撮影日記 2014年4月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
・今現在の最新の情報は、トップページに表示されるツイッターをご覧ください。
 


● 2014.429〜30 待ち時間

 待ち時間を伴う撮影では、「早く終わってくれよ。」と感じることがよくあるが、早く終わって・・の中身には2種類あるように思う。
 1つは早く写真を撮りたいケース。
 あとの1つは早く撮影を終えたいケースだ。

 野外で何かを待つ場合は、だいたい前者の気持ちが強い。
 例えば、カエルの産卵を待っている時には、早くそれを見たいと思う。もしかしたら今日は見ることができないかもしれない。いや、今年は見逃してしまうかもしれない。そんな思いが、早く早くと掻き立てる。

 一方でスタジオでは、後者の気持ちが強い。
 とにかく待ち時間という退屈から開放されたい。
 野外では、仮に目的とするシーンを見ることが出来なくても他に刺激が多く退屈という気持ちにはなりにくいのだが、スタジオは退屈しやすい。
 退屈で退屈でたまらないのに、被写体から目を離すことだけはできない。
 決して忙しいわけではないのに、動きが取れないジレンマ。
 忙しくないので、何かをやり遂げたという実感が得られにくい。
 野外では、何も撮影できなくても、何かをやり遂げたかのような満足感が得られる。その錯覚は、それはそれで危険な面もあるのだが。

 スタジオでの長時間の待ち時間には、まずはソフトを相手に将棋を指す。
 将棋を指すと、10分、20分が1分、2分くらいに感じられるので時間があっという間に過ぎる。
 欠点は、頭が疲れるので、何局もは指せないこと。
 次に、電子書籍の購入量が増える。あまり目を凝らさなくても読める漫画がいい。
 それから、ネットで色々なことについて、とにかく調べる。
 次はユーチューブを見る。
 ネットは無尽蔵なので、その手の待ち時間には都合がいい。
 そんなものが流行る、そんな時代なんだろうな。



● 2014.428 一ヶ月の辛抱



 飼育中の磯の生き物が2度目の脱皮を終えた。飼育の要領が、ほぼつかめたようだ。
 ただ、先日どこかで大規模な停電があったというニュースを耳にしたが、長時間の停電でエアーポンプが止まると全滅させてしまう危険性があるので、気は抜けない。
 なるべく事務所から離れないようにして、停電の際にはエンジンをかけた自動車から電源を取るしかないだろう。

 飼育に特に手がかかる期間は一ヶ月。その手間は別にいいのだけど、その間、泊りがけでの撮影に出かけられないのが辛いところだ。
 したがってなるべくこの期間をすんなりと乗り越えたい。失敗を繰り返して、一ヶ月のはずが、やり直しでひと月半、ふた月となると、悲惨なことになる。 
 


 エアーポンプは浄化槽用のものを使用している。浄化槽用のポンプが一台あれば、そこから細いチューブで20くらいには分岐できる。
 ット用のものはあっという間に壊れてしまうが、浄化槽のポンプは非常に丈夫で、僕が使用しているものは5年以上トラブルはないが、いつかは壊れるのに備えてポンプは2台稼働させ、どちらかにアクシデントがあっても全滅を避けるように細心の注意を払う。
 同時進行で、いろいろな飼い方の条件を試して、何がベストな飼い方なのかも探る。
 もっと具体的にいうと、どれくらい雑にしても、どこまで手を抜いてもその生き物が死なないかを探る。



● 2014.429 1場所、2物、3技術

 写真は、1場所、2物、3技術。
 いい写真を撮る上で一番効果的なのは、いい場所を選ぶことだと思う。料理で言うなら、いい素材を探すのと同じことだ。
 いい場所の中には、タイミングも含まれる。例えば、桜の花を撮影したいのなら、頃合いよく桜が咲いている場所がいい場所ということになる。
 枯れかかった花には、枯れかかった花なりの魅力があるが、それは開花のタイミングを捉えられなかった時に考えることであろう。
 また、自分の作品として写真を見てもらう場合には、枯れかかった花の写真もいいのだが、仕事の場合、大抵それは通用しない。大半の人が見たい花の写真は、枯れた花ではないからだ。
 
