撮影メモ 2002年11月分 バックナンバーへ今週のスケジュールへTopPageへ

11月30日(土)

 カメラやレンズは湿気に弱くて、湿度の高い場所に放っておくとカビが生え、使い物にならなくなってしまうことがある。撮影済みのフィルムも同様で、その管理には気を使う。カビが生えないように、湿度を一定に保つカメラ・フィルム用の防湿庫も市販されている。
 以前は、僕も撮影機材を専用の防湿庫に収めていたが、最近はいつでも撮影に出られるように機材をバックに詰めたままにしているので、代りに除湿機を使い、部屋全体の湿度が50%前後になるように調節している。一般的な除湿機には水をためるタンクが付属しているが、そのタンクを使わず、除湿機からの排水をホースで屋外に排水し、24時間、年中、除湿機を連続運転している。
 さすがに連続運転をすると、除湿機の寿命も短くなる。2年くらいすると作動音が異常に大きくなったり、故障をしたりとトラブルが発生する。今僕が使用している除湿機も、ここのところちょっと異常な作動音が発生するため、今日は新しい除湿機を買いに出かけた。

 お店の人がいろいろと勧めてくれるが、通常僕のような使い方をする人は滅多にいないので、状況を理解してもらうのに時間がかかる。まず、大抵の店員は、除湿機の水受けタンクを使わずに、ホースで排水を捨てるような使い方ができることを知らない。機種にもよるが、除湿機の背面にはホースを突っ込むために穴が開けられるようになっている。
「こうやって使いたいのですが・・・」
 というと、
「そんなことは出来ません」
 と自信たっぷりに断言する店員が多い。
「本当に出来ないのですか?それともあなたが知らないのですか?」
 とたずねると慌てて調べ、ようやく理解できるという感じで、最初から、
「私は知識がないので調べてみますね」
 と答えられる人は滅多にいない。「ごめんなさい。知りません」と正直に言える人は少ない。

 「この人は商品知識があり、受け答えもしっかりしているな〜」と感じさせる店員には、知らないことを知らないと言える人が多いし、態度に自信のなさが滲み出ている人ほど、知らないことでも知ったかぶりをして答えてしまう。力がある人ほど、自分のボロいところを素直に認められるし、力のない人は、それを隠そうとする傾向があるように思う。本当に力のある人間になりたい。
  

11月28〜29日(木〜金)

 年内にこなさなければならなかった仕事が大体片付いた。精神的にも時間的にもゆとりができる。そうなると何か新しいことを勉強したいな〜という衝動がこみ上げてくる。この冬は、昨年に引き続き、一ヶ月程度の水鳥の取材を予定しているが、そのフィールドでの撮影と組み合わせて、何か別の撮影にチャレンジしようと思う。今のところ、静物と室内での人物撮影が、その第一候補だ。
 自然写真家は自然の専門家なのか、写真の専門家なのかと問われれば、日本の写真界では、大抵の人は自然の専門家であって、写真の専門家ではない。自然を撮らせれば飛びっきりにうまい人でも、それ以外の物を撮ると平凡というのが相場だ。唯一、今森光彦さんは、スタジオに勤めた経験もあると聞いたことがあるが、静物を撮ってもとても上手い。今森さんが撮影した昆虫の標本箱や博物館の展示物の写真は、一味違う。何とか僕も、その域に近づきたいと考えている。
 そのために、スタジオ撮影で使用するタイプのストロボで、持ち運び可能なものを1つ購入することにしたが、日頃は、それをスタジオで使用し、室内での人物撮影の機会には、それを持ち運ぶことにした。少なくとも、カメラメーカーから発売されている一般的なストロボを使用するのよりは、撮影の幅がぐっと広がる。ただ、それを使いこなさなければならないので、冬の間に練習したい。
  

11月27日(水)

 昨日撮影したフィルムを持って博多に出かけた。博多の現像所にフィルムを持ち込むと、本数にもよるが2時間程度で仕上げてもらえる。昨日撮影した写真の締切りは11月末。今日現像しなければ出版社に期限通りに届けることができないので出かけることにした。
 写真の仕上がりは、今度は、かなり満足がいく結果になった。が、まだまだ僕のイメージとの間にずれもありもどかしい。生き物の撮影であれば、撮りたいという情熱と技術とのバランスが大体取れるのだが、スタジオでの物(今回は水槽)の撮影では、きれいに撮りたいという情熱に技術がついてこない。もっと知識や技術があったなら!と悔しい。
 現像の二時間の待ち時間の間に、数件カメラ屋さんを見てまわった。幾つか欲しいものがあったのだが、どの店にも置いてない。九州で一番大きな博多の町でも、いつもそんな感じでがっかりさせられる。カタログを見て、近所のカメラ屋さんに注文をするのが一番疲れなくていいのかな。
  

