撮影日記 2020年8月分 バックナンバーへTopPageへ
 
 
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● 2020.08.27〜30 レギュラー交代



 もう随分長い間、ニコンのカメラを使用する際には必ず持ち歩いていたレンズを一本、カメラバッグから取り出しました。スポーツで言うなら、まだ引退ではないけど、控えに回った感じ。
 代わりにそのポジションに入ったのは、パナソニックのマイクロフォーサーズ規格のカメラと望遠ズーム。
 簡単に言うと、マイクロフォーサーズシステムの方が、同じ重量ならマクロや望遠に強く、被写体をより大きく撮影でき、生き物の撮影がメインの僕には向いているのです。
 従来通りにニコンのカメラとレンズを使用して撮影した上で、その画像の一部をトリミングで切り出せば被写体は大きくなるので、それでも仕事は可能ですが、両方を比較テストした結果、そういう使い方をするのなら、マイクロフォーサーズの方が好結果だったのです。
 マイクロフォーサーズシステムは、うちにはパナソニックとオリンパスの製品とがありますが、ニコンのカメラと併用して手触りや操作の面で違和感が少ないのは、操作性が似ているパナソニックのカメラ。
 因みに、他社のカメラと併用したりすることを考えない場合、オートフォーカスの挙動などが小さな生き物を撮影するのに適した設定になっているのは、パナソニックとオリンパスとでは、オリンパスの方です。
 
 さて、ここ2〜3年くらいで気付いたことが1つ。
 それは、アップの写真の撮り方です。
 アップは、ただ大きく撮影すればいいのではなく、アップにすることで世界が変わらなければならないということ。
 たとえば・・・



 この画像はタマムシの体表を拡大したものですが、タマムシの全身を普通に撮影した写真とは、見えてくる世界が違います。
 上の例は非常に極端な例ですが、写真をアップにする場合、尺度の変化がなければならないことに気付いたのでした。
 それを可能にするのが、マイクロフォーサーズシステムではないかと考えたのです。



● 2020.08.26 更新のお知らせ

ストロボって敷居が高いのかな?と感じることがあります。そこで、一眼やミラーレスで標本や飼育中の生き物を撮影するためのストロボの買い方〜初歩の使い方です。
有料の記事を投稿しているnoteですが、今回は無料です。
ストロボの買い方〜初歩の使い方|タケシン|note(ノート)
https://note.com/takeda_shinichi/n/n0d419c0030e9



● 2020.08.25 更新のお知らせ

今月の水辺を更新しました。



● 2020.08.19〜24 妄想?



 やってみると意外に相性が悪い組み合わせというやつがあります。
 例えば写真と動画。
 それから撮影と採集も。捕まえようとすると、そんな時に限ってシャッターチャンスがくるし、網を置いてカメラを構えると、捕まえたい目的の生き物が現れるなどなど。
 そもそも、捕虫網は特に柄の部分が非常に邪魔くさいわけですが、採集は必要な場合があるので何とかしたくて、志賀昆虫の折り畳みのネットを、撮影時にいつも持ち歩いている写真用のポールに取り付けられるようにしてみました。
 志賀のネットを写真用のネジ(1/4インチ)に取り付けるために必要な金具はこれです。
https://www.yodobashi.com/product/100000001001115765/

 折り畳み式のネットを収めているケースは、皮細工が得意だった僕のおばさんのお母さんに作ってもらったものです。正確な時期の記憶がないのですが、当時僕が大学生だったとするならば、30年くらい前のもの。
 お母さんはまだ生きておられて、確か90才代。さすがに、いろいろと分からなくなっているとのこと。おばさんも、病気で、僕が知っていたおばさんとはほとんど別の人に。
 どこかで昔話をすると、自分の記憶とみなの記憶が一致しないことがあり、ええ?僕の記憶って妄想なの?と分からなくなることがありますが、ふと昔を振り返ると、おばさんのあまりの変貌ぶりに、僕の思い出って妄想だったのかなという気も。
 がしかし、この皮のケースが存在するということは、やっぱり妄想ではなかったのでしょうね。



