今月の水辺 / 里山ビオトープ

NikonZ7U
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
(撮影機材の話)
ワイドレンズで撮影すると、電柱のようなまっすぐ立っているものが顕著に斜めになってしまい、状況によっては気持ちが悪い写真になる。それを画像処理ソフトで補正すると、今度は画角が狭くなる。画角が狭くなる分をあらかじめ広く撮影しようとすると、どうしても写真が大雑把になる。OMのカメラに関しては、その補正をカメラの中で可能なのできっちりした構図に仕上げることができる。が、ニコンのカメラにその機能はなく、是非とも採用して欲しい機能だ。今月の写真の場合は、近くに灯台があり、灯台が画面に入る写真では灯台が傾いているかのように写ってしまうことやそれを後処理で補正することに気を使った。

撮影後記 

 宮崎市の鬼の洗濯板は、過去に何度か遠目に眺めたことがあったが、事前に天気予報を調べ写真を撮る前提で訪れたのは、今回が初めてのこと。
 まるで洗濯板のような形状の岩場は、青島と呼ばれる島の周りにぐるりと見られる。
 島へは橋を歩いて渡る。
 橋にさしかかると、まるで人工物のような不思議な景観に青空の力が加わり、冷静に冷静にと自分に言い聞かせようとしても胸が高まりどんどん早足になった。
 橋を渡り切ったところで抑えきれなくなり、三脚を立て、カメラを構える。
 安定した晴れの日なのに、急いで写真を撮らなければ一瞬にして雲が広がりシャッターチャンスを逃すのではないか、という妄想がこみ上げてくる。
 カメラを構えると、大慌てでしばし写真を撮る。
 多少興奮が収まったところで、さてどう撮ったものかと思いを巡らせ、本番の撮影が始まる。
 真っ先に思いつくのは造形の面白さに着目する撮り方だが、これは言うならば美術に近い発想であり、僕の好みではない。
 僕は写真がもつ美術性を大切にしてはいるけど、それはあくまでも自然を現す手段としてであり、写真機を使った絵画を志しているわけではない。
 そこで今回は、そこにある要素を1枚の画面の中に可能な限りたくさん盛り込んでみることにした。
 第一は言うまでもなく鬼の洗濯板だ。
 第二は海が干潮になり洗濯板に残った潮だまり。
 第三は洗濯板から連続した砂浜
 第四は砂浜の先にある島。
 第五は海
 第六は青い空。
 同じ九州と言えども福岡からだとそれなりに遠いが、文句なしにまた来たいと思った。
 ここに来れば、青空の日には、風景の写真が撮れる。
 雲が広がったら、潮だまりの生き物たちの撮影がいい。
 ちょうど水中用の撮影機材をミラーレスのシステムで新調しようとしているところだが、この場所で磯の生き物たちを撮影するのに適した道具にしたい。
 ここで磯の生き物たちを撮影したら、福岡県では見たことがない生き物を持ち帰ることになるだろうから、翌日はスタジオ撮影が忙しいだろう。
 持ち帰った生き物たちは、撮影の順番がまわってくるまで水槽で飼育して維持することになるから、事前に海水水槽をいい状態に整えておきたい。
 まさかとは思うけど、宮崎市の沿岸の場合、南海地震に伴う津波対策を考えておく必要がある。
 青島には10Mクラスの津波が来ることが予想されているので、すべてを捨てて走って逃げる必要がある。走れるように、足回りはちゃんと考えておいた方がいい。
 大津波が5分、10分で押し寄せてきたら、逃げきれない可能性が高いので、覚悟も必要。
 だが30分あれば、ハザードマップが頭に入っていて間違えなければ、何となる可能性は十分にある。改めて逃げ道を確認しておいた方がいい。
 とにかく考えることがたくさんあり、ネタには一切困らない場所だと言える。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2024年6月分


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