撮影日記 2010年7月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ
 
 
・今現在の最新の情報は、トップページに表示されるツイッターをご覧ください。
 

2010.7.30〜31(金〜土) お知らせ

(お知らせ)
今月の水辺を更新しました。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.28〜29(水〜木) 図書館へ

 近所の図書館の自然や科学の本のコーナーで、片っ端から本を引っ張り出しては目を通す。
 仕事柄、その手の本には普段から当然興味を持っているのだが、それでも知らない本があまりにもたくさんあり、しかもその中に内容的に実に面白い本があるのだから、図書館の存在意義を改めて思う。

 一方で、それだけたくさんのいい本があるのだから、その中で自分の本をちゃんと知ってもらうことの重要性を痛感する。
 例えば、自分が本を買う立場なら出版社はどこでもいいが、本を作る立場なら、ある程度以上の営業力を持った社を選ぶことも必要だろう。
 また、本のデザインや見え方の印象も、非常に重要になる。一般に、先生と呼ばれる立場の人や専門家が書いた本は、内容がよくまとまっているが、まるで教科書か学校の授業のようでもあり、本の作りや見せ方に関しては、実に退屈でつまらないものが多い。
 さらに、自分が所有しており、これまでとても気に入っていた本の中には、図書館のたくさんの本の中に入ると、意外につまらないと感じるものがあることも分かった。そしてそれらの本に共通していたことは、本の作りはとてもおしゃれで所有欲を満たしてくれるのだが、内容的に新しいものがなかったり、どこかで見たことがあるような写真ばかりだったりすることに気付いた。
 それらの本は、内容がしっかりした本が隣に並ぶと、色あせてしまう。まるで、厚化粧の美人のように。
 やっぱり、本は、内容も大切だ。

 気に入らないのは、環境問題を取り上げた本が、自然や科学のコーナーに置かれていること。
 環境問題は、人間社会のことを論じているのであり、「社会」ではないのか。
 例えばエコという概念を、まるで自然を思いやることだと思い込んでいる人は多いが、エコは、あくまでも人間にとっていい環境(都合がいい環境)を目指しているのであり、それと生き物にとっていい環境とは、必ずしも同じではない。
 例えば、
「ホタルが住める環境を」
 と声高に叫び、
「光の害があるから。」
 と懐中電灯もカメラもストロボも一切使用してはならないという人がおられるが、その手の人が、みながホタルを鑑賞した後でヘッドライトをつけた車に乗って帰れば、ライトにたくさんの蛾が飛び込んで死んでしまうことを語るのを、僕は聞いたことがない。
 人間が好むホタルは守られ、好まれない蛾は死んでも目を瞑られる。
 里山などという概念だって、田んぼだってそうだ。
 里山などいう場所は元々は自然界にはなかったわけだから、そこには別の生き物が住んでいたはずだ。また、
「田んぼの水路がコンクリートで塗り固められ、生き物たちが住めなくなった。」
 とか、
「棚田が失われつつある。」
 嘆く方がおられるが、元々自然界には田んぼの水路も棚田もない。
 里山や棚田がつまらないと言いたいのではない。
 人間は人間として生きるしかないのだから、それはそれでいいと思うのだが、それは自然を愛することというよりは、人間にとっての理想の環境を追求する行為であることくらい、知っておくべきだと思うのだ。 
 エコが悪いとは思わないが、美化されすぎたり、それを正義だと思う込むのは恐ろしい。少なくとも、自分を正義だと思い込んでいる人は、自分を振り返ることはないだろうから。
 
 それにしても、図書館は楽しいが、
「いい年をした大人が、平日の朝っぱらから子ども図書館ねぇ。毎日が文化祭だね。」
 というような空耳で、なんだか後ろめたくもある。
 

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.25〜27(日〜火) 本作り

 来春発売される予定の5冊セットの本のうち、1冊だけは一足先に完成させることになっている。そしてその先に出来上がる1冊を、見本として営業の人が持ってまわり、売り込むことになる。
 するとその巻に限っては、撮影のために残された時間はせいぜいこの夏まで。
 いよいよ、大詰めだ。

 今回の本は、たぶん、僕以外には作ることができない本だと思う。
 まず、それらの場所で写真を撮っている人にあったことがないし、既存の本を片っ端から当たってみても、同じような切り口の本もない。
 だから、誰かに先を越されるとか、簡単に追随されるというような心配がなく、いわゆる競争とは無縁でいられる楽さがある半面、すべてを自分で切り開き、そして決断しなければならないという孤独な面もある。
 例えば、営業の人が本を売り込む際に必要になる資料みたいなものでさえ、とにかく自分が最初にその内容を考えなければ、何も始まらない。
 それにしても、いざ作業をしてみると、一日にたったこれだけのことしかできないのか?と愕然とさせられる。

 僕がこれまで携わってきた本では、それとは180°逆のやり方だった。
 僕は一技術者に徹し、とにかく編集者が欲しいと思う写真を撮った。つまり、僕は編集者の手足になった。
 どちらにも、それなりのむずかしさがある。
 