 さて、
「撮影を依頼するのなら、なるべく早く言ってよ。」
 と編集者のみなさんにお願いしておいたら、何人かの方が、大変に早い時期に絵コンテを作成した上で依頼をしてくださった。
 実にありがたい。
 早く依頼してもらえれば、特に植物がらみの撮影などで、ベストなタイミングで撮影することができる。タイミングが良ければ、写真のクオリティーが格段に上がる。
 逆に時期が遅くなると、その場のベストを尽くしてもせいぜい60点くらいの写真ということになってしまう。
 写真が気に入られなかった時のやり直しをすることもできにくくなる。
 なのに、時期が遅いと思い通りの写真が撮れにくくなるので、やり直しを依頼される確率が高くなる。
 或いは、それをごまかす演出など、何か無理しなければならなくなる。

 早く依頼をしてもらったおかげで撮れた写真が、今年は非常に多かった。
 ただそれでも、植物のベストのタイミングを捉えることの難しさを思い知らされる。
 今年はこの場所がベストだと見立て、何度も何度も見回りをして、ついにその日が来ると気合は頂点に達した前後が悪天候で手も足も出なかったというような。
 ずっと、植物写真をなめてたな。



● 2014.426〜27 ベルボン 角パイプ





 長所と欠点は紙一重。
 フランスのジッツオ社製の三脚はガタが少なく、頑丈でカメラをよく固定できることで評価が高い。
 その反面、脚の内部に水が侵入すると、ガタが少ない分、水によって内部が真空に近い状態になりやすく、脚を伸ばしたり縮めたりがスムーズにできなくなる。
 しかもそのまま放っておくと、下手をしたら数ヶ月間でも湿ったままなので、脚を分解して、内部を乾燥させなければならない。
 たまになら日常の手入れも兼ねて分解もいいのだが、僕のように頻繁に濡らす場合は、非常にめんどくさい。
 
 その点、断面がコの字型のパイプを採用した、ベルボン社製の角パイプの三脚は、脚の内部が解放状態になっているのだから水につけてもすぐに乾くし、メインテナンスが楽チン。
 角パイプは手触りが悪くて、僕だって水辺以外では使う気にはならないし、今では製造されていないことから判断するに市場の評価も低かったのだろうが、何のためらいもなく水に浸けられるこの三脚は重宝する。

 この三脚に関しては、今使用中のものが修理不能に壊れてしまうこともあるだろうし、あと一本持っておきたいと思っていたので、先日、オークションで落札したら、僕が今使用している物とは多少形状が異なるものが届いた。
 どうも何度かモデルチェンジがあったようで、僕が元から持っていたものの方が作りが良く、より新しい製品のようだった。
 三脚は適材適所であり、出来れば常に10本くらい車に積んでおきたいのだが、邪魔になりやすい道具でもあり、だいたい3〜4本くらいにとどめてある。



● 2014.424〜25 サファリ



 大昔に購入したフランス・ジッツオ社製の三脚。今はもうないが、サファリと呼ばれていたシリーズで、確かカタログには「水辺での使用に適する」といったことが書かれていたように記憶している。
 脚を伸ばしたり縮めたりする際に脚を固定するリング状のネジが、普通の三脚では下側(地面側)にあるのに対し、サファリでは上側にある。
 ネジが下にあると、脚の先端を水に浸けた時にそこから浸水したり、ぬかるんだ場所ではネジが泥に埋もれ、泥を噛んでしまうしまう。
 その点、ネジが上にあれば、浸水したり汚れにくい。
 それに伴い、普通三脚と言えば上から、太い脚、中くらいの脚、細い脚というように太い順に結合されているのが、サファリでは細い脚、中くらいの脚、太い脚の順になっている。
 実は、これが非常に使いにくい。
 どう使いにくいかは実際にネジを回してみなければすぐに分かるが、やってみなければ大半の人はまず理解できないだろうから、どんな現象がおきるのかを書くのはやめておこうと思う。もしもその不具合が想像できる人がいたとするならば、その人は相当な想像力の持ち主か、或いはよほどにこの手の道具を使い込んでいる人だろう。
 僕にはそれが全く想像できず、買ってしまったのだった。
 外国製品は非常に合理的である反面、これはないやろう?という使いにくさのものも案外多い。

 僕の場合、三脚を水に浸ける際に、ほとんどカメラだけを陸上に出してほぼ完全に浸水させてしまうケースが多く、そうなるとサファリとて脚の上のネジの部分から水が浸水するので何の意味もなかった。
 ただそれでも、ごく稀に、この一芸に秀でた癖のある道具がピシャリとはまる状況があり、手放す気にも案外ならない。
 厳密に言うと、今日の画像の三脚には、ジッツオ社製の別の型番の三脚から取った部品が使われており、市販されていたサファリとはちょっと違う箇所もある。



