撮影日記 2015年7月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
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● 2015.7.31 経験者の言葉

 災害対策で、自宅と仕事場の両方に画像のデータを保管していることをツイッターでつぶやいたら、津波の経験者の方が、元データとバックアップを両方共自宅に保管しておいた結果、すべて波にさらわれたことを教えてくださった。
 しかしまあ、経験者の言葉というのは、なんと説得力があるのだろう!
 想像で同じようなことを書くのはわけもないが、経験したことがあるのとないのとでは、やっぱり大違い。何かが違う。
 その違いが何なのか言葉にできないからこそ、経験に意味がある。

 本を作る時にも同じことが言える。
 今は情報がたくさんあるので、それを集め、再編集をして本を成立させることもできる。
 だが、それが本質的に評価されることはないだろう。例えば、新聞記者が現場に行かずに、他社の記事を見て報道をしても、小さな記事ならその場はしのげるかもしれないが、本質的に人の心を打ったり評価されることはないのと同じだと言える。
 正直に言えば、作る立場にいるとそれが分からなくなりがちで、すでに言われていることを確認せずに流用したくなる。
 だが著者、つまり文章を書いたり絵コンテを作成し、その本の背骨になる部分を作る人には、最低限、自分が伝えようとする現象を自分で見ようとする義務がある。
 経験者の一言に、そんな当たり前のことを再度思い知らされた。

 叩かれることを覚悟で言えば、コピーアンドペーストで作られたものがあってもいいと思う。
 人は、そんなに頑張ってばかりはいられないから。
 実は僕は、頑張るのも好きだが、適当にやっておくのも大好物だ。
 知人で、沖縄の「てーげー」という言葉(本土で言うなら適当に近いニュアンス?)を愛する方がおられるのだが、非常に気持ちがよく分かるし、その言葉を愛するその方が、僕はとても好きだ
 けれども、それはその程度の仕事であることを自覚しておく必要がある。
 自分自身が適当であることを自覚し、その適当な自分を認め許すことで、他人も許せるようになるところに、優しさや安らぎやぬくもりや人情がある。
 コピーアンドペーストで作った何かを、自分が何かを作ったと思い込んでしまうのは、非常に困ったことだと言える。



● 2015.7.28〜30 講演をすると・・・

 僕は、船や飛行機に乗るのが好きではない。
 船酔いや気圧の変化で耳が痛いなどがないわけではないが、一言で言うと、船や飛行機は自由ではないからだと思う。あ、降りたいなと思っても降りることができない。
 かと言って、比較的自分の意志で好きにできる車の運転で頻繁に道草をしたり、どこかに立ち寄ったりするかと言えばNO。
 実際に自由に振る舞うかどうかではなく、そうしようと思えばできるかどうかが、自分には極めて重要なことなのだ。

 自然は、恐らく僕にとって、その自由の象徴なのだと思う。
 したがって、そこにどんなに魅力的な生き物がいても、人に管理されている場所に何が何でも行きたいという気持ちには、なかなかなれない。
 歩道に立ち入り禁止のロープが張ってある場所は、僕にとっては、自然ではない。
 規制を批判するつもりはなく、ただ単に自分が求めているものではないという話であり、規制自体は必要だと思うし、意味のある規制を無視してはならないと思う。

 自然にカメラを向けるカメラマンという仕事も、やはり自由を追い求めた結果だろうと思う。
 自分のことなのに〜だろうという表記は無責任だと言われたことがあるが、今のところ、そうとしか書きようがない。
 僕が極めつけの団体嫌いであるのも、自由でありたいからだと思う。
 食事に行く時に、どんなに食べたい料理でも、予約は入れたくない。最後の瞬間まで自由でありたい。
 約束したくない、と言ってもいいのかもしれないし、一人でありたいと言っても、ほぼ差し障りないように思う。
 一人でありたいと言っても、人と行動を共にしたくないという訳ではない。
 例えば、トンボ愛好家のみなさんと一緒にトンボを見に行くのは、文句なしに楽しい。それは単にトンボを見ることが楽しいからではなく、あくまでもそこが個の集まりであるから。結果的に一体感が感じれたらすごく楽しいけど、一緒に何かをしたい的な一体感を求められるのは御免だと思う。

