今月の水辺 / ビオトープ

EOSM5
EF-M11-22mm F4-5.6 IS STM
(撮影機材の話)
EOSMシリーズは、趣味や仕事用の熱いカメラではなく、できたらカメラもで欲しいよねという人が購入する一般用のカメラだと思う。したがってキビキビ動くわけではないし、不満はある。だけど、そう思いつつも一度自分の仕事用のカメラの中に組み込んでしまうと、その後は便利でなかなか外すことができず、キヤノンはカメラ作りがうまいなと思う。こう書かれても多くの人はピンと来ないだろうから食べ物に例えるなら、人気のチェーン店みたいなものだろうか。ほれ込むような味ではないけど、便利でつい利用するし、ないと困る。僕は、ちょっとした偵察の時には、軽量コンパクトでも画質がいいEOSMを持っていく。


撮影後記 

 随分前の話だが、
「売り上げを伸ばすのが難しい」
 と言ったら、昆虫写真家の海野先生が、
「手持ちの写真は年々増えているわけだろう?それを使って仕事をするわけだから、年々仕事ができやすくなっていくはずだし売り上げはおのずと伸びていくんじゃないか。」
 と話してくださったことがある。
 言われてみると、普段僕が考えているのはいい写真を撮ることばかりで、手持ちの写真を運用することなんてほとんど頭になかった。
 そうか!キャリアを重ねた者には、撮りためた写真がある。そしてそれは自分の財産であり、後から追いかけてくる人よりも自分が有利な部分になる。
 そう言えばスポーツの試合や将棋の対局なんかでも、自分がちょっとでも有利になったらその有利さを生かして小さな有利をより大きな有利に広げようとする。
 写真のマネージメントも同じようなものなのかもしれない。
 そこで本を作る際に、新たに写真を撮るだけでなく昔撮った写真の中に何か有効に使える写真がないかを探してみると、「ああ、この写真をここで使えば、とても効果的じゃないか!」と思わず自分の写真に拍手したくなるようなケースがあり、写真を見返すことの大切さに気付かされる。
 一方で、昔撮った写真には技術的な問題で使えない写真もたくさんあり、ああ、惜しいな!と一人地団太を踏むことも多々ある。
 
 さて、昔撮影したモノアラガイの写真の中に、この写真がもうちょっとしっかり撮れていれば、とても面白いページが作れたのに・・・と感じる写真があった。
 小型の巻貝は、水面を、まるでそこにガラスでもあるかのように這うことがあり、その様子にレンズを向けているのだが、ややピントが悪いのだ。
 頑張れば完璧なピントの写真が撮れそうな状況だったので、ピントが悪い写真を撮っただけで終わっているはずはないと思い10年以上前のハードディスクを引っ張り出してきて件の写真の前後のカットをチェックしてみたのだが、不思議なことにモノアラガイにレンズを向けたのは、なぜかピントがイマイチなその一枚だけ。
 カメラやレンズにかんするデータを見ると、当時はまだまだ物足りない性能だった出始めのミラーレスカメラだった。そこから考えられるのは、新しい機材を使ってテスト撮影的に何となく撮った写真だった可能性だ。
 その日モノアラガイをたくさん見た記憶はあるので、その日はあくまでもテストで、しっかりした写真はそのうちいつでも撮れるなんて考えたのかなぁ。

 ともあれ、同じ場所にもう一度行ってモノアラガイの写真を撮り直すことにした。
 場所は、山口県内のビオトープ。使わなくなった田んぼを改造したため池で、沢の水が引いてあるので水の透明度が高く、水中の小さな生き物たちの姿がよく見える。
 ところが行ってみると、以前はたくさん目についたモノアラガイが見つからない。そこにビオトープがある限りいなくなってしまうような生き物ではないと思うのだが、姿が見つからなければ撮影は始まらない。
 代わりに三脚を立てて、ため池の風景にレンズを向けることにして、山影になっているため池に光があたり始めるのを待つことにした。
 ちょうど日曜日だったこともあり、ビオトープの管理をしておられる方が集まり草刈りをしていて、通りがかりに、
「水草が茂り過ぎているでしょう。みんなで草をほどほどに抜いたりして手入れをしているんだけど、追っつかなくってね。」
 と話しかけてくださった。
 しばらくすると水辺にお日様の光があたり始めたのだが、何か足りなりなくてプラスαの工夫を考えていたら、刈り取った草を燃やす煙が上がり始めた。
 煙が、遠景に変化を与えるよいアクセントになってくれた。
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2021年10月分


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