(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.24(土) 車内泊の注意点

 熊本県の山中で、木陰に車を止めて昼寝をしていたら、
「武田く〜ん。」
 と聞き覚えのある大きな声で呼ばれた。
 知人でおまわりさんのHさんだった。
 Hさんは当時刑務所に勤務しておられ、看守として24時間働いては2日休みの生活。その2日の休みを利用して、植物の写真を趣味にしておられた。
「車の窓を全開のまま昼寝をするなんちゅうのは、危な過ぎるばい。俺たちは、ほら、いろいろな事件を見てきとるやろう。窓は閉めて、ドアは絶対に鍵をかけておかんとダメばい。車の中に寝ること自体が危ないことを忘れたらいかんばい。」
 そんな風に忠告してもらったのは、もう10年くらい前のこと。僕はそれ以降、Hさんの忠告は必ず守ることにしている。暑い夏の夜に窓を全開にして車内泊をするために自作した車用の網戸なども、その時に捨ててしまった。

 確かに、今やわざわざ山奥まで宅配のピザ屋さんを呼んで、強盗を働くような人が出没するような時代だ。相手に悪意があれば、窓を全開で寝ている人間は、絶好のカモだろう。
 また悪意がなくても、世の中にはちょっとばかりおかしな人がいるのも事実。
 そう言えば先月、車中で一晩を過ごそうとしていたら、真夜中に窓を叩かれ目が覚めた。
 白人の女性だった。
「スミマセン、ココニ オンナノヒト ノッテマセンデシタカ?」
 女性は、ロックされたドアを無理やりに開けようとするから、車が揺れる。
「チョット アケテクダサイ。」
 そんな時は、相手が誰でも絶対に開けてはならない。窓を少しあけるくらいのことでも、自重しなければならない。
「乗ってませんよ。」
「ソウデスカ。ワタシノニモツガ アルカモシレナイノデ、ナカヲミセテクダサイ。」
「あなたの荷物はありません。」
「ソウデスカ。」
 場所は高速道路のパーキングエリアで、山口県の山中である。他に間違えられそうな車もない。
 外人はおろか、車に乗っていない丸腰の女性に会うような場所と時間ではないのだ。
 もしも窓を開けて寝ていたなら、少々ややこしいことになった可能性が高い。
 
 しかし、夏場は辛い。たとえ夜でも、車の中は熱がこもって寝苦しい。つい先日の取材の際も、あまりの暑さに夜中に何度か目が覚めた。
 そして、お腹にかけておいたタオルケットがはだけてしまい、お腹を冷やしてしまったようだ。取材から帰宅後、ひどく腹具合が悪い。
 2日連続して車の中に寝泊まりしたが、1日目は少し標高が高い場所で、谷沿いの風がよく通る場所を選んだので快適だった。
 しかし2日目は、より撮影現場に近い場所を選んだのが大きなまちがいだった。
 一般的に言えば、人に襲われる確率よりも、熱中症を患う率の方が高いだろうから、それはそれで細心の注意を払わなければならない。
 
 ともあれ、いったいあの方は何者だったのだろうか?
 思いつくのは、バックパッカー的な格好をしておられたので、ヒッチハイクで誰かの車に乗せてもらい、パーキングエリアでトイレに立ち寄った間に、荷物は持ち去られ、本人は置き去りにされたような可能性だ。
 もしもそうなら気の毒としか言いようはないが、それも自己責任であり、ヒッチハイクの醍醐味の1つとでも思ってもらう他ない。
 やはり開けてはならないのだ。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.22〜23(木〜金) 日本の自然


CanonEOS5D EF20mm F2.8 USM(改)

 まるで南米のパンタナールかどこかの湿原みたいだ。
 ここは、乾季には草原に、雨季には沼になる。
 小さな沢が火山の噴火の際に堰止められた結果できたと考えられている湿地。
 そしてその小さな沢の水はすべて地下へとしみ込んでしまうので、この湿原には流れ込む川はあっても、流れ出す川はない。
 湿地の地下には噴火の際の岩石が大量に埋もれており、沢の水はそれらの地下の岩の間をすり抜けて里へと湧いて出る。この場所へと登る登山道の途中には、地下からゴウゴウと水が激しく流れる音が聞こえてくる場所がある。
 今年は梅雨の雨が多かったので、沼の水深は、おそらく最深部で10Mくらいはあるのではなかろうか。
 巨大な木が、頂端部のわずかな葉っぱを除いて、ほぼ完全に水没していた。
 湿地を超え森の中にも水は押し寄せてきて、森の植物たちも梅雨明け後に水が引くまでひと月以上を水の中で過ごす。
 日本のテレビ番組がパンタナールを取り上げるのも悪くはないと思うが、日本にもこんなに面白い場所があるのに、なぜ海外ばかりを紹介するのか?そんな番組ばかりを子供たちに見せるのは、無修正のアダルトビデオを少年少女たちに見せるようなものではなかろうか?
 強過ぎる刺激を当り前だと思ってもらっては困る。
 この場所を初めて知った時の僕の思いだ。
 そんな世界の秘境ばかりを、また国内でもよく知られた絶景ばかりを紹介するのではなく、 「武田晋一のジャパニーズ・ネイチャーワールド」というタイトルで、日本の身近で、まだ知られていない自然を紹介する番組を制作してはどうだろう?
 いや、テレビに出るのは嫌いなので、やめておこう。