11月26日(火)

 昨日の予定通り、今日は出来の悪かった写真の撮り直しだ。僕は、生き物以外はほとんど撮影をしたことがない。だから、今日、撮影した水槽の写真も、今回初めてそんな仕事をいただいたのであって、それ以前は撮ったことがない。水槽の中にいる生き物の写真は撮ったことがあるが、その場合には、水槽が写らないように自然な感じに撮るのだから、水槽そのものの撮影とはちょっと違った感じになる。
 今回撮影した水槽は、一番大きなもので、縦30、横30、奥行き30センチのサイコロ水槽だが、僕はスタジオの中で、そんな大きなものを撮ったこともなかった。第一、普段僕がスタジオに持ち込んで撮影している生き物に、そんな大きなものはいない。
 ガラスは、数ある被写体の中でも撮影が難しい方に入る。周囲にあるものが表面に反射して写ってしまったり、汚れが目立ったり・・・と、いろいろと撮影には厄介な性質を持っている。こうすれば水槽の中に飼われているザリガニの色がきれいに出るのに・・・と分かっていても、それが水槽をきれいに写すこととは相容れなかったり、とにかく、デジカメで何度も何度も試し撮りをしながら、納得いく撮影方法を探した。
 撮り直しをすると、撮影に費やしたフィルムなど、無駄が出てしまうが、いずれ身につけなければならない技術ではあるし、ギャラをもらうのだから恥ずかしい仕事はできない。
  

11月25日(月)

 先週撮影したフィルムが仕上がった。子供が生き物の世話をしている様子は、子供の表情など、十分に使える写真があった。その他に、子供抜きで、飼育水槽のみを写した写真もあったのだが、こちらは、弱冠写真の色が浅い。もちろん十分に使えるレベルだが、なんだか納得がいかない。そこで、明日は、メダカとザリガニの飼育水槽の写真を撮り直すことにした。ちょっとばかり、照明を変えてみることにした。
  

11月23〜24日(土〜日)

 年賀状に使うハガキを準備している。ハガキに使う写真は、仕事を抜きにして僕が「作品」として撮影した写真の中から、普通の人が見ても気持ちよく感じられるカットを選ぶことにしている。
 その写真をスキャナーでパソコンに取り込み、色を調整してプリントし、そのプリントを見本として同封してから印刷会社に依頼する。印刷を担当する技術者のレベルによって、とんでもない色に仕上がってくることもあるので、パソコンで作った色見本を準備した方が安心できる。毎年、この時期になると、その年に撮影した写真を引っ張り出し、一番思い入れのある写真を探すことになる。
 そういった作業は仕事ではないが、パソコン上で色を調整する作業や、パソコンを使ってプリントする作業などを練習するいい機会になる。そう遠くないうちに、デジタル画像での仕事が普及し、パソコンでの作業が今よりももっと重要になる日がくるだろう。そんな日に備え、練習を兼ねて、パソコンに向かい合っている。
 僕は、昆虫写真の海野先生が、パソコン上で画像を扱う様子を見せてもらったことがあるが、ほんの少し見せてもらうだけで、見たことがないのとは大違いだ。画像処理に関していろいろな本が出版され、たくさんの方法が紹介されているが、厳密に画像処理をやろうとするときりがないし、適当にやり過ぎると、撮影した画像の良さを殺してしまう。
 画像処理の専門家のような方法は、厳密過ぎて逆にやりにくいし、一般の人向けの方法では物足りない。そこで僕の場合は、海野先生がやって見せてくれた方法を丸ごと真似をして、後は経験を積みながら少しずつ自分の好みの方法に改良をしている。
  

11月22日(金)

