撮影日記 2018年7月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
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● 2018.7.29〜30 泥沼流の話



 自分で撮影してみたらすぐに分かるだろう。足が出たオタマジャクシの撮影は、なかなか難しい。
 足が出るくらい大きくなると泳ぎが力強く、泥を巻き上げてすぐに水を濁らせてしまうし、水が濁ると撮影ができない。
 それから、真上から見下ろすように撮影するのならともかく、水中ではパッと一目見て分かるほど足は見易くない。足がよく見える状況は限られる。
 さらに、色が地味なオタマジャクシは背景に溶け込みやすい。それを、同系色の中でパッと浮かび上がらせるのは、非常に骨が折れる。
 撮ろうと思えば確かに撮れるのだが、クリアーしなければならないポイントが非常に多く、例え運が良くてもまず一筋縄ではいかない。
 必ずつらいのだ。
 だからこれまでは、もうずいぶん前に撮影した同じ写真を、何度も繰り返し使用してきた。次、依頼されたら新しい写真を撮ろうと思っていても、いざとなると、また同じ写真で悪いなぁと思いつつも古い写真を貸し出してきた。

 しかし一方で、非常にプロ的な撮影でもある。
 写真にはある程度偶然がつきまとうが、クリアーしなければならないポイントが多ければ多いほど偶然に左右されにくくなり、技術の差が表れやすい。
 だから、めんどくさがるのではなく、そうした撮影を自分のセールスポイントにして、むしろそこに勝負を持ち込むくらい泥臭くなければならないんだろうな。
 ふと、将棋の故・米長邦雄さんが思い出された。
 米長さんはその棋風から、「泥沼流」と呼ばれていた。
 負けそうになると、状況をわざと複雑にし、力勝負に持ち込むのだという。状況が複雑になればなるほど、自力がある方が有利になるのだ。



● 2018.7.28 ヘビの卵と愛情の話



 水環境館の川原二郎館長から、
「アオダイショウの卵があるんですけど、撮影しますか?」
 と声を掛けてもらった。
 面白いのは、卵がお互いにくっ付いていること。
 ヘビやカメの卵は、産卵後しばらくすると向きが生じ、その後に上下をひっくり返すと死んでしまうので、卵が転がらないようにくっ付いているのではなかろうか?
 因みに卵を土の中に埋め転がる心配がないカメの場合は、卵どうしはくっ付いてない。

 一方で同じ爬虫類でもニホントカゲの場合は、卵の向きが変わってもいいのだという。
 いや、向きが変わっていいというよりも親が卵を産みっぱなしにするのではなく守り、卵を回して世話をするのだという。
 同じ爬虫類なのに、ある種類は子供を世話し、ある種類は子供を世話しないというのはなかなか興味深い。
 
 人になつく生き物は、僕が知り得る範囲では、例外なく親が子供を育てるタイプの生き物だ。
 例えば犬は飼い主を覚え、飼い主に対して愛情のような感情を示すが、犬は親が子供を育てる生き物だ。
 一方で金魚は、餌を覚えることはあっても、飼い主を覚え、飼い主に対して愛情を示すことはない。金魚に限らず、親が子育てをしない生き物が人を覚え、人になつく例を僕は知らない。
 つまり、生き物が示す愛情は、親が子供を育てるというシステムから発生したものということになる。
 そういう意味で、親が子供を育てる生き物というのはなかなか興味深いし、子育てがどうやって始まったのかという観点に立つと、同じグループの生き物なのにあるものは子供を育て、あるものは育てないというのもなかなかに面白い。
 生き物が好きと言っても色々な観点があるが、僕はそうしたところに興味がある。



● 2018.7.20〜27 使われる写真、使われない写真の話



 随分前の話だが、阿蘇で撮影した牛の写真が、
「これはイイ。使わせてもらいます。」
 と喜ばれたことがある。
 何となく撮影した写真であり、特に力が感じられる写真ではなかったので、僕にはなぜ気に入られたのかが分からなかった。
 すると、余程に怪訝な顔をしていたのだろうか。
「牛が食べているシーンで、口で草をくわえているのがちゃんと写っていますよね。意外とそんな写真がないんですよ。牛が頭を低くして草を食べていることが雰囲気でわかる写真はたくさんありますが、具体的な写真は少ないですね。そこが上手い人と下手な人の違いでもあります。」
 と説明してくださった。
 写真に関していろいろに勉強する機会があるが、たいへんに印象に残ったケースだった。
 
