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● 2018.1116〜20 些細なことのつながり

 僕の大学時代の恩師・千葉喜彦先生は、自然が好きというよりは、科学が好きな人だった。
 「自然が好き」と「科学が好き」は実は全く別のことで、時に両者は相容れないことさえあるのだが、不思議なことに、恩師の元には自然好きな学生が集まった。
 なんでかな?と今考えてみると、恩師と自然好きの学生たちを結びつけていたのは、「自由」だったような気がする。恩師が研究に、学生が自然に求めていたのは、共に自由だったのではなかろうか。

 さて、学生時代に、当時山口大学で助手をしておられた富岡憲治先生から、アメリカの蝶を見せてもらったことがあった。
 富岡先生は、自然好きから科学に入ってきたタイプで、若い頃には蝶に夢中だったのだそうだ。
 見せてもらった蝶は、先生がアメリカで研究中に採集した北米の種類で、三角紙に入ったままの状態だったのだが、それがとてもリアルで、僕はその影響を受けて、日本の蝶を採集するようになった。
 あれが標本箱の中に翅を広げて収められた標本だったなら、ガラス一枚の厚みや距離や展翅された標本のそれ以上手を加えられない完成品の感じが邪魔をして、そこまでの影響を受けることはなかったような気がする。

 そんなある時、昆虫写真家の海野さんが撮影した蝶の写真に出会った。
 魚眼レンズで捉えられた、熱帯の風景の中を飛ぶ生きた蝶の姿。
「自然写真家になりたい!」
 と本気で考えるようになった大きなきっかけになった。
 のちに、海野さんに会いに行った際に、いきさつは忘れてしまったのだが、海外の蝶の図鑑を見せてもらい、その中に富岡先生が持っておられた標本と同じ種類が含まれていたので、
「あっ、これはタイガー・スワローテールですね。」
 と先生から聞いた名前を思わずつぶやいた。
「え?、この蝶はそんな名前なの?」
「こっちはスパイスブッシュ・スワローテールかな?」
 海野さんは図鑑で名前を確認し、
「本当だ?何で知ってるの?その名前はどうやってつけたの?」
 と海野さんから逆に質問された。
 先日、そのタイガースワローテールが、海野さんの写真日記に登場した。「トラフアゲハ」という名前がつけられていた。

 ともあれ、人との出会いやできごと・・・・些細なことがきっかけとなり、つながって、今があるだなぁ。 



● 2018.1116〜20 軽量コンパクトなシステム



 カメラは、フィールドを歩く際には邪魔になる。一方で、シャッターチャンスはいつ訪れるかわからないのだから、常にカメラを持っておく必要がある。
 そこで僕は、歩くことがメインの日には軽量コンパクトなカメラシステムを、撮影することがメインの場合は、操作性や画質にこだわった機材を使う。
 キヤノンのEOSMシリーズは、軽量コンパクトなシステムとしては、非常に出来がいい。片手で楽々持てるカメラバッグの中に、超広角〜超望遠レンズまでを収納できる。
 その中に、防水コンパクトカメラを一台含めておけば、大抵のものが最低限撮影できる。

 キヤノンの道具にありがちな傾向だが、EOSMシリーズは、手触りや作りが安っぽい。写真を撮っていて、あまり撮れている感じがしない。
 ところが、帰宅後にパソコンで撮影した画像を見てみると、写りがいい。
 ええ!こんなにいい感じに写るのなら、もう少し突き詰めて、しつこく撮っておけば良かったと帰宅後に感じられるケースが良くある。
 特に、手触りがいいニコンのカメラと比較をすると、その傾向が顕著に感じられる。
 ニコンとキヤノンとを併用する場合のキヤノンのカメラの使い方のコツは、現場でいい写真が撮れているような感触が得られない時でも、さっと次の被写体に行ってしまうのではなく、多少しつこく撮影しておくこと、ではなかろうか。
 メーカーによって、カメラを作る際に力を入れる箇所が違うのだ。
 因みに、近年、インターネットに公開されるキヤノンのカメラのベンチマークテストの結果は、他社よりもやや劣る傾向があるが、実写をしてみると、キヤノンはやっぱり良く写る。
 トータルとしてのバランスが非常にいい。