● 2014.421〜23 部品



 20年くらい前に、数年間、水草と熱帯魚に夢中になった時期があった。
 延々と、ただ水槽を眺めておくだけで楽しかった。撮影そっちのけだったのでそんな自分に不安も感じたが、抑えられなかった。
 僕の仕事の中で水槽を使用した撮影は、その時に覚えたノーハウと揃えた道具が今でも中心になっている。
 ドイツのエーハイム社製の水を浄化するろ過装置などは、当時の僕にとっては高価だったが、いまだに現役なのだから結果的に、非常に安上がりになった。
 パーツは時々交換しなければならないが、大昔の機種が多少変わりながらもいまだに売られていて、部品も、そこらのショップで買うことができる。
 どんどんモデルチェンジし、部品を交換しながら長く使うことをあまり前提としない日本製とは、考え方が異なる。

 撮影用品にも同じことが言える。
 フランスのジッツオ社の三脚は、自社の製品どうしで徹底してパーツの共通化がされている。
 したがって、別の型番の三脚を組み合わせて好みの三脚を作ることもできるし、現在使用中のものが壊れた時に、他の製品から一時的に部品を借りてくることもできる。
 パーツを共通化したらコストも下がるはず。
 日本のメーカーがなぜこれを徹底しないのかが、全く理解できない。
 イタリアのマンフロット社などはそのパーツを販売するホームページまでもが存在する。
 マンフロットの三脚関連の製品はボロなんだけど、ボロ具合が絶妙。
 第一印象では、う〜ん、ボロイな。こりゃ使えんわという第一印象だった製品を、気付けば長く使ってしまうケースが多い。



● 2014.420 飼育



 撮影用のモデルの飼育は、非常に重要だ。
 採集するモデルの数が少な過ぎると、いいモデルと出会える確率が低くなるし、多過ぎると飼育に手間がかかり、1匹1匹に対するケアーが手薄になってしまう。
 したがって、なるべく多くのモデルを、なるべく手間がかからないように維持したい。

 今撮影中の磯の生き物は、採集後、屋外でプラスチックの容器に入れて飼育している。
 生き物を飼う場合には、温度が非常に重要で、その温度は日当たりで決まる。
 一般的なことを言えば、死なせたくないのなら、飼育下では、温度が低すぎることよりも、上がり過ぎることが問題になるケースが多い。
  したがって、午前中にやさしい日差しが少々あり、あとは、あとは日陰になるような場所が、生き物の置き場としては適する場合が多い。

 磯の生き物の容器の中には、サイコロに煙突を取り付けられたような形状のろ過装置が1つ。エアーポンプを接続すると、その煙突から、ポコポコ水が噴き出してくる。
 よくホームセンターなどで売られている安っぽい飼育セットに付属しているあれだが、実は、安物ながら、これが非常に高性能なのだ。
 中には、付属の活性炭入りの綿を入れる。
 活性炭が水を浄化できる期間はせいぜい1〜2週間くらいだとされているが、その間に綿の部分に微生物が住み着き、活性炭が効力を失う頃には微生物による水の浄化が始まる。

 飼育容器の周囲に置いてあるポリタンクの中身は、海水だ。
 水替えの際には、それをネットで越して、飼育容器の中に入れる。



● 2014.4.17〜19 孵化

 集中力を欠いたつまらないミスが目立つので一日休みを取ろうと思ったら、飼育中の磯の生き物の卵が孵化をする気配を見せた。
 すでに10匹以上の幼生が泳いでいるし、過去の経験から言えば、3〜4時間以内に残りの卵がドカッと孵化をするはず。
 そこで、休みは先延ばしにして、急遽撮影をすることにした。

 ところが予定外のことだったので、撮影用の水槽に汚れがたまり過ぎていて、これが差し障る。こんな時淡水なら蛇口からいくらでも水がでるので水替えをすればいいが、海水の場合、海に汲みに行かなければならないので簡単ではない。
 やっぱりやめようか。
 いや、何とかなるんじゃないか?
 いやいや、ヤメ。休みだって大切。
 でもやめたってどうせ先延ばしになるだけで、ちっとも楽にならないじゃないか!
 内心散々もがいたあげく結局撮影を決行したのだが、今度は卵をもった親が動き回ってじっとしてくれない。どこに行くか分からなければ、いい写真が撮れる確率が低くなる。
 水槽の中でじっと動かないいい親を見つけるのも、今回の撮影の重要な準備だった。
 あ〜、やめた、やめた!面白くない!と片づけようとしたら、一転して親が落ち着いた。今度は、寸分も動かなくなった。
 生き物の撮影は準備も大切なのだが、その場でもがいてギリギリ何とかしてしまうことも大切なのだ。