● 2020.08.18 カレー劇場

 もう随分前の話。
 熊本県は菊池渓谷での取材の際に、以前にはなかったカレー屋さんがオープンしているのを見つけて夕食時に入ってみたところ、スキンヘッドにヒゲを生やしたイカツイ雰囲気のオーナーに圧倒されました。
 著名人に例えるなら、空気感は、横浜銀蝿のドラムの嵐さんかな。
 もしかしてヤバい店に入ったのか?と緊張したものですが、実は男くさい雰囲気はオーナーが矢沢永吉の大ファンであることに由来するもので一安心。
 カレーを食べてみると、とにかく無茶苦茶に美味い!翌日もまた夕食時になると食べたくなり、お店に一直線。で、今度は違うタイプのカレーを注文してみると、やっぱり美味い。
 よし、3日続けてだっていいじゃないか。明日もまた!と心に決めて支払いをすると、お釣りを受け取る際に、オーナーから
「昨日もきんしゃったですよね?」
 と声を掛けられました。
 イカツイ顔のオーナーがとても恥ずかしそう。で、その恥ずかしさが僕にも伝染し、3日目は、どうしてもカレーを食べてかったにもかかわらず、店の門をくぐることができませんでした。

 しばらくしてまた菊池渓谷で撮影した際には、店がなくなっていました。
 あれだけの味の店がただ無くなるはずはない、とお店の名前でインターネットを検索してみると、元々は熊本市にあった名店が何らかの理由で菊池に移転し、さらにまた熊本市へと戻ったことがわかりました。
 新たに移転した熊本のお店へも、ついでがある時に何度か食べに行ったものでした。
 ところがある時、張り紙があり、オーナーが入院するため閉店とのこと。2017年の夏の終わりだったかな。
 そしてつい先日、また開店してないかな?とインターネットで調べてみたら、当初オーナーの入院の原因は糖尿病だったらしいのですが、どうしても手の動きがスムーズではなく、よく調べたところALSを発症していることが分かり、再度の開店はもうないとのこと。
 娘さんにレシピを伝授する予定らしいので、時々お店の名前でインターネットを検索してみるのは続けようかな。
 
 

● 2020.08.16〜17 タイヤの破裂





 高速道路上で危険だったので、状態がよく分かる写真が撮れなかったのですが、昨日、走行中にハイエースのタイヤが破裂しました。
 直前に少し振動が大きくなり、一番可能性が高いのは、高温で空気圧が高くなり過ぎて路面の小さな凹凸を拾い過ぎているのかな?と疑っていたのですが、空気圧が高くなっていたのではなくタイヤの内部が破損して変形していたのでしょうね。
 違和感は感じていたので、左車線を渋滞を招かない範囲でなるべくゆっくり走行していたのですが、警戒していても、運転席側の前輪がバーストすると、すごい衝撃です。
 もしも無警戒の状態で同様の状況に陥り、下り坂で速度が出ていたり、さらにカーブだったりすると、命を失いかねないなと思いました。
 コンコンコンコンと規則的な振動を感じた場合は、タイヤが破裂する前の変形を疑ってください。破損の状況にもよるのでしょうが、高速道路では振動から破裂までに60分はもたいないと思います。
 ハイエースは高価なので、普段は主に軽自動車に乗り、ハイエースの走行距離が無暗に伸びないようにしているのですが、その結果、タイヤの溝はそれなりに残っていたのですが、溝の深さの割にタイヤが古く劣化していたのかな。
 言うまでもなく4輪すべて交換することにしましたが、もしもコストの問題でタイヤの交換を迷った場合は、最低限前2輪だけは変えることをお勧めします。

 実は、ナットのゆるみを疑って、途中でパーキングに止めて点検をしたのですが、変形には気付けませんでした。
 が以前、車屋さんで、「あっタイヤが変形しているよ。危ないから変えましょう。」と指摘をしてもらったことがありました。
 だから、そんな目で見ればわかるのかもしれません。
 よく、お盆休みに高速道路で車が故障して、ガードレールの外で救援を待っている家族連れなどを見て、この暑さで車の故障は地獄やろうなぁと感じたものですが、まさにその状況に自分が陥りました。
 JAFの従業員は厳しい訓練を受けていると聞いたことがあるのですが、確かに、立ち居振る舞い、声掛け、車の修理等、見事なものですね。
 レベル高っ!と感激しました。



