今月の水辺 / ビオトープ

NikonZ7U
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
(撮影機材の話)
この日は小さな生き物をワイドレンズで撮影する予定だったので、広角ズーム付きのキヤノンEOSM6を主に使用した。だが、風景に関してはM6で風景を撮影する気にはなれず、ニコンのZ7を使った。違いは、センサーのサイズもあるけど、それ以上にファインダーの見え方。ニコンZ7のファインダーは大変に質が良くて、風景の撮影のように画面の隅から隅までよく見る必要がある撮影で威力を発揮する。荷物の量の関係でEOSM6で風景を撮影することもあるけど、その場合は、かなり、ファインダーで見えてない部分を感に頼る感じになる。


撮影後記 

 もうずいぶん前の話。
 この小池の風景が、ちょうど自分が求めていた写真のイメージにピッタリ合うに違いない、と期待をしてこの場所に出かけたことがあった。ここが順光になり、同時に、ものが一番きれいにに写るとされる午前10時頃に現場に着いた。
 ところがカメラを構えてみると、思いがけず肝心な箇所に木の大きな影が落ち、思ったような写真が撮れない。池のほとりに木が生えていることが、頭に入ってなかった。
 そこでしばらくの間、水辺の生き物たちを撮影しながら暇つぶしをして、太陽が位置を変えるのを待ってみた。
 が、結局、この場所では僕のイメージ通りの写真は撮れないことがわかった。
 被写体は目の前にあり決して逃げることはないし、気象条件もいいのに、どうしても撮影することができない。風景の撮影には、時に、そんな難しさが付きまとう。
 ああ、この影がなければな・・・

 ところがこの影の存在に気付いて以降、影を気にかけていると、影は影で、自然現象として面白いと感じるようになってきた。
 例えば、冬の寒い日に池に張った氷が一番最後までとけずに残るのはこの木陰であり、ひと続きになった小さな池と言えども位置によって大きく条件がことなることを、目で見ることができた。
 おそらくその条件の違いは、この池の中での生き物の分布などにもなんらかの影響を与えているに違いない。
 そう思うと、写真撮影の際には邪魔になることのほうが多い影だが、なんだか愛おしくなってくる。
 水辺の生き物の撮影が目的だった今月も、どう撮っても影を避けられないことは分かった上で、それでも一度三脚を立ててみたくなる。
 
 さて、写真には、ある程度の原則がある。
 中でもとても重要なのが、パっとその写真を見たときに瞬間的に人の目が行く箇所に、一番見せたい被写体がちゃんとあることだろう。
 では、パっとその写真を見たときに人の目が行く箇所とはどこなのか?といえば、それは写真の絵柄によって異なる。
 が、基本的には、画面の中心付近〜やや手前にかけてであることが多い。
 他には、画面の中の明るい箇所には、人の目が行きやすい。さらには、強い色が存在する箇所なども、目を取られやすい。
 それはともあれ、その原則が守られていない写真が一流の出版物に掲載されているのを、僕は見たことがない。つまり、ほぼほぼ絶対と言ってもいいほどの原則だと言える。
 とても興味深いのは、出版の際に写真を選ぶ編集者のみなさんは、そんな構図の原則を口に出して言えるわけではない。にもかかわらず、写真を選ぶ際には、パっとその写真を見たときに人の目が行く箇所に一番見せたい被写体がある写真を、ちゃんと選ぶことだ。

 今月の写真は、そういう意味では、とても分かりにくい写真だと言える。
 まずは、画面中心付近の、場所的に言えば一番いい場所には影がある。また、僕はその影を見せようと、カメラを向けている。
 ところが、明るさで言えば、最も人目を引くのは、影の奥になる日向の景色になっていて、人の目はそちらに取られやすい。
 いった撮影者がどちらを見せたいのかを、見る人が判断することは難しい。
「さて、撮影者は何を見せたいのでしょう?」とアンケートを取ったら、結構割れるのではなかろうか。
 この手の写真の場合、写真に添える文章が重要になり、こうして自分が自由にできるホームページなどで見せるのが適する。
  
  
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2023年10月分


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