撮影日記 2017年2月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
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● 2017.2.17〜28 食あたり

 15日に鳥のたたきを食べたら、それを食べたことを忘れかけたくらいの数日後に、激しい下痢に見舞われた。
 最初は、その日、朝から夕刻まで車の中に積みっぱなしにしてあった弁当を食べたからだと思った。冬とは言え、晴れていたので、車内は温室のような状態で暖かかった。
 ところが、程度は軽いもののその弁当を食べていないのに同じような状態の者が身の回りにいてい、弁当ではない?と気付いた。
 そして共通して食べたものを遡ってみると、鳥のたたきが思い当たった。鳥のたたきを食べた際にカンプロバクターにやられたのだとすれば、潜伏期間も一致することが分かった。カンピロバクターの潜伏期間は数日から一週間程度と長いとされている。
 その後、カンプロバクターの症状がほぼ治まった25日に牡蠣を食べたら、今度は強烈な吐き気とひどい下痢に見舞われた。
 症状からして、ノロウィルスではなかろうか。
 不思議なのは、その日牡蠣を食べた者の中で、発症したのが二人だけだったということ。
 その二人の共通点は、15日に鳥のたたきを食べてカンピロバクターにやられたことなので、カンプロバクターによる症状が完治しておらず、抵抗力が落ちていたのかな。
 昨日は丸一日寝たきりに。
 カンプロバクターを発症して以降、体がだるくて仕事がはかどらず少々ためてしまった感があるが、劇的に忙しい時期でなくて良かったのかな。
 1つのほころびが次のほころびに結びつくケースが、近年多いような気がする。
 今年は体調管理に気を付けよう。



● 2017.2.15〜16 春に備える



 180リットルの容器が合計4つ。春に備えて、採集した魚をストックしておくための容器の水を換える。
 他にも、撮影用の水槽を越冬の状態から覚ますための手入れ。
 今日は、丸一日そうした作業に打ち込む予定だったが、なかなかやる気になれず取り掛かりが遅くなってしまった結果、出来たのは予定の半分。
 やる気になれない理由は、幾つか机の上での作業も控えているから。
 僕は本来、労働の方が性に合うので生き物の世話の方をしたいのだが、苦手な机の上での作業の方をやらなければならないような強迫観念に捕らわれているのだ。
 精神力弱いね。もっと楽しむのがうまくなりたい。



● 2017.2.14 あとから分かることがある。

「こんな狙いで、こうして、ああして、この写真を撮った!」
 と言うと、まるで狙いすまして一枚の写真を撮ったかのようでカッコいいけど、自然写真の世界に飛び込んでみて痛感するのは、余程の天才でもない限り、自分が狙って撮れるものは、他の人にも撮れるということ。
 狙えるということは、所詮それは予測できる程度のレベルであり、100点満点で言うなら75点かせいぜい80点。
 自分がどんな写真を見た時に感動するか、よく考えてみたらわかる。
 自分に想像ができる程度の写真なら、せいぜい「ああ、いいね!」くらい。でも、自分の想像を超えた写真を見てしまうと、「わぁ〜スゲ〜、これどうやって撮ったの!」と感動と羨望と嫉妬とで、頭の中がおかしくなってしまうだろう。
 仕事の場合は、まずは、いつまでに写真を収めますと期限を示さなければならないなど、人の依頼に確実に応えなければならないから、狙って写真を撮ることはとても大切。
 でも仕事以外で写真を撮る時には、狙いすまして撮るのではなく、今の自分が想像できないものを撮りたいな、と思う。
 そういう意味では、仕事の撮影ばかりをしていると、75点〜80点くらいの写真を撮ることが習慣として染みついてしまうから要注意。仕事以外の写真を撮る時間がない時には、自分がそうなってしまう恐怖に苛まれる。

