今月の水辺 / 古閑の滝

NikonZ7U
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
(撮影機材の話)
ニコンの機材を野外で使用する取材では、カメラを2台準備する。一台は100-400mmの望遠レンズを取り付けたZ8で、主に野生生物の撮影に使う。あとの一台は、ワイドズームまたは標準ズームを取り付けたZ7U。こちらは、主に風景を撮影するカメラだ。Z8の欠点は大きく重たいこと。それから、動体の撮影を得意とする高速で読み出しができるカメラに共通することだが、やや画質は劣るように感じる。Z7Uの欠点はAFが弱いこと。したがって、荷物を減らしたい時に写すことを優先してどちらか一台を選ぶなら、AFの性能が優れたZ8になるが、Z7UのAFを強化したカメラが登場すれば、僕はそちらを選びたい。

撮影後記 

 熊本県阿蘇市の 『古閑の滝』 を撮影するのは、カメラがまだフィルムを使用していた時代以来のことだ。
 当時、凍り付いた巨大な滝に驚きはしたものの、この場所はあまり好きになれず、以降、気になる場所のリストからは外れていた。
 なぜ好きになれなかったのか改めて考えると、単なる岩場の印象が強く、撮影した写真から生き物の気配が漂ってこないから。
 当時の僕は、命の気配が強く感じられる写真を撮りたい気持ちが強かった。また、そこにあるものを写すというよりは、自分のイメージに合う被写体を選んで写すことが多かった。
 それから時が流れ、最近は、イメージの追求よりも、そこにあるものを写したい気持ちが強くなった。
 さらに、日本の地質に興味が湧き、もう一度、古閑の滝を見たくなった。
 果たして、久しぶりに行ってみたら、遠目に滝が見える段階で、早くも大感激がこみ上げてきて、まずは遠くから望遠レンズで撮影してみる。
 撮影した画像をカメラのモニターで見ると、凍り付いた滝というよりは、ナメクジが這った後にできるキラキラした痕跡のように見えた。
 つまり、何が写っているのかが、明確には伝わらない写真だった。
 また、ナメクジが這ったように見えるということは、被写体の大きさも表現できていないことになる。
 なるほどなぁ。フィルムの時代に撮影した際にも、きっと同じような感じだったのだろう。
 フィルムの場合は、その場で撮影結果を見ることができないのだから、同じような写真を量産したあげく、数日後に現像所で結果を見て、ナニコレ・・・とガッカリすることになる。
 古閑の滝は、現場での感激を表現しようとすると、どうも撮影の難易度が高い被写体のようだ。
 さて、今回は、どう撮影しようか。
 まずは、滝の大きさを表すために、何か指標になるものを画面に写し込むことにした。
 凍り付いた滝のかっこいいところだけを切り取るのではなく、広く撮影して大きな木を画面に入れてみたら、滝の大きさが感じられるようになった。
 次に、空を入れた写真の撮影も試みた。空が入れば、状況はさらに伝わりやすくなるのではなかろうか。
 問題は、今の時期、古閑の滝は一日を通して日陰になることだ。
 それゆえに氷が解けにくく滝全体が凍り付くのだが、写真は、陰になった暗い滝と明るい青空のような大きすぎる明暗を同時に写すことができないので困る。
 日陰の滝が暗くつぶれてしまうか、明るい青空が白く飛んでしまうか、どちらか一方が犠牲になる。
 そこで、画像処理でその明暗差を補正する前提で写真を撮るのだが、それにも限度がある。
 古閑の滝の場合、画像処理を駆使しても、よほどにいい条件が整わない限り、対処できない。
 今回は、そのいい条件を待ち2時間ほど撮影したあげく、一枚だけ、何とか、滝と空とを両立できた写真が撮れた。
 ただ、空が入ることで要素が多くなり、滝の印象がやや弱くなる感じがして、今月の水辺は、空を入れない写真の方を選んだ。
 
 さて、僕が三脚を立てば場所は、大昔には地中だったらしい。そしてそこには、マグマが溜まっていたのだという。
 その後、火山の噴火でマグマが噴出してなくなり、あとに空間が残った。
 そして時が流れ、地中の空間が地表に現れてできたのが、古閑の滝の周辺の断崖なのだという。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2026年1月分


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