● 2020.08.14〜15 上位互換、下位互換



 何でもない写真ですが、この写真は売れるような気が・・・ まあ、よくあることで、僕の気のせいかもしれませんが。
 
 よく使われる写真には、ある程度の共通点があります。
 それは、写真を小さく表示させた状態でも、何が写っているかがよく分かるということです。大きく表示させなければ良さが分からない写真は見てもらうことさえできない場合が多く、そもそも土俵に上がることができません。
 具体的には、背景が大きくボケていて画面がシンプルであること。写っている生き物は最もそれらしい角度から撮影されていること。そして顔がよく見えていること・・・・・

 それを頭に入れた上でその通りに撮影しようとすると、何でもないと思っていたシーンの撮影がとてつもなく難しく冷や汗をかくことが、良くあります。というよりは、何であるにせよ、売れる写真が簡単だったことなんてありません。
 トンボの場合は、もっともトンボらしいこの角度から撮影した場合に、顔がよく見えるように撮影するのがなかなか厄介。顔が下を向いた写真ばかりが量産され、それなりに長い時間待たなければ、顔が写らないのです。
 
 一見何でもないようでいて、実はコンスタントに仕事をしている人だけが肌で知っている感覚があります。
 だから、今は自称の時代でインターネットを眺めていると自称プロの自然写真家がたくさん存在しますが、その人が実際にどれくらい仕事ができているかは、振り込みの明細書を見なくてもプロが写真を見ればだいたい分かるでしょう。
 ただし、仕事ができているかどうかと、その写真がいい写真であるかどうかはまた別の話。仕事にはならないけど素晴らしい写真は、確実に確実に存在します。
 自然写真の場合、市場がとても小さいので、その中に入れた一部の人はそこそこ稼ぐことができても、入れなかった人はほぼ全く売れないになりがち。
 したがって売れるとほぼほぼ売れないの間は存在しにくく、老後の趣味と実益を兼ねてとか、ガソリン代がでればいい・・・などという発想は成立しないことが多いでしょうから、どうしても自然写真で生活がしたいという人以外は、「売る」を考えずに、ただひたすらに素晴らしい写真を追求した方が伸びしろが大きくなるような気がします。
 最近、インターネット上で「上位互換」「下位互換」という言葉がよく使用されますが、売ろうとすることで、職業写真家の下位互換、つまり下手な物まねになってしまうのです。
 車やカメラを買う際には、値段の問題で時に下位互換の存在が非常にありがたい場合もありますが、写真の世界の下位互換は、極めてつまらないのです。



● 2020.08.09〜13 将棋盤の隅の香車みたいに



 撮影機材はあくまでも仕事道具。
 古くなったものは中古市場である程度の値がつく間に手放して新しいものに買い替えるのですが、その時期を逸し格安でしか売れなくなり「しまったなぁ」と思っていたレンズが、まさかこんな形で大活躍する日がくるとは・・・。
 35ミリ判換算で300mm以上の望遠レンズの先端に顕微鏡用のレンズをねじ込むと、拡大専用のレンズになります。



 拡大接写には幾つかの方法がありますが、このやり方のいいところは、カメラに取り付けるレンズがAFなら、AFが働くこと。
 AFが作動するということは、フォーカスシフト機能(ピントを少しずつずらしながら写真を撮る)を搭載したカメラを使用すれば、メンドクサイ道具を使用せずに、時に数百枚にもなる深度合成用の画像をカメラ任せで短時間で撮影できるのです。
 シオカラトンボの卵を、この組み合わせで撮影してみました。カメラはニコンのZ7をDXフォーマットで使用して、約200枚の画像を深度合成しています。