 一着のベストに、いろいろな方向から光を当ててみた。
 そして、何となくまとまるなと感じた光をメインライトとして採用し、メインライトの欠点を補うように、さらに2つのライトを加えてみた。
 最初に何となくまとまると感じた光は画面上からの光だったが、あとでよく考えてみると、画面上から光が当たる結果、ポケットの蓋の下に影ができ、その影によって蓋がポケットから分離をしてポケット部分の形状がよく表現され、それが自分に好印象を与えていたことが分かった。
 スタジオでの撮影は、例え被写体が大好きな生き物であっても僕にとって完全な仕事だったので、これまでは意図的に75点〜80点くらいの写真を狙ってきた。
 例えば、照明の際にはライトボックスと呼ばれる大道具を使用して光を作ってきた。
 だが、ライトボックスは常に75点〜80点くらいの光を作る道具であり、細かな調整ができないので伸びしろはない。そこで、ここのところは大掛かりにはなるが、物を撮影する専門家のやり方を真似てみることが多い。
 昨年末に、物の撮影をもっと本格的に勉強してみようかなと感じる出来事があったのだ。

 やってみると、試してみて初めて分かることがたくさんある。本を読んで、何でここはこの道具を使うんだ?と疑問に感じるものの、どうしても答えが分からなかったことが、「なんだ、そういうことだったのか!」と理解できるケースが。
 特にこのベストの撮影では、それが多かった。
 実は、ベストの撮影は簡単だろうと予測していたのだが、実際は思いの他難しく、その後に予定していた仕事の時間を潰してしまったのだが、カメラマンには、そんな時間も必要ではないかと思う。

(お知らせ)
今月の水辺を更新しました。



● 2017.27〜13 現場感

 写真家の岩合光昭さんは、自然写真家に科学は不要と書いておられる。科学を勉強することで型にはまってしまうと主張しておられる。
 ただしこれは、岩合さんの写真がエンターテインメントとしての写真だからであり、もしも自然科学写真を撮ろうと思うのなら、科学を勉強しておいても悪くない。
 一言で自然写真と言っても、いろいろな観点からの写真がある。

 仮に大学で自然科学を勉強したとしてもわずか4年だが、そのわずか4年が、独学ではなかなか埋められないし、科学に関しては、独学はあり得ないのではないかとさえ感じる。
 そもそも科学は、すでに知られている知識を使って、まだ知られていない現象を説明する行為。
 したがってその基礎となるすでに知られている知識を最低限身に付けておかなければならないし、それらの知識が点としてではなく体系的に整理されている必要がある。
 例えば、自然科学の中でも生物学の分野なら、分子生物学や生化学を一人で勉強せよと言われても、ほぼ不可能であろう。それから科学の世界で物を言う際に最も重要な概念の1つである統計学などでも、自分でデータを取り実際に使ってみる機会がなければ、暗記をすることならできても、感覚として理解をするのは難しい。
 
 あとは、そこでなされる「会話」が大きい。研究室で当たり前に繰り広げられている会話から自然と耳から入ってくることが。
 写真の世界でも、仕事の過程で耳から入ってくる要素は、決して小さくない。
 本を作りながら理解する写真の見方や、ページを構成しながら覚える写真の撮り方が。
 そういう意味では、
「今、こんな写真を探しています。」
 と出版関係者からリクエストを送ってもらえることは非常にありがたい。
 仮に相手が求めている写真を自分が持っていなくても、ああ、こんな目で写真を探すんだと知ることができるし、それを知らなければ撮れない写真もある。







 先日、とある会話の過程で、
「世に出回っている書物には、文章に書いてあることと、その写真に写っているものが一致しない場合が案外多い。本当に欲しい写真が案外ない」
 という話が出た。
 例えば
「アカガエルの産卵期は冬」
 と書くのなら、誰が見ても冬だとわかる写真が欲しいということになる。



● 2017.2.6 釣り道具の話


 昨年、渓流釣りの最中に竿が折れてしまった。
 ぶつけた記憶も無理な力を加えたつもりもないのだが、ふと気が付いたら折れていた。
 その日は非常に険しい場所に入っていたので、労力を考えると車まで予備の竿を取りに戻るのは現実的ではなかったし、あとは同行していた弟が釣るのを見ておこうかと一度は思ったのだが、ふと、折れた状態でもまだ使えるのではないかと試してみたら、魚が釣れた。
 さて、どうしようかな?
 竿は折れた箇所から短くなってしまったけど、使えることは分った。
 でもせっかく遠くまで出かけて厳しい場所まで分け入って釣りをすることを思うと、不完全な状態の道具を使い続けるのは面白くない。
 そこで、使っていない釣り具をオークションに出品して換金し、そのお金で新しいものを買うことにした。