 あとは孵化を待つのみ。
 満潮は午前10時半。おそらくそのタイミングに合わせて、せいぜい正午までには孵化をするのではなかろうか?
 磯の生き物は満潮の時刻に産卵や孵化をすると言われているが、水槽で飼育された期間が長くなると、満潮には同調しなくなるように感じる。水槽の中では、満潮の時刻は恐らくわからないのだ、と僕は思う。
 だが今回の卵はほんの数日前に磯で採集したばかり。したがって海で活動していた時のリズムが、まだ体に残っているはずだし、満潮の時刻の前後に孵化をする確率が高いと思えた。

 ところが、待っても待っても孵化は始まらなかった。
 正午どころか深夜の12時になった。
 15時間かぁ。やっぱりやめようか・・・
 こんな時に、僕の場合、後悔はない。やってみなければ分からないのだからと思えるが、引き時は考える。
 今回の卵は極上品だった。とにかく量が多くて、それが一斉に孵化をしたら、様になるんじゃないかと思えた。
 それからさらに3時間が経過した午前3時、ようやく孵化が始まった。
 
 メスは抱えている卵が孵化をした直後に、交尾をすると言われているのでそこまで撮影したい。
 交尾は、書物によって、孵化の直後と書かれている場合もあれば、しばらくしてからと書かれているものも、孵化後に脱皮をしてからと記載されている場合もあり、僕が知る範囲ではそのいずれも正しい。
 さて、今回はどうなることか?
 孵化直後ならありがたい。
 が、2時間待っても交尾の気配なし。
 長くなるかな。体力的に限界が近かった。
 よし、思い切って少し仮眠を取ろうと目を閉じ、1時間後、目を覚ましたら交尾はすでに終わったようだった。
 オスはメスに全く興味をしめさなくなっていた。
 あとちょっとやったのになぁ。



● 2014.4.16 画像処理

 ここ2〜3年、画像処理が徐々にはかどらなくなってきた。とにかくやる気が出ないのだから困る。だいたい予定の1/4くらいの量しかこなすことができず、その分、どこかで撮影の時間を削ることになる。

 なんでかな?と考えてみた。
 作業がややこしくなっているのかな?
 撮影した画像を調整し、画像に必要な情報を埋め込んだあとに、画像を何度分類しなければならない。例えば500枚の画像の中から、まずはあの本で使用する画像を選び出し、次にあっちの本で使用する画像を選び出し、さらにあそこに収める画像を選んで、今度はあっちに収める画像を選ぶ・・・と。
 今や、自分で作成した手順書を見ながらでなければ、画像処理ができない。
 いやできないわけではないけど、ミスがでる。
  
 そうしたややこしい作業に、パソコンのソフトがついてこないことも大きいように思う。
 動きが遅かったり、固まってしまったり。
 パソコンのスペックが不足しているのかと思って、より強力なものに買い替えたこともあるのだが、思ったほどの改善はなく、ソフト自体の性能の問題が大きいように感じられた。
 すべてのメーカーが、ソフトに関してはお粗末ではなかろうか。カメラだけでなく、ソフトにも力を入れてもらいたいものだ。
 今僕のメインのカメラであるニコンのソフトに関しては、コンセプトはいいと思うのだが、もうちょい、動きを早く、操作性を良くし、トラブルを少なくしてほしいものだ。
 ニコンのソフトは、まるで外国製の車みたいだ。
 本質的な性能はいいのに、すぐにトラブルを起こす。
 特に、大量のデータを扱うケースをもっとしっかり想定してもらいたい。



● 2014.4.15 更新のお知らせ

3月分の今月の水辺を更新しました。


● 2014.4.14 縁

 3年間でノートが2冊しか残ってないなんてあり得ないという批判を受けて、撮影ノートを準備しようと思い立った。
 毎日の記録は日記ソフトを使って記録してあるのだが、現場でもっと詳細な記録を取ってみようかと。
 そう言えば、ダイビング中に水中で使用できるノートなんてなかったっけ?
 僕の場合、水辺や雨の中での撮影が多くノートなんて濡れてあっという間にボロボロになってしまうので、水中でも使用できるものなら安心だ。
 そこで、『 水中 ノート 』というキーワードでインターネット上の画像を検索してみたら、それっぽい製品が幾つか表示された。
 その中にふと気になる魚の写真があったので、ついでにクリックしてみてビックリ。
 画像は、昨年青森でのカタツムリの採集の際にお世話になった大八木昭さん撮影のウキゴリの若魚だった。
 実は同様のケースが過去に何度かあった。
 大八木さんとはカタツムリが結び付けてくれた縁なので、カタツムリの画像でそうしたことがおきるのならまだ分かるのだが、そうではない何でもない生き物の画像が大八木さん撮影の画像だったことが。
 何か僕が気になる要素があるんだろうな。縁があるんだな。
 人生って不思議だなと思う。



