今月の水辺 /砂浜

NikonZ7
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
NDフィルター
(撮影機材の話)
撮影用のアクセサリーで僕がよく使うのが、NDフィルター。僕の場合、ブレを駆使した独特の表現よりも、画面の中にあるものをなるべく1つ1つきんと分離して描写するために使う事が多い。今月の画像の場合なら、波の動きが止まると、波とその他の部分とが似た質感になり、お互いの分離が悪くなる。そこで波をぶらして波だけ異なる質感に描写することで、その他の部分からよく分離し、画面の中に、空、海、波、砂浜が存在することが、よりわかりやすく描き出される。


撮影後記 

 今制作中の貝の本に関して、画像を一枚差し替えて欲しいと編集部からリクエストがあった。
 元々僕が選んでいた画像は夜の砂浜の景色だったが、そのページは本の冒頭なので、明るい写真にして欲しいという注文だった。
 そこで、手持ちの写真を探してみた。
 が、昼間の砂浜の写真には、あんまりいいものがなかった。そう言えば、砂浜はあんまり撮影したことがない。
 だいたい砂浜にはゴミが多いし、よく人がくる場所なので足跡だらけで、写真を撮る気になれないことが多い。たまに写真を撮っても、夕刻のドラマチックな極端なシーンだったして、砂浜という感じではない。
 そこで、新たに写真を撮り下ろすことした。
 風景のような逃げない被写体は、ただ写真を撮って本のページにはめればいいのなら、撮影は実に容易い。
 だが、人の求めに応じて写真を差し変える場合は、
「言われた通りにしたら、もっと良くなった。ああ、やっぱり人の言うことは聞くものだな。」
 と自分自身が思わなければならず、そこまで満たそうとすると、逆に撮影は非常に難しい。
 ともあれ僕は、、ベストの天気、ベストの潮の日を選んで、満を持して近所の浜にでかけた。

 まずは、人の足跡をどうしようか?
 人の足跡がない状態の砂浜を撮影するためには、満潮でいったん浜がリセットされた後に潮が引きはじめた直後のタイミングを狙えばいいだろう。
 では、浜に打ち上げられた大量のゴミはどうしたものか?
 ゴミに関して言うと、海が満潮の時の方がやっかいだ。
 なぜなら、ゴミは満潮時にちょうど波打ち際になるような位置や、それよりも高い位置に多いから。
 だが現場で浜の様子をよく観察してみると、一見一直線で起伏に乏しくあまり変化がないように見える浜でも、よく見ると微妙な起伏やカーブがあり、そのどこを使うかでゴミがたまった箇所を避けられることがわかった。
 あとは、波の表情をいかにして出すか。
 写真に写る波の表情はシャッター速度に大きく左右されるので、最初に何通りかのシャッター速度を試し、その結果を見て、最終的なシャッター速度を決める。
 フィルムの時代なら、それに伴い自動的に絞りの値が決まるところだが、デジタルの場合は、自分が求める描写にふさわしい絞り値を選び、そのシャッター速度および絞り値で適正露出になるようにカメラの感度を操作する。
 因みに、シャッター速度、絞り値、ISO感度の順にカメラの設定が決まるのは、ビデオカメラと同じであり、シャッター速度に気を使わなければならない動体を撮影すると、写真用のカメラがビデオカメラに近づいていることを実感する。

 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2022年3月分


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