撮影日記 2013年3月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
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新刊本の紹介



 8年前に月刊誌として作った本が単行本化され、改めて発売されることになりました。
 当時はペンタックスの645Nがメインの機材でしたが、デジタルも普及を始めており、フィルムの中にニコンのD70で撮影された画像とペンタスクスのist*Dで撮影された画像が混ざっています。
 単行本化に伴ってサイズが小さくなりましたが、元の月刊誌は見開きの幅が60センチもある大きな本で、12〜13ページの見引きの写真は幅47がセンチもありましたが、ニコンD70で撮影した600万画素の画像で十分な画質が得られました。
 その1ページがきっかけで、僕は仕事用の撮影機材をフィルムからデジタルへと切り替えました。
 表紙だけは、新たに作り直しました。
 表紙の画像は、ニコンD800で撮影。レンズはタムロンの SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1で、今回表紙を見て、そのボケ描写の良さには改めて驚かされました。
 ともあれ、出版社が月刊誌として作ったものを使い捨てにせずに、こうして大切にしてくれるというのは、非常にうれしいことです。
 当時、担当の編集者が僕の話を大変に前向きに聞いてくださったことは、その後の僕の大きな支えになりました。
 また、僕は日々努力をしているつもりだし、半年前の自分には絶対に負けないつもりなのですが、意外や意外、8年前の自分が結構頑張っていることに驚かされました。
 
ひさかたチャイルドの科学絵本 
しぜんにタッチシリーズ
『かたつむりのひみつ』


です。

 
 
 

2013.3.23〜3.31(土〜日) 迷惑をかける


NikonD800 TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

 仕事の上で
「あの件ってどうなってますか?」
 と相手に確認をさせたり、催促をさせたり、引き受けた仕事をうっかり忘れていたなどということは、これまであまりなかった。
 その手の迷惑をかけないように、とにかく注意を払ってきた。
 しかしそうするためには、デスクワークに相当に時間を取られる。自然を見たり写真を撮る時間が損なわれてしまう。
 別に毎日充実した暮らしを送っているのだから、それでいいか、と思いつつ、ここ数年、何か違うんだよなぁ、これじゃあダメだよなという思いを持ち続けてきた。
 そこで今シーズンは、関係者には少々迷惑をかけることがあるかもしれないが、とにかく、ひたすらに自然を見て、写真を撮ろうと決めた。
 
 毎日後先のことを考えずにクタクタになるまで自然を見て、写真を撮って、調べて、あとはコテンと寝るから関係者への連絡だけでなくこの日記の更新も少々おろそかになっているけど、日記は最初から、毎日更新できたらいいなとは思っても、そうしなければならないとは考えてないのだから、まあ、いいでしょう。
 更新が滞ることで、
「どうかしたの?」
「大丈夫?」
 などという連絡をもらうこともあるが、心配には及ばないし、むしろその逆で、もしかしたらこの3月は、僕が自然写真の仕事を始めて以来、最もドップリと自然に浸り、最高に充実した月だったかもしれない。
「どうかしたの?大丈夫?」
 と心配してくださる方は、おそらくその人自身が、誰かにそう声を掛けてもらいたいと思っているのではなかろうか?
  
  
 

2013.3.18〜3.22(月〜金) 植物写真


NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF) SILKYPIX

 もちろん得意不得意や向き不向きがあるだろうが、自然写真の中で最も難しいのは、植物写真ではなかろうか?
 僕はとにかく植物写真が大の苦手。植物を撮影するといつも、自分は素人だなとしみじみ思う。
 なんとなくは写るが、そこから先を詰めることができない。アマチュアの人が撮影した自然写真を見ていても、プロの市場で通用しそうな写真が最も少ないのが植物のように感じられる。
 植物の写真はイメージ写真の域を超えるのが難しい。

 植物写真の難しさは、囲碁の難しさに通じる。
 囲碁は、将棋やチェスなどと比較すると難解であるとされ、その理由は、囲碁の場合、どちらが勝っているのかの状況判断が非常に分かりにくいからだと言われているが、植物写真も、そもそも自分が撮った写真がいい写真なのか悪い写真なのか、使える写真なのかそうではない写真なのかが判断できにくい。
 
 
 

2013.3.14〜3.17(木〜日) ムカシトンボ


NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

 ムカシトンボが生息する小さな渓流。
 教わったことの丸ごと受け売りで申し訳ないが、渓流に生息するムカシトンボの幼虫は、小岩がごろごろしていて、しかもそこそこ流れがある場所を好むのだという。
 そしてちょうど今頃、そこから岸辺に上陸し、しばらく陸上の岩の下や落ち葉の下などで待機した上で、4月の上旬あたりに羽化をする。
 

