撮影日記 2019年4月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
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● 2019.4.25〜28 自然写真の歴史



 囲碁や将棋の世界では、長年一生懸命に打ち込んでいる大人を、才能に恵まれた子供があっという間に抜き去りプロになる。
 羽生さんのような有名な人ではなくても、例えプロの世界で最下位のランクでも、プロになれるというだけで考えられないくらい強いし、天才と言っても言い過ぎではない。
 だからプロの世界は凄すぎて、大半の人には理解できない世界でもある。だれかが対局を見て理解ができるなら、それはその人がプロになれるということを意味するのだから。
 そんな、極々一部の人にしか理解できない世界を楽しめるようにしてくれるのが、対局の際の解説という制度で、プロがプロの対局を楽しく説明してくれる。
 解説者は、時には複数の場合もある。プロの棋士たちが寄って集って、現在進行中の対局を、いろいろと語ってくれるような場合も。
 同じことが自然写真でもできないかと僕は以前から思っていたので、この企画には大喜びで飛びついた。
 自然写真の世界は囲碁や将棋ほど特別な世界ではないけど、それでも、自然写真で生活をしているものにしか、解説できない面白さがあるはずだから。
 そうして誰かが自然写真の世界を楽しむ以外に、自然写真のプロを目指すような若者は、この本を読んでいるのと読んでいないのでは、大きな差になってしまう可能性が高い。
 近年は、誰でも気軽に写真を発表できるようになったけど、その代わりに、プロになるために必要な情報などは、減ってしまった感がある。





● 2019.4.24 演出は是か非か

 生き物の本や番組では、演出が加えられることがある。
 有名なのはイギリス・BBCの映像だ。
 BBCの場合は、演出を加えている様子までが撮影されていて紹介されるので、自然関連の番組でも完全なノンフィクションではなく、フィクションが加えられたドラマだということになる。
 日本人が良く知るものでは、NHKの大河ドラマが近いと思う。大河ドラマは史実をベースにしているけど、史実ではないお話も加えられている。
 そうしたドラマは、事実ではないことが加えられているから悪なのだろうか?
 日本でネズミの研究をしておられる方が、海外で撮影された、ネズミに関して事実ではない映像や写真を見つけ出しては排除してようとしておられるのをみて考えてみた。

 大河ドラマを見て、歴史に興味を持つ人は少なくないと思う。BBCの映像も同様で、それをみて生き物に興味を持つ人は少なくない。
 少なくないどころか、膨大な数の人が興味を持つきっかけになっているだろう。
 一切の演出がない番組では、そうはいかない。
 それを分かった上で楽しむ世界がある。
 そうしたものも人の世界では大切だし、それを普及と呼ぶ。
 一切の演出がないものも、もちろん大切。
 何が違うかと言えば、読者や視聴者の層が違う。
 いろいろな層の人が存在するのだから、いろいろな層の人に向けた番組が必要だということ。

 一番怖いのは、二者択一になること。
 演出が加えられたものしかないとか、演出が加えられたものが完全に排除されるとか。
 つまり、誰かが、自分以外のものは認めないといって仕切っている状態。
 もしもそうなったならば、日本の自然はもっと損なわれるような気がする。自分たち以外は認めないということだから、人にとって都合がよろしくない生き物や自然は排除されるだろう。
 逆に、自然が一番豊かになるのは、二者択一ではなく、人の暮らしの中に多様な価値観が認められている時。
 生き物の番組で言えば、演出がないものも、演出が加えられているものも、両方ちゃんと存在し、人が自分で選択できる状態。
 もちろん、明らかに生き物に大きな害がある演出は別だけど。
 最近よく耳にする言葉で「生物多様性」という言葉があるけど、生き物に多様性があるわけではなくて、人間が生き物の中に多様性を見出すわけだから、人の多様性を認めない社会の中では、「生物多様性」もないだろう。

