撮影日記 2013年8月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
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2013.8.30(金) 未完成だからおもしろい







 誰かの何でもない振る舞いが妙に心に残り、自分の人生の中で何度となく思い出されることがある。
 生物学の学生時代に、初めて昆虫写真家の海野和男先生に会いに行った時のこと。
「名刺持ってる?」
 と聞かれたので
「ありません。」
 と答えると、
「これに書いて。」
 と先生が名刺サイズの紙を渡してくださった。そして僕が書いたものを受け取ると、すぐにその場でパソコンの住所管理ソフトに打ち込んだ。
 その時の海野先生の姿を、僕は時々思い出す。
 さて、長期取材の際に一番大変なことは、出る前の準備だ。取材そのものの準備ではなく、その間事務所を開けるための準備であり、これはとにかく煩わしい。
 それを最小にするためには、日頃から小さな仕事をためないようにして、できることはその場で終わらせることが肝心。
 出かける前に大きな仕事を片付けなければならないのは、意外にあまり苦にならない。むしろ出かけることが、その大きな仕事を頑張って片づける動機になる。

 東北〜北海道へと向かう途中、長野県の小諸に立ち寄り、海野先生の展覧会を見てきた。
 僕が一番たくさん見ている他人の写真は、おそらく海野先生の写真なのだが、今回の展示を見て、
「ああ、先生はこんなものを見ているのか。」
 と始めて感じられたことがあった。
 なぜ、今までそれが分からなかったのか?と言えば、それらが、本や小さな写真では伝えることが難しい性質のことだからだと思う。
 その場合に、本や小さな写真で伝えられること以外は捨ててしまう、という選択肢もあるが、海野先生の場合はそれを捨てるのではなく、それでもどうにかして伝えようとしておられるのだと思う。
 それは、一流の人に共通する姿勢であるように感じる。
 目先のこと、表面的なことだけを言えば、それを捨てたほうが、クオリティーの高い本ができるだろう。
 だが、長い目で見れば、捨てないから面白い。そう言えば昔、先生がどこかに、人間は未完成だからこそおもしろいと書いておられたのを思い出した。

(お知らせ)
8/27〜9/20?は、長期取材のため、写真の貸出等、事務所の仕事ができません。
 
 
 

2013.8.20(火) 車の整備

 長期取材用のトヨタ・ハイエースは、走行距離がすでに22万キロ。さすがに急な登り坂では失速気味になるなど弱ってきたので、東北〜北海道取材に出かける前に点検を受けておくことにした。
 実はうちのハイエースは、過去に一度も故障で動かなくなったことがない。
 元々非常に丈夫であることで知られた車だが、それ以外にも、整備をお願いしている石松自動車の整備能力が高さも、故障知らずであることの大きな理由の1つだろうと思う。
 聞いた話によると、石松さんは子供の頃からの大の車好きだったそうだ。
 社長である今でも、行けば必ずつなぎ姿での整備の真っ最中であり、手はいつもオイルで真っ黒。
 トヨタの車は、一般に構造がシンプルであり他社よりも部品が安いと言われているが、それにしても、石松自動車での整備にかかる費用も決して高くない。
 トータルとして一番安く上がるように、何かの整備の際にはついでにチェックできる箇所は見てくださるし、時には一足早めに部品を交換して、まるで自分の車を手入れするかのように整備してくださる。
 車は撮影機材の一部であり、これは非常にありがたい。
 僕にとって唯一困ったことは、石松さんが僕よりも年配であることだ。自分が写真を引退する日までお世話になりたい気持ちがあるのだが、当たり前に行けば、石松さんが引退する時の方が先になってしまうだろう。 
 人間にはいろいろなタイプの人がいて、それぞれの人にそれぞれの魅力があると思うのだが、僕は、腕がいい人とか専門家が好きだ。
 
 
 

