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2012.4.28〜30(土〜月) 合理主義者のカメラ

 違う、君じゃないいんだ!


CanonEOS7D EF100mm F2.8L マクロ IS USM DPP

 僕は、小さな生き物を撮影するカメラマンの中では、写真の画質にこだわる方だと思う。
 プロなんだから当たり前じゃないか、と感じる方もおられるだろう。
 しかし、時には画質を捨てなければならない場合もある。
 動きのあるシーンなど撮影することさえ難しいシーンで、とにかく写っていることが優先される場合、画質に執着しすぎると何も写らないことになり、その場合、画質を犠牲にして、とにかく写真を撮ることになる。
 さて、その画質にこだわりつつ、撮影が難しいシーンを一番簡単に撮影できるカメラは、現状ではキヤノンのEOS7Dだろうと思う。
 まず、画素数が多いので、被写体が小さく撮影された画像でも、一部を切り出して使用することができる。
 同時に、画素数が多いにもかかわらず連写速度が速いので、動体を撮影する場合にとにかくシャッターを押しておけば写るというような使い方もできる。
 高感度の画質も、そこそこいい。
 EOS7Dにニックネームをつけるならば、僕なら、『合理主義者のカメラ』だ。
 ファインダーの像が、状況によってはかなり見にくいという欠点はある。

 なぜ、EOS7Dを持ち出したのかと言えば、難しいシーンをなるべく簡単に、なるべく高画質に撮影したかったからだ。
 普段は、より簡単に撮影するという選択肢を選ばないことの方が多い。それよりも時間がかかることによって見えてくるものを重視しているのだが、ここのことろは難易度が高い撮影の仕事が満載で、そんなことを言っている場合ではなくなったのだった。
 追い詰められ、文明の利器に逃げる自分が、ちょっと恥ずかしくもある。
 4月中旬から梅雨入りくらいまでの間は、撮影の依頼が殺到し、非常に苦しい。
 
 
 

2012.4.25〜27(水〜金) 竹の子


NikonD800 TAMRON SP70-300mm F/4-5.6 Di VC USD SILKYPIX

 撮影中に腹具合が悪くなり、あわてて公園のトイレに駆け込んだ。
 ああ、やばかった。いい具合に公園があったものだ。やれやれ。
 すっきりして車に戻ろうとしたら、あちこちに竹の子が顔を出していて愛らしい。
 ちょっと儲けた気分になった。

 昨日から、腹具合が悪い。
 悪いものを食べたという感じではない。
 プレッシャーがかかっているのかなぁ。
 植物がらみの写真を撮ることになったのだが、その中の一部がなかなか撮れなくて苦しい。
 花が咲いてないわけではないが、うちの近所では終わりに近く、依頼されたような写真が撮れる場所が見当たらない。
 だからますます急がなければならないのだが、そこにあまりに時間を取られていると、今度は今なら比較的簡単に撮影可能な他の写真が、シーズンオフになりかねない。
 3月末に言ってもらえればなぁ。
 そしたらはるかにいい写真を、もっと簡単に撮影できるのだが。
 おそらく、出版社の年度の関係で、4月の今頃の依頼になるのだろう。
 竹の子の写真を撮っている場合じゃないか・・・。
 
 しかし、竹の子を眺めている間に、自分が焦っていることに気付いた。
 焦って何かいいことがあるのなら、いくらでも焦ればいい。
 しかし焦っても撮影が上手くいくわけではないし、むしろ冷静になった方がいい結果がでる確率は高い。
 苦しい時であればあるほど、人に言わせると、「コイツ嫌になる」というくらいクールに、理論的に振舞いたい。
 まずは理にかなった計画を立てることから始めるべきだった。
 一カ所で停滞していた仕事が、今日は少し前に進みだした感じがする。
 
 
 

2012.4.23〜24(月〜火) TAMRON SP70-300mmF/4-5.6 Di VC USD


NikonD800 TAMRON SP70-300mm F/4-5.6 Di VC USD SILKYPIX

 国産のレンズの中では、タムロン社製のレンズの描写が好みに合う。
 タムロンの28〜75ミリのズームレンズと90ミリのマクロレンズは、今僕の、もっとも重要な仕事用のレンズだ。
 タムロンのレンズは、柔らかい描写をする。