 さて、オタマジャクシが食べ物を食べるシーンは、口がはっきり写っていること。食べ物がちゃんと写っていること。つまり、よりディーテイルに迫っていくことが大切。
 きちんと説明できていると言い換えてもいい。
 それに加えて、オタマジャクシがいい顔をしていること。生き物の写真でしか表現できない何かが写っていること。
 僕は元々、前者、つまりきちんと説明することが大の苦手。昔の写真を今改めて見てみると、写真のムードにばかり気を取られ、きちんと説明ができていないものが多い。
 例えばツバメが飛びながら池の水面で水を飲むシーンなら、ツバメの口がきちんと水面についていて、クチバシが水面をかき分け、水が口に入る様子が写っている必要があるのに、僕が撮っているのはその前後ばかりで一番肝心なそれが写ってない。
 水を飲んでいる写真ではなく、水を飲みに来た時の写真しか撮れてないし、それでは写真が使われるわけがない。
 なぜそうなるのか?と言えば、自分を客観視できていないに尽きる。そして、自分が客観視できなければ、独りよがりになっているわけだから、写真が上達するわけがない。
 では、自分を客観視するにはどうしたらいいのだろう?
 きっといろいろな方法があるのだろうけど、写真にテキストをつけた上で他人にちゃんと見えもらうのは有効だ。
 ツバメの水飲みの例なら、写真のテキストを実際に書いてみることによって、自分では、「ツバメは飛びながら水面に口をつけて水を飲みます」と書きたいのに、写真にそれが写っていないことに気付かされるだろう。

 もちろん、わざと現象を具体的に撮らない撮り方もある。
 例えば、ネズミがドングリを食べるシーンを撮影するのに、ネズミが齧ったあとのドングリのみを写し、見る人に齧っているネズミを想像をさせるようなやり方だ。
 しかしその場合は、最初からその前提で撮影する必要がある。
 
 

● 2018.7.8〜19 行灯ストロボの話


NikonD610 AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED

 ゴドックスのストロボAD200の発光部をコード(EC200)で本体から切り離し、棒の先に取り付けてみた。本体はそれなりの重量があるが、発光部だけなら軽量なので、片手で保持することが可能になる。

  
 AD200の発光部は、一般的なストロボの形状のものと巨大な発光管がむき出しになったものの2種類が標準装備されており選択できるが、巨大な発光管のタイプの方を選び、発光部には、アルミ製の大型反射傘AD-S3を取り付けておく。
 これで、行灯タイプの照明器具の出来上がり。



 カメラの側にトランスミッターを取り付けておけば、この行灯式のストロボをワイヤレスで光らせることができるのみならず、カメラ側で光量を調整できる。
 トランスミッターには、ニコン用、キヤノン用、ソニー用とあり、TTLも使用できる。
 
 今や大人気の中国のゴドックスだが、同様のものを日本のメーカーが作れなかったことが寂しい。ゴドックスに限らず、中国の製品は、とにかく現場をよく知っていると思う。
 全員で合議するという日本人が好むやり方では、こうした図抜けた製品は作れないだろう。
 合議が決して悪いわけではないと思う。役所みたいな場所、つまり俗にユニバーサルサービスと呼ばれるものでたくさんの人の気持ちを汲み上げ、平等、公平が重視される場では、合議は有効だ。
 だが、写真のような何か頭一つ抜けていることが求められ、平凡なものは存在しないのと同様な扱いを受ける場では合議は向かない。
 しかし日本の社会はその役所的なスタイルが大好きで、写真家の集まりでさえ、あなたは本当に写真家ですか?と我が耳を疑いたなる役所的な発想ばかりが飛び交い、仕切ってしまう。
 ともあれ、この分野で日本が巻き返すことはもはや不可能であり、カメラの周辺機器は中国のメーカーの独断場になっていくだろう。


NikonD7100 AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED

 この行灯式ストロボを使用すれば、夜間でもこの程度に写る。
 欠点は、誰が撮ってもこの程度に写ってしまうことかな。


CanonM5 EF-S60mm F2.8 マクロ USM

CanonM5 EF-S60mm F2.8 マクロ USM

 右手にカメラ、左手に行灯という撮影スタイルの場合、カメラのファインダーをのぞく必要がない上に軽量なミラーレスのカメラの方がより一層扱いやすい。



● 2018.7.7 スネークカメラの話


 スネークカメラ

 スネークカメラなどと呼ばれる、スマートフォンに接続するタイプのファイバーカメラを購入したのは、2016年の11月のこと。
 1860円と高価ではなかったのでよく調べもせずに購入したら、あとで僕のスマーフォンには使用できないことが分かった。
 スマートフォンにUSBコードを介して機器を取り付ける場合には、OTGと呼ばれる規格を満たした端末でなければならず、僕はスマートフォンやタブレットを撮影用や電話用として4台も使用していたにも関わらず、いずれも古くて、OTGには対応していなかったのだ。

 それからさらに一年半の月日が流れた。
 当時でさえ古かった僕のスマートフォンの中の一台は、いよいよ古くなり、完全なスペック不足で、最新の通信事情にはまったくついて行けなくなった。たかがツイッターの画面を探す開くのに非常に長い時間がかかるし、インターネットを使用ての検索も同様。
 ツイッターは、元々、撮影現場で事故にあった際に救援を頼むことなどを想定してはじめたものなので、そんなことでは困るし、そもそも、便利なはずのスマホが、電話以外ほぼ使用できないというのはやはり面白くない。
 そこで、いよいよ新しい端末を購入することになり、それに伴って眠っていたファイバーカメラ画面ようやく日の目を見る日がきた。

