今月の水辺 / くぐり岩

NikonZ7U
NIKKOR Z 17-28mm f/2.8
(撮影機材の話)
数年前にこの場所で撮影した画像をチェックしてみたら、当時使用していたカメラはニコンのD3Xだった。D3Xは、描写に癖があり扱いにくいカメラだった。その点、ミラーレスのZ7やZ7Uは素直に写ってくれる。その結果、撮影後の画像処理が楽になる。大きさもほどほどで、風景を撮影するには適したカメラだと思う。欠点はAFが弱いこととレスポンスが速くはないこと。それらの弱点は、Z7Vが発売される際には確実に改善されているだろうから、楽しみだ。

撮影後記 

 この日くぐり岩に到着したのは、最干潮のタイミングだった。
 加えて大潮だったので波打ち際は遠く離れ、ここが海辺であることが誰にでもわかるように撮影するのは不可能な状況だった。
 ああ、そうか。波による崖の浸食を現すには、崖だけでなく波も写った方がいいし、波が画面に写りこむには、ある程度潮位が高い方がいいのか・・・
 潮位が高すぎると、今度は自分の足場がなくなってしまうので、満潮よりもやや前の時間帯を狙うべきだったか。
 いや満潮よりも前の時間帯だと、撮影中にどんどん潮が満ちてきて急かされるし場合によっては危ない。
 ということは、満潮後、干潮になり潮が適度に引いたタイミングがベストかな?
 同じ潮位でも満ちてくる時がいいのか、引いていく時がいいのかは、太陽の位置で決まることが多いので、潮時表を見て、どちらの太陽の位置がより撮影に適するかを考えることになるだろう。
 海の場合、潮位を考えなければならないので撮影は難しくなるとも言えるし、逆に撮れる写真が限られるので迷わなくていいという側面もある。
 ただ今回の条件は、これはこれで面白いし、潮位が高い時には見ることができない海の底を写してみようか!とカメラを向けた。
 いざ撮影に取り掛かると、三脚を立てる位置の決定が非常に難しかった。
 満潮の時と違って歩き回れる陸地が広いので、三脚を立てることができる場所が無限にあって迷ってしまう。
 ああでもない、こうでもないと散々試した結果、まずは「くぐり岩」というこの場所の名前から入っていくことにした。
 まず最初に、岩に空いた穴がすべて見るポジションを選ぶと、立ち位置がかなり絞られた。
 中でも穴がよりきれいに見える位置を探して、三脚の位置を微調整する。
 この過程は、主に左右の位置の調整になる。
 それからホームページの画像では小さくて見えないのだけど、右下の岩の上部には少しだけ海が見えるような立ち位置を選んだ。
 具体的には、くぐり岩に近づいていくと遠くの海が見えるようになり、離れると海は岩のかげに隠れる。
 また僕は生き物が好きなので、岩の上に生えた松ははずしたくないし、できれば、何となく植物が生えていることが分かる程度ではなく、松の幹の付け根は画面の中に入れたい。
 そうして画面の中に何を入れ何を排除するのかを決めるのは、画面構成と呼ばれる作業であり、僕が風景を撮影する際に最も重視する過程だ。
 画面構成が決めったら、次は構図を整える。
 今回は、画面左から右に向かって、下っていくような構図を選んだ。
 僕は写真機を使って絵画を楽しみたいわけではないし、自然を記録するのが第一だ。
 だけど写真撮影の際には、最後の仕上げの時に、本来伝えたいことを妨げない範囲で絵画性を考えることが多い。
  
  
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2024年9月分


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