 70ミリから300ミリのズームレンズに関しては、ニコン製のものを使ってきたが、今回正式にタムロンファンを宣言するために、新たにタムロン製の70〜300ミリズームレンズを買い足してみた。
 さっそく使用してみたが、僕にとって重要なポイントに関しては、すべてにおいてタムロンンがニコンのED70-300mm F4.5-5.6G(IF)よりも上。
 ニコンの出来が悪いのではなく、タムロンが出来過ぎとしか言いようがない。
 まずは、描写がいい。
 それから、手ブレ補正が凄い。下手な三脚を使うよりも、見事に止まる。恐ろしいくらいの威力がある。
 さらに、ピントリングの操作性がいい。
 いや、タムロンがいいというよりは、この点に関しては、ニコンの70-300ミリがちょい悪い。先日ニコンのレンズでミツバチにピントを合わせようとしたら、ピントリングの作りが悪く微妙なピント合わせがやり辛かったのが、今回タムロンを購入する最大のきっかけになった。
 あとは、値段が安い。新品が36000円台で買える。
 ありえんやろう!と思う。
 若干ちぐはぐな面もある。
 タムロンの28-75ミリズームレンズは、レンズのピントリングを右に回すと遠くにピントが合うが、90ミリと70-300ミリズームレンズは左に回すと遠くにピントがあう。
 何で?

 今日は、撮影の結果が思わしくなく、実に後味が悪い。
 正確には、結果が悪いというよりは状況が悪いのだが・・・
 
 
 

2012.4.20〜22(金〜日) 古き良きもの



 木々の向こうに見える中学校の校舎。



 校庭へと向かう石の階段。





 学校の周囲には柵も何もなく、校庭はそのまま広い神社につながっている。
 ぶらっと学校の周囲を15〜20分程度歩いただけで、6種類のカエルの姿を見かけた。
 それから、雨上がりだったということもあるだろうが、ツクシマイマイという大型のカタツムリンの姿も多い。
 ツクシマイマイは、僕が知り得る範囲では、人の暮らしからちょっと離れた場所に多い。山裾の林とか、手入れの悪い神社みたいな場所で多く見かける。
 僕はてっきり、そんな場所に生息するカタツムリなのだと思い込んでいたが、ここでは人がたくさん通る町の中の民家の外壁に点々と姿があった。
 そうか、元々町の中にも生息していたものが、今は大半の町が近代化され過ぎて住めなくなってしまったのか・・・

 さて、ちょっと前の話だが、僕の自宅の最寄り駅である直方駅の古い駅舎が取り壊された。
 旧直方駅の駅舎は東京駅よりも古い駅舎であるということで、反対運動が起き、テレビのニュースでも取り上げられたのでご存知の方もおられると思う。
 僕は、駅舎は残して欲しいと感じた。
 だが、古い駅舎を残すことが正しいことで、壊すことは暴挙だという反対運動には、違和感も感じた。
 古いものが正しいわけでも、新しいものが間違えているわけでもなく、この手の問題は好みの問題に過ぎない。
 駅を残したいと運動する人たちは、
「そうじゃない人は間違えている。」
「俺が正しい、俺が正しい」
 と主張するのではなく、古い駅舎がいかに素敵な物であるかを伝えるべきだったと思う。
 が、その点については、辛辣かもしれないが、実に能がなかったように思う。
 僕の耳に入った主張は、すべて駅の魅力に関する話ではなく、イデオロギーの主張であった。

 先日、インターネット上に設置された僕の母校の同窓会の場に、駅舎を取り壊した直方市長のスキャンダルが発覚したという書き込みがなされた。
 スキャンダルは、もしも事実ならば追及されればいいと思う。
 が、同窓会の場に、そんな書き込みをするのはまったく理解ができない。
 市長も同窓生の一人であるし、同窓生の中には市長を支持する方もおられるだろう。
 TPOとマナーをわきまえないそんな人の主張に、説得力があるわけがない。
 守ろうとしたのは駅ではなくて、自分のイデオロギーじゃないか!
  