 一人でありたい、というのは、カメラマンとしてはある部分非常に困った要求だと言える。
 なぜなら、カメラマンは、一人であるどころか、
「俺の写真を見て」
 と自ら人に求める立場だから。
 一方で、一人でありたいと僕が極端なまでに思うのは、恐らく自分の中で何かが欠落してるのだと思うが、僕にとっての写真はその欠落を埋める手段でもあり、欠落自体がテーマになっているのであって、カメラマンだからこそその欠落が許されるという面もある。 

 自分に対する奉仕が趣味、他人に対する奉仕が仕事だとすると、自由を求めれば求めるほど、それに対峙する「仕事」は大きなテーマになる。
 恐らく僕は、仕事をするということについて考えている時間が非常に長い方だと思うが、それは仕事熱心なのではなくて、自由を求める結果、相対的にその対極にある仕事がクローズアップされているのだと思う。
 「写真で飯が食える」というのは、自由であるための非常に非常に重要な条件なのだ。
 これとて、決して仕事がしたくないわけでなく、むしろ仕事は多くの同業者よりもキチンとやっているのではないかと自分で思う。
 要は、心の納得の問題。

 カタツムリハンドブックの制作は、そういう意味で心を売らずに済んだというのか、非常に有意義な時間だったと思う。
 編集の方が、こうしたら手っ取り早く売れるとか、会社の都合ではなく、本質的にいいものを作ろうとすることで、それらの諸問題をクリアーしようと王道で打ち込んでくださったからではないかいう気がする。



 ともあれ、講演をすると、その準備の時間も含めて、自分について考える大変にいい機会になる。


(お知らせ)
 恒例の合同写真展が開催されます。
 今回は、僕はマンネリから脱するために少し離れた場所から客観視したくて、作品を出品していませんが、野村さんが鳥、西本さんがトンボ、大田さんが天体の写真を展示しています。
 詳しくは、https://www.facebook.com/Naturefour4 をクリックしてください。


● 2015.7.24〜27 魚部

 日本産の淡水魚に本格的に興味がある人で、「魚部」を知らない人は、ほとんどいないんではなかろうか?
 北九州高校の部活動として誕生した魚部は、大活躍をしてメジャーな雑誌や人気のテレビ番組で取り上げられるようにもなり、その名を知られるようになった。
 もう一昔前のことになるが、そんな魚部について魚の調査の仕事をしておられる知人のFさんから、
「面白いから行ってみたら。」
 とすすめてもらったことがあった。
 がしかし僕は学校があまり好きではないので、どうしても近づくことが出来なかった。
 魚部は、今では魚だけでなく、水生昆虫もスゴイ。恐らくそこらの池を虱潰しと言ってもいいくらいに片っ端から調べ上げ、近辺でほとんど記録がなかったような生き物を次々と見つけ出すようになった。
 その魚部が、高校の部活動としてではなく、誰でも入部できる地域の団体になったので、すぐに仲間に入れてもらった。

 極めつけの団体嫌いである僕が、団体に入りたいと思ったことが、自分でも驚きだった。
 ここまで団体が嫌いな人間をを魅了するものはいったい何なんだ?
 1つには、生き物が好きな人間にとって魚部の活動が貴い活動であり、それを支えるために会費を一種の寄付としてでも支払うべきだという思いがあった。
 がしかしそれだけではなく、結局、「とにかく面白そう」の一言に尽きた。
 近年しみじみ思うのだが、僕らの世界(自然写真やその周辺)で一番大切で、時間と労力を注ぐべきは何か?と言えば、「面白そう!」ではないかと思う。
 どんなに希少な生き物の写真でも、どんなにちゃんとした写真でも、人から「面白そう」と感じてもらえなければ現に使い捨てにされてしまうし、そう感じてもらえるような流れをいかに作り出すかを考えることが、肝であるように感じる。

 その魚部で「ぎょぶる」という冊子を立ち上げ、昨日は福岡のジュンク堂書店で、その記念として講演会が開催され、北九州いのちのたび博物館の下村通誉先生と僕が話をした。
 下村先生に、なぜ魚部に入ったのかを聞いてみたのだが、僕の動機に近いものがあり、やっぱりなぁ〜と妙に納得させられた。
 ここのところ、生き物を見ることや撮影することに集中するために、講演の類は断っていたのだが、「面白い」のノーハウを見せてもらうのだから、代わりにそれくらい引き受けるのが道理だと思えた。
 立ち上げた 「ぎょぶる」だって、とても素人が作ったものとは思えない出来だ。
 写真を印刷するのに適したツルツルのコートされた紙ではないけど、そんなこと一切感じさせないどころか愛着が湧いてくるのは、「面白い」を目指しているからではないかと思う。

