今月の水辺 / 黒磯

NikonZ7U
NIKKOR Z 17-28mm f/2.8
(撮影機材の話)
ニコンZ7UはAFの性能があまり良くないので、カメラ任せのピント合わせには難がある。したがって、動く被写体を追いかけるような撮影には向いてない。一方で、風景の撮影など高性能なAFが必要とされないケースでは、ほどよい大きさと重さ、ファインダーの見やすさなどの点でとてもいいカメラであり、しっくりくる感じがする。ニコンZ7Uを使うたびに、最新のAFを搭載した後継機が登場しないものだろうか、と毎回思う。

撮影後記 

 僕が通った山口大学理学部生物学科の教官の中には、当時、生態学の専門家はいなかった。
 ただ、僕の指導教官だった千葉嘉彦先生は、山口大学では生理学者だったけど、有名な生態学の研究室の出身で、時々、授業中に生態学の話が出てきた。
 中でも印象に残っているのが、
「生態学では、一番最初に、この範囲を調べるといった風に場所を決めるんです。ある場所で分かったことは別の場所にも当てはまるとは限らないし、場所が変わると、また一から調べ直すんです。」
 という話だ。
 いったい何の授業だったのか、どんな脈絡だったのかの記憶はない。
 これは推測だけど、おそらく、山口大学理学部の生物学科にも「生態学」という授業自体は存在したのではなかろうか。
 そしてその授業を、生態学出身の千葉先生が担当しておられたのでは。
 数ある生物学のジャンルの中でも、当時僕が、全く興味を感じなかったのは、生化学だった。生化学は、生き物に関わる物質について調べるのだが、僕は、物には興味が持てなかった。
 生理学は、生き物の体内で起きていることについて調べる学問であり、当時、山口大学理学部生物学科の教官の多くは、生理学者だった。
 千葉先生によると、生理学は、生きている状態の生き物について調べようとするのが生化学との違いなのだそうだ。
 千葉先生の授業には、教科書的な知識以外に、科学とは、生物学とは、といった観点が含まれていて、生化学、生理学、生態学といった生物学の中の分野に関する解説もあった。
 ともあれ、
「生態学では、一番最初に、この範囲を調べるといった風に場所を決めるんです。」
 という生態学のイロハのイの話は、妙に印象に残った。
 その結果、僕はただ一匹の生き物を撮影する場合でも、先に場所を決め、その場所を最も良く伝えられる風景の写真を撮り、生き物は、その次に撮影する場合が多い。
 風景の場合、生き物と違って、現場に行けば被写体自体はいつも存在するので、ただ写真に写すのはたいして難しくはない。
 だが、一枚にその場のすべてが凝集されたような、その場を象徴する写真を撮るには、結構な時間がかかる。
 僕の場合、風景の撮影には、大抵は、気象条件をしっかり選んだ上で、丸一日を費やすことが多い。
  
 さて、福岡県糸島市にある黒磯海岸に行ってみた。
 黒磯海岸では、その名の通り石が黒くて、特に水に濡れた波打ち際では、その黒さが際立つ。
 この日僕は、料理で例えるなら最後に仕上げのトッピングをするみたいな感覚で、黒い石に加えて、打ち寄せる波の白いしぶきにこだわって撮影した。
 ところが帰宅後に撮影した写真を冷静に眺めてみると、そのこだわりの白い波しぶきが、水際で濡れてツヤツヤになった黒い石を隠してしまい、海岸の写真としてはきれいだけど、黒磯の描写が弱い。
 かと言って、飛沫が少ない写真を選ぶと、今度は海岸の臨場感が弱い。まるで、トッピングが乗っていないラーメンみたいだ。
 飛沫が少ない写真を撮るのなら、飛沫の代わりになる何かが写る撮影ポジションを選択しなければならない。
 望遠レンズで撮る写真の場合は、要素が少ないので現場でだいたい仕上がりの検討が付くのに対して、広角レンズで撮る風景写真は、カメラのモニターやファインダーでは、最後のあとちょっとのところが分からないことが多い。
 
 
 
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