 一昨日にも書いたが、大雨の影響で道が通行止めになっており、長い距離を歩かなければならないから、持っていくことができる荷物の量が限られる。
 一昨日にはごく普通の撮影機材を、そして昨日は水中撮影の道具を持って山道を歩いた。
 
(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.21(水) 歩く


NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

 先日の大雨で道路が崩壊し、車はこの先で行き止まり。
 ここでザックに荷物を詰め込み、これから1時間半ほど歩く。機材の量を劇的に減らしてみようか?そうすれば、早足で歩いて50分くらいで目的地に着くのではなかろうか。
 いや、せっかく山に登るのだから、そこであの機材が欲しい、などということになったなら、やっぱりもったいない。
 とはいえ、荷物が実に重たい。


NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

 途中からは、公道をはずれ、地元の人たちがブルドーザーで自作した道を歩いた。
 並行して遊歩道もあるが、道が雨でどの程度痛んでいるのかを見ておきたかったので、こちらを歩くことにした。
 

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

 何の木だろう?
 僕は植物に詳しくないし、特に木はまったくわからないのだが、風が吹く度に白い綿毛が降って来て、まるで雪のようだ。
 ハンノキか?
 毎年この場所でみられる景色だが、雨で湿地が沼になり、木が沼の中に取り残され、幹の部分が水に沈んでしまうと、特にたくさんの綿毛が降ってくるように感じる。
 水に沈んでしまうかもしれない!、と危機感を感じた木が、最後に子孫を残そうとしているのだろうか?
 それとも、ただ単に、ちょうど梅雨明けのころに綿毛ができるようになっているのだろうか? 
 青空がとことんまで心地いい。荷物は重いし、きつかったけど、やっぱり行って良かった。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.20(火) ゴミ水路水族館

 町の建物のあいだを縦横に流れるゴミだらけの水路。そこに大きなコイや雷魚が住んでいることに気付き、カメラを向けてみたのは数年前のことだ。
 最初は、事務所に近いこともあって、ちょっとした空き時間に行って、気軽に写真を撮る場所だと思っていた。
 ところが、行くたびに新たな生き物が見つかるので、本にまとめてみたくなった。

 しかし、いざそんなつもりで写真を撮ってみると、幾つかの問題点が浮かび上がってきた。例えば、それらの魚の写真を通して、僕はいったい何を伝えるのか?
 僕自身は、子供の頃から魚が大好きなので、魚の写真を見るだけで楽しい。また、家の中に魚が泳ぐ水槽があれば、それを眺めているだけで、1時間でも2時間でも楽しく過ごすことができる。
 が、本は、そんな訳にはいくまい。何かちゃんとした本としての切り口があり、その中で、自分が大好きな魚たちが出てくるというような展開が求められるし、その切り口こそが本作りの際の命ではなかろうか。
 ベタな切り口なら、たとえば、こんな汚れた町の中に住まなければならないかわいそうな魚たちというようなものなら、すぐにでも幾つか思いつくが、その手の人間様の上から目線の本にはしたくなかった。
 僕の目には、魚たちはたくましく、生き生きしているように映った。

 そこでまずは、そもそもその水路はいったい何のためにあるのか、水路の由来から調べてみることにした。
 そして水路をたどって歩いてみると、やがてわずかではあるが辺りに田圃が残っており、水路はその田圃へと水を引くためのものだと分かった。
 ということは、今建物が立ち並んでいる場所も、昔は田圃だったのではなかろうか?そう言えば、目を閉じると、一昔前の田んぼの景色が思い浮かぶような気がする。
 そこから先は、あたりのことを良く知っている人にたずねてみるしかない。僕はさっそく、心当たりを当たってみる。
 これが、本作りの始まりだった。本作りの際に僕のアイディアを形にする役割を担ってくださる凹山栗太さんが、『 ゴミ水路水族館 』と名付けてくださった。
 さて、町の中の水路が元々は田圃の水路だったことに、最初に気付いたその日僕が見たものを、写真で再現してみた。

 悲しいかな、所詮生き物の写真家。町や道などにカメラを向けた経験はほとんどないし、その手の写真は、なかなか思い通りに写らない。
 そこで水路をたどる旅を再現した撮影は、先延ばしにして、なるべく後の方にしようと決めていた。少しずつではあるが、今でも年々写真は上達するし、その上達を待った方が良さそうだと判断したのだった。
 ただ出版のための期限を考えると、最大限に引き伸ばしても、この梅雨明け直後まで。
 今日がその日だ。
 

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.19(月) 梅雨明け


NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

 右側に見えるのが北九州の町並み。僕がサンショウウオやアカガエルのオタマジャクシを撮影する水たまりは、この山の中にある。
 カメラを持った人が来るような絵になる水たまりではない。だから、僕はここで、まだカメラマンに会ったことがない。
 そんなカメラマンが誰も見向きもしない場所を撮影の場に定め、本を作る。
 そして、テクニックを駆使して時に上手に時に芸術的に写真を撮るのではなく、自分の目に見えているものを見ている通りに当り前に撮る。
 キザな世界は、僕には合いそうもない。
 いろいろな写真の撮り方を試行錯誤してきたけれども、僕にはそんな生き方がお似合いだと将来の自分がイメージでき始めたのは、ようやくここ3〜4年のことだ。
 本は全5冊セットの中の1冊になり、来春には5冊がそろうことになっているので、この夏はその撮影のための最後の機会になる。
  