NikonD800 AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED SILKYPIX

 上陸した幼虫を見つけるのはそれほど簡単ではないが、今日はトンボ愛好家の西本晋也さんがわずか数秒で一匹見つけ出した。
 まさに光速!
 今日は、西本さんに教わったことムカシトンボに関する知識を、とにかく忠実に写真で表現することに全力を尽くした。
 必要な情報をただ写真に盛り込むだけでなく、写真表現上の技法を駆使し、何かを説明する実用の写真と何かを表現する遊びの写真の両方を満たすことにこだわった。
 
(撮影機材の話)
 小さな生き物を撮影するマクロレンズと言えば100mmクラスが定番であり、確かに100mmクラスは扱い易いし、絵がまとまりやすくて手堅い。
 しかしもしも使いこなすことができれば、100mmクラスよりも50mmクラスの方が断然に面白いし、奥が深い。
 ニコンの場合は50mmではなくて60mmになる。
 1つ前のモデルである Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D は非常に扱い易いレンズだったが、一番新しいモデルである AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDはさらに高性能で、極めて優れたレンズだ。
 こんなレンズがあると、撮影が楽しくなるし、ただ写すのではなくてちょっと凝りたくなる。 
 
 
 

2013.3.10〜3.13(日〜水) 助からないと思っても・・・


NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED SILKYPIX

NikonD800 AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED SILKYPIX

NikonD800 AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

 普段究極に付き合いが悪い僕が、ちょっと訳あって、先日、母校のOBの集まりに参加した。
 付き合いが悪いことの言い訳をすれば、自然の写真で一番大切なことは自然に合わせて臨機応変に動くことであり、人との約束は、自然写真に悪いから。
 しかし、同級生のみんなのことを嫌いなわけでもなく、むしろ会いたい気持ちは強い。したがって何か縁があれば、それは運命だと思って従うことに決めており、ある方の思い付きがその縁になった。
 集まりの際に隣の席に座っていたのは、H君。
 僕は、中学時代に将棋に夢中になったが、H君も将棋を指していた。クラスが違ったので対戦したことはないと思うが、気になる存在だった。
 その後、後将棋を指さなくなった僕に対してH君は大学でも将棋を続けた。
 
 史上最強の将棋指しと言えば、大山康晴15世名人だと思う。
 いや、強いと言ってもいろいろな質の強さがあり、誰が最強などと決められるものではないが、大山さんの場合は全盛期が非常にに長く、癌を患って69歳で死んでしまうまで、上位10人の枠であるA級の座を守り続けた。
 50代前半でA級の座を維持できる人が数えるくらいしかいないことを思うと、大山さんの成績は異常と言っても言い過ぎではないのではなかろうか。
 僕はだいたい、スポーツでも勝負事でも写真でも、長く現役であり続けられる人に憧れを感じやすい。
 その大山さんの言葉に、
「助からないと思っても助かっている。」
 というものがあり、撮影の際に諦めたり投げやりになりそうになった時に、その言葉を思い出す。
 
 さて、ため池の定点撮影で、今月も広島県へ向かった。
 定点撮影は、同じ場所を同じアングルで撮り続けるだけなので技術的には易しそうに思えるが、やってみると、これが実に難しい。
 まず、毎回きちんと同じアングルにすることが難しく、ああでもない、こうでもないと現場でカメラを三脚に固定するのに、下手をすると30分くらいかかってしまうこともある。
 なぜ難しいかと言えば、風景が季節によって変化するから。
 雪が降れば、自分が構図を決める際の目印にしていたものなど埋もれてしまうし、木は伸びるし、葉っぱは生えてきたり落ちたりもする。
 定点撮影は変化が大きい場所ほど様になるが、変化が大きければ風景に予想外のことが起きたりして、撮影も難しくなる。
 定点撮影に出かけると毎回、自分の先見の明のなさ、不手際の多さにうんざりさせられ、
「ああ、もうやめた!やめた!やめた!」
 と切れそうになる。
 しかし、投げやりになることこそが何よりも禁物。
「助からないと思っても助かっている。」
 のである。 
 
 
 

2013.3.3〜3.9(日〜土) 依頼の時期


NikonD3X Ai AF Nikkor 28mm F1.4D SILKYPIX

 夏に春らしい写真を撮ることを要求されたり、活発に動くカエルの撮影を冬に依頼されたり・・・と、だいたいにおいて撮影の依頼は遅すぎることが多い。
 そして、そんな時の編集者のみなさんの執念は大したもので、
「こんな時期に無理ですよ。」
 と説明したところで、
「そこを何とかしてください。」
 となかなか納得してくださらない。
 その執念をもっと別のところで発揮すべきじゃないのか?具体的には、そのシーンを撮影するのに最も適したタイミングでカメラマンに依頼できるように、もっと早く動き出すべきじゃないかと求めたのは昨年の冬のことだった。
 そしたらある一人の編集者が、冬の撮影で、その通りに早めの依頼してくださった。
 依頼されてみると、大変にプレッシャーがかかることが分かった。
 今までなら、
「時期が悪いのでこれが限界です。」
 と楽に言えたところが、そうはいかなくなる。
 これは大上段に振りかぶり過ぎて余計なことを言ってしまったかな・・・とやや弱気になりつつも、とにかく出来る限りのことをやるだけだ!と腹をくくる。
 ある自然現象を撮影するために、先日に引き続き、阿蘇へ出かけた。
 前回下見と試し撮りをしておいたので、一日あれば大丈夫とパソコンも持たずに軽装で行ったら、予想に反して撮影は上手く進まない。
 しかたがないので滞在期間を延ばし、結局、3晩、夜を徹して撮影することになった。