2013.8.17〜19(土〜月) 図鑑の面白さ

 僕は緻密なタイプではないし収集癖もないので、ち密さとたくさんの種類の生き物の写真を集めなければならない図鑑の制作には向かないと思う。
 ただカタツムリだけは、これまで随分たくさん本を作ってきたので、そのまとめの意味も込めて、図鑑を作りたいと思った。
 図鑑の文章を書けるほどの見識はない。そこで、解説は、豊橋自然史博物館の西浩孝さんにお願いした。
 お願いする場合、あまりに売れないのでは申し訳ないので、打診の前にカタツムリ図鑑のニーズを考えてみた。そして、バカ売れするとは思えないが、そこそこのニーズはあるだろうという結論に達した。
 まず、日本の自然科学物の出版の場合、一般的には、動物、鳥、両生爬虫、魚、昆虫クモ、植物、その他の生き物に分ける場合が多く、それに従うとカタツムリはその他に含められ隅に追いやられがちだが、カタツムリという生き物自体はよく知られたメジャーな生き物であること。
 それから、現在発売されているカタツムリ図鑑がないことが、そう判断した理由だ。
 
 全く収集癖がない僕が、写真を揃えなければならないので、最初は意識改革が必要だった。
 ところが、ある程度の種類のカタツムリの写真が揃ってくると、今度は写真を集めることが楽しくもなってきた。
 なるほどなぁ。形を成してくると、収集癖がない僕だって、面白いのである。コレクションにはまる人は、こんな状態なんだろうな。
 お金を貯めるのが趣味の人も、こんな状態なんだろうな。
 僕はお金を貯めるのも得意ではないが、多少収集のコツを理解した今なら、僕もお金持ちになれそうな気がする。


NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

 さて、東北〜北海道のカタツムリツアーに出かける前に、片づけておなければならない仕事がいくつもある。その1つが、毎月一度、同じ場所から同じアングルでため池の景色にカメラを向けるため池の定点撮影で、昨日8月分の撮影を終えてきた。
 九州から北海道まで、途中いろいろな場所で写真を撮りながら行く場合、できれば一か月は欲しいのだが、そんな場合に、定点撮影は足枷になる。
 毎日が定点撮影に適した晴れになるのなら、ギリギリまで長期取材に打ち込み、急ぎ帰宅をして定点撮影で済むのだが、実際にはそうはいかないし、天候の問題を考えると、ため池の写真を一枚撮るのに10日くらいは欲しいし、それを見越して帰宅しなければならない。
「どこでもドアがあればな・・・」
 とつい妄想してしまうのだが、あれば多分、旅はその分味気なくなり、今ほど楽しくないんだろうな。
 でももしもそれが手に入るのなら、それでもそれを使うのが、きっと人間という生き物なのでしょうね。 
  
  
 

2013.8.15〜16(木〜金) 餃子兄弟

 事務所の近所の、中国人の夫婦が経営する小さな餃子屋さんに昼食を食べに行ったら、
「ええっ、まだ仕事?」
 と驚かれた。
 駅前の通りなので、普段は、昼は仕事の途中、夜は仕事帰りのサラリーマンが多い。したがってお盆で会社がお休みの昨日は、お店はガラガラで掃除の真っ最中。
 そこに僕がやってきたのだ。

「僕は自由業なので、毎日仕事なんですよ。いや、毎日休みという説もあります。」
「わっはは、何の仕事?」
「生き物の写真を撮る仕事。」
「???」
「カエルとか魚とか鳥とか・・・」
「カエルも今日は休みやろう。」
「いやいや、カエルは休みなし。」
「そんなもの、買う人がいるの?信じられないなぁ。」
「ああそうか、中国の人には理解できんかもしれんね。にっぽん人はねぇ、結構好きなんですよ。」
「うそ〜。」