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

 ポカンと水に浮かんだサンショウウオの子供。
 手が生え、足が出てエラがなくなると、恐らく水に沈みにくくなるのだと思う。こうして水に浮いているものを見かける。
 あと数日でまだ水の中に残っているサンショウウオたちも上陸し、森の中へと姿を消すことだろう。
 青空が懐かしい。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.18(日) 本を買ってみた

 この本を読んで面白いと感じない人は、自然観察なんてやめた方がいいと思う。
 宮崎学さんの「となりのツキノワグマ」
 写真にはいろいろな切り口があり、異なる切り口のものを比較するのはナンセンスではあるが、ナショナルジオグラフィックあたりの記事と比べてみたらどうだろうか。
 ナショナルジオグラフィックと言えば世界で最も権威がある自然雑誌だが、そのナショナルジオグラフィックの記事の中にも、僕は、これほど面白い内容のものは見たことがない。
 また、大学の組織や研究者による生き物の生態の研究を片っぱしから思い浮かべてみても、この本以上の内容のものを僕は知らない。
 



 水という決まった形を持たず、それどころか時には蒸発してしまい目に見えない物体を、いったい本の中でどう表わしたらいいのだろう?
 いろいろな作品を眺めてみる。




(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。


 

2010.7.16〜17(金〜土) 大雨の爪痕


NikonD3X SIGMA15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE SILKYPIX

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

 小さな小さな道なので、復旧するのは当分先になるのではなかろうか。大雨の影響で撮影現場に向かう道路が通行不能になっていて、早々に帰宅。
 中途半端な時間が出来たので、ちょっとばかりカメラで遊んでみた。
 僕は普段、仕事以外で写真を撮ることは滅多にないのだ。写真や撮影そのものには興味がないんだろうな。

 こんな本を作りたい、という思いはあるが、ただ単にあの生き物の写真を撮ってみたいというような思いはほとんどない。だから、どんなに美しくて珍しい鳥が現れたとしても、もしも仕事ではないのなら、写真を撮るよりも、アッと硬直して見つめていたい気持ちが強い。

 とりあえず写真を撮っておけば、何かの仕事の際に使えるかもしれない、という理由で写真を撮ることもほとんどない。
 写真を撮る時はいつも本が念頭にあり、その本の中でどんな風にその写真を使うのかを考えながら撮影する。
 時々、
「あなたの一番のお気に入りの写真は?」
 と聞かれるが、答えようがない。
 僕にとってすべての写真は、自分の頭の中にある本の一部分にすぎない。
 だから、一枚の写真を額に入れて飾る気にはなれないし、僕にとって写真は、物語なのだ。
 もっとも、そうして撮影した写真でも、使用したいという需要があれば、自分の当初の意図とは違った用途に使うことには抵抗はないし、むしろ自分が思い描いた通りに本の中で使用される写真の方が圧倒的に少ないのだが。
 
 プロの写真家には、
「どこでどう役に立つか分からないから、ちょっとでも気になる被写体を見つけたら、とにかく写真を撮っておきましょう。」
 という人が多い。そして先人の教えはとにかく自分で試してみなければ分からないのだから、僕もそんな風に写真を撮ろうとしたこともあるが、今では、そうした撮り方は全くしなくなった。
 また、
「一つの被写体を、いろいろな風に撮影しましょう。」
 という方もおられるが、僕は自分が気に入った一枚しか撮らない場合が多い。
 ただ、その一枚にたどり着くまでに、ああでもない、こうでもないと色々試すことはあるし、むしろ、そうした試行錯誤に関しては、多い方だろうと思う。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。


 

2010.7.15(木) 家訓



 父がレンズをくれるというので、もらってきた。
 キヤノンのEF100mm F2.8L マクロ IS USM。
 父は、数千万円もする新しい仕事の道具を買う決意をしたらしく、それを使いこなさなければならないから、趣味の写真を撮る暇などはなくなってしまったのだという。
 だが本当のところは暇がなくなったというよりは、新しい道具で仕事をすることが楽しみで、趣味の写真なんてどうでも良くなったのだと思う。
 父は多分70歳を越えているだろうから、仕事をするといっても先はそんなに長くはないし、数千万円もするものを買えば、当然元が取れるはずもない。
 だが、仕事一筋に生きてきたのだから買ってもいいのではないかと母も賛成し、物を買うことになったようだ。

 父の年齢を多分と書いたのは、武田家には盛大に誕生日を祝うような風習がなく、僕には家族の正確な年齢が分からないのだ。
 先日も、父の誕生日のお祝いをしようかという親族からの申し出を、
「おいしいものを食べてお酒が進むと、結局体を壊したりしてロクないことがないから。」
 と断ってしまったそうだ。
 そもそも、父は誕生日を祝ってもらって嬉しいというようなタイプではない。また、そうした機会に人が何人集まってくれたというようなことで、自分が人からどれくらい尊敬されていたり信頼されているかをはかったりすることもないし、他人の目などは全く気にはしていない。
 つまり、顔を立てたり立てられるというような発想が、父の周辺には基本的にない。
 そして僕もそんな家庭環境で育っているので、お祝い事などというのが理解できない面がある。
 そんな政治家的な発想を持つよりも、ひたすらに腕を磨き、仕事一筋に生きよ!というのは、その良し悪しは別にして、武田家の家訓のようなもの。
 だから、むしろお祝い事に参加することに、後ろめたささえ感じる。
 相手をそうやって立てるお前には、いったいどんな下心があるんだ?という自問自答。
 また、そんなことで相手が喜ぶと思っているのなら、それは相手を見栄っ張りな人間だと見くびっていることにならないだろうか?という心配。
 たとえば誰かが病気をした際に、
「たくさんの人がお見舞いに来たのは、あの人の人徳の証」
 などという方がおられるが、病気になった時まで、そんなことを気にしたり、気にさせられるなんて、節度がない発言だな、と僕には思えてしまうのだ。
 僕には、間違いなくサラリーマンは務まらないだろう。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。