● 2018.1113〜15 同業者

 日本自然科学写真協会の会議があった。僕は地方に住んでいるので、テレビ電話で参加する。
 僕のことをよく知っている人は、
「お前が会議!」
 と腹を抱えて笑うに違いない。全くその通りであり、僕は究極の集まり嫌いであり、会議嫌い。
 その手の話は、子供の頃から全く頭に入らない体質なので、正直に言えば、会議の前一週間くらいから、とにかくツライ。おまけに、回線の不安定さやしゃべっている人の声の質などによって音声が聞き取りにくいことがあり、大変に疲れる。
 だが一方で、同業者のみなさんの顔を見ることは、それ以上ないレベルの癒しになる。
 目的がある会議なのだから、決して仕事の話をするわけではないのだが、同業者どうしにしか絶対に分からないこともたくさんあり、顔を見るだけで何も話さなくてもいいのだ。
 自然写真の場合は、大半の人が兼業であり、写真だけで暮らしているのは各ジャンル数人ずつくらい。以前あるプロデューサーが、
「全員顔が思い浮かぶ人数くらいしかいない。」
 とおっしゃったのだが、そもそも同業者が得難いのだ。



● 2018.1110〜12 お知らせ2つ
(お知らせ-1)

観察したり採集した生き物を、画像のような感じに写真に記録したい人向けの写真教室を開催します。この手の写真の撮り方は、本格的なもの〜簡易的な方法までありますが、今回は簡易的なある意味横着なやり方を紹介します。
因みに、このカニの画像も、その横着なやり方で撮影したものです。
日時は11/18(日)場所は、北九州市の水環境館です。詳しくは下記のリンクをご覧ください。
http://www.watersides.jp/0-takeda/tkd/event/event-181118.htm


(お知らせ-2)
今月の水辺を更新しました。



● 2018.11.4〜9 癖を取る









 ここ数年、引き受けた本の内容の関係で、ほぼ毎日予定された撮影があった。絶対に撮らなければならないという状況の中で、写真を撮り続けた。
 それはそれで、勉強になった。
 けれでも弊害もあり、手堅くまとめようとする癖がつき、その癖を取っ払いたいなとここのところ、ずっと感じていた。
 そんな場合は、クレイジーなみなさんと一緒に写真を撮るのが一番。そこで、渓流魚の達人のクレイジーな撮影に同行させてもらうことにした。

 初日は、一人で、以前通った沢を歩いてみた。
 最後に歩いたのはフィルムの時代。中判カメラのシステムをザックにつめ、沢を登ったものだった。
 ある時から、熊との遭遇が多くなり、年に10回出かけて5回遭遇した年があった。これは近づくな、というある種の警告かなと判断して、その沢から足が遠のいた。
 今回も、沢への入り口に、クマの糞があった。
 北海道の友人がやっていたのを見習い、大きな裏声で、
「ホ〜ホ〜」
 と時々声を出しながら歩いた。

 それから、達人の指導を受けながら、イワナの仲間のゴギの産卵を撮影。
 写真の技術面以外にも、教わることがたくさんあった。
 ありがたいな。
 どうやって達人と知り合えたのかと遡ると、Nさんがおられ、Nさんを知ったのはSさんやTさんのお陰。
 感謝やなぁ。



● 2018.10.29〜3 なぎさ水族館



 山口県周防大島にあるなぎさ水族館で、クラゲを撮影させてもらう。
 この水族館の特徴は、大部分の水槽がそこらで市販されているガラス水槽であり、展示が手作りであることだ。そして、飼育員のお二人が付近の海で採集してきた、そこらの海の名前も聞いたことがないようなクラゲが何種類か飼育されていること。
 僕は、大きな水族館の展示でも、一時的に設置された小さな水槽での展示の方が好きなので、なぎさ水族館は僕の大好物だらけなのだ。
 大きな水族館の巨大な水槽には、幅広くたくさんの人を魅せる使命があり、どうしても型にはまってしまったり、一般的になってしまう。食べ物に例えるなら、どこか、チェーン店の味的な感じになってしまう。その点、小さな水槽には、大きな使命がないため自由であり、飼育員の人の思いがにじみ出やすい。
 なぎさ水族館での撮影の次は、幾つかの現場をはしごする予定だったが、想定外のことがあり一旦帰宅。明日、もう一度出直すことになった。
 僕は、道具が多いのが苦手なので、水族館用の撮影機材を降ろして、車の中の荷物を減らし、すっきりさせる。
 すると、よし出直すか!という気分になってきた。

なぎさ水族館は こちら
 
 
   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2018年11月分


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