 ところが、今度はスマートフォンの方が先へ進化してしまった。 
 USB接続の際のコードの形状がより新しいUSBタイプCに変わり、今度はファイバーカメラが、物理的に取り付けられなくなった。
 しかし、どうもコードを変換するパーツが存在するようなので購入してみた。
 果たして、そのアダプターを介してカメラをスマートフォンに取り付けてみたのだが、認識してくれない。
 なぜだ?
 調べてみたら、USBコードの形状を変換するアダプターには、OTG対応のものとそうではないものが存在し、OTG対応のものを買う必要があるとわかった。
 追加でOTG対応のアダプターを購入したら、ようやくカメラを認識してくれた。
 ただ、スマートフォンにカバーを取り付けると、カバーに開けられた穴よりも、アダプターの方が一回り大きくて取り付けることができない。
 カバーを削り穴を大きくするか?
 あるいは、変換アダプターの方を削り、コードの方を小さくするか?
 変換アダプターの方が安いので、そちらを削ろうかと思ったのだが、結局、より接続部分が小さな変換アダプターをさらに追加で購入した。コネクターはデリケートな部品なので、削りカスなどでトラブルが生じてはならないと判断した。
 それにしても、たかがカメラ一台を取り付けるのに、長い、長い過程になってしまった。

 スネークカメラは、岩の隙間に隠れている生き物を探す際に使う予定だ。石垣に隠れた生き物を探すのに必須のアイテムになるに違いない。
 スネークカメラを購入する場合は、
1)まずは自分のスマートフォンがOTGに対応しているかどうか?
2)USBコードの形状を変換するアダプターを噛ませる場合は、OTG対応のものを
3)スマートフォンにカバーをつけていて、、同時にUSBコードの形状を変換するアダプターを使用する場合は、変換コードの差込口がなるべく小さなものを
以上です。



● 2018.7.1〜4 更新のお知らせ

 自分が普段取り組んでいる活動がある。
 そしてその周りに、まだ取り組んではないけど、こんなことができそうだとか、もしかしたらできるかもと多少想像ができたり、予定を立てられる世界がある。
 さらにその周りに、今の自分には想像ができず、具体的に考えられない世界がある。

 その想像ができない世界は2つに分かれていて、1つは、実はやってみたらできること。そしてあとの1つは、実際にやってみても、やはりできないこと。
 写真みたいな活動の場合は、大雑把に言うとそれが好きで好きでたまらないクレイジーな人の集まりなので、想像したらできそうなことや計画が立つことに関しては、やって当たり前。
 だから勝負どころは、今の自分には想像ができないけど、実はできることを幾つ実現できるかになる。
 今の自分に想像ができないことは、言葉にできなことと言い換えてもいい。
 それが言葉にできた時には、ほぼやり遂げたと言っても言い過ぎではないし、残るはただの労働だけになる。
 人の心の問題の第一人者であった故・河合隼雄さんが、
「悩みは口にできた時にはすでに解決している。」
 と書いておられるのを読んだことがあるが、同じことなのかな。

 今の自分には想像ができないけど、実はできることを成し遂げるためにはどうしたらいいのだろう?
 一番簡単なのは、誰かに、入り口まで導いてもらうことだ。
 できれば、ここに入り口があるよ程度にとどめておいてもらった方がいい。入り口の中まで入れてもらうと、習い過ぎになってしまうし、入り口の探し方をいつまでたっても覚えることができなくなる。
 ともあれ、例えば僕が、何らかの生き物について、生き物仲間に教えを乞うたとする。
 その時にみなさんは、僕が自分で考えればできそうなことについては最初から言わない場合が多い。
 みんなが教えてくれるのは、今の僕には理解ができないけど、言われてもがいてみたらできることだし、自分が教える側になっても同様。
 それに対して、「分からない」と後ろ向きになると元も子もなくなってしまうし、あの人が言うんだからととにかく前向きに受け入れてみることが大切になる。
 ただし、詐欺師みたいな人や無責任な人も世の中には存在するので、相手がそういう意味で信頼できるかどうかの判断も必要になる。
 
 
(お知らせ)
恒例の写真展・ネイチャーフォーによる4人展を開催中です。今回は写真展の詳細を北九ブログさんが紹介してくださったので、そちらへのリンクをはっておきます。
また、先日も紹介しましたが、直方谷尾美術館でも僕の写真が展示されています。谷尾美術館へのリンクはこちら。ぼくたちのかいじゅうワールド展です。


● 2018.7.1〜4 更新のお知らせ

今月の水辺を更新しました。


   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2018年7月分


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