 人の社会が何を選択するかは、研究者が決めるわけではない。
 もしも生き物の映像に間違えがあれば、研究者がそれに関して情報を提供することは大切だが、情報を受けた上でどうするかは一人一人が考えることであり、研究者が、これを排除しましょうなどというのは、とても危ないことだと思う。
 もしもそれで人の社会が素晴らしいものになるのなら、研究者が政治家になればいいのだが、研究者が政治家になったならば世の中は無茶苦茶になることは、まともな研究者ならよく分かっているはずだ。



● 2019.4.20〜4.23 更新のお知らせ

3月分の今月の水辺を更新しました。今回は卵の話です。



● 2019.4.11〜4.19 瞬間





 蝶が飛び立ったのを見てからシャッターを押すと、なんと!蝶が飛び立つ前の画像から撮れている。過去が写るなんてあるはずないのだが、ミラーレスカメラのプリキャプチャー機能を使用すると、それっぽいことができる。
 カメラのシャッターに軽く指を置いた段階で、実は密かに、猛烈な連写速度での記録がはじまる。そしてそれではあっという間に記録メディアが満タンになってしまうから、最新の0.4秒間の画像を維持して、残りを消してしまう。
 


 アユの遡上だって、狙って撮影可能。
 アユのジャンプは大変に早くて、人の反射神経で捉えるのは不可能だった。したがってこれまでは、たくさんアユがジャンプしているタイミングで、適当に連写をすることで撮影してきた。
 実際に自分でやってみたらすぐに分かるが、群れで次々とジャンプをしているような状況でさえ、たった一匹のアユでさえなかなかちゃんと写らない。
 だがプリキャプチャーを使用すれば、自分が見て今だ!と思った瞬間が撮れる。

 どのカメラでもできるわけではなく、レンズ交換式では、パナソニックやオリンパスやフジのカメラの中の、一部の機種でそれができる。
 僕が使用しているのはパナソニックのG9PROだ。
 パナソニック・オリンパス・フジのカメラは、いずれも1社だけであらゆる撮影に対応できるメーカーではないので、僕のように幅広くいろいろな被写体を撮影する場合、他社のカメラと組み合わせて使用することになる。
 その場合に、使い勝手があまりに違うと、慣れの問題で扱いにくく感じられるのだが、パナソニックはニコンによく似ているので、ニコンをメインに使用している僕にとって非常に都合がいい。
 ニコンのカメラが大好きな人か、元ニコンの人など、ニコンを良く知っている人が開発にかかわっているのではなかろうか?

 パナソニックのカメラは、あまり自己主張をしない。俺たちの主張はこうだ!というよりは、他社のいいところを素直に取り入れている感じがする。
 そうした点では、パナソニックの電化製品にも似ているように思う。
 僕が子供の頃に、ソニーとパナソニックとが良く比較された時期があったが、僕は昔から、自分たち独自の色を出そうとするソニーの製品があまり好きではなく、逆に、色が付いていない感じのパナソニックが好きだった。
 レンズ交換式のデジタルカメラの場合は、パナソニックの製品が登場したのは割と最近のことなので、もしかしたら技術者をどこかからヘッドハンディングして連れてきたり、アウトソーシングに近いような成り立ちかもしれないし、その場合にパナソニックの社風の影響を受けているかどうかは僕には分からないのだが、実際にデジタルカメラを手にしてみると、ああ、やっぱりパナソニックだなと感じる製品になっているように思う。
 持つ喜びよりも、とてもよくまとまった道具だ。



● 2019.4.6〜4.10 腫瘍
 2月の末のある晩、猛烈な腹痛で目が覚めた。僕はよく腹痛を起こすのだが、それでも、過去2番目の痛さだった。
 一番痛かったのは高校生の時で、病名はすい臓炎。これが痛いのなんの!普通じゃないとすぐに分かった。
 そのすい臓炎を再発させてしまったかと疑ったのだが、今回は違いがあった。出血がみられたのだ。
 出血は初めてのことなので、すぐに内科医である弟に見てもらった。
 すると、出血性の大腸炎を引き起こすO157など問題がある菌は検出されず、数日薬を飲むことになった。
 薬の服用後も微妙な出血が続いたので、再度診察を受け、薬を変えてさらに一週間。
 今度は出血が止まったのだが、どうも気持ちが悪いので念のために内視鏡でも見てらったら、今回の症状とはまったく別の大腸の一番奥に3センチもの腫瘍が見つかり、内視鏡で取れるタイプのものだったので取ってもらった。
「大きいから、一部は癌化している可能性もあるね。でも、キレイに取れたから、来年また検査するのでOK。」
 と説明を受ける。大腸の奥の腫瘍は症状が出にくく、僕のケースでも無症状だと考えられるそうだ。
 出血性の腸炎に、思いがけず救われた結果になった。