 生き物たちと接していると、次々とおもしろいテーマが見つかる。それを追い求めていくと次々と新しくすることが見つかる。それは写真の技術面でも同じで、納得いく写真が撮れたと思っていても、時間が経つと、その写真の絵柄の好き嫌いは別にして、技術的な部分に関しては不満がでてくる。十分に仕事に使える写真でも、「撮り直しをしたいな!」と感じる写真はたくさんある。
 今年は、メダカの卵の写真を撮り直ししてみようかと考えていて、そのためにメダカの親のコンディションを現在整えている。このHPの淡水記の中にも、メダカの卵の発生の写真はあるが、僕の方法でメダカの卵を撮影すると、小さなゴミがたくさん写真に写りこんでしまい、もっときれいに撮る方法はないのか?とずっと考え続けていたからだ。
 本当は、春〜秋の時期に撮影すれば、保温も要らないし楽に卵を撮影できるが、春〜秋には他にも仕事が多い。そこで、そういった技術の工夫が必要な撮影は冬の間に試すことにしている。
 HPの淡水記の中のメダカの卵は青バックで撮影しているが、僕の好みは自然な状態、例えば水草に付着しているような卵を撮りたい。ただ、メダカは産卵後数時間、卵をお尻にぶら下げていて、その後、どこかに卵を付着させるので、水草上の卵を撮るのであれば、受精直後数時間分の卵の変化を撮ることができない。もちろん、人工的に卵を水草に付着させれば撮れるし、そんな写真も多少出回ってはいるが、それは嘘になるし、やはり青バック以外に考えられない。
 ここの所、子供の撮影や生き物の飼育シーンの撮影で、水槽や大型ストロボでスタジオ内がごった返していたが、そういった荷物をかたずけ、今度は小動物たちの写真を撮れるように、現在スタジオを整えているところだ。
  

11月20〜21日(水〜木)

 先日撮影した、子供と小動物の写真の一部が仕上がった。一部と書いたのは、わざと現像に出していないフィルムがあるからだ。フィルムは、現像の段階で、若干仕上がりの明るさを調整できる。「しまった!暗く撮り過ぎてしまった」という時には、増感現像という現像をすることで若干明るくできるし、明るく撮り過ぎてしまった場合には、減感現像をすれば若干暗くできる。
 今回は、子供を室内で、大型のスタジオ用ストロボで撮影するという初めての経験なので、数本ずつ撮影したフィルムの中からまず一本を現像し、その調子を見て、残りの大部分を現像するという方法を取ることにした。
 結果は、僕の予測通りの調子で写っていて、二度に分けて現像をする必要もなかったのだが、念には念を入れ、手堅くできる時には、とにかく手堅くしておくのが、僕のやり方だ。

今月の水辺を更新しました。
  

11月19日(火)

 今日は、ほぼ一日中、パソコンの前で仕事をした。撮影済みのフィルムを整理するための、撮影場所や生き物の名前や撮影の日時を書き込んだラベルを作ったり、インターネットで調べ事をしたり、ホームページに小さな改良を加えたり・・・。
 このホームページは、ファイル数が増えてきたし、それに伴って構造が複雑になってきているので、手を加えると思いがけない部分にアクシデントが発生することもある。特に、最初のうちに作ったページは、先のことまで深く考えずに作られているので、アクシデントが発生しやすい。たとえるなら、建て増しやリフォームを繰り返してきた家のようなものだ。
 さすがに最近作った部分には、問題は滅多にない。ようやく、ホームページを作れるというような次元になってきたように思う。
  

11月18日(月)

 昨日は、慣れない子供の撮影で自宅に帰れないほどの疲れを感じ、気がついたらスタジオの中で寝ていて朝になっていた。子供が生き物を飼っているシーンの撮影が終わった。失敗していなければ、当分の間、スタジオで人物を撮影することはない。
 だが、そんな仕事もくることがわかった。今回は、急遽、スタジオ内のものを片付け、即席で人物撮影用のスペースを作って撮影したが、これを機にスタジオを模様替えして、いつでもそんな仕事に対応できるように準備しておくことにした。使っていない荷物を多少処分し、人物くらいのサイズのものまで撮影できるスペースを確保した。
 夕方からは、プランクトンの撮影をするために、水道局に出かけた。大学時代の同級生であるIさんが水質検査の仕事をしている縁で思いついた顕微鏡写真だが、なかなか面白くなってきた。
 何といっても、Iさんが、ごく短時間で面白い形をした微生物を見つけ出してくれることがありがたい。
 「