NikonD800
TAMRON SP AF28-75mmF/2.8 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO SILKYPIX


 

2012.4.17〜19(火〜木) いろいろなタイプの難しさ


OLYMPUS E-620 ED 9-18mm F4.0-5.6(改造) 水中ハウジング SILKYPIX

OLYMPUS E-620 ED 9-18mm F4.0-5.6(改造) 水中ハウジング SILKYPIX

 早朝に近所の森で風景の撮影をしたあとで、次の目的地である水辺に到着したのが11時頃。
 先に昼ご飯を食べておこうか・・・
 いや、写真を撮ろう。ほんの20〜30分くらいの間に雲が広がり、写真が撮れなくなることもよくある。それにどんなに撮影が長引いても、2時間もあれば終わるだろう。
 しかし、これが甘かった。
 2時間どころか、まともな写真も撮れないまま、3時間、4時間と経過してゆく。
 腹が減って苦しいが、泥だらけだから、気軽に食べ物を買いに行くことができない。
 唯一撮影できたのは、オタマジャクシが落ち葉の下に隠れているところ。
 写真としては面白いが、生き物姿形が分からないので、姿形がちゃんとわかる写真もなければ困る。
 ただ、そんな写真を撮らせてくれない。
 とにかく、開けた場所では、逃げて逃げて逃げまくる。
 ウシガエルのオタマジャクシが、これほどに警戒心が強いとは。ウシガエルは元々は食用として輸入されたものが逃げ出し繁殖した外来の生き物だが、異国の地で生き延びることができるのだけはある。
 水中撮影の難しさは、どんなにゆっくりとカメラを近づけても必ず水が揺れるから、相手に警戒されてしまう点にある。


NikonD800 TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 SILKYPIX

NikonD800 TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 SILKYPIX

NikonD800 TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 SILKYPIX

 遅い昼食を取り、午後はレンゲ畑。
 撮影を依頼された時に、水の撮影以上に、怖いな、ちゃんと依頼に応えられるかなと恐怖を感じるのは、花がらみの撮影だ。
 花には旬があるから、そのベストの日に撮影に行きたいのだが、天候の具合もあるし、他の仕事との兼ね合いもある。
 しかしこちらは幸運だった。
 これ以上ないというくらいコンディションがいい。ここまでベストの日に花の写真を撮ることができたのは、もしかしたら生まれて初めてかもしれない。
 条件さえ整えば、撮影はあっという間に終わる。

(お知らせ)
書き忘れましたが、3月分の今月の水辺を、少し前に更新しています。

 
 

2012.4.14〜16(土〜月) カメラ

 カメラという道具は実に不思議な道具で、全世界で必要とされているにも関わらず、仕事に使えるようなタイプのものはほとんど日本だけで作られてきた。
 ニコン、キヤノン、ペンタックス、オリンパス、ミノルタなどはすべて日本のメーカーであり、それが世界のプロが使用するほぼすべてのカメラであった。
 一部、ヨーロッパのメーカーのもので超高級品が存在するが、シェアーは低く、それらは性能がいいというよりは、伝説的な道楽の道具に過ぎない。
 デジタルになってからは、ミノルタの名前はなくなりソニーに吸収され、新たにパナソニックもカメラを作るようになった。