● 2014.4.13 NikonD7100


NikonD7100 AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-200mm F2.8G(IF) NX2

 最初にオートフォーカスでピントを合わせると、あとは被写体が移動したりカメラを動かしても、最初にピントを合わせた位置にピントを合わせ続けるニコンの3D-トラッキング。
 これが現場で通用してくれれば、動体の撮影が断然簡単になる。

 3D-トラッキングは比較的新しいニコン独自の技術だが、初めて使ったのはニコンD3だった。
 当時の感想は、おもしろいが、まだ実用レベルではないというものだった。
 その後ニコンの新製品を買う度に一番楽しみにしているのが3D-トラッキングの性能の向上で、今回は、先月購入したD7100の3D-トラッキングを試してみた。
 まずD3で使った時とは比べ物にならない軽やかな動作で期待が高まるが、本格的に試してみると、うちの犬をちゃんと追いかけることはできなかった。
 これには、犬の色、背景との関係があると思われる。緑のバックで白い犬が走っているようなケース、つまり被写体と背景がよく分離する場合なら、もっとよく追いかけてくれるのではなかろうか。
 それから、活動的な柴犬の動きはトリッキー過ぎて、機械がついていけない可能性もある。人のスポーツ写真などのケースなら、あるいは、3D-トラッキングが威力を発揮する可能性も十分にあるだろう。
 ともあれ、新しい技術は、使える使えないにかかわらず、面白い。
 その他の面では、D7100のセンサーのサイズにして2400万画素は、詰め込み過ぎではないか?という印象を受けた。これは僕の感想に過ぎないし、使い方、状況にも当然左右されるのだが、同じセンサーサイズに1600万画素の方が、高画質に感じられる。
 特にハイライトの切れが悪い。上の画像の場合なら、ボールの反射の部分などがシャキッとしない感じがする。



● 2014.4.10〜12 痛恨

 海の生き物の場合、卵から孵化をした子供の形態が、親とは全く異なるケースが珍しくない。
 形が違うということは、生活スタイルも違うということ。例えば岩などにくっついたままほどんど移動能力を持たない動物でも、子供の頃には、水に漂ったり、活発に運動をするのが普通だ。
 そんな場合、その親とは違った子供のことを幼生と呼ぶ。虫で言う幼虫のようなものだと思っておけばいいが、昆虫以上に劇的な変化をする生き物が珍しくない。
 そして幼生には、育てるのが難しい種類が多いようだ。
 一番の問題は幼生が小さいことだ。
 水質を維持するためにろ過装置などを設置すると、吸い込まれてしまうから、それができないし、小さいと、その口に入る食べ物を確保するのが難しい。
 少し大きくなれば、幾つか餌の選択肢ができる。よく知られているのは、ブラインシュリンプというやつだが、最近なら、それよりも小さい汽水に生息するワムシなどを培養して与える方法もあるようだ。

 さて、今撮影中の生き物も、幼生の飼育が難しいとされている。
 飼育ができなければ、撮影ができない。
 海でネットを使えばいろいろな段階の幼生が採れるとは思うが、海の生き物の種類の多さを考えると、それが何の幼生なのかを確実に同定するのは明らかに不可能だろう。実際に磯に行って観察してみると、僕が撮影のモデルに選んだ種類と比較的近縁のものだけでも数種類見つかる。
 でも、何とかなるんじゃないか?と卵から幼生を孵化さえ飼育してみたが、確かに、簡単ではない。
 ところが、ある容器の中の幼生だけ、1週間ほど元気に生き延びた。
 実態顕微鏡で見てみると、与えた餌が消化管に入っているのが確認できた。
 匹数は、わずか6匹。
 目を凝らさなければならないサイズの生き物が6匹なのだから心もとないが、孵化後一週間で最初の脱皮をすると言われており、一回脱皮してくれれば、行けるのではないかと期待していた。
 ところがそれを死なせてしまった。もっともらしい原因は、餌を与えたあと、エアーストーンを入れ忘れたことだ。
 何種類もの撮影が重なった慌ただしい日に、寝床についた後で世話をするのを忘れていることに気付いて慌てて餌を与え、そのあと、元に戻すのを忘れてしまったのだ。
 痛恨!
 ただ、わずか6匹の微生物に必要なエアーがそんなに多いとは思えないし、他にも水質の悪化や、今の飼育方法の限界も考えられるが、ともあれガッカリだ。
 頼むから一人にさせてくれ、と部屋に引っ込んだ。何もする気になれなかった。

