今月の水辺 / 海辺の柱状節理

NikonZ8
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
ND
(撮影機材の話)
望遠レンズは大きいので、何本も持ち歩くことはできない。したがってどれを買うか迷うし、過去に色々なレンズを試したものの、長い間、どれにも納得できる感じはなかった。だが近年は、望遠側がより長いズームレンズを選ぶようになった。レンズの重量が同程度なら、望遠側の焦点距離が長いレンズは暗くなるのだが、今はカメラの高感度の性能が大変に良くなり、暗いレンズでも不満はなくなった。ニコンのZ 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、テレコンバーターとの組み合わせで、非常に守備範囲が広い、お気に入りのレンズだ。

撮影後記 

 インターネットでの発信はお金になるわけではないし、一部を止めてしまおうかと思うこともある。例えばこの「今月の水辺」なら、「撮影日記」にまとめることを検討したことがある。
 でも、何となく残しておいた方がいいような気がして、そのたびに思いとどまってきた。
 そもそも、なぜこうして書いているのか、自分でもよく分からないところがある。僕は、誰かに話を聞いてもらいたいタイプではない。
 無理やりに理由を探すなら、本を作る際の、物書きの練習だろうか。
 写真には、文字がつく写真と文字が付かない写真の2種類があり、そのいずれかで、撮り方や考え方が違ってくる。
 額に入れて飾る写真なら文字がないこともあるし、仮に文字がついたとしても、その文字は、必須や必然ではない。
 一方で、本の中で使用される生き物の写真に、文字が付かないケースはほぼない。
 では仕事の写真はどうか?と言えば、自然写真の仕事の多くは書籍だ。したがって、仕事の写真に文字が不随しないケースは滅多になく、文字を書くことはカメラマンの仕事の一部だと言える。
 その場合、日頃使っている日本語で書くのだから、練習なしでもやっていけるとは思う。でも逆に、みんなができることなので、それとは一線を画したレベルを目指すのなら、練習が必要とも言える。
 すでに仕事をしている人なら、あえて練習の時間を設けなくても仕事で書く機会があり、仕事で文字を書けば、編集者のチェックを受けるので勉強になる。
 だが、仕事で文字を書くのは同業の人はみな同じなので、それ以上を目指すとなるとやはり練習が必要になる。
 僕の場合、撮影日記は、会話に近い感覚で書く。
 ちゃんとした文章を書こうとし過ぎると、その代償として言葉が出てこなくなるので、言葉を出すことを優先し、話題を切り出す練習の意味合いが大きい。
 それに対してこの今月の水辺は、撮影日記よりも力んだ状態で書く練習という位置づけだ。
 練習をしても劇的にうまくなるわけではないが、長い目で見ると練習は有効だし、少しずつしか上達しない時間がかかることだからこそ、日頃から取り組む意味がある。
 ただ、惰性で続けると、惰性で書く癖がつく嫌いもある。
 
 さて、今月は、長崎県の海辺で、水辺の地形を撮影してみた。
 撮影の際に気を配ったのは、第一に、科学写真としてきちんと成立させることだった。
 具体的には、柱状節理を的確に描写すること。柱状節理とは、マグマや溶岩が冷えて固まる際に出来た岩のひびが、多角形の柱状の構造になったもののこと。
 この場所の柱状節理の形は、もう少し太陽が逆光に近い位置にあればより分かりやすくなるのだが、今の時期はそうならないので、別の季節にまたトライしてみたい。
 一方で、ただ形を描写するだけでは面白くないので、科学性を損ねない範囲で、写真にムードを加えることを試みた。
 具体的には波の描写と夕刻の独特の光を使ってみた。
 ムードを加えすぎると、その写真は科学写真=客観というよりは、撮影者の心を現した写真=主観になってしまう。
 したがって、そうならないギリギリのところを探った。料理で言うなら、食べた人がギリギリ感じられるかどうかのだしの味みたいなものだ。
 科学写真という観点を捨てて、絵画に徹する選択肢もないわけではない。
 だが、長年業界で仕事をするうちに、「科学性」をきちんと担保できる人は意外に少ないことがわかってきた。
 今、不意に思い出したのは、若いころの話。
「なぜ武田さんの写真を使うかわかりますか?武田さんは経歴を見ると、科学をちゃんと勉強しておられる。」
 と昔業界のある方から言われたことがあった。
 出版業界には圧倒的に文科系出身の人が多いし、理科系出身の人でも、科学の考え方が馴染まなかった人が多い。
 それを思うと、僕の場合、「科学性」は捨てない方がいいのだろうと思い直すことになる。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2025年12月分


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