撮影日記 2022年1月分 バックナンバーへTopPageへ
 
 
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● 2022/1/31 更新のお知らせ

 2021年12月分の今月の水辺を更新しました。



● 2022/1/25〜1/30 宗教と科学

 生物学の学生時代に、科学は、キリスト教という一神教の文化の中から生まれた、と教わったことがありました。
 僕は当時、それを考えるだけの経験がなく、へぇ〜と先生の話を聞くしかありませんでした。むしろどちらかというと、宗教と科学を結び付けるなんて、こじつけじゃないか?と内心思ったりもしました。
 ところが年を取るにつれて、なるほどなぁと思うようになりました。
 
 僕が理学部に進学した際に、とても驚いたことの1つが、実験をしてもきれいなデータなんて滅多に出ないことでした。
 虫の行動を機械的に記録しても、得られるデータには個体差がたくさんあり、10匹調べれば10匹がそれなりに違う行動をして、なかなか均一な結果にはなりませんでした。
 生き物の中では、まるで機械のようだと言われている虫でさえ。

 そこで、そのばらつきがあるデータを統計的に解析して、その中から1つの法則性を見出すのが科学です。
 つまり科学は、生のデータ(現実)の中から、ばらつき(多様性)を除外し、それらを1つの結論に整理する行為。そうして得られる真理を神とするなれば、科学は1つの神を見出す行為ということになり、そこがまさに一神教なのです。
 ところが、神様はたくさんいるとする文化の中で育っている日本人には、その一神教的な考え方が馴染みにくいというのが、先生の話でした。
 実験をしてばらつき(多様性)を含むデータが得られた時に、日本人は、その多様さをノイズだと見なして切り捨てるのではなく、そのそれぞれに意味がある(神はたくさんいる)と考える傾向があるというのです。
 先生は、どちらが正しいなどというくだらない話はしませんでしたが、科学を学ぶのなら科学の考え方を知り、理解する必要があると話してくださいました。
「宇宙の中で地球のことを考える時に、科学者はしばしば、地球は球だと考えるんです。実際の地球には山あり谷ありで地球は球じゃないでしょう?でも、そんなことを言っていると計算がややこしくなりすぎて何も調べられないし、地球を仮に球だと考えることで、わかることがたくさんあるんです。」
 という先生の話は、今でも時々思い出されます。

 科学者の中には、科学で国を治めるべきである、と主張する方がおられます。
 が僕は、科学はとても大切な軸だけど、日本の場合は、それで国を治めるようなものではないような気がしています。
 1つの真理を見出すよりも、もう少しゆるくて寛容な方が合っているような。
 単にモノを調べる際には、科学はとても有効ですが、そこに人の暮らしが絡んでくる場合には、その人がどんな文化の中で暮らしているかを配慮することが大切だと思うからです。、



● 2022/1/16〜1/24 外部モニターでピント合わせ

 大抵の生き物は人の存在を嫌うので、ほんの5Mでいいから、人がカメラから離れてシャッターを押すことができれば警戒心を緩めることができ、楽に撮影ができるケースがあります。
 そんな時に真っ先に思いつくのがカメラをWi-Fiでスマートフォンと接続して、スマートフォンの画面でライブビュー画像を見ながら遠隔地操作をするやり方でしょう。この方法の優れている点は、多くのメーカーのカメラで、ピントや露出を操作できることです。
 一方で弱点もあります。
 例えば、遅延があるので、動く被写体が相手の時は通用しません。
 それから、Wi-Fi接続時にはカメラがスリープできないので、カメラ、スマートフォン共に待ち時間の電池の消費が大きいことです。また一旦Wi-Fiが途切れると、再接続にはカメラの位置まで行って(=被写体に警戒される)カメラを操作する必要が生じます。

 HDMI端子があるカメラの場合は、数メートルのHDMIケーブルを使用して外部モニターを取り付け、そのモニターを見ながら、離れた場所からワイヤレスレリーズでシャッターを押す方法もあります。
 この方法のいいところは、カメラをスリープさせることが可能なこと。
 したがって待ち時間の電池の消耗を抑えることができます。
 撮影したい時には無線式のレリーズでカメラのシャッターを半押しにすれば、遠隔地からスリープしたカメラを目覚めさせることができ、カメラが目覚めると、カメラ側を操作することなし(被写体に警戒されることなしに)外部モニターに自動的にライブビュー画像が映ります。
 またHDMIケーブルを使用して外部モニターにライブビュー画像を映し出すと、像に遅延がないので、動く被写体の撮影にも通用します。
 一方で、ピントや露出を操作することはできません。
 露出はAEで対応できる場合も多々あるので何とかなるとして、問題はピント。
 したがって置きピンで撮影できる被写体には、HDMIケーブル+外部モニター+無線レリーズがよりよい方法でしょう。