 随分前の話だが、以前にも、釣り具をオークションに出したことがあった。
 僕が所有しているものは、高校〜大学の間に買い揃えたもので、今思うとバブルだったからではないかと思うのだが、釣り道具が盛り上がっていたし名品が多く、当時の道具には高価な値が付くものが少なくなかった。
 その時はお金がなくて生活費に充てるための出品だったが、ABUのリールやハーディーのロッドなど出品したすべてに入札があり、それなりのお金になった。
 国産の製品でも、バルサ50などは、驚くような値がついた。
 ところが今回は、反応が鈍かった。
 以前に比べると、ビンテージのような洒落た道具よりも、実用的な道具に入札が多いような印象を受けた。
 時代が変わったのかな。
 釣り具の場合は、ビンテージとして人気があった製品の復刻版が多く登場してたくさん流通したことも、古い道具の人気が衰えた原因の1つかもしれない。
 さて、画像のリールにはオービスと銘打ってあるけど、確か、イタリアのコプテスの製品にオービスのロゴを付けたものだったと思う。
 オービスと言えば主にフライロッドを作っていたメーカーだが、中にはスピニングロッドもあり、それに組み合わせるためのものではなかろうか。
 洒落たデザインに憧れ、あまり売られていなかったこともあり見つけた時には飛ぶつくように、いや齧り付くように手に入れたリールだが、性能や構造は、同じくらいのサイズ・値段だったフランスのミッチェル408の足元にも及ばない。

 オークションに出品するためだけに写真を撮るのも、時間がもったいないので、ついでに物を撮影する練習の機会にしようと、スタジオで試行錯誤をするのだが、リールは撮影の対象としては非常に難しいことが分かった。
 中でもスウェーデンのABU社製のアンバサダーと呼ばれるシリーズは、形、材質ともに非常に写しにくく、これでいいかな、と思ってパソコンで大きく拡大してみると、ところどころに粗が見つかり、またやり直しの繰り返し。
 さまざまな撮影用の小物も必要になり、出費をしてしまうという本末転倒。
 一体いつになったら、出品できるんやろう・・・



● 2017.2.3〜2.5 浅い水辺用のカメラ


 カメラを水に沈める際に使用される防水ケース・水中ハウジング。
 一般的には、中のカメラをいろいろと操作できるようにたくさんのボタン類が取り付けられるが、このハウジングに関してはスマートフォンを使用して操作する前提で作られており、操作箇所は3つだけ。
 1つはシャッターで、これは撮影の際にぶれないようにするため。スマーフォンの画面上に表示されるボタンでシャッターを押すのではカメラが不安定になってしまう可能性が高く、両手でハウジングをしっかりと握った状態でシャッターを押せるように。
 2つ目は電源のオンオフで、これは多分現存するすべてのデジタルカメラで、スマートフォン側からは操作ができない箇所だろう。
 3つ目は撮影される画面の明るさを調整するダイヤルで、一般的には露出補正と呼ばれる箇所だ。

 カメラとスマートフォンとの接続は、Wi-Fiを利用する。
 Wi-Fiは水の中では使えないが、水の中のハウジングと水上のスマートフォンとを有線で接続すればOK.
 僕は詳しい仕組みがよくわからないので間違えているかもしれないが、多分、アンテナなどに使用されるケーブルの一方を水中ハウジングへ、他方をスマートフォンへ、テープででも貼り付けておけば、ケーブルの中をWi-Fiの電波が通って通信ができるのではないかと思う。
 市販品も存在する。


 ただ、このハウジングは、レンズよりも上の部分が結構長く、レンズ部分まで水に沈めても、よほどに深く沈めない限りハウジング上部が水上に飛び出し完全には水没しないので、わざわざ線を接続しなくても通信できる。