 

2010.7.13〜14(火〜水) 雨の撮影


NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

 さすがにこれだけの雨が降ると、遠賀川の堤防も、なんだか心もとない。100年に一度の大洪水がおきたら?などと頭に思い浮かぶ。
 水流の勢いも凄まじい。近づくと、川がきしむような音がする。

 自然写真家として「川はこうあるべき」とか「山はこうあるべき」などと口にすることもあるが、理念だけの無責任なことは言いたくないと思う。
「川が荒れるのは山が保水力を失っているから。山をちゃんとすれば、川をコンクリートで固めてしまう必要はない。」
 などという主張する方もおられるが、はたして本当にそうなのだろうか?
 もしもそれが本当にその通りなら、大昔には、水害などなかったはず。
 がしかし実際には昔から水は恐れられているし、治水は為政者にとって重要な責務であり、信玄堤などはいまだに讃え続けられている。
 山の保水力の重要性は言うまでもないこと。
 だが、それですべてが解決するというのは、非常にいかがわしいし、それは現実と煩わしい実務を考えることを放棄した人の発想ではなかろうか?
「自然と人とを対立させないでほしい。」
 と主張する方もおられるが、自然はそんなに甘っちょろいものではないと僕は思う。
 もちろん、だからと言って、ただひたすらにコンクリートで川を固めればいい訳でもないのは言うまでもない。
 自然は、恐ろしものから人を癒すやさしいものまでがひとつながりなのであり、そんな思いを込めた本を、いつか僕がそれなりの発言力を持てた時に作ってみたい。
 そしてその発言力を持つためには、まずは今制作中の本作りに、全身全霊を込めて取り組むほかない。


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX 

NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

 大雨の日の森の中には幾筋ものの川が現れ、いつも僕がニホンアカガエルやカスミサンショウウオを撮影する森の中の水たまりも溢れ出し、川になった。
 雨の中での撮影は、それなりにやり方を確立しているつもりではあったが、昨日の雨は大変に激しく、あと少しで高価な機材をダメにするところだった。
 写真は、物を見せるために明るく撮影してあるが、実際にはもっと薄暗く、いつもはたくさんの人が散歩する場所が、秘境のようだ。
 もしもそんな機会があるのなら、バケツをひっくり返したような大雨の日に、子供たちを連れてここを歩いてみたい。

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。


 

2010.7.10〜12(土〜月) 恩師に会いに行く
 
「こんにちは、豊福です。」
 と懐かしい声。
 大学時代の先輩からの電話だった。
 豊福さんは僕が大学4年の時に修士課程の2年生。田川の出身で、僕の自宅がある直方や田川は福岡県内でも筑豊地区と呼ばれる。
「元気にしとる?あのさ、千葉先生が田川にくるっち言うんよ。それで、お前も来れるなら出ておいでよ。」
 僕の大学時代の恩師である千葉先生は生き物の体内時計の研究の第一人者で、それらの研究は大変に高く評価された。日本動物学会賞を受賞されたこともある。
 定年後は、大好きな絵に没頭しておられる。
 そして昨年は、その絵画で、青木繁大賞を受賞されたりもした。
 受賞作 「熱帯雨林の片隅で」 には、昆虫の唾液線や神経節などがデザイン化された描かれているのだから、生き物を解剖したことがない審査員には恐らく大変に個性的、神秘的であり、衝撃的であったに違ない。
 しかし、僕から見れば、
「そりゃないでしょう?先生。」
 と若干反側気味にも見えた。そこが先生の狙いであることは、言うまでもない。今回は、田川市美術館の19回英展で佳作を受賞され、そのタイトルも「体内時計」である。
 生き物の話・科学の話・研究の話・人生の話・・・。懐かしいというよりは、一気にタイムトリップして、今まさに先生の研究室に属し、学生をやっているかのようだ。

 僕がだいたい付き合いが悪い。
 僕の付き合いの悪さは極めつけであり、先生の退官記念のパーティーなどにも出席しなかったし、不義理をした。
 先生には会いたかったけどれも、僕にとって人との付き合いはあくまでも1対1の関係であり、パーティーというスタイルがどうしても好きではないのだ。
 そんな付き合いの悪い僕に、今回懲りずに声をかけてくださった豊福さんには感謝する他ない。
 僕は山口大学以外に熊本大学にも合格していたので、そちらに進めば、また別の道が開けたに違いないと思うが、山口を選び千葉先生の研究室に属すことができ、豊福さんやその他の方々に出会うことができたのは大変に幸運なことだったと思う。
 当時大学院の博士課程に属していた吉井さんには、遊びと男のロマンとは何かを教えてもらった。
 2つ年上の村田先輩とはあまり話をしたことはないが、ひたすらに研究者の道を目指し、努力する姿を見せてもらった。
 1つ年上の石河さんには、ユーモアとか優しさとか、心の柔らかさを見せつけられた。
 それらの経験は、科学の知識以上に、今僕の暮らしに役に立っているように思う。
 先生には、とにかく長生きしてもらいたい。
  
