今月の水辺 / すみ分け

OM-D E-M1 Mark III
M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
(撮影機材の話)
晴れた日のくさむらを背景にすると、日なたと日影の明と暗とが入り混じりごちゃごちゃして、分かりにくい写真になりがちだ。そんな時にお勧めなのは、例えそれが近づける被写体であってもわざと離れて、なるべく長いレンズで撮影すること。望遠レンズの特徴は写り込む要素が少なく画面を単純化できることで、ゴチャゴチャしやすい状況を単純化して一枚の絵にまとめることができる。


撮影後記 

 もう随分前の話だが、僕が所属する日本自然科学写真協会の写真展に、毎回同じ生き物の同じシーンの写真を出品される方がおられた。
 最初は、またこれ?と感じた。
 だがやがて、また?と同時に、今年も出品しておられるかな?と楽しみにもなり、僕の中で恒例のイベントと化し、いわゆる「定番」がありうるのだと思うようになった。

 そう言えば、仕事としての自然写真業界にも、定番が存在する。例えば、トンボの写真の場合なら、シオカラトンボがそれだ。
 同じような環境でみられ、近年増えているのか、今ではシオカラトンボよりも目立つようになった感があるオオシオカラトンボの影は薄く、写真業界で身近なそこらのトンボと言えば、ほぼほぼシオカラトンボなのだ。
 毎回毎回、同じ種類の生き物の写真ばかり使われるのは、何とかならないものか?と思うのだが、一方で、自然写真の仕事をしているうちに知らず知らずのうちに定番が体に染みついてくる。
 そして、シオカラトンボを見かけると、
「あっ、シオカラトンボだ!」
 となる。
 シオカラトンボは、日本でもっともよく見かけるトンボの1種だから、生き物を日常からたくさん見ている人でシオカラトンボ見て反射的に前のめりになるのは、シオカラトンボの写真を売っているカメラマンくらいではなかろうか?
 
 さて、シオカラトンボとオオシオカラトンボは大抵同じ場所で両方見かけるのだが、絵になるのはオオシオカラトンボの方だ。止まる場所の微妙な違いで、オオシオカラトンボの方が様になる場所に止まるから。
 交尾だって、オオシオカラトンボは比較的きれいに撮影できる機会が多いのに対して、シオカラトンボは地面に近い高さに止まってみたり、なかなかカメラマン泣かせ。
 生き物の、一見ちょっとしたようでいて知れば知るほど実は大きな違いは、とても興味深い。
 シオカラトンボやオオシオカラトンボをよく見たことがないという方がおられたら、図鑑で姿や両者の違いを確認した上で、近所の水辺がある公園などに出かけてみて、どこに止まるかなど、しばらく目で追いかけてみてはいかが。
 シオカラトンボもオオシオカラトンボも、水辺の中でも、特に浅い場所を好む傾向がある。

 因みに、町の中にあるうちの敷地にも時々トンボが飛来するが、大抵はオオシオカラトンボであり、シオカラトンボは滅多に来ない。
 オオシオカラトンボも、トンボ写真の定番に加えてあげて欲しいなぁ。定番になり名前が分かれば、子供たちも楽しんじゃないかな?
 飛来したオオシオカラトンボは、駐車場に置いてある容器の中の湿地に卵を産み、毎年、初夏になると抜け殻が見つかる。
 
 
 
戻る≫
 

自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎月の撮影結果を紹介する今月の水辺 2020年6月分


のサイトに掲載されている文章・画像の無断転用を禁じます
Copyright Shinichi Takeda All rights reserved.
- since 2001/5/26 -

Top Page