 実は、レンズよりも上の部分が長いのはそれを狙っていたわけではなく、カメラの上部にストロボを取り付けた状態でハウジングに収めるように作った結果、たまたまそうなった。



 中のカメラは、パナソニックのDMC-LX100.
 僕が過去に買ったことがあるデジタルカメラの中では、最高傑作ではないかと思う。
 このカメラの説明書を読みながら何がどんな操作によってできるのかを1つ1つ試した際には、あまりの出来の良さに一人雄たけびを上げたほどだった。
 設計した人は、プロカメラマン並みに写真を撮り込んでいる人、しかも決まりきった被写体を決まりきったように撮るのではなく、特殊なシーンを全知全能を働かせて撮ろうとした経験がある人としか思えないし、一度会って話をしてみたいと思うのだが、残念ながらパナソニックには個人的な付き合いがある人がいない。
 水中ハウジングを制作したのは、プルーフの水元弘道さん。
 水元さんのハウジングは5台目だが、作るたびに進化しており、努力しておられるんだなと感じる。



● 2017.1.28〜2.2 ヤマアカガエル

 冬としては暖かい雨が降った。
 本当は生き物の活動に100%なんてあり得ないのだけど、直前の天候の推移、気温、時期から判断して、今晩に限ってはまず外すことはないだろうと、ヤマアカガエルが卵を産む夜の水辺に向かう。
 ところが意外にも、日が暮れても鳴き声が聞こえてこない。姿は一応あるけど数が少なく、活性が低い感じがする。
 暖かい雨が降った夜間に卵を産むことが多いヤマアカガエルだが、そんな時は翌日にずれ込む場合もあり、その場合は晴れた日の真昼間に産卵が始まることもある。

 深夜に、最初の1つが卵を産んだ。
 さらに、明け方にもう1つがい。
 だがその場所ではもっと多くの卵が産み落とされるはずだから、どうも本番は昼間以降になりそうだ。
 さてどうしたものか?
 もしも本当にカエルの活性が低いのなら、徹夜の疲れを取るために仮眠を取っておきたい。それから僕は近視を補正するためにコンタクトレンズを使用しているのだが、連続装用可能な製品でも24時間を超えてくると明らかに調子が悪くなるから、仮眠には、レンズを取り外し目を傷めないようにする意味も大きい。
 だが別のシナリオも考えられる。
 それは、実は活性が低いわけではなく、今産卵が始まらないのはカメラマンの存在を嫌がっているからであり、僕が現場を離れたとたんに、次々と産んでしまうパターンだ。
 今回は果たしてどちらなのか?
 その水辺で卵が産み落とされるのは2ヶ所。一か所は今僕が張っている浅瀬で、あとの一か所は対岸の少し深い場所。
 その対岸の深い場所にはほとんど近づいていないにも関わらず、つまり僕はそこのカエルを脅かしてないにも関わらずそこにもやはりカエルの姿がないことから、カエルの活性がまだ低いと判断して、3時間ほど、仮眠を取ることにした。



 果たして目が覚めると、10個ほどの卵が産み落とされていた。
 畜生〜。
  まだまだお腹が大きな雌もいて産卵は続きそうな感じがするのだが、浅くて狭くて周囲に障害物がない場所でありカエルが神経質で、日が高い時間帯には、近づくと一瞬で隠れ込んでしまう。
 その場合は、僕が立ち去ると、おそらくすべての雌が卵を産み終える。
 だが僕がその場にとどまると、カエルは僕の姿が見えなくなる日暮れまで待ってから産卵を始める。
 暖かかった前日から一転して、グングン気温が低くなり一般的には産卵するには低すぎる4℃まで下がったが、一旦スイッチが入ってしまうともう関係ない。
 夕刻に2つがいが産卵。
 さらに夜になって1つがいが卵を産んだところで、引き上げることにした。



 それにしても、一晩のつもりで心に油断があったためか、予想外に長くなってしまい、非常に疲れた!


   
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