(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.9(金) 水際
 
 完全な水の中の撮影は、魚のカメラマンに任せればいい。僕のテーマは、水と陸との境目である水際であり、水と陸とのつながりだ。
 だから、ウエットスーツやドライスーツを着こんで、空気のボンベを背負って潜水してカメラを構える時間はそれほど長くない。
 最初から水際にこだわりがあった訳ではないが、他にそこをテーマにしている人があまりいなかったから、おのずとと水際の撮影に特化した。すでにみんながたくさん撮影している場所に、さらにカメラを向けても仕方がない。
 美術や芸術を志す人が主張するオリジナリティ?
 いや、僕の場合はオリジナリティではなくて、記録性・報道性という観点から、人と同じ場所にカメラを向けても仕方がないと思う。
 その前に、みなで同じ場所にカメラを向けたら、写真が上手い人の勝ちになる。そうなると、僕の出番などはなくなってしまう。

 さて、水際の撮影に必ず付きまとうのが、機材の水没の危険性だ。
 胸まである釣り用の長靴を着用し、水の中に胸までたちこんで撮影している最中に、水中の凸凹に足を取られてずっこけてしまったなら、カメラもレンズも間違いなくオシャカになってしまう。
 いつもお金のことを心配している僕は、さすがにカメラを水に沈めたことはない。
 とにかく、まるで足の指の先端に目玉がついているかのように丁寧に歩く。
 だが、小さなものなら、数えきれないくらいにダメにした。大抵は、足先に集中し過ぎている時にその手の失敗を犯しやすい。


NikonD700 Ai AF Micro-Nikkor 60mm F2.8D

 それがお気に入りの道具だったなら、値段云々ではなく、言いようのない残念な気持ちになる。レンズを拭くための布をたった一枚流水に流してしまっただけでも、何だか大変に堪えることがある。
 つい先日も、カメラの赤外線リモコンシステムが水に浸かってしまった。沼の沖の被写体に近づきたくて、水中を一歩二歩とより深い方へと進んでいる最中に、ふと気がつくと、ネックストラップを取り付けて首からぶら下げていたリモコン部が水に浸かっていたのだ。

 このシステムは大変に重宝している。
 三脚にカメラを固定して風景の写真を撮影するような場合は、カメラのシャッターを直接手で押すと、その際のゆれで写真がぶれてしまうことがあるから、リモコンを浸かった方がいい。
 しかし、コード式のリモコンは、今度は昆虫の写真などを撮る際には紐状のコードがあちこに引っかかるなど邪魔になる。したがって用途に応じてそのコードを抜き差ししなければならないが、それが一瞬のチャンスを逃す原因になる。



 カメラに取り付けてあるブドウの粒のような物体が、リモコンからの赤外線の受光部になるが、大変に小さくて、何の邪魔にもならないから、これならつけっ放しでいい。
 とにかく1アクションでも少なくすることが、自然や野生の生き物の撮影では重要になる

 また、人を警戒する生き物の撮影の際には、カメラを目的の場所にセットしたら、後は少し離れた場所から赤外線でカメラのシャッターを押せばいい。
 いつも決まった枝にとまるトンボの撮影などには、大変に役に立つ。トンボマニアの皆さんに、
「は〜、この神経質なトンボに、よくこんなに近づけましたね。」
 などと言われたなら、気持がいいことこの上ないだろう。
 しかも、こんな小さな道具のおかげで。
 ベルボンから発売されている製品で、僕が購入した価格が、確か6000円台だったように記憶している。

 水につかったリモコン部は、直後から正常に作動しなくなったが、その後、よく乾かしたら、再度作動を始めた。
 ああ、良かった。
 
(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.7〜8(水〜木) 都会で思うこと
 


NikonD3X AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX

 日帰りの上京から帰宅した。
 上京するといつも公共の交通機関での移動が退屈でしかたがない。僕はせっかちなので、だいたい退屈しやすい。
 ツイッターなんて何で流行るんだろう?と不思議に思っていたのだけど、都会で暮らす人たちにとっては、そんな移動の時間には、実に手頃な発信の手法なのかもしれない。

 東京には、緑は意外と多くてあちこちに小さな森のようなものがあるから、そんな場所に行けば生き物の撮影はできるのだろう。
 でも、仮に僕が東京在住だったとしても、そこでみんなで写真を撮る気にはなれないような気がする。その時はたぶん、自然や自然写真とは別の、都会でしか楽しめない何かを選択するような気がする。
 それにしても、どこに行ってもあれだけ人がいたら、自然を観察するにしてもいろいろなルールやマナーを設定しなけれしなければならないに違いない。
 そう言えば、もう15年以上前のことになる。ある場所で、著名な野鳥写真家に出会い、少しだけ話を聞かせてもらったのだが、話は、野鳥撮影の際の餌付けの問題に及んだ。