 そう言えば昨年だったか、中国の写真雑誌で仕事をしたのだが、編集者によると、中国では、自然よりもグラビアやファッションが人気なのだそうだ。





 自然写真などというものが職業として成立するのは、全世界を眺めてみても、非常に珍しい。
 僕が過去に撮影を担当した本のうち、2冊は翻訳されて韓国でも発売されているが、韓国くらいの国力の国でも、そんな仕事は成り立たないのだそうだ。
 また以前、平凡社の雑誌アニマのインタビューで、世界的な写真家であるジョナサン・スコットが、イギリスでは自然写真の専門家などあり得ないと答えておられたのを読んだことがある。写真で生活したいのなら、どんな被写体でも撮影しなければならないのだそうだ。
 プロフィールを見れば、自然写真家にはいろいろな国籍の方がおられるが、多くはアメリカの市場で仕事をしておられる。
 つまり、生き物なんて世界的の常識で言えば、特殊な例外を除き主役にはなり得ない存在であり、さらにその撮影を仕事にすることが成立する日本は、恐ろしく豊かであり、恵まれているということなのだ。
 ありがたいことだな、と思う。
 
(お知らせ)
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↓ 田中博さんの写真展が熊本で開催されます。


 
【期 間】2013年8月11日(日)〜 8月18日(日)
      10:00〜19:00 ※最終日は17:00まで
【場 所】アートギャラリー ジャッド
      熊本県熊本市中央区子飼本町1-25 シンフォニーハイツ1F
      TEL 096-370-1590
 
 
 

2013.8.9〜14(金〜水) 写真家

 写真には、大きく分けると2つの種類ある。1つは実用の写真。あとの1つは表現の手段としての写真だ。
 一般的に写真を撮る人の中でも、実用の写真を撮る人のことを「カメラマン」と呼び、表現の手段、つまり作家として写真を撮る人を「写真家」と呼ぶ。
 それらは完全に分かれているわけではなくて、例えばカメラマンが何かを説明するための実用の写真を撮る時に、そこに自分なりの表現を込めることはある。
 ただ、その人の本質がどちらにあるのかは、比較的はっきりするように思う。

 どちらが難しいか?と言われれば答えはない。何かをきちんと説明することの難しさと、言語化できにくい何かを写真という手段で伝えようとすることの難しさは質が異なり、比較をすることができない。
 だが、どちらで飯を食うのが難しいか?と言えば、写真家として飯を食うことの方がはるかに難しい。実用の写真は、それが実用であればあるほど、世間からのニーズがある。
 したがって、別に写真家がエライわけでも優れているわけでもないのだが、写真家という呼称はそのお金になりにくいことにチャレンジする精神、お金になるならないに関係なくそれが好きでそれがやりたいという熱意、或いは実用のものにはない類のエンターテインメント性になどに対して払われる敬意であり、ステータスなのだ。

 厳密なことを言うと、純粋に写真家として飯が食えている人は、もしかしたら日本には存在しないかもしれない。写真家と呼ばれている人でも、カメラマンとしての部分と、写真家としての部分を持ち合わせているのが普通だ。
 したがって、何か1つでも写真家としての活動が世間に認められれば、その人は写真家と呼ばれるようだ。
 
 先日、ある自然雑誌の編集長であるOさんから、
「科学系の写真を撮る人は、全員写真家と呼ぶべきではないか。」
 という投げかけがあった。
 自然科学系の写真には必要性があり、例え作家活動をしていなくても、それだけの地位を与えられるべきだというのがその理由であったが、写真家であるかどうかは、必要性の有無の問題ではない。むしろ写真家と呼ばれている人たちは、直接人の役に立たない写真を撮っていることが多く、写真家という呼称は、その直接役に立たない写真の存在意義を守る役割が大きい。
 
 因みに、今僕は、自分の職業を「自然写真家」としている。
 自然写真家の中から自然という言葉を取る勇気は、今の僕にはない。自然愛好家、つまり自然に対して興味や知識を持っている人から見れば、僕は写真家に見えるだろうが、そうしたものに特別な思い入れがないがない写真業界の住人から見れば、僕は特殊な技術系のカメラマンだろうと思う。
 この点に関しては、以前から何度か、昆虫写真の海野和男先生から指摘をされたことがある。
「君たちは自然業界の中ばかりに閉じこもって外に出ようとしない。写真業界にも打って出なさい。」
 と。
「自然写真業界でそこそこ有名な人でも、写真業界では完全な無名なんだよ。」
 と。
 これは、O編集長の、科学系のカメラマンを写真家と呼ぶことで地位の向上を図る考え方とは逆に、科学系のカメラマンも作家活動をして、写真家の仲間入りをすることで地位を高める発想だ。
 