 ぎょぶるの取扱店は、魚部ブログ http://blog.goo.ne.jp/gyobu2005 へ
 武田は連載をすることになりました。





● 2015.7.21〜23 難しいとオモシロイは紙一重





 福岡県田川郡産のカタツムリ。
 殻の直径が13mmと小型で、形から判断すると明らかにオトメマイマイの仲間。僕が知っているカタツムリの中では主に九州南部に分布するオトメマイマイ類のダコスタマイマイに似ているが、福岡県のレッドデータブックによると、このカタツムリはダコスタマイマイ似のおそらく別種で、名前がついていない未記載種ということになっている。
 カタツムリの場合、そうした例がまだまだたくさんあって、身近なカタツムリでさえ、専門家が、
「ん〜、多分・・・・」
 などという言い方をせざるをえないケースも少なくないし、名前が分からないと何だか難しく感じる。
 その反面、自分が、新種を見つける可能性も大いにあるのだから、夢もある。
 難しいとオモシロイは、実に紙一重。

 カタツムリに詳しくなるコツは、まずはよく調べられている種類から抑えること。
 具体的にはマイマイ属と呼ばれるグループが、大型で見栄えもいいし、北海道〜鹿児島まで各地にその土地特有のご当地マイマイ属が存在して面白くおすすめ。
 マイマイ属に関しては、カタツムリハンドブックで結構詳しく取り上げた。
 オトメマイマイの仲間のように未記載種が多かったり厳密な同定が難しい種類に関しては、まずは、何に近いというところまでが分かれば十分だと思う。
 そんな目でカタツムリハンドブックを見直してみると、解説の西さんが、日本に約800種類存在するカタツムリの中から、
「これを取り上げよう。」
 と選んだ種類が実に見事。
 基本的には各地でよく見かけるカタツムリを上位15種類くらいの感じで取り上げたのだが、ところどころ、これはカタツムリを理解する上で是非欲しいという種類が加えられている。
 図鑑というと写真というイメージが強いが、実は、何を取り上げるかという最初に作成する目録が命であることを、図鑑を制作しながら思い知らされた。
 カタツムリの第一人者・湊宏先生に昨年お会いした際にも、やはり真っ先に、
「何を取り上げるの?」
 と聞かれ、西さん作成の目録を見てもらったところ、
「よく出来ている!」
 と褒めていただいた。





(お知らせ-1)
 恒例の合同写真展が開催されます。
 今回は、僕はマンネリから脱するために少し離れた場所から客観視したくて、作品を出品していませんが、野村さんが鳥、西本さんがトンボ、大田さんが天体の写真を展示しています。
 詳しくは、https://www.facebook.com/Naturefour4 をクリックしてください。

(お知らせ-2)
 「ぎょぶる」で連載をすることになりました。
 ぎょぶるの取扱店は、魚部ブログ http://blog.goo.ne.jp/gyobu2005 へ





● 2015.7.18〜20 ストライクゾーンのど真ん中



 図鑑には手を出さないつもりだった。というのは、僕には収集癖がないので、多くの写真を揃えなければならないタイプの本は、向かないだろうと考えた。
 子供の頃はむしろいろいろと集めた方だと思う。いや、同級生の顔を思い浮かべてみても、僕よりも集めることにのめり込んだやつの顔は一人も思い浮かばない。
 その癖はやがて釣り道具に集約される。
 話はそれるが、僕は、学校の教科の中では社会の成績が極めてわるかった。100点満点なら30点くらいを常に覚悟したものだった。
 とにかく暗記物が一切覚えられなかった。
 今にして思言えば、暗記が出来なかった理由は、釣り具の名前を覚え過ぎたからではないかという気がする。
 そんなアホなと感じた人はよく考えてみて欲しい。物の名前を1つ記憶するのと、何かを100個覚えた上でさらに1つ覚えるのとでは、明らかに前者が楽であることを。
 ともあれ、最大の興味が釣りから写真へと移り変わる際に、収集は釣りと一緒に終わってしまった。
 写真の道具の場合は、カメラにしてもレンズにしても高価過ぎて、集めたくても集められなかったことが大きい。
 実は内心、今でもカメラやレンズやストロボや三脚が「物」としても大好きであり、もしも宝くじに当選したら、ニコンのカタログにあるレンズをすべて買い揃えて残りは貯金したいと思っているのだが、経済力の問題で、カメラはあくまでも道具であり使えるかどうかが問題なのだと主張せざるをえない。