SONY α55 DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM

SONY α55 DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM

NikonD800 Ai AF Nikkor 28mm F1.4D SILKYPIX

SONY α55 DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM

 さて、僕が一番最初に買ったデジタル一眼レフは、ペンタックスのist*Dだ。
 ist*Dは、機械としては気に入ったカメラではあったが、デジタル部分のレスポンスが悪く、仕事で使用するにはストレスを感じた。
 次がニコン。ニコンD70は、ist*Dで感じたストレスの部分がすべて克服された、さすがニコンの大変によくできたカメラだった。
 ニコンの次は、キヤノンを買い足した。
 当時はデジタル一眼レフが登場して間もなく日進月歩の状況であり、開発が速く最先端を行くキヤノンを使うのが最も合理的だった。
 次がリコー。
 そして、小型軽量が魅力のオリンパス。
 さらに、オリンパスと共通の規格を採用したパナソニック。
 パナソニックのG2は、液晶(ライブビュー)の画面をテレビに映し出すことが可能で、さらに外部電源が用意されているので、微小な生き物の撮影で、さらに長時間の待ち時間が伴うような仕事の際に、カメラの像をテレビに大きく映し出し、楽な体勢で撮影することができる。
 と様々なメーカーのカメラを使用してきたが、唯一、興味が持てなかったメーカーがソニーだった。
 しかし、先日家電屋さんで触ったソニーのα55には衝撃を受けた。
 水中撮影用に、買ってみることにした。
 ソニーのカメラは、良くも悪くも現代的で合理的。ロマンを感じさせる作りではないが、道具としては実に便利。
 僕の水中撮影の場合、写真を撮ること自体が難しい場所が多く、道具を使うことを楽しむよりもとにかく写って欲しく、機材にはロマンよりも合理的であることを求めたい。
 そのα55だが、いつも手元に置いておき、事あるごとに使い慣れている段階で、たまに他のメーカーのカメラと撮り比べてみる。
 毎日、犬の写真が量産されている。
 
 
 

2012.4.12〜13(木〜金) 計算

 フィルムを使用していた頃は、撮影後に現像という重要な過程があり、それ以前にうっかりカメラの蓋を開けてしまえば、すべてが台無しになった。
 元々僕には、子供の頃からその手の失敗が多い。
 だから、苦心した撮影や千載一遇のチャンスを捉えたかに思えた撮影の後は、いろいろと悪い妄想が湧きおこったものだった。ツルッと手からカメラがすべり落ち、着地と同時にバァンと裏蓋が開いてフィルムがむき出しになる。
 そんな恐怖で、いつも息苦しくなった。
 今でも、撮影を終えると、カメラを扱う手が恐る恐るになる癖が抜けない。
 撮影終了と同時に体がフリーズし、いったんすべての思考を停止し、慎重になり、間違えるなよと自分に言って聞かせてまた動き始める。
 二度と撮れないような写真をものにしたかに思えた時よりも、依頼された撮影で難易度が高いシーンを撮影した後で、そんな心理状態になりやすい。
 依頼を受けて撮影するということは、狙って撮影できるということであり、その結果がパーになったならばもう一度やり直さなければならない。
 これが何よりも怖い。
 二度と撮れないような、計算できない写真なら、諦めるしかない。


NikonD800
SIGMA15mm F2.8 EX DG DIAGONALFISHEYE SILKYPIX

NikonD800
TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 SILKYPIX

NikonD800
TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 SILKYPIX

 蝶とトンボとでは、撮影の感覚が異なる。
 トンボは細かな構図まで計算しやすいが、蝶はとにかくせわしなく、計算ができにくい。
 計算できる被写体なのか、或いはできにくい被写体なのかで、僕は気の持ち方を変えることにしている。
 計算できる被写体の場合、しっかりと的を絞りツボにはまるのを待ち、計算ができにくい被写体の場合、完璧主義になり過ぎずとにかく写真を撮る。
 
 
 

2012.4.9〜11(月〜水) カヤック ニーパッド (モンベル)



 釣り用の胸までの長さの長靴は、水辺で撮影をする僕の必需品。
 素材がいろいろあり、それによって価格もピンからキリまであるが、透湿性の素材を使用したものの中で一番安価なものを買うことにしている。
 透湿性の素材とは、水はシャットアウトするが空気は通すようなタイプのもの。空気が通れば、ウェアーの内部が蒸れにくくなる。
 その威力は絶大で、そうでないものと比較をすると、まったく違うと言っても過言ではなく、撮影の際に感じる疲れがまるで違う。
 透湿性の素材で最も良く名前が知れているのはゴアテックスだろうが、ゴアテックスはそれなりに高価であり、僕が購入するのはそれよりも安いエントラントの製品が多い。
 が、それでも十分な威力がある。
 値段で言うと、10000円前後のものをいつも買うことにしている。

