今月の水辺 / 潮間帯

NikonZ7
NIKKOR Z 14-30mm f/4 S
(撮影機材の話)
動いている水を撮影する際には、いろいろなシャッタースピードを試す。その中から、自分の目に映るイメージに近い数字を選ぶ。ときどき、何秒くらいが人の肉眼に近いなどという話も見聞きする。例えば、1/60秒くらいとか。だが僕の場合は、肉眼のイメージに近いのは決まった数値ではなくて、その時々によって、大きく異なる。それは、比較的高速なシャッターの時もあれば、長時間露光の場合もある。


撮影後記 

 干潮時には陸に、満潮時には海になるような場所を、潮間帯と呼び、潮間帯にはたくさんの生き物が住んでいる。
 そして一言で潮間帯の生き物と言っても、より陸に近い場所を好む生き物から水深が深い場所を好む生き物までさまざまある。
 巻貝のアラレタマキビは、陸に近い場所に多い。
 どれくらい陸側か?と言うと、最満潮の時にかろうじて水に沈むか、水しぶきがかかるくらいの位置を好む。
 したがってアラレタマキビはほとんどの時間を陸で過ごすことになるのだが、卵は海の中に産み落とされ、卵から産まれてきた子供は親とは全然違う形をしており、しばらく海の中をただよう。
 そんなアラレタマキビは、陸の貝ではなく、海の貝に属する。

 なぜ海の貝が陸にすんでいるのか?
 本当のことはアラレタマキビになってみなければ分からないのだが、海の中には小さな貝を食べてしまう敵がたくさんいるから、という説がもっともらしい。
 因みに、カタツムリというのは、一生を陸で暮らす貝のことを指す。そしてカタツムリの場合は、卵から生まれてくる子供は、貝殻の巻き数の違いはあるにしても、親と同じような形をしている。
 陸のカタツムリと海の貝は、どちらが先だったのか?と言えば、言うまでもなく海の貝であり、カタツムリは海の貝が陸で過ごすようになったもの。
 そのためには卵から生まれた直後の生活スタイルに大きな変化が伴うことを思うと、海の貝の上陸というのは、なかなか劇的な進化に思える。

 それはともあれ、満潮の磯では、ついアラレタマキビに目が行ってしまう。
 君らはずっとそこに住み続けるつもり?
 それとも、もっと陸に上がってカタツムリの仲間入り?
 大昔、陸に上がる以前は、どんな暮らしをしていたの?
 などと、妄想が頭の中で渦巻く。
 そして、そんな自分の妄想を他の誰かと共有できるような風景写真が撮れないものか?と思う。
 動いている水の場合、いろいろな表現方法があるけど、今回は、満潮の海でアラレタマキビが浴びている水しぶきをイメージしながら写真を撮った。
 生き物の生息環境を客観的に表した写真のことを、環境写真などと呼ぶが、僕が撮りたいのは環境写真ではない。
 妄想が生まれてくるような、風景写真なのだ。 
 
 
 
戻る≫
 

自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2020年5月分


のサイトに掲載されている文章・画像の無断転用を禁じます
Copyright Shinichi Takeda All rights reserved.
- since 2001/5/26 -

Top Page