 でも、カタツムリなら・・・とどうしても図鑑を作ってみたくなった。
 自分には向かんやろう。いや、やりたいやん。と散々悩んだ挙句、決意した。
 決め手は、やはり生き物を分類群でまとめた図鑑は、自然写真の中のストライクゾーンのど真ん中であるということ。そこに自分として一番いい球を小細工なしに思いっきり投げ込んでみる経験は、一度は必要なのではないか?と思った。
 ストライクゾーンのど真ん中である分、世間の見る目も厳しいが、期待や反応も大きく、やってみて良かったと思う。
 さて、分類群ごとにまとめられた図鑑とあと1つ、自然写真の世界でストライクゾーンのど真ん中と言えば写真集がある。図鑑をやってみて、こっちにも球を投げ込んで見ようかという気になった。
 図鑑から写真集というのは、あまりにジャンルが違い過ぎるように感じられるかもしれないが、僕の中ではそんな共通点がある。



● 2015.7.11〜17 ツムハン


著者の東正雄先生にちなんで、通称・東図鑑

 古い図鑑だが、大半のカタツムリを網羅している陸貝屋さんのバイブル。
 ただし、一説にはわざと分かりにくく作られてあるという噂もあるほどで、これを使いこなすのは非常に難しい。
 加えて高価だし、実は僕も、注文して取り寄せて最初にページをめくった瞬間に、しまった〜と思った。こんな同じような殻をずらりと並べられても同定できるはずがないし、本棚の飾りにしかならないと。
 しかし、一般的に市販されている図鑑がこれしかないのだから仕方がない。事あるごとにページを開いてみては、やっぱり同定できずはずもないと閉じることを繰り返すうちに、徐々に読めるようになってくると、分かりにくいから面白く、やっぱりスゴイ図鑑だなと思う。
 分かり易いだけが能じゃないんだなぁ。


解説の西浩孝先生にちなんで、通称・西図鑑。またの名をツムハン。

 とは言え、当たり前に言うと、分かり易く作ろうとするのは当然のことであり、カタツムリハンドブックは、カタツムリを見慣れていない人でもなるべく簡単に名前が調べられるように心がけた。
 カタツムリの場合は、地域によって種類がガラリと変わるので、種類ごとの解説ページに加えて、地域ごとにカタツムリを分けたページを設けた。
 地域は、沖縄や離島、九州、四国、中国、近畿、東海、北陸、関東甲信、東北、北海道。
 ただし全国に比較的広く分布する種類に関してはそれらの地域には加えず、広域種としてまとめた。
 各地域のページ+広域種のページで、最低限知っておきたい種類は抑えられるはずなので、いい感じでカタツムリに対する理解が深まるのではないかと思う。

  



● 2015.7.10 見本が届いた



 北九州のある一帯にナカヤママイマイというカタツムリが分布する。今回のハンドブックでは特殊すぎるとして取り上げなかったのだが、世界中でそこだけにしか生息しないカタツムリだ。
 これが他の生き物なら、ナカヤママイマイは特別な存在として扱われるのだろうが、カタツムリの場合はそうした例が各地にちょくちょくある。
 カタツムリは移動能力が乏しいため、その土地で隔離されやすく、その結果独自の進化を遂げた「ご当地カタツムリ」と言えるものが多く、カタツムリの面白さは、その進化だと言える。
 くだらん、と一笑に付されてしまいそうだけど、各地のご当地カタツムリを携帯ストラップにして売り出したいなと思う。
 北部九州ではツクシマイマイ。
 南部九州ではタカチホマイマイ。
 瀬戸内ではセトウチマイマイ。
 山陰ではサンインマイマイ。
 島根ではイズモマイマイ。
 四国ではアワマイマイ。
 兵庫ではハリママイマイ
 東海ではミカワマイマイ。
 茨城ではヒタチマイマイ。
 東北ではミチノクマイマイ。
 札幌ではサッポロマイマイ。
 沖縄本島ではシュリマイマイ。
 沖縄の北部限定でヤンバルマイマイ。
 与那国島ではヨナクニマイマイ。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 カタツムリほど地域名で種類が揃い、マスコットとしても様になる生き物は他にないと思う。
 少なくとも今よりはずっと関心をもってもらえるだろうし、オタクすぎるところが逆に結構楽しんじゃないかな?という気がする。
 観光客が雨に降られても、みやげもの屋さんでストラップを見て、ついでにご当地カタツムリ探してみようかと雨の中の観光も楽しめる。
 全種を制覇した人には、(株)タケプロから、専用ケースが送られる。

