては最近のカメラは高性能なので、もっと写る道具をと感じる機会は減りましたが、今回久しぶりに、カメラの性能が付いてきてくれないもどかしさを味わいました。
 こんな被写体を撮影するのにもしかしたら適しているかもしれないレンズがあります。
 中国・ラオワ社の LAOWA 24mm F14 2X MACRO PROBE がそれです。
 しかし約20万円となかなか高価で、非常に特殊なレンズなので実際に機能するかどうかがわからず、なかなか手を出すことができません。
 ラオワ社に連絡を取って、試しに貸してくれとお願いする手もあるのですが・・・
 
 

● 22/4/8〜4/15 腕足動物


 シャミセンガイと名付けられていますが、貝の仲間ではありません。
 では何者か?と言えば、腕足動物に属します。

 動物には、消化管が作られる際に、先に口ができるものと、先に肛門ができるものがいます。
 先に口ができる動物の中には、扁形動物、袋形動物、環形動物、軟体動物、節足動物などがいて、腕足動物もその中に含まれます。
 ただ、扁形動物、袋形動物、環形動物、軟体動物、節足動物が、大学受験の生物で覚えておかなければならなかった言葉であるのに対して、腕足動物は、教科書や資料集にも出てきませんでした。
 だからなのか、それを知っている今でも、なんとなく馴染みがない感じがします。

 シャミセンガイを撮影するついでに、光で遊んでみました。
 殻の中を透過光で透かしてみると、内蔵が見え、もっと殻の中を見てみたいなと思います。
 ただ、殺して殻を開ければ殻の中がよりよく見えるわけですが、僕はそんな気になりません。
 そんな直接的な手法よりも、想像を働かせる余地があるくらいの、間接的な手法が僕は好きなのです。
 もしも科学者になら、そんなことでは失格でしょう。
 科学の世界では、より直接的な手法で物事を証明する必要があります。
 仮に殻を開けずに体の中を観察することがあるとするならば、それは生きている状態の生き物を調べたい時くらい。
 科学者に限らず、一般に、プロになればなるほど、決定力が重視され、直接的な手法を用いることが求められます。
 時々、自分はなぜ職業選択の際に写真を選んだのだろう?と考えることがありますが、僕の場合は、ただ物事を知りたいわけではなく、生きている生き物を見て、その過程で何かを知りたいということです。
 自分の日々の暮らしの中に、「想像」やここから先へは踏み込まないという領域を残しておきたいのです。



● 22/4/1〜4/7 工作



 
 キヤノンのイオスMシリーズは、外したいのに外せないカメラです。
 外したい理由は、なるべく使用するカメラのメーカーを減らしたいから。
 複数のメーカーのカメラを使用すると、カメラ以外に備品が多くなり物の管理が面倒になるし、何よりもお金がかかるし。
 特にバッテリーは高価だし、複数種類を持ち歩くのは、煩わしいのです。
 一方で外せない理由は、スペックが実にいいところを突いていて、使いやすくて代わりになるカメラがないから。
 まずは、小さくて画質がいいこと。
 それから、小さいカメラはどうしても操作性が悪くなるのですが、イオスMシリーズはさすがキヤノンという感じで、とても扱いやすいこと。
 また広角ズームの性能が非常に良くて、小さいのにとても性能がいいことなどなど。
 キヤノンのイオスMシリーズは、長い間M5を愛用していたのですが、ところどころ壊れかかってきたので、M6マーク2を購入しました。
 引退することになったM5は、「撮った写真の売り上げ」を「カメラを使った回数」で割ると、もしかしたら、僕が過去に購入したカメラの中で一番効率よくお金を稼いでくれたカメラかも。
 イオスMシリーズは、例えるなら多くの人がスマートフォンを使って気軽に写真をバチバチ撮るような感じで、気張らずに楽に写真が撮れてしまうカメラなのです。
 
 今日の画像は、まだ工作の過程なのですが、カメラを水に沈めるためのケースです。水に沈めると言っても完全に水没させるわけではなく、レンズのあたりまで沈めて使います。
 新しいカメラを買うと面倒なのは、自作のこうした道具をすべて作り直さなければならないことかな。


   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2022年4月分


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