「あなたも知っていると思うけど、野鳥の写真を撮る時にね、餌付けをしてはならないというマナーがあるでしょう?
 あれは、餌付けが鳥の暮らしに悪影響を与えるからマナー違反だと思い込んでいる人が結構いるんだけど、個人が小さな餌付けをしても、悪影響なんてまずないんだよ。もちろん、異常な餌の撒き方をしたり危険な餌の与え方をするのは別ね。」
 
 当時その方は、たくさんの写真を発表しておられたが、絶対に餌付けをしない人だったので、僕は実に意外に思った。

「元々ね、公園でカワセミに餌付けをして写真を撮っている人がいて、他人が来た時にその人が、近づくなと言いだしたの。だから、そんなマナーが必要になったんだよ。あれはさ、誰かが餌付けをして鳥を独占することで、そこにやってくる他の人が鳥を見たり写真を撮ったりできなくなるからマナー違反なんだよ。
 私は、餌付けをせずに写真を撮るのが好きだから、餌付けはしないと決めているけど、他人が自分だけが見つけた鳥を撮影する時に餌付けをしたって全く問題ないと思うなぁ。
 
 いつの間にかそのルールが何のために必要なのかがすり替えられてしまい、ルールだけが独り歩きし始める。そして都会の人は、そのルールを絶対化して押しつけたがるきらいがある。
「餌付けをしたら鳥の生態に悪影響がある。」
 などと言われた時に、いい人でありたい人であればあるほど、真面目な人であればあるほど、
「それはいかん。何とかせにゃあいかん。」
 となりやすい。
 がしかし、そんなのはただの思考停止状態であろう。なぜなら、その人は美しい言葉を受け売りしているだけで、自分の頭で考えたり、自分の目で見て知ろうとしたり、そもそも見ようとしていないのだから。
 そのうち、花に蜜を吸うチョウの写真を撮ろうとしたら、
「近づいたらダメ。チョウがびっくりして、生態に悪影響がある。」
 などと言い出す人が現れかねない気がすることがある。
 またはあるいは、その手のルールを押しつけたがる人の中には、自分の好みではないやり方をしている人をやめさせるために、
「生き物の生態に悪影響がある」
 という言葉を利用している方もおられるかもしれない。
 自然愛好家の中にも、縄張りのようなものを主張したがる方もおられる。自分が通い慣れた場所に見知らぬ人がいて写真を撮っていた場合に、何かケチをつけて追い出そうとする人は、結構おられるものだ。そのケチの1つとして、「生き物の生態に悪影響がある」という言葉は、大変に威力があることだろう。
 都会にルールが必要なのは仕方がないとして、僕は、地方の誰もこないような場所で、自分の足で探した場所で、その手のルールを押しつけられることなく、静かに自然を見たい。
 
 
(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。

 

2010.7.5〜6(月〜火) 仕事とは
 
 何かの番組の中で、「仕事とは何か?」について歴史に名を残した著名人が語った言葉が、次々と紹介されたことがある。
 意外だな、と思ったのは、
「日本人は働き過ぎだ。」
 などと批判されているのに、その番組の中で取り上げられた欧米の著名人はみな仕事命であり、日本にもそんなにいないような仕事人間だったことだ。
 例えば、確か昆虫で有名なファーブルだったと思うが、
「仕事が忙し過ぎてやることがたくさんある時ほど幸せな時はない。」
 、といった言葉を残しておられるとのこと。
 一方で、その番組に出演していたある日本の政治家は、
「仕事とは、人間だけが行う尊い行為だ。」
 と語られた。

 僕は、仕事とは分業であると考えている。
 人と野生の生き物とを比較すると、野生の生き物は、基本的に自分のことはすべて自分でするようになっており、自分の食べ物は自分で取ってくるし、自分の家は自分で作る。それが人間の場合は、ある人は家だけを作り、またある人は米だけを作る、さらにある人は子供の教育だけをする。
 つまり、
「俺はお前の分の魚も取ってくるから、その代りにお前は俺の分の家を建ててくれ。」
 というような関係である。
 そして、それらを交換するための引換券としてお金がある。
 したがって僕にとって、ある人が一生懸命に仕事をするのは、自分が自分の分の食べ物を採集したり、家を建てるために体を動かすことの代わりであり、仕事が特別に尊いことという思いはない。
 また、仕事か趣味かというような選択肢も僕の心の中にはほとんどないし、仕事も趣味も、すべて自分の生活の一部であり、どちらが自分にとって生甲斐であるというような概念もない。
 とにかく、野生動物が無心に自分の餌を探すように、自分も無心になって仕事をする以外には何もない。
 ただ、分業するということはみなで1つのことを成り立たせることであり、そこに何らかの責任や義務があるのは、野生の生き物との違いであろう。