 残念ながら僕にはカタツムリストラップを作るノーハウはないけど、カメラマンなので、それを図鑑という形で現してみた。
 ハンドブックで取り上げることができたのは、日本に分布する800種類のカタツムリのうちの150種なので漏れた種類も多いけど、スター性がある種類や身近な種類はちゃんと抑えているし、地域ごとにカタツムリをまとめたページがあるので、名前を調べる際には実用的にできていると思う。
 ネイチャーガイドの人や観察会を催すことがある人には、特に使ってもらいたいなぁと思う。
 カタツムリの観察はそうした催しものの際には一般的に望まれない雨の日がベストなので、本来なら外れの日を豊かな時間に転ずることができる。
 引き出しが1つ増えるのではないかと思う。

 取り上げる種類を選定したり解説を書いたのは、西浩孝さん。まだ中学生の時からカタツムリに興味を持ち、京都大学でカタツムリのDNAの研究をして、現在は豊橋市自然史博物館の学芸員をつとめておられる。
 随分前の話になるが、ホームページでカタツムリを募集していたら、当時京都大学の学生さんだったSさんが関西で採集したカタツムリを送ってくださり、
「こんな面白い論文もありますよ。」
 と紹介してくださったのが、当時やはり京大の学生だった西さんの論文だった。
 あれから何年たったのだろう?
 とにかく、カタツムリの図鑑が1つできた。






● 2015.7.8〜9 熱くなる







 以前、一枚のヒメダカの写真を見せられ、
「これくらいのレベルの写真が撮れませんかねぇ?ライトがしっかり入っていて、キラッとしていて・・・・・」
 と以前打診されたことがあった。
 ならば!とちょっくらやってみると、従来の自分のやり方では対処することができず、撮影セットの組み方を一から検討し直すことになった。
 ようやく、ああ、こうしたらいいのか!とある程度の形が出来上がってみると、それは特に斬新なものではなく、むしろ写真の教科書に書いてある基本通りの形だった。決して自分流のものを編み出したのではなく、基礎が1つより確実に分かったといった方が良かった。
 スタジオで撮る写真に関して言えば、とにかくこれの繰り返しだと言える。
 ともあれ、誰と仕事をするのか?は、非常に重要なこと。
 よし、やってみるか!と熱い気持ちにさせてくれる人と仕事をしたい。
 こう撮ったら売れるというものをただ求められても、熱くはなれない。売れる売れないは大切なことだけど、同時に写真としても優れているとか生き物の記事として意味があるとか何かを目指さなければ、情熱を注ぎ続けることは難しい。



● 2015.7.7 エラミミズ


NikonD610 AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)

 なんと面白いミミズだ!
 エラミミズについてはもう少し詳しくなりたい。
 子供向けの写真絵本くらいでいいので、エラミミズについて書かれた本を読みたいのだが、そんなものはあるはずもない。
 どれくらい移動をするのか?
 いつも絶え間なくエラをユラユラさせているのか?
 長期間の飼育や飼育下での繁殖が可能なのか?
 などなど、水槽で飼育しながら観察してみることにした。



 エラミミズは、僕が過去に撮影した指標生物の中で、探すのに最も苦労した生き物だ。
 指標生物という概念は小学校の理科の教科書で大きく取り上げられているほどなので、インターネットで検索すれば、エラミミズの記事はいくつも見つかる。
 しかしそれらの記事の中に、実際に自分でエラミミズを探してみたり、自分の目で見たりして書かれた記事は、多分ほどんどないと思われる。
 大半の物は、大元になる記事があり、それを多少書き換えたり編集したものであろうと思われる。
 元になる記事の記載があまり正確(厳密)ではなかったり、誤解を生みやすいものだったりすると、その不正確さや誤解がどんどん広まっていく。
 残念だなぁと思う。
 知識の不正確さや間違えが残念だと言いたいのではない。生き物に関する知識なんて、世の大部分の人にとっては、生き物屋さんが思うほど重要ではないだろうし、それを押し付けるほど、野暮ではないつもりだ。
 僕が残念なのは、
「こんな生き物がいますよ。見てみましょう。」
 という記事なのに、書いた本人が見ていないこと。自分の目で見たいと思ってないこと、つまり生き物に関して書いている人が生き物にあまり関心を持っていないことを、空しいなと思う。