 
(お知らせ)
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↓ 田中博さんの写真展が熊本で開催されます。


 
【期 間】2013年8月11日(日)〜 8月18日(日)
      10:00〜19:00 ※最終日は17:00まで
【場 所】アートギャラリー ジャッド
      熊本県熊本市中央区子飼本町1-25 シンフォニーハイツ1F
      TEL 096-370-1590
 
 
 

2013.8.4〜8(日〜木) 世代

 先月、山形県でオオタキマイマイというカタツムリを探す際に、山形在住の昆虫写真家・高嶋清明君に声を掛け、一緒に山を歩いた。
 高嶋君は1969年生まれの同世代。素朴な東北の人という感じで僕とは全くタイプが違うが、案外悩みを共有していて、同世代を意識させられる。
 それがいい刺激にもなるし、時に安心感も得られる。

 気象条件に左右されやすいカタツムリの探索だが、その日は梅雨明けを思わせる見事なピーカン照りで、雨の日に動きやすいカタツムリを探すには最悪の条件。しかも第一感として、その場所のオオタキマイマイの密度は低かった。
 だが話をしながら歩くことで時間を忘れ距離が延び、その結果、最悪のコンディションの日に何とか2匹のオオタキマイマイを見つけることができた。
 仲間っていいなぁ。



 その時に、高嶋君の最新の著作をもらった。
子供の科学★サイエンスブック 「鳴く虫の科学」 成文堂新光社
 おわりに のページに、カメラ、録音機器、コンピューターなどのハードの発達について高嶋君が触れているが、この本から音が出たらなぁというのが僕の感想。
 今後5年とか10年というスパンで考えると、電子書籍の普及で、昆虫の鳴き声が分かるだけでなく、癒しをもが得られるような本が見えてくるし、それに向かって取り組む高嶋君の脳の中が見えるような気がした。
 CDを付属させたり、機器を使ってカエルや野鳥などの声を何とかして音を出そうとした本はすでに存在するのだが、いずれも努力賞・チャレンジ賞という感じであり、本を読みながら音を鑑賞するレベルではない。

 その後、僕は一旦新潟に下がり北陸へ向かう予定を立てたが、東北の梅雨前線がまた活発になったことを受けて、再度北上し青森へ向かった。
 途中で、今度は雨という絶好の条件の中、再度山形県の同じ場所でオオタキマイマイを探してみたのだが、一匹も見つけることができなかった。
 生き物は、最悪のコンディションでも見つかることがあれば、最高のコンディションでも見つからない場合もあり、だから難しく、だから面白い。

(お知らせ)
6月分の今月の水辺を更新しました。
  
  
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↓ 田中博さんの写真展が熊本で開催されます。


 
【期 間】2013年8月11日(日)〜 8月18日(日)
      10:00〜19:00 ※最終日は17:00まで
【場 所】アートギャラリー ジャッド
      熊本県熊本市中央区子飼本町1-25 シンフォニーハイツ1F
      TEL 096-370-1590
 
 
 

