今月の水辺 / 湧水池

NikonZ7U
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
(撮影機材の話)
写真は、見せるサイズによって撮り方が違ってくる。もしも小さなサイズで写真を見せるのなら、被写体を大きくアップ気味に撮影しておかなければ何が写っているかがわかりにくくなる。逆に大きなサイズで見せるなら、被写体が画面の中に小さく写った写真もありうる。今月の画像の場合は、そう大きくないサイズに見せるケースなので、もうちょっと部分に的を絞ってアップで撮るべきだったかと更新をしながら感じた。よりアップで撮るためにはより望遠のレンズが欲しい。今標準ズームとして使用しているのは24-70ミリのレンズだが、24-120ミリのレンズが欲しいななどと思ってしまう。


撮影後記 

 山口県の美祢市にある別府弁天池に、ぶらりと寄ってみた。
 行列ができるような場所ではないけど、ここで人に会わないことは滅多にないと言ってもいいくらい、この湧水池にはポツリポツリと人がやってくる。
 一番多いのは、駐車場に設けられた水汲み場で水を汲む人だろう。
 僕は自分が飲む水に関しては特にこだわりがないので、なんでわざわざ水なんて汲みにくるのだろう?と思う。
 多くの人がポリタンクで水を持ち帰るが、ポリタンクのにおいは移らないのだろうか?どうせならガラスの容器で持ち帰るべきじゃないか、などと思ったりもする。
 意地悪くブラインドテストをやってみたくなる。2つのコップを用意してどちらが湧き水でどちらが水道水か分からないようにしておいて、本当に水の味がわかっているのか当ててもらうのだ。
 水汲みの他には、観光バスでやってくる観光客の方が多い。
 だが観光客の皆さんは湧水池に対してそんなに熱心というわけではなく、何となく見るだけで、散歩に近い印象を受ける。
 この日は、一組だけ、年配の女性が割と長く滞在しておられたけど、
「まあ、たいしたことないね。」
 と評価を下しておられた。
 厳しいおばちゃんやなぁと思ったけど、池の周りはぐるりと石垣で囲まれていて、石垣の外は舗装された道になっている。確かに、景観としては大したことがないと言える。
 僕も、どう撮影するか迷った末に、周囲の人工物は画面に入れないようにして、水の色と木の影と魚(タカハヤ)の姿で画面を構成することにした。
 別府弁天池に限った話ではなく、この手の場所にやってくるのは、圧倒的に年配の人が多い。
 あと10年くらい経って世代交代が起きたときに、このままの弁天池に、どれくらいの人がやってくるのだろうか?

 僕は、自然物を見世物にする日本の観光地は、周囲の環境も含めて、もっと自然環境を意識した整備をしてはどうかといつも思う。
 別府弁天池なら周囲を林で囲んで、林の中の土の道を歩いて見に行くような場所にしてはどうかと思う。
 池をただ見るだけじゃなく、野鳥の声を楽しむことができたり、昆虫採集が楽しいような場所にしてはどうかと思う。
 規模は違っても、明治神宮の森のような場所を、つい思い浮かべる。
 えらそうに!と怒られるかもしれないけど、自然を見世物にしたいろいろな観光地に行ってみてほとんど例外なく感じるのは、あまりにもセンスが悪いということ。
 大して興味があるわけではない観光客を観光バスで何となく一過的に運んでくるのではなく、そこの景色で心落ち着くから好き、と感じる人を増やす努力をしてもらいたいと思う。
 ジブリのアニメの中に出てくる田舎の素朴な景色があれだけ人の心を引き付けるのだから、素朴な自然の風景にも十分なニーズがあるのではないかと思えてならない。
 
 
 
戻る≫
 

自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2023年11月分


のサイトに掲載されている文章・画像の無断転用を禁じます
Copyright Shinichi Takeda All rights reserved.
- since 2001/5/26 -

Top Page