今月の水辺 / 磯の岩場

NikonZ7
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
(撮影機材の話)
小さなセンサーを搭載したカメラシステムは、レンズの設計が有利になるのか一般にレンズの性能が優れていて、レンズの性能が要求される被写体に向く。一方で大きなセンサーのカメラは、センサーの性能が優れていて、センサーの性能が要求される被写体に向く。レンズの性能が求められる被写体とは、輪郭をしっかり出す必要がある被写体。センサーの性能が求められる被写体とは、物の微妙な濃淡をよく出す必要がある被写体。水は、線ではなくて濃淡で表現する被写体なので、大きなセンサーのカメラが適する。


撮影後記 

 7〜8年前に、磯の岩場の小さなくぼみの中で、貝の写真を撮ったことがある。
 その時と同じシーンを、前回とは違う光でもう一度撮影したくなり同じ場所へと行ってみたのだが、どうしても同じくぼみが見つからなかった。
 ここじゃなかったのかなぁ?
 それとも、ただ見つけられないだけかな?
 ただ見つけられないだけというのも、僕なら大いにあり得る。普段、カメラを手にしてない時に何か生き物を見つけて、その場所をよく頭に入れた上でカメラを取に行ってまた戻ってきたら、同じ場所がどうしても分からないのはざらにある。
 海の場合、そうしてまごまごしていると、潮が引いて水がなくなったり、潮が満ちてきて水に沈んでしまう。
 う〜ん、わからんかったな。まあ仕方がない、と諦め、狭くなっていた視野を意図的に広げてみたら、満ちてくる波の流れが心地良く感じられたので、くぼみ探しはやめて風景の写真を撮ることにした。
 最初は、ザブン、ザブンと岩にぶつかる小さな波しぶきだったのが、潮が満ちるにつれて岩盤の上をすべるよう流れ始めた。
 数分後、さらに潮位が高くなりその場に立っているのが危険になって、三脚をたたんで退散した。
 間近で波を体験してみると岩盤の上をすべる水の勢いはなかなかのものなので、くぼみが見つからなかったのは、波の力で岩が浸食されて形が変わってしまった可能性も捨てきれない。

 子どもの頃に、学校で、浸食という現象を教わった際に、そのうち陸地がなくなるやん、と僕は感じた。
 すると先生が、隆起という現象があると話してくれた。
 ただ、隆起は、僕にはピンと来なかった。浸食なら見たことがあるけど、地面が隆起するところなんて、見たことがなかったから。
 どう考えても、崖が1メートル削られる方が、山が1メートル高くなるよりも速くて頻繁に起こっているように思えた。
 そもそも隆起に伴う巨大地震などというのは、ニュースの中でさえ、聞いたことがなかった。
 それから数十年が経過して、最近は震度5くらいの地震ならそこそこ耳にするようになった。
 活動期みたいなものがあるのかなぁ。
 そんなものがあるのなら、地球の活発な活動を経験してみたいような気もするし、何事もなく過ごしたいような気もする。
 自然写真の仕事の場合は、もしも東京が大地震などで壊滅的な打撃を受けたらストップしてしまうだろうし、僕の場合、大部分の収入が途絶える可能性が高い。
 そんなことが起きてしまったらどうしようか?
 僕は、地学と生物学の境界にある現象には興味があるので、きっと起きたことを記録しようとするはずだけど、収入が途絶えるとそれもできなくなるので、何か考えておく必要があるのだろう。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2021年11月分


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