 内視鏡での大腸の検査は、初めて。
 やはり煩わしいので、できれば避けたい気持ちにもなるのだが、何かあるかどうかは診てもらわなければ分からないので、僕の選択肢は見てもらうの一択だった。
 武田家は、親族も含めて理科系の人間だらけでありデータや科学性を重視する一家なので、僕は子供の頃からそんな考え方に慣れているのだが、ただそれでも、避けたいなという気持ちが込み上げてくるのもまた事実。
 たまに見聞きする
「健康診断なんて必要ない。」
 とか、
「患者は医療の殺される。」
 という意見を鵜呑みにしてしまう人がいることも、なるほど、よく分かった。できれば診療を避けたい心理が、人をそちらに誘導してしまうのだ。その手の意見の危険性や問題性を痛感させられた。
 やはり、ちゃんとした正しい知識や見識や、それを重んじる心は大切。医療に限らず、インターネット上を検索してみると、生き物の話でもカメラの話でも、間違った知識を堂々と語る素人さんの、まあ、なんと多いことか。
 逆に、診察を受けなければと思わせてくれるのが、著名人による病気の発表。
 タレントさんに対して、「たかがタレント」と言う方もおられるけど、タレントさんって、みんなを代表しているんだなと思い知らされる。
 或いは、自然写真業界での大先輩である昆虫写真家の海野さんが、大腸の検査を受けたことをその日記の中に何度か書いておられるのだが、そんな先輩の話も、じゃあ、僕も検査してもらおうという方向に導いてくれる。
 大切なことだなと思う。

 さて、内視鏡による大腸の検査だが、まず下剤を飲んで腸を空にする。
 2リッターくらいの下剤を飲む必要があり、これが大変と聞かされていたのだが、僕の場合は、元々食べ物の通りが早いこともあり、800tくらいで腸が空になった。
 空になるまでの時間も、僕の母などは、朝8時半に下剤を飲み始めてお昼ごろまで時間がかかり、その待ち時間がシンドイと聞かされたのだが、僕の場合は、大体1時間でOK。
 腸の検査自体は、痛いと言う人と無痛と言う人がいて、僕の場合は、完全に無痛であり、これなら年に一度程度なら大した苦労ではない。
 ただ今回は、取った腫瘍が大き過ぎ、内視鏡で吸い取ることができず、さらに追加で下剤を飲んでお尻から出てきたものを拾って細胞の検査に出したのだが、追加で飲んだ下剤がなんと3リッターで、さすがにこれはしんどかった。



● 2019.3.29〜4.5 ドライバー









 今回は、運転手として沖縄へ。北九州を朝出発し、翌日夕刻に帰宅するスケジュール。
 空き時間に、そこらの公園でカタツムリを探す。カタツムリは地域によって住んでいる種類がガラリと変わるので、旅先でちょっと空いた時間などに探して楽しむのに最適な生き物だ。
 カメラは、キヤノンのEOSM5と超広角ズームの組み合わせのみ。ただしストロボシステムだけは、ちゃんとしたもので。

 飛行機のチケットの取得を同行者に任せておいたら、格安航空ピーチの便に搭乗することになった。がしかし、ピーチの場合、7キロ以上の荷物は有料であり、今回は追加で約2000円。
 それならば、他の航空会社を選択しても価格に大差はないし、座席が広い分快適だった。
 帰りはスカイマークの便だったのだが、スカイマークの場合は、荷物は20キロまでが無料。ピーチに乗った後は、スカイマークが、まるでセレブの乗り物に思えてしまう。


   
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