 エラミミズは、指標生物の中でも 「とてもきたない水に棲む」とされているが、実際に自分で探してみると、これは印象が異なる。
 とてもきたない水というと、例えばドブのような場所を多くの人が思い浮かべるだろう。
 しかしエラミミズは、ある程度きれいな場所の中にスポット的に存在する汚い箇所で見つかる。例えば、そこそこいい水が入っている田んぼの中の部分的にヘドロがたまりやすい場所や水路の角など。
 それからもしかしたら、水生の生物という捉え方は不正確である可能性もある。ごく普通のミミズのように、土の中などでも十分に暮らすことができる可能性もある。
 水が入ったタッパーなどに入れておくと、タッパーをよじ登り、外に出てくるので蓋は必須。
 少なくとも、俗にイトミミズなどと呼ばれるドブなどに生息するユリミミズなどとは、かなりイメージが異なる。


(お知らせ)
 恒例の合同写真展が開催されます。
 今回は、僕はマンネリから脱するために少し離れた場所から客観視したくて、作品を出品していませんが、野村さんが鳥、西本さんがトンボ、大田さんが天体の写真を展示しています。
 詳しくは、https://www.facebook.com/Naturefour4 をクリックしてください。



● 2015.7.4〜6 更新のお知らせ

(お知らせ)
6月分の今月の水辺を更新しました。

(お知らせ)
 恒例の合同写真展が開催されます。
 今回は、僕はマンネリから脱するために少し離れた場所から客観視したくて、作品を出品していませんが、野村さんが鳥、西本さんがトンボ、大田さんが天体の写真を展示しています。
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● 2015.7.3 LEDライト



 殻の背が高い、その名もヤマタカマイマイ。
 自然度が高い場所にいるとされている。



 カタツムリは夜行性なので、本格的に探そうと思うのなら夜がいい。
 ただし、カタツムリの住処になるような場所はだいたい気持ちが悪い。それが怖いと感じる人は、早朝でもいい。
 早朝なら、活動しているカタツムリがまだ残っているし、夜よりも写真も取りやすい。
 雨の夜の翌日は、一転して晴れだった。
 降雨の影響で湿っている場合は、、早朝よりももう少し遅くてもいい。
 活動を止める時間になると、カタツムリたちが下を向き、落ち葉の下やその他隠れ家に向かう。
 2013年に撮影した写真の中に未整理になっているものがあると判明し、昨日、その周辺の画像を一通り見直した。
 実はこの日ヤマタカマイマイを撮影したことは、すっかり忘れていた。撮影しても、整理をしなければ何も撮らなかったのと同じ。

 この取材の時にはLEDライトを試した。
 1枚目の画像などは、LEDライトなしでは、殻がかなり暗くなる。
 使用したLEDライトは、



 厳密なことを言えば、発色はカメラ用のフラッシュには全く敵わないけど、LEDは照明の効果が目に見えるので、フラッシュよりも撮影が簡単な点がメリット。
 写真愛好家のブログなどを読んでいると、デジタルカメラではホワイトバランスを設定できるのでLEDライトや蛍光灯でも正確な色が出せるといった記載を見かけることがあるが、これは間違い。
 ホワイトバランスは赤系と青系のバランスを取っているに過ぎないのと、正確な発色をさせるには、他に演色性も考慮しなければならない。一般的なLEDライトは演色性が低いため、それで被写体を照らすとくすんだ色になる。
 したがって、LEDライトをメインの照明器具に使用すると質の悪い写真になるのだが、自然の光がメインで、影になっている部分を少しLEDで補うなど補助光的な使い方なら、少なくとも僕が使っている製品は十分使えると思う。

