今月の水辺 / ホルンフェルス

NikonZ7U
NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
ND
(撮影機材の話)
この日、ワイドレンズを使った後で望連レンズに取り替えてみたら、割としっかりした三脚を使用しているにもかかわらず、強風で画面が少し揺れていることに気付いた。望遠レンズは図体がでかいので風を受けやすい可能性もあるけど、レンズに関係なく三脚自体がごくわずかながら揺れていて、それが望遠レンズによって拡大されることで表に出てきた可能性もある。そのどちらが揺れの原因なのかによって対策が違ってくるので、今にして思うと、撮影終了後に現場でよく確認するべきだった。ワイドレンズを取り付けたカメラのライブビュー画像を拡大してみれば、確かめることができたはずだ。風対策は意外に難しくて、これといった決定的な解決方法をまだ見いだせていない。

撮影後記 

 秋のトンボの撮影に出かけたら、思いがけず風が強くて、トンボの撮影を諦めた。
 今はインターネットに接続できれば、どこにいても気象の予測を細かく調べることができるけど、意外に難しいのが風だ。風はその日になり、自分で感じてみなければわからない面があり、この日は、トンボを撮影するのは難しいと判断した。
 気象関係の方から怒られるかもしれないが、風の予測や発表は、災害級のものをのぞいて、天気ほどは力が入っていない印象を受ける。あまり需要がないのかなぁと。
 さて、トンボがだめなら、何をして過ごそうかと考えてみた。
 すると、ちょうど近くにいたこともあり、山口県は須佐のホルンフェルスの景色が思い浮かんだ。
 須佐のホルンフェルスは何度も撮影したことがあるが、風景の撮影は見識が求められる分野であり、仕事の場数を踏めば踏むほど確実に上達するものなので、同じ場所でも何度も撮影してみる価値がある。
 また海辺の景色なら、むしろ風がある方が、波に表情が生まれて面白い。
 果たして、行ってみたら、予想以上に風が強かった。
 短時間で撮影して切り上げるのならいいけど、じっくり取り組むとなると、厳しいレベルだった。
 まず、まつ毛が強風に細かくあおられて、目がくすぐったい。
 それから、突風が吹くと、カメラが三脚ごと倒れてしまう可能性もあるので、とにかく気を抜けない。
 また、水しぶきが飛んできて、機材がすぐに濡れてしまう。
 雨具をかぶせようかと思ったけど、風の抵抗が増して、カメラが揺れて写真がぶれるリスクが高まるので使用できなかった。
 あたりでは最近クマが目撃されているという張り紙があったので、藪をかき分ける音など耳を澄ませたいのに、風でほとんど何も聞こえない。
 しかたがないので、頻繁にキョロキョロして周囲を見渡す必要があり、機材以外にも気を配らなければならなかった。
 レンズに取り付けたフィルターを取り外そうとしたら、フィルターが風にあおられて、落としてしまった。
 身を低くしていたので落としたのは大した距離ではなかったけど、円形のフィルターはまるでタイヤのようにコロコロと転がって岩の隙間に落ち、ほんのちょっとだけどガラスに傷がついた。
 多分画質には影響はないけど、広角レンズの場合、たまにレンズに付着した大きめのゴミが写ることがあるので絶対ではないし、安心を求めるのなら買い替えた方がいいだろう。
 しまったなぁ。もっと丁寧に扱えばよかった・・・。
 フィルターは幾らやろうか?
 より高価な偏光フィルターではなくNDフィルターだったのは、せめてもの救いであり、まだ運が良かったと思いたい。
 一層のこと、ねじ込み式のフィルターよりも、取り外しが簡単な今流行りのマグネット式にしておけば、落とさずに済み、余計な出費が防げたのではないか?
 ねじ込み式のフィルターを緩める時は、どうしても手元が怪しくなってしまう傾向がある。
 今月は、そんな写真には写らない、現場での話を書いてみた。

 僕はもともと、写真に添えるテキストは、写真には写っていないことを書きたい気持ちが強かった。
 だが出版の場合、写真に写っていることを書いてくれと求められることが多く、いつの間にか、写真の解説を書くようになった。
 ところがちょうど今製作中の本で、ある編集者が、
「写真からは読み取れないことが書いてあり、そこがとても良かった」
 と話してくださり、それをきっかけに、写真に写らなかった何かを文章で書き加えることを、また考えるようになった。
 そもそも、今は、調べごとが簡単な時代。
 例えば、ホルンフェルスってなに?と疑問を持ったなら、インターネットを検索してみればいい。
 その分、自分しか経験していないことの値打ちが、相対的に高くなっているのではなかろうか。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2025年10月分


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