 地べたに座り込んで撮影することが多いので、膝の部分が痛んでしまうから、モンベルのカヤック用のひざ当てを使う。
 モンベルというメーカーは、かゆいところに手が届く実に面白いメーカーだと思う。カタログを眺めるのが楽しい。
 丈夫さという面で言えば、モンベルは世界の一流品よりもちょい劣るが、その分値段も安い。
 
 
 

2012.4.7〜8(土〜日) 人の論理


NikonD3X SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM

NikonD3X SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM

 僕の身の回りには、言うまでもなく、自然愛好家が多い。
 中にはタバコを吸う方もおられるが、自然が好きな人だけあって吸殻を捨てたりすることはないし、みなさんマナーがいい。
 トンボ愛好家の西本晋也さんなどは、変な言い方ではあるが、ある意味、タバコを吸わない人よりもマナーがいい。共に行動をする時に、決して人に嫌な思いをさせないようにタバコを吸う心配りなどは傍から見ていて惚れ惚れするし、喫煙という行為がカッコイイとさえ感じることがある。
 だから、タバコを吸う人を目の敵にするような気持ちは、僕は持ってないつもりだったのだが、犬を飼うようになり、喫煙者がしばしば嫌われる理由が少々わかるようになってきた。
 犬を散歩させると、とにかくタバコの吸い殻が多いのである。

 それから、犬を連れ、徒歩でゆっくり歩くことができる道が少ないことも痛感させられる。
 日頃交通量が少ないように感じていた道でも、案外車が通る。
 自分が車に乗っていると分からないのだが、横を通り過ぎる時の風圧・音・威圧感・・・、優しくないなぁと思い知らされる。
 日本の道は細過ぎる、などという話を耳にすることがある。
 これまでは、確かになぁと同意していたところが、大通りはともかく、車が敬遠するくらいに細くて通りにくく人が歩くための道がたくさんあってもいいんじゃないか、と感じるようになった。
 そんな目で周囲を眺めてみると、うちの事務所の近所でも、トボトボ歩くお年寄りの姿をちょいちょい見かける。
 物流を発達させることを、ほどほどにしておいてはどうだろう?などと近頃思う。別に今のままでも、十分に便利な世の中なのではなかろうか?
 
 事務所に誰も人がいなくなるような時。みんなが揃って出かける準備を始めたりすると、犬が落ち着かなくなる。
「いかないで。」
 とさまざまな手段で抵抗する。
「そこまで抵抗せんでも、よかろうもん。なんでそんなに寂しがるん?」
 などと思うがそれは人間の論理であり、犬の立場に立てば、出かけたみんなが永遠に帰ってこないのかもしれないし、自分が捨てられるのかもしれないのだから、もっともなことだと思う。
 人間どうしなら、言葉で説明することでその外出が一時的なものであることを分かり合うことができるし、将来のことをある程度予測しながら暮らすことができる。
 約束などというものも存在する。
 しかし、そんなことが可能なのは人間だけ。
 人の世界は約束だらけ。
 例えば、お金だって、他の何かに引き換えることができる約束だと言える。
 クレジットカードなどいうやつは、そのお金をさらに実態のないものに置き換えたもの。
 実はその約束にはなんの保障もないのだけど、それを言っては生きていくことができない。
 人間以外の生き物には、今がすべて。
 生き物を飼うと、人の論理はしばしば通用せず、その時になぜ?と考えてみれば、人間という生物が、いかに特殊な生き物であるかがよくわかる。
 
 
 