 でもなぁ。がっかりするって、よく考えてみたら厚かましいのかな。
 元々難しいとされていることなのだから、失敗する方が普通だと言えるのに、それが自分ならできるとでも言うのか?
 また、その程度の苦労でできることをやったところで、それに何の意味があるんだろう?
 生き物の撮影みたいな作業の最大の面白味の1つは、尋常ではないことにチャレンジして、それをやり遂げることではなかろうか。
 飼育体制を、より手厚く改善することにした。
 一昨日〜昨日と、磯で卵を持った親を採集し、幼生を得る準備を整えた。
 さて、どうなることやら。



● 2014.4.8〜9 権威

 依頼された特殊な写真は、何かのアクセサリーをカメラに取り付ければ撮影できるのだと思い込んでいたのだが、調べてみたら、それ用に改造されたデジタルカメラが必要だと分かり、大慌てで準備した。
 さらに、特殊なフィルターを購入して、さらにさらにより適したレンズがあることも分かり、万札が次々と飛んで行った。
 今シーズンは、上等の釣竿を買う予定だったのだが、おあずけだ。30年くらい前に買ったフェンウィックの竿には、もうしばらく頑張ってもらうことになった。
 ともあれ、非常に特殊な撮影であり、特撮を請け負うプロの写真家、あるいは研究者以外にはまず縁がない世界だと思われた。
 したがってインターネットを検索したところでほとんど有用な情報は得られないだろうと思っていたのだが、やってみたら、昆虫写真の海野先生の小諸日記が幾つかヒットし、さらに海野さんのところでアシスタントとして働いていた高嶋清明君の日記もヒットした。
 実は、それと同じはパターンは、過去にも何度かあり、これぞプロ!これを権威というのだろうな、とゾクッとさせられる。
 そしてそれを、アシスタントを務めた高嶋くんが間近で見て知っていることの凄さを思い知らされた。
 海野先生に教わろうと思っていたのだが、自分でやってみることにした。自分でやれば相当な無駄がでるだろうが、その無駄を糧にするのが、僕には向いているように思えた。

 自分で言うのも何だが、僕は結構研究している方だと思うし、これは自分以外はまず知らないだろうと思う技術屋としてのノーハウや知識もその中には幾つかある。
 だが、そうしたことを海野先生に話してみた時に、海野先生がほとんどそれを知らなかったケースは、僕が記憶している範囲では過去にたった1度しかない。
 キャリアが違うと言えばそれまでだが、どうやったらあそこまで知れるのだろう?
 それだけ色々な仕事を海野先生が引き受けてきたということになるのだが、特殊な撮影を依頼されると、僕は正直に言えば、果たして自分にできるだろうか?と不安になるし、それは海野先生とて同じだったはず。
 何か未知のこと、見通しが立たないこと、計算できないことが目の前にある時に、それから目を背けたり、逃げているようでは話にならないのだろうな。



● 2014.4.7 待ちの撮影(後編)

 メダカの孵化に比べると、今撮影中の磯の生き物の孵化は、30秒目を離すとまずいが、数秒ならよそ見をできるで気が楽だ。
 タブレットでフェイスブックページをチラッとみて、コメントを書き込むゆとりはないが、いいね!をするくらいのゆとりならある。
 ただそれでも待機の時間が長いのが、他の撮影との兼ね合いで苦になっていたのだが、先日ついに孵化直前の予兆を把握することができた。
 次回からは、せいぜい3〜4時間の待ち時間で何とかなるのではないかと思う。
 こうした発見は、いい写真が撮れた時以上に非常に嬉しい。
 問題は親が卵を持ち歩く生き物なので、孵化のタイミングでどこに卵があるのかが確定できないことだ。親の位置によっては絵にならないこともあるし、撮影不可能な位置の場合もあり、つい先日も、孵化は見届けたもののそれで撮影ができなかったばかりだ。
 こればかりは運であり、どうしようもない。

 孵化の撮影などに取り組んでいる時には、
「忙しいんですね!」
 とよく言われるのだが、違うのだ。
 目が離せないゆえに、他に何もできないのだからとにかく暇であり、その究極の暇が辛くて大変なのだ。
 そもそも生き物の写真を撮っている時点で、世間一般の感覚で言えば、暇な時代になったのだと言える。

