今月の水辺 / 水位が高くなったダム

NikonZ7U
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
(撮影機材の話)
定点撮影でカメラを厳密に前回と同じ方向に向けたい場合、ギア雲台が絶大な威力を発揮する。一方でギア雲台は素早い操作が不得意なので、普段の撮影では、僕みたいなせっかちなタイプにはかったるい。そこで先日新たに購入したのがレオフォト社のG2と呼ばれる装置だ。G2は、マクロ撮影の際に使用する微動装置の、ティルトと水平版だと考えると分かりやすい。厳密な撮影の際にだけ、普段使用しているカメラの雲台に乗っけて使えば実に都合が良く、まだ買って間もないけど、すでにお気に入りの道具になった。

撮影後記 

 3月の『今月の水辺』で渇水の状態を紹介したダム湖の水位が高くなったので、今度は水位が高い状態を撮影することにした。
 水位が低い状態と高い状態とを同じアングルから撮って比較する、定点撮影と呼ばれる写真の撮り方だ。
 その準備として、まずは3月に撮影した渇水のダム湖の写真の中から、定点撮影に適した写真を選んだ。
 そしてその写真を資料としてプリントして、カメラバッグの中に入れた。
 あとは、現場で、プリントと同じアングルになるように水位が高くなったダムの写真を撮ればいい。
 だがそのやり方では、カメラの位置が、前回と厳密に同じにはならないので、僕はそこからひと手間かける。
 具体的には、過去に撮影した画像のデータを、今回使用するカメラの記録メディアの中にコピーしておく。
 すると、今回新たな写真を撮影すれば、記録メディアの中で、前回のデータと今回のデータが連続して並ぶことになる。それらを交互に素早く再生して重なり方を見れば、二枚の写真が同じ位置から撮影されているかどうかをより厳密に確認できる。
 ところがダム湖で新旧二枚の画像の比較を試みても、どうしても重ならない。一見同じアングルから撮影したように見えても、重ねてみると、こんなに違うか!と不思議になるくらいにずれていて気分が悪い。
 実は、これはよくあることで、定点撮影で毎回正確に同じ位置に三脚を立てるのは非常に難しくて、時間がかかる。
 センチ単位で場所を特定できる超精密なGPSがあったらなぁ・・・などと思う。
 現実には、民生用でそんなGPSはありえないので、僕は普段、目印になる何かがあって分かりやすい場所に三脚を立てる。
 がしかし、分かりやすい場所と、写真撮影に適した場所は当然一致しないので、どちらを取るかで悩むことになる。
 写真としては、この位置が一番見栄えがいいけどなぁ。でも次回この位置に三脚を立てるのは、目印がないから難しいよな、と。
 それくらいにむずかしいことなのに、今回は油断もあって、前回なんとなくの位置から撮影してしまい、さらに三脚を立てた位置をスマートフォンのカメラで記録することを怠った。
 そうなるともはや、厳密に同じ位置に三脚を立てるなどというのは、不可能になる。
 加えて普通に貯水されているダム湖の撮影は楽しいものではない上に、現場はむちゃくちゃに暑い。
 汗がドバッと噴き出してきて立ち眩みがして、もはや正確な位置合わせなど馬鹿らしくなる。
 子供の時に、無性に腹が立って面白くない時に頃によく使った
「グラグラした。」
 という方言が口から勝手に出てくる。
「あ〜グラグラした!おもしろくない!」
 と撮影を取りやめたい気分が優位になってきた。
 だがちょっと待てよ、とギリギリのところで踏みとどまった。
 プリントした紙を見て、それに近い感じになるように一応撮影しておこうか。
 ふと、過去に何度か、写真や出版の関係者が、僕が没にしようとした写真を、
「ちょっと待って!これ使えるかも・・・」
 と拾い上げたケースを思い出したのだ。
 カメラマンが考えているほど厳密な写真が求められているわけではないケースが、多々あるのもまた事実だ。
 もう少し付け加えると、プリントと現場のカメラのライブビュー画像とを一致させるのも、なかなかに難しい。
 最近のレンズは、収差と呼ばれるレンズの癖を画像処理の際に自動的に補正する前提で作られていて、その補正は画像処理ソフトによって若干異なる。
 したがってパソコンでの画像処理を経てプリントされた写真は、カメラ内の像とは一致しないことがあるから。
 そんなことを考えると、定点撮影は、適当にやっておくのが正解かな。
 そんなことを書きつつも、公共工事の時に測量に使われている望遠鏡みたいなあの道具は使えないかな、などと思い浮かんでくる。
 あの道具はいったい何ができるのだろうか?
 ともあれ、自然写真の仕事は、何でもなさそうな撮影が、実は結構難しいのだ。
 だから仕事になるのだろうけど。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺・2026年7月分


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