 因みに、このやり方を詳しく知りたい人は、
 https://amzn.to/30LiElY
 を読んでください。昆虫写真家の海野先生が、大掛かりになり過ぎないように、凝り過ぎないように、あまりお金がかからないように、現実的にこの手法を運用するやり方を紹介しておられます。
 若い頃の僕は、海野さんが撮る「蝶が飛ぶ風景」や「擬態」の写真を見て、ワクワクして憧れたものでした。
 ところが今はそうした写真よりも、その頃海野さんが撮っていた虫の卵の写真などの方により心を揺さぶられます。
 当時は、深度合成を含めた上に紹介したような撮り方は普及しておらず、大部分の虫の卵サイズのものはシャープに描き出すことができませんでした。その中で何とかシャープに!と勉強し、研究し、チャレンジする大先輩の姿が、昔のあまりシャープではない拡大接写の写真を見ると目に浮かぶから。
 そしてやがて虫の卵をシャープに撮れる方法が確立された時に、海野さんが上に紹介したような書籍の中でそのやり方を紹介する気持ちがとてもよく分かるのです。
 この気持ちは、技術が最初から確立されている時代に生まれた人には分からないんじゃないかなぁ。

 顕微鏡のレンズを先端にねじ込んだニコンのレンズ・Ai AF-S Nikkor ED 300mm F4D(IF)は、元々は非常に定評があるレンズだったのですが、発売から随分時間が経ち、今となってはさすがに古くなり、ほぼほぼ使うことはなくなりました。
 ところがそんなレンズが、全く別の用途で大活躍。
 プロの将棋を見ていると、香車など、盤の隅っこで忘れ去られたかのような働いてない駒が最後の最後に働いて勝負を決めることがありますが、僕の Ai AF-S Nikkor ED 300mm F4D(IF) は、まるで盤の隅の香車みたい。
 Ai AF-S Nikkor ED 300mm F4D(IF)は、今でも決して悪いレンズではないのですが、最新のデジタルカメラの画質をフルに引き出したい場合は、最新のレンズを使用したいところです。
 以前はよく、デジタルカメラを高画質にしても意味がないと言われました。理由は、当時のレンズは、仮にカメラが高画質になったとしてもそのカメラの性能についていけなかったから。
 例えばレンズが解像できていない場合にカメラを高画質にしても、結果は変わらないわけです。
 結局メーカーは、より高画質なデジタルカメラの性能を引き出せるように、レンズも順により高性能なものに置き換えていきました。



● 2020.08.01〜08 正しいことは正しいのか?

 SNSを眺めていて最近気になるのは、正しいことは、本当に正しいのか?ということ。
 例えば僕が子供の頃は、セミの幼虫は地中で7年過ごすなどと言われていました。が、実際にはもっと早く成虫になるらしく、誰かが「セミの幼虫は地中で7年」などとSNSに投稿すると、正しい知識でもってそれを否定する方が現れます。
 そんな時にいつも感じるのは、大多数の人にとって、セミの幼虫の期間が7年間よりも短かったとしても、そんなことはどうでもいいということ。それよりもみんなにとって重要なのは、人の命に係わるような間違いは別にして、その話が楽しいかどうか。
 専門家であればあるほど、そんな時に口をはさみたくなるものですが、専門家であればあるほど、それが日常会話なのか?学会でのやり取りなのか?の区別がつくことが大切なんじゃないかな?
 日常会話として、誰かが「セミの幼虫は7年」といい、また誰かが「どうもそうじゃないらしいよ」とやり取りするのはありだと思うのですが。

 僕は生き物が好きなので、生き物のことに関しては正確なことを知りたいのですが、自分がそこまで興味がない分野に関しては、正確さを強制されるような社会には住みたくないなと感じます。
 嘘や間違えは好きではありませんが、そんな僕でも、もしも自分の身の回りにあるさまざまな知識や情報がすべてが正確だったなら、息が詰まるでしょう。例えば、幽霊という概念が人の心の中に存在しない社会は、つまらない社会のような気がするのです。
 正しさに執着する原理主義者を指す言葉で、「意識高い系」という言葉がありますが、人の社会は学会ではないのだから、必ずしも正しくなくてもいいと思うのです。
 もちろん、生き物について正しいことを知りたい者同士が、正しい何かを求めて会話をするのは、とても楽しい時間ですが。


   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2020年8月分


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