2012.4.2〜6(月〜金) 知らない街を、歩いてみたい



 遠出をしてワクワクするような自然を見る。身近な場所に何度でも行ってみる。スタジオで写真を撮る。
 一言で自然写真の仕事と言っても幾つかンパターンがあるが、スタジオで長時間撮影をした翌日は、遠くへ行きたくなる。
「知らない街を、歩いてみたい。」
 と 『遠くへ行きたい』 のメロディーが、頭の中を巡り始める。 
 お隣の県へあまりあてもなく行ってみた。
 そんな日は、売れる可能性が高く仕事として成立しやすい写真よりも、好きなものを撮りたくなる。
 光があり風が強かったから、まずは水中写真を選んだ。水面が浪打ち、差し込む光が複雑な模様を作り出す。
 水の中では、風がこう見える。
 その風と光をテーマとすることに決めた。
 水は濁り気味の方が、臨場感があっておもしろい。
 コイの写真と言えば、どんな写真が流通しているだろうか?と思い浮かべてみれば、大抵は図鑑的な写真。つまり、そんなニーズが多いのだろう。
 図鑑的な写真なら、波が作り出す光の模様が邪魔になるから、照明器具で魚体を照らし、しっかりと描き出すことになる。それから、もっと水が澄んだ場所にカメラを沈めることになる。


 


 トンボ愛好家のみなさんが集う池を1つずつ見て回った。
 このあたりで僕が一番好きな池では、水が抜かれていた。
 
 ジェリー藤尾さんの『遠くへ行きたい』(YouTubeへ接続・音が出ます)は、哀愁漂う少しさみしい曲だが、音楽の世界ではそうしたものが受け入れられ、ヒットし、長く受け継がれている。
 一方で自然写真の出版の世界では、ひたすらに明るく爽やかなものが求められている。
 暗いものの出る幕はない、と言っても言い過ぎではなかろう。
 明るく爽やかなものは、それはそれでいいと思うし、それが売れるのは当然だと思う。が、そうではないものが受け入れられる余地も、とこかにあるような気がしてならない。
 それを探してみたい気持ちになる。
 
 
 

2012.4.1(日) 食う-食われる

 誰が言い始めたのだろう?
 子供の頃、大きなことを言い放った者に対して、誰かが、
「お前それ本当か?命かけるか?」
 とよく聞いたものだった。
「おう、命かけるぞ!」
 などと気軽に答えていた僕などは、もしもちゃんと約束を守れば、もう数えきれないくらいの回数死んでいなければならない。


NikonD800
SIGMA15mm F2.8 EX DG DIAGONALFISHEYE +1.4X SILKYPIX

OLYMPUS E-620
ED 9-18mm F4.0-5.6(改造) ストロボ 水中ハウジング SILKYPIX

 水の中に落ちた椿の落下を食べるカワニナ。
 写真の需要には偏りがあり、どんなシーンが売れるかはだいたい決まっているし、そこから外れた写真が売れる確率は極めて低い。
 命かけるか?とまで聞かれたら困るが、こんな写真などは、僕が写真を引退する日までに一度も売れない可能性の方が高いだろう。
 しかし、撮影は売れないものにカメラを向けている時ほど楽しい。


OLYMPUS E-620
ZUIKO DIGITAL 35mm F3.5 Macro ストロボ 水中ハウジング SILKYPIX

 カスミサンショウウオの幼生を見かけるようになった。


NikonD800
AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

 大きくなったニホンアカガエルのオタマジャクシ。


OLYMPUS E-620
ZUIKO DIGITAL 35mm F3.5 Macro ストロボ 水中ハウジング SILKYPIX

 ヤゴに尾っぽを食べられたオタマジャクシ。
 この水辺では、雨が多く水量にゆとりがあり、一度も水が涸れなかった翌年はヤゴの個体数が多く、尾っぽを食いちぎられたオタマジャクシの姿も多く見かける。

(撮影機材の話)
 接写的な撮影で十分な量の光がある場合、またはストロボを使用する場合は、オリンパスのE-620で十分な画質が得られる。
 一方で曇りの日に自然光で撮影する場合や、広角レンズで広い範囲を撮影し、画像に写し込む情報量が多い場合には、より高画質な、大きなセンサーを積んだカメラが欲しくなる。
 
 
   
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自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2012年4月分


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