今月の水辺 / 田んぼ

NikonZ7U
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
(撮影機材の話)
最近のレンズは逆光に強くなった。逆光で画面全体が白っぽくなりどうにもならない状態には、ならなくなった。とは言え、レンズに直接太陽光がさし込むケースでは、小さなゴーストが発生することなら割とある。その程度のゴーストは、画像処理で消してしまえばいいと思う。でも僕は、黒い板を使って有害な光をカットする。その代わりにレンズフードは使用しない。ある程度以上の望遠レンズは別にして、一般的なレンズの場合、逆光の有害な光をカットするのに、レンズフードはほとんど役に立たない。自分で黒い板で有害な光をカットしてみると、本当に有効なレンズフード作ったら、とてもなく大きなものになることが分かる。市販のフードは、レンズのガラス面の保護の意味合いが大きい。


撮影後記 

 以前、田んぼで植物の写真を撮らせてもらおうと農作業中の方にお願いしたら、
「入っていいよ。ああ、でも恥ずかしいな。ちゃんと草刈りができてない。」
 と言われたことがあった。
 僕が撮影しようとしたものは本来草刈りの対象であり、農家の方にとっては恥ずかしい存在だった。
 でも、何で草刈りをしていないのかな?とその時漠然と感じた。
 それから10年くらいたった先日、同じ田んぼで、
「この前、ここでベニイトトンボを見たよ。」
 と声をかけてもらった。
 そこで10年前のことを話してみたら、草がぼうぼうなのは、ちゃんと草刈りをしたところでどうせイノシシが侵入して無茶苦茶になるし手入れをするのが馬鹿らしいから、とのこと。
 でも、ベニイトトンボなどという言葉が出てくるということは、きっと生き物が好きなんだろうな。
 実は、農作物を作っておられる方には、作物以外の生き物にはほとんど興味を示さない人も少なくない。時には、耕作地に住みついた生き物たちを連日見ているはずなのに、何でここまで無関心でいられるのか?と不思議に感じることさえある。
 それゆえに、ベニイトトンボを見たという話には大変に驚かされたし、その田んぼが生き物たちの楽園であることが、納得できた。

 恥ずかしいから言わんで、と怒られそうだけど、今年も相変わらず草は伸び放題。
 田植えの直前に一度だけ草が刈られたあとは、そのまんま。
 田植えの直後にカエルを撮影した時には通路だった場所が、8月には草むらになりかかっていて、もはや田んぼとの区別がつきにくくなっている。
 この翌週には稲は刈り取られ田んぼはまっさらになった。
 一方で通路の方は相変わらずで、耕作地には植物がなく、道には草が生えているという逆転した景色になった。
 でも通路が草むらになっていることで、刈り取り前の田んぼに隠れていた生き物たちは行き場を失わずに済む。
 草が伸びすぎて見えなくなっているけど、田んぼの周りは石垣に囲まれている。
 6月にカエルを撮影した際には、その石垣のすき間にたくさんナメクジが住んでいるのを見つけた。
 今僕らがよく目にするナメクジは、チャコウラナメクジという外来の種類であり、日本在来のナメクジは数が少なくなっているので、僕はここに何度も通ってナメクジを撮影することにした。
 ナメクジと言えば雨の日。
 だが、その雨の日を描くには、比較の対象として晴れた日のことも語りたい。
 そこで、好天の日を選んで出かけてみたら、件の田んぼの上空をウスバキトンボが群飛していたので、しばらく撮影してみた。
  
  
 
戻る≫
 

自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2023年8月


のサイトに掲載されている文章・画像の無断転用を禁じます
Copyright Shinichi Takeda All rights reserved.
- since 2001/5/26 -

Top Page