 
 僕が使用しているゴドックスの外部モニターGM55は、専用のコードを加えると、何と!HDMIケーブルで接続する外部モニターであるにも関わらず、モニターの画面をタッチすることでカメラのピントが調節できるというので、コードを1本購入してみました。
 仕組みはこうです。
 GM55には2本のコードが取り付けられます。
 一本はHDMIケーブルで、カメラのライブビュー画像を遅延なしで映し出します。
 あとの1本は、GM55専用のUSBケーブルで、カメラと通信をしてピントを操作するというのです。
 問題は、そのUSBケーブルが対応していると明記されているのは、キヤノン、ソニーなどで、リストの中に僕が今使用しているニコンのカメラが含まれてないこと。
 果たして試してみたところ、AFは可能でしたが、手動でピントの位置を任意の量前後させる操作はできないことがわかりました。
 AFの場合はフォーカスポイントをモニター側で動かすことができないので、自分が望む任意の位置へのピント合わせはできず、残念。
 ニコンの他に、今僕が使用しているカメラにはパナソニックとオリンパスのカメラがあるのでそれらも試してみたいのですが、コードの規格が違っていて、変換するアダプターを注文することにしました。

 ちなみにGM55用のUSBケーブル(GMC-U3)は、僕が探した範囲では日本のお店では購入できず、アメリカのB&Hから取り寄せをしました。
 ケーブルの取扱説明書は、
 https://manuals.plus/ja/godox/gmc-u3-monitor-camera-control-cable-manual
 です。



● 2022/1/7〜1/15 引っ掛かること

 理由は分からないけど、妙に引っ掛かる物事があります。
 最近なら、サファリパークで20代の飼育員の方がトラに噛みつかれて手首から先を失った事件がそう。
 客観的に見れば他人事であり、日本の社会自体には影響がない、それ以上広がりがないタイプの事故なのに、妙にひっかかるのです。
 なぜそこまで引っ掛かるのか本当のところはわからないのだけど、事故にあった人はサファリに勤めるくらいだから、多分動物が大好きな人。そして、動物が大好きな人には、ああ、動物が好きで良かったと感じられる暮らしを送って欲しいと自分が思っているのかな・・・

 事故の原因は、前日にトラがちゃんと所定の場所に入れられてなかったことで、担当したのは20代の人。
 翌日、トラに襲われたのも、3人とも20代。
 20代の頃の自分を思い出すと、良し悪しは別にして、今よりも慎重ではありませんでした。
 それが、年齢を重ねるにつれて小さな危険をたくさん経験し、そのたびに自分を修正してより手厚く振舞えるように自分が変わっていきます。
 自分自身の20代の頃を思い出すと、20代だけにトラの世話をを任せるかなぁという思いがこみ上げてきたりします。
 また、監視カメラが1つあれば避けられるような事故でもあり、僕のような小さな個人でさえ監視カメラをいろいろと使用していることを思うと、管理者に対してどうにももどかしい思いがこみ上げてくるのです。
 
 

● 2022/1/3〜1/6 更新のお知らせ

2021年11月分の今月の水辺を更新しました。



● 2022/1/1〜1/2 人が決めたことではないもの

 元旦は、磯の生き物の観察に適する大潮だったのと、翌日が家族全員お休みで夜更かししても大丈夫だったこともあり、みんなで深夜の磯採集に行きました。
 犬をどうしようか?と少し悩んだのですが、深夜に家族全員が留守をしたことは過去に一度もないので不安にさせるだろうと考え、犬も一緒に。
 元旦というのは初詣に行っておみじくを引くものでは?という意見も出たのですが、磯でタカラガイを探す方がどう考えても夢があるだろうとなどと適当なことを言いました。
 信心深い人から怒られてしまいそうだけど、おみくじなんて印刷所で決められたように刷られているんだから・・・なんてひどい暴言を吐いたりもしました。
 ちょうどAM3時頃が、観察や採集に適した最干潮。それに間に合うように、1時過ぎに家を出発して、朝の7時頃に帰宅。夜の磯は、昼間なら隠れている生き物が出てきたりして、面白いのです。

 正月などというものにとらわれたくないのは、元々の僕の願望でもあります。
 正月は、その日を正月としましょう、と誰か世の中を仕切っている人が決めたことであり、他の日と何か違うわけではなく、言うならば人の頭の中にあるもの。
 それに対して僕は子供の頃から、人が決めたことではない物事が好きなのです。
 なぜ、人が決めたものではない物事が好きなのは?は、自分でも分からないところがあり、明確な答えはありません。
 が、強いて言うならば、世を仕切っている人がそう決めたらそうなる、というのが怖いのかな。例えば祭日なんかがそうなのですが、本来の日にちが変更されたりして、そういうことに僕は警戒心をもってしまうのです。
 「人の意図ではないもののことを、日本語で自然というのですよ。」
 と教わったのは大学生の時。千葉嘉彦先生の時間生物学の授業でした。
 それまでは僕は、自分自身を生き物が好きなんだと思っていたのですが、僕が好きなのは人の意図ではないものなんだ!と気付き、先生の話に感銘を受け、のちに先生の研究室に所属させてもらいました。
 僕らが住んでいるのは人の社会なので、人が決めたことが悪いとは思わないのですが、全部それで塗り固められるのは、僕は御免なのです。
 ただ子供の頃は、お正月を楽しみにもしていました。
 お年玉がもらえるからです。


   
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