2013.8.3(土) 続・サンインコベソマイマイ


NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

 サンインコベソマイマイを探す過程で、先月ある城址で苦労して見つけ7月の日記の中で紹介したイズモマイマイを見かけた。
 イズモマイマイって、こんなにたくさんいるのか?と我が目を疑うような量だった。
 ただしその場所では、大人の貝でもサイズが小さい。イズモマイマイというと、僕は殻の径が55mmくらいのものをイメージするのだが、今回のものはいずれも50ミリを切るくらいようなサイズであった。
 カタツムリには種類によって山地型と平地型と呼ばれる2つの型があり、山地型の方が1〜2まわりほど大きくて胴体もごついのだが、今回見かけたイズモマイマイはそれで言うならば平地型的な雰囲気だった。
 本来なら、サンインコベソマイマイを探さなければならないのだが、イズモマイマイファンの僕としては、ついイズモマイマイ的な場所に目が行ってしまう。
 しかし、野外で過ごす時間は、そんな道草をくっている時が一番楽しいように思う。
 ともあれ、しばらく歩くと、同じような環境が続いているにも関わらず、パタリとイズモマイマイを見かけなくなった。
 これは大抵のカタツムリに当てはまる傾向で、カタツムリが生息する場所はしばしばピンポイントなのだ。
 ただし、そこで引き返すのはまだ早く、その先へ進むと、別の種類が見つかるようなケースもあり、さらに先へと歩いてみた。
 すると予想通り、別のカタツムリがチラホラ見られた。
 ダイセンニシキマイマイ。僕の憧れのカタツムリの1つだ。
 こうなると、サンインコベソマイマイが見つかろうが見つかるまいがもうどうでもいい。とにかく、楽しいのである。
 カタツムリの分布って、面白いなぁ。
 

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX


↓ 田中博さんの写真展が熊本で開催されます。


 
【期 間】2013年8月11日(日)〜 8月18日(日)
      10:00〜19:00 ※最終日は17:00まで
【場 所】アートギャラリー ジャッド
      熊本県熊本市中央区子飼本町1-25 シンフォニーハイツ1F
      TEL 096-370-1590
 
 
 

2013.8.2(金) サンインコベソマイマイ


2004年6月撮影

 以前、サンインコベソマイマイを見かけて写真を撮ったのは、2004年の6月のことだ。
 サンインコベソマイマイは、あまり一般的ではないカタツムリなので、その写真を撮影したところでカタツムリ図鑑でもない限りまず使用されることはないだろが、この時はデジタルカメラの出始めのころであり、色々な物を色々なレンズで撮影してみたくて、カメラを向けたのだった。
 唯一、サンインコベソマイマイの写真が使用される可能性がある図鑑だが、実は現在市販されているカタツムリ図鑑は存在しない。
 つまり、それくらい、絶望的なくらいに、このカタツムリの写真には需要がない。
 
 ならば、とその図鑑を自分たちで作ることになり、再度サンインコベソマイマイに出会う必要が生じ、僕は鳥取へと向かった。
 分布は、カタツムリとしては決して狭くないが、頻繁に見かけるわけでもなく、一ヶ所でたくさん見かけたこともない。過去に目にしたのはすべて、滝や渓谷の撮影で山陰を歩いた時であり、これを探そうとして見つけた経験はない。
 分布が狭い生き物の場合は、その生息地にさえ行けば、結構たくさん見つかることが多いが、分布が広い生き物の中には密度が低いものがいて、探すのに苦労する場合がある。
 したがって今回も簡単ではない予感はあったが、やはり難しかった。
 雨の中、朝の7時に探しはじめ、深夜の12時まで延々と歩いたが、今回はついに見つけることができなかった。
 17時間連続して野外で生き物を探したのは初めての経験だが、サンインコベソマイマイは見つからないものの、外道と呼ぶにはふさわしくないステキな外道たちがちょくちょく見つかるのだから、探索は非常に楽しい。
 以前、何となく買っておいた特注のLEDライトが非常に見やすくて、夜の探索を楽しくしてくれた。
 時間の経過や疲労や空腹さえも忘れそうして無になれる機会が、僕の人生の中であと何度あるだろうか。
  



NikonD800 AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED SILKYPIX

 こちらはコウロマイマイ。
 分布が狭く、一般には名の知れた種類ではなく馴染みは薄いが、出会ってみると非常に美しくて大感激。
 福井の平地を中心に分布するツルガマイマイとは近縁。さらにそのツルガマイマイが石川県の白山に住み着いたものがハクサンマイマイだとされる。
 カタツムリの面白さは、そうした地理的な変異や分化であり、コウロマイマイを眺めていると、今すぐにでも福井と白山に行きたい気持ちがこみ上げてくる。
 
 
   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2013年8月分


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