今月の水辺 / 滝

NikonZ7
Z 14-30mm f/4 S
PL
(撮影機材の話)
水滴がかかるような場所で写真を撮る際に気になるのが、カメラやレンズが壊れないかどうか。防塵防滴をうたっている製品でも、実際どの程度まで耐えられるのかは、商品の説明を見ても正直よく分からない。唯一、旧オリンパスは、自社のカメラにシャワーで水をかけ、そのレベルなら耐えられることを見せてくれた。オリンパス以外の会社も、防塵防滴の程度をもうちょっと具体的に示して欲しい。


撮影後記 

 雨上がりを狙って、滝の撮影に出かけた。
 すると予想以上に水量が多く、撮影中は、ほとんどシャワーを浴びているのに近い状況だった。
 いや、雨よりもずっと厄介だった。
 雨は上から降ってくるので対処しやすいけど、滝つぼで巻き上げられる水滴は前から押し寄せてくるので、あっという間にレンズが水滴だらけになる。
 真下に一直線に落ちる大きな滝では、風の影響を受けて水流が傾いたりするので、まっすぐに落ちてくれるまで待たなければならず、いわゆる「シャッターチャンス」が存在する。
 布でレンズの水滴を拭いた後はそのままレンズを覆っておいてシャッターチャンスが訪れるのを待ち、今!と思った瞬間にぱっと布を外して写真を撮った。

 それでもレンズはあっという間に水浸しになった。
 水辺でよく駆使される撮影テクニックの長時間露光などは、その間にレンズが水滴だらけになり画像が曇ってしまうので論外だった。
 実は、そこまでの状況を予測できておらず、刻々と位置が変わる虹をずっと追いかけていたら、途中でレンズを拭く布が足りなくなった。
 この日ばかりは、どんなゴージャスな機材よりも、ポケットの中に大量の乾いたいい布が欲しくてもどかしかった。
 カメラバッグの中にはまだ布があったけど、バッグを滝に近づけるとバッグがずぶ濡れになるのでちょっと離れた場所に置いてあり、そのわずかな距離を取りに行くことができなかった。
 7月の猛烈に暑い日だというのに、滝からの水滴を含んだ猛烈な爆風で体が寒くて、落ち着いて振舞うことができなかった。
 ちょっとカメラのポジションを変えるだけでも、何だか心が慌てていて、自分が冷静ではないことがよく分かった。注意しなければ、足を滑らせカメラごと水の中にズッコケてしまうぞと思っていても、これといって修正することができなかった。
 そんな中、バッグに乾いた布を取りに行くことが、一大事に思えた。
 時々、山で天候が急変して防寒具を身に着ける間もなく凍死してしまった事故を耳にするが、なるほどなと思った。

 カメラを構えても、状況判断をして構図を検討するゆとりがなかった。
 だがこうしてその日のことを書いてみたら、もう一度、同じようなコンディションの日に行ってみたいなと込み上げてきた。
 滝からの猛烈な爆風が写真に写らないかなぁ。
 今度は、レンズを拭くための布を大量に調達して行こう。
  
  
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2023年7月


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