 目を使わない暇つぶしができれば・・・
 音楽さえあれば一切の退屈を感じないような音楽好きや、落語を聞く時間がとにかく欲しい落語好きなら、あるいはスタジオの待ち時間を楽しめるのではないだろうか?
 そんな人がおられたら生き物のカメラマンになって、待ちの撮影をエンジョイしてはどうかと思う。人がしんどいと感じることを楽しめるのなら、それを天職というのではなかろうか。
 因みに僕は、どんなにおいしいレストランでも、行列で待つのは5分でもいやという超セッカチ人間なのだ。



● 2014.4.5〜6 待ちの撮影(前編)

 「待ち」の撮影と言えば、以前、メダカの卵の孵化の瞬間を待った時はつらかった。メダカの孵化は大抵コンマ何秒の瞬間。したがって一切気を抜けないのだ。
 コンマ何秒の出来事に反応できるような最高レベルの緊張を、何時間も保ち続けることを想像してみて欲しい。あれを超える苦しい撮影は今のところないし、撮影に限らず、僕の一生の中で最もしんどい時間だった。
 頭の中がコンマ何秒の単位になっているのだから、10分や20分がとても長かった。
 最初は、卵を拡大したカメラをのぞきながら待っていたのだが、それではきつくて到底無理だと分かり、少しでも待ち時間を楽にするために、デジタルカメラをテレビに接続し、卵の像を大きく写してその瞬間を待つことにした。
 ただし像を出力すると、カメラは電池を消耗する。
 数時間を超える待機の場合には電池交換の必要が生じるし、その間に孵化をされたらお終いだ。また像の出力続けるとカメラが熱を持ち撮影した画像に色被りが生じたり、メーカーによってはカメラが動かなくなる場合もあるそうだ。シャッターを押したものの、カメラが動かなかったりしたら、泣くに泣けない。
 その点、パナソニックのカメラにはACアダプターが準備されているのと、画像を出力したままでの長時間の待機にも割とよく耐える点で適していた。
 さすがにビデオを作っている会社だなと感じた。
 
 待機の時間はせいぜい24時間以内だと判断したのだが、トイレをどうすかが最大の問題だ。
 仮に尿瓶を準備したとしても、目は被写体を凝視し、片手はいつでもシャッターを押せるようにしておかなければならず、残ったもう一方の手で、しかも手探りで事を済ませなければならない。
 いや、それではピント調整ができないので、右手はシャッター、左手はレンズのピントへ。
 事は、手を使うことなしに済ませなければならない。
 それを思うと、尿瓶よりも、おむつが適すると思えた。
 そこで薬局に電話をして、おむつを一袋配達してもらうことにした。
 というのは冗談。
 僕は開き直ってトイレで用を達するのだが、スタジオでの待ちの撮影が終わった後はいつも、何の心配もなくトイレに行けることの幸せをかみしめる。
 カメラマンが二人いれば問題は一瞬にして解決するのだから、組織の力を思い知らされる。なるほど!NHKがチームで動いていい映像を撮るはずだ。逆に、下手なテーマ設定をすれば組織には絶対に勝てないし、個が有利なテーマは何か?と思いを巡らせたりした。
 ともあれ、メダカの孵化の瞬間は素早過ぎた。
 やってもやっても、どうしてもその瞬間を捉えられなかった。
 結局、稚魚が上手く卵を抜け出せずに体の一部が卵外に出た状態でしばらく動けなくなったケースを撮影して、それを孵化とすることにした。
 金魚などの場合は、卵から稚魚の尾だけしばらく出ているケースがよくあるのだが、メダカは、本来は一瞬でスルッと出てくるので、あれを孵化とするのは屈辱だったが、しかたがなかった。



● 2014.4.4 コマーシャルフォト

 お寿司の「銀のさら」のテレビコマーシャル(特に最後の部分)を見ると、知人の編集者から聞いた話を思い出す。
 子供の写真で有名なあるカメラマンの撮影現場に行くと、さながらテーマパークのように、子供たちを喜ばせる仕掛けがたくさん用意されていたのだそうだ。
 つまり、そこで撮影される子供たちの笑顔はしかけによって引き出された一種の作り物なのだが、コマーシャルの場合は基本的に「絵」が命であり、なぜ子供たちが笑っているのかは重要ではない。
 塾で問題が解けた!と喜んでいる笑顔の子供の写真が、何らかの仕掛けによって笑わされているのであっても構わないし、それはテクニックであり、嘘ややらせとは別のことなのだ。
 だがドキュメントの場合にその手法で笑わせたのでは、やらせになってしまう。

