今月の水辺 / 水辺公園

NikonZ7
NIKKOR Z 24-70mm f/4 S
(撮影機材の話)
僕がこの手の撮影の際に必ず使用する道具と言えば、レリーズがある。カメラを三脚に固定し十分な光がある状況では、レリーズは実質的には不要だとは思うのだけど、やっぱり使う。カメラのシャッターは電子シャッターを選択する。これは恐らくトラウマだと思う。フィルム時代の中判カメラなどは、三脚に固定しても微細なブレが発生し、明らかなブレとまでは言い切れなくても、何だか甘い写真が撮れてしまうことがあったのだ。


撮影後記 

 今や、撮影機材の発達で、ちょっと勉強すれば誰でも仕事ができるレベルの写真が撮れるようになった。
 ここで言う仕事ができるレベルの写真とは、大まかに言うと画質の話であり、実際に誰でもが仕事ができるかと言えば、そんなものでもないのは言うまでもない。
 では、どうしたら仕事ができるのかと言うと、写真を通していかに有意義な、あるいは面白い話ができるかが鍵を握るようになった。
 写真術よりも何を言うかが重要になった。
 生き物の写真の場合、そうなると強いのが、研究者のみなさんだ。なんといっても、最新で面白い話をたくさん知っておられる。
 僕は近年、研究者や博物館の学芸員のみなさんが作る本をいいなぁと感じる機会が多い。
 だがある編集者が、
「武田さんはそう言うけどね、俺はその手の本はあまり面白いとは思わない。」
 と意見を話してくださった。
 ポイントは『知識』ではなかろうかと思う。
 僕は生き物屋さんなので、生き物に関する知識を常に求めていて、知識は、それを求めている人にとってはとても面白い。
 だが、そうではない人にとっては、知識はとくに面白いものではないし知識ではないものを求める。
 僕にとって編集者のその一言は、
「知識とは」
 という投げかけになった。 

 さて、今月は、公園として整備されている水辺を取り上げてみたい。
 僕はここで桜の定点撮影をしているのだが、毎回苦労するのが、人が必ずいてなかなか途切れないということ。人が途切れるのを待つのに、1時間くらいを要するときもある。
 僕なら、こんな人工的なところじゃなくて、もっと自然なところに行きたいなと思う。
 一方でここはなかなかの人気で、多くの人のとって素敵な自然だ。
 そもそも何が自然で何が人工なのか?は、知識がなければ分からない。言い換えると、誰かに教えてもらわなければ分からない。
 例えば近年は、外来種の定着がしばしば問題視される。そしてこの場所にも、外来の水草が定着している。
 だがある生き物が外来種なのかどうかは、ほとんどすべてのケースで、ほとんどの人にとって、誰かに教わらなければ分からない。
 この水辺にくつろぎに来ている多くの人は、そんなことに左右されずに、もっと自由でありたいのであり、知識などというのは野暮な話なのだ。
 生き物の本を作る僕にとって、生き物に関する知識はとても大切なものだけど、知識=人がそう言っているよという話がすべてではないことを、この水辺にお越しになる人たちの姿から、思い知らされる感じがする。
 
 
 
 
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自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2021年9月分


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