 ただ、その疲労は実に心地良かった。
 もしも夏に春っぽい写真を・・・と求められたなら、それはそもそも無理な注文であり、最初から妥協しているのであって、学校のテストに例えるなら赤点を取らないための勉強をするのに近い。
 そんな状況下で、人は本当の意味で努力ができるはずがないし、充実するはずもない。
 一方でベストな時期に写真を撮る場合は、100点を狙いに行くことができるし、その際にどれだけ苦しんだとしても、その苦しみの質は悪いものではない。
 僕は、どうせ同じ苦労をするのなら、100点を狙いに行った方が、その人を豊かにすると思うし、僕にとっての努力とは、自分をそうして打ち込める状況に置こうとすることだと言える。
 もちろん、だからと言って思い通りの写真が撮れるわけではないが、上手く行かない時にも出来るだけのことをやれた時には、納得ができやすい。
 同じことは編集者にも言えるはずで、心の底から納得できるものを目指さなければ、本当の意味で仕事が面白くなることはないのではなかろうか。
 仕事にそこまでの納得を求めることだけが人の人生のすべてではないと思うし、並みの仕事やそれに伴う並みの喜びも否定されるべきではないと思うが、どうせなら、この上ない喜びを追及した方が得だと思うのだ。
 
(写真展のお知らせ)
武田晋一、西本晋也野村芳宏による三人展
1.場所 北九州市門司区白野江 白野江植物公園 市民ギャラリー
2.期間 2013年2月27日(水)〜3月10日(日)
      (3月は休園日なし)
3.展示枚数 一人10点 合計30点 B4
4.入園料  大人200円 (駐車料300円)
 
 
 

2013.2.26〜3.2(火〜土) 仲間


NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

NikonD800 TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD SILKYPIX

NikonD800 AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR SILKYPIX

 先日、写真仲間の野村芳宏さんといっしょに雪の山に登ったら、きついはずの山登りが楽なこと!
 仲間っていいなぁとしみじみ感じた。
 同じ道を歩いても、同じ時間歩いても、歩き方によってその時に感じる疲労は全く違ってくる。そしてそれは気のせいではなく、それこそが事実であるように思う。
 僕は基本的には一人での撮影を好むが、きつい山登りを伴う撮影の場合には、正直に言えば誰かと一緒に行きたい。
 毎年一緒に写真展を開催している野村芳宏さんや西本晋也さんは、まさにそんな仲間だ。
 同行すると疲労を忘れさせてもらえるだけでなく、お二人には教わることが多い。
 二人ともこだわりの人でありながら、こだわりの人にありがちな周囲の者との軋轢や揉め事が全くないのだ。
 一方で自分の哲学を持ちながら、俺こそが正しいのだから俺に従えというような威圧的な態度を全く見せない。いや、態度を見せないというよりは、そんなことをそもそも考えていないのだと思う。
 そうでありながら、こちらが知りたいことはさらりと教えてくださる。
 僕は、自分のことは自分で決める。そして人のせいにはしないという姿勢を重視する。
 自分のことを自分で決めるというのは、別の言い方をすれば、他人のことは他人が決めるのであり、僕は、そこには踏み込まないということでもある。
 ともあれ、時に怖さを感じる夜の撮影の際にも、できれば同行者が欲しい。
 人間の体の中には体内時計が存在し、たとえ時間や昼夜が分からないような環境下に人を置いても、その人は約24時間のリズムで活動をするという。
 そしてその体内時計による支配の結果、人の脳内には夜間に多く分泌される物質があり、その物質には人を不安にさせる作用があるのだという。
 つまり人の脳は、昼と夜とでは別の物になっていることが知られている。
 夜は、理屈の上ではただの日陰であるが、人間の脳にとってはそうではない。

 さて、夕刻、誰もいなくなった阿蘇の草千里付近の駐車場に車を止め、夜を徹して写真を撮った。
 誰かを誘いたかったのだが、さすがに徹夜での撮影に付き合ってもらうのは気が引けて、今回はそれができなかった。
 撮影は、見事に失敗で、またやり直し。
 徹夜はさすがにきついので、次回こそはビシッと決めたい。
 
(写真展のお知らせ)
武田晋一、西本晋也野村芳宏による三人展
1.場所 北九州市門司区白野江 白野江植物公園 市民ギャラリー
2.期間 2013年2月27日(水)〜3月10日(日)
      (3月は休園日なし)
3.展示枚数 一人10点 合計30点 B4
4.入園料  大人200円 (駐車料300円)


   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2013年3月分


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