 僕らが普段かかわっているような、子供の本の場合はどうだろうか?
 例えば、昆虫採集のシーンがあって、カブトムシを手に持った子供がニコッと笑っている。
 その笑顔を引き出すのにいろいろなネタを仕込まれていたとしても、子供の本の場合、多くのケースでその手の写真はあくまでもイメージであり問題はないだろう。
 ただ、それが人の心を深いところで打つ写真ではないのもまた確か。
 よく、子供の写真は普段の生活の中でお母さんが撮影したものが一番と言われるが、本当に人の心を打つのは、自然な流れの中で自然とこぼれ落ちた笑顔を捉えた写真であるのは言うまでもない。
 テクニックはテクニックで尊いし、限られた時間の中で結果を出さなければならないケースでは不可欠だが、あくまでも業務としての写真撮影の範疇になるのだろう。
 人物の撮影に限らず、小動物のスタジオ撮影にも同じようなことが当てはまる。
 近年僕は、技術で撮る写真ではない写真の割合を増やしていければなぁ、という思いが強くなってきた。
 技術を否定するつもりは毛頭ないし、技術は技術でこれからも勉強するつもりなのだが。



● 2014.4.1〜3 微小な被写体



 磯を再現した水槽の前にカメラをセットし、ある生き物の交尾の瞬間を待つ最中に、水槽内にその子供たちが漂っていることに気付いた。
 子供は、いわゆる幼生というやつで親とは全く違った形をしており、体長は2mmくらい。
 2mmというと静止をしている被写体でも、撮影にはそこそこ慣れを要するが、そんな微小なものが水流に流され、また自らも泳ぐのだから、カメラで捉えるのが難しい。
 生き物の写真は目にピントを合わせるのが基本だが、パッと見ちゃんと撮れているようでも拡大して良く見ると微妙にピントに位置がずれている写真を量産してしまう。これくらいの拡大倍率になると、ピントを合わせる位置が0.1mmずれれば、ピンボケになってしまう。

 ところが中にはちゃんとピントがあっているどころか、2匹に同時にピントが合っている写真があってビックリ。しかもミジンコのような生き物も一緒に写っていて、こちらは脱皮中のようだ。
 スゴイ偶然。

 ちょっと残念なのは、背景が暗くなってしまったことだ。ちょうど暗めの石が後ろにあった。
 背景が暗く落ちることには、被写体が浮き上がってはっきり見える効果がある。
 一方で重たい感じになり爽やかさが損なわれるので、爽やかさが重要な被写体の場合には適さない表現だ。
 例えば、植物の爽やかさとか気持ち良さを出したい場合には、画面の中から暗い部分はなるべく排除するのが一般的だろう。 
 上の画像の場合は、背景が暗いことの効果も大いにあるし、この生き物の形態だけに注目させたい場合にはそれもいい表現だと思うのだが、浅い磯の爽やかな感じを再現したい今回に関しては、明るく写って欲しかった。
 暗いと深海のようになってしまう。
 機材は、キヤノンのEOS7DにMP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォトと取り付けたものを使用した。



 こちらは、ニコン1V2というカメラに、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDを取り付けて、可能な限り被写体を大きく撮影したもの。
 数枚試し撮り程度に撮影した結果が、予想以上に良かったのでビックリ。
 カメラとレンズの間に接写リングと呼ばれるパーツを入れると、もっと大きく写すこともできる。
 接写リングは、ケンコーから発売されている電気接点を持つものを使用すればいい。ニコン1シリーズには排他的なところがあり、ニコンの純正レンズ以外を認識しないのだが、電気接点を持った接写リングが間に入るだけなら大丈夫のようだ。
 このカメラの特徴は、一眼レフよりも一般に画質は劣るがピントが深く合う点にあり、キヤノンで撮影した画像よりも生き物の体全体にビシッとピントが合う。
 画質よりもピントが優先される場合には、有効なカメラだと思う。
 また、僕はAF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDというレンズが好きで使い慣れているので、キヤノンのMP-E65mm F2.8 1-5×マクロフォトを使うよりも素早く被写体をカメラで捉えることができる。

 さて、最初に、微小な被写体が2匹も同時に写ったことを偶然と書いたが、ちゃんと理由が存在したことにあとで気が付いた。
 どうも、この生き物は光に集まる習性があるようで、夜間に水槽内を照らすための照明の明かりに集まっていたのだ。


   
先月の日記へ≫

自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2014年4月分


このサイトに掲載されている文章・画像の無断転用を禁じます
Copyright Shinichi Takeda All rights reserved.
- since 2001/5/26 -

TopPageへ