 下記のゼブラライトは、映像用ではないごく普通のLEDライトだが、そのスペックにはCRIという記載がある。僕もこれに近い製品を持っていて、写真撮影の際にスポット的な光を入れたい時に使うことがあるのだが、この記載があるLEDライトは演色性が高く、いい色が出る。
 ただし、ゼブラライトは球が1つであり光量が限られているし、光の質もスポット的でなので、写真撮影用に使用する場合は、限られた使い方になる。
 そのうちCRIのLED球をずらりとたくさん並べた映像用のライトが登場すれば、LEDライトは非常に有効な照明の手段になるだろう。
 いや、どこか早く作ってくれよと言いたい。



(お知らせ)
 恒例の合同写真展が開催されます。
 今回は、僕はマンネリから脱するために少し離れた場所から客観視したくて、作品を出品していませんが、野村さんが鳥、西本さんがトンボ、大田さんが天体の写真を展示しています。
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● 2015.7.2 サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ


 長年愛用してきた機材が、故障した。
 サンパックの120Jは、知る人ぞ知る名作中の名作。
 カメラに取り付ける照明器具としては発光する部分が無茶苦茶に太い。これが太ければ太いほど、豊かな光が発せられる。



 120Jのベストショットはこの写真だろう。
 昼間の写真に思えるかもしれないけど、これは真夜中。120Jをただカメラに取り付け、何の工夫もなしにその光をバシッと一発浴びせるだけで、実に豊かな感じに写った。この写真は随分売れたものだ。
 ある関係者からは、
「照明にはこだわっておられるんですね。」
 と褒められたけど、実はただカメラに取り付けた120Jを光らせただけだったのだからお金を使うだけで誰にでも真似できてしまうし、僕は大抵のノーハウは隠さないのだが、以降120Jの良さについては人に明かさないことにした。
 数少ない隠しごとだった。

 製造中止になって長いので、修理は不可能だろう。
 何度かオークションで見かけて、予備として買おうか?と検討したのだが、それがどの程度使い込まれていて、あとどれくらい寿命があるのかが判断できないので、いずれも見送った。
 重たいので、近年は野外では別のものを使用し、120Jは2台組み合わせてスタジオを使用しているのだが、壊れてみるとやっぱり困る。
 改めてオークションで探してみたのだが、物は見つからず、仮に見つかったとしても、以前買おうと思った時よりは古い可能性が高い。
 オフコースの音楽が聞こえてきた。
 サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。
 ちょっと違うのは、もうすぐ外は白い冬ではなくて、暑い夏だという点。



● 2015.7.1〜2 お知らせ3つ。

(お知らせ-1)
 恒例の合同写真展が開催されます。
 今回は、僕はマンネリから脱するために少し離れた場所から客観視したくて、作品を出品していませんが、野村さんが鳥、西本さんがトンボ、大田さんが天体の写真を展示しています。
 詳しくは、https://www.facebook.com/Naturefour4 をクリックしてください。
 
(お知らせ-2)
 僕が参加している日本自然科学写真家協会のホームページの「撮影技術を知ろう」のコーナーが更新されました。
 「撮影技術を知ろう」は、「憧れのあのテクニックを手に入れる」というコンセプトで、これまでは多くの写真愛好家がやってみたくてもちょっと手が届かなかった写真のテクニックを詳しく紹介しています。
 この企画は、人に案内するとみなさん例外なく、
「これはもの凄く有用!」
 と驚かれますが、今回新しく追加された記事は、『深度合成』で、高嶋清明さんが詳しくそのノーハウを語ってくださいました。
 とにかく、スゴイですよ。僕は、これは負けられんな、と熱くなりました。
 日本自然科学写真教科のホームページは、http://ssp-japan.net/ssp/
 メニューから、「撮影技術を知ろう」へ進んでください。
 

(お知らせ-3)
 淡水魚好き以外は恐らく大半の人が初めて耳にする言葉だと思いますが、「ぎょぶる」という動詞があります。漢字を使うと、魚部る。
 魚部の活動をするという意味であり、魚部は、元々は北九州高校に生まれた魚を採集することを目的とした部活動だったのが高校の枠を飛び越えて誰でもが参加できる団体となりました。
 「ぎょぶる」という名前の冊子も発行され、連載をすることになりました。
 ぎょぶるの取扱店は、魚部ブログ http://blog.goo.ne.jp/gyobu2005 へ




   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2015年7月分


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