 仕事と言えば、現在5冊同時進行で制作中の本は、いよいよ大詰め。明日は、日帰りで上京し、その最終的な話し合いをする。
 今回の本に対する思い入れについては、過去に何度も書いたから、今日は書かずにおこう。
 ただ、あまりの思い入れの強さに、本が出来た後で燃え尽き症候群になってしまう可能性があるから、今の段階で、さらにその次のテーマに取りかかるのが良かろうと先週の日曜日にさっそく撮影に行ってきた。今回はトンボの神様・西本晋也さんと西本さんの親友・Oさんとそのご家族に力を貸してもらった。とにかく元気なお子さんだ。
 僕の方も、いろいろな社会経験を積もうとしている知人のお子さんを連れていたので、まるで小旅行にでも出かけたかのような撮影だった。
 新しいテーマは他にもいくつか候補があり、その中の同時進行可能な複数のものを組み合わせて撮影を進めていくことになるだろう。


NikonD3X Carl Zeiss Distagon T*2.8/21ZF.2 SILKYPIX

NikonD3X AF-S VR Micro-Nikkor ED 105mm F2.8G(IF)SILKYPIX

(お知らせ)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。


 

2010.7.3〜4(土〜日) お知らせ

(お知らせ-1)
6月分の今月の水辺を更新しまいた。

(お知らせ-2)
北九州市平尾台自然観察センターにて、写真展を開催中です。是非、御覧ください。
期間  7月1日(木)〜8月30日(月)※夏休み期間中は毎日開館
内容  野村芳宏 西本晋也 武田晋一による3人展

野村さんは野鳥の行動を、西本さんはトンボの形態を、僕は生き物とその環境をテーマに、一人10点ずつ写真を選びました。


 

2010.7.2(金) Twitter


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

NikonD3X Ai AF-S Nikkor ED 300mm F4D(IF)SILKYPIX

NikonD700 AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED SILKYPIX
 
 ヘビはどこにいる?
 
 ここではヘビは完全に水辺の生き物であり、好んで水に入るし、水中に立っている木の枝の上に多い。
 昨日の画像のヘビとは別の個体で、若干色が異なる。
 昨日のものは昨日のもので、今朝も同じ場所で見られた。つまり、ほぼ24時間じっとしていたことになる。
 ヘビが水中の木の枝の上にいる理由は恐らく2つ。1つはカエルを食べるため。あとの1つは、獣に狙われにくくするためだが、本当のところは、ヘビにしか分からない。
 昨日の個体は、体の一部に大きな傷を負っていた。サシバやアカショウビンなどの鳥に襲われたのだろうか。今日もアカショウビンがよく鳴いていた。

 さてこの場所では、自然がありのままに残っている場所であり、油断と不運が重なると、重大な事故を起こしかねない。
 したがって、いつも神経を張り詰めているのだが、それ以外にも、事故に対する備えは必要であろう。
 そこで、ここに限らず危険な場所に行く前には、Twitterを利用して、その旨を明らかにすることにした。最低限、自分がそこにいることくらいは、知らせておくべきだろう。
 僕のTwitterの入口は、このホームページのトップページ。
 http://www.takeda-shinichi.com/
 にある。
 そこに、「遭難しました。」と書かれている時には、どうぞ、よろしくお願いします。

 
 

2010.7.1(木) 車での取材とバッテリー


NikonD3X AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6G(IF) SILKYPIX

 ちょっと訳あって、これまで使用していたノートパソコンを人に差し上げることになり、新しいものを買ったばかり。
 今回は東芝の製品で、バッテリーが長持ちするものを選んだ。
 以前使用していたDELLの製品はバッテリーの持ちが悪く、取材先の車の中で画像をハードディスクに保存したり、メールの返信をしたり、ホームページを更新したりする場合に、車のエンジンをかけて電源を供給しなければならなかった。
 ところがエンジンをかけると、周囲にエンジン音を撒き散らしてしまう。また、僕はあまりエコエコと主張しすぎるのは胡散臭い感じがして好きではないのだが、アイドリングなどという本当に無駄なことは省きたい気持ちが強く、いつも気にかかっていたのだ。
 その点、今回買ったものなら、少なくとも2〜3時間の作業なら何の問題もなくバッテリーが持つのでエンジンをかける必要はない。
 あとは、車での移動中に電池を充電すればいい。

 バッテリーが長持ちするといえば、パナソニックの製品が人気が高いし、僕もそれが欲しかったのだが、何といっても高い。
 そこで5万円台で買える東芝の製品となった。
 これは、価格が安い代わりにDVDドライブなどが内蔵されておらず、僕はそれを知らなかったので、ソフトをインストールする際には驚いた。
 おっ、DVDが入れられない!と。
 したがって、外付けのものを使用することになる。
 
 初めて車の中で使用してみたら、インストールしたばかりのソフトに設定をしなければならないケースが多く、これまで短時間で済んでいた作業にやたらに時間がかかる。
 例えば、フォトショップでこの日記用の画像を準備する過程などは、これまではそのすべての操作を一まとめにしてソフトに記憶させて自動化していたから1クリックするだけで良かったのだが、それらの自分なりの設定を、もう一度やり直さなければならない。
 ということで、今日は、水辺での蛇の撮影が大変に面白く、多くのことを思い巡らしたし、書きたいことがたくさんあったのだが、それらは帰宅後に、6月分の今月の水辺として表す予定だ。
 
 
   
先月の日記へ≫

自然写真家・武田晋一のHP 「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影日記 2010年7月分


このサイトに掲載されている文章・画像の無断転用を禁じます
Copyright Shinichi Takeda All rights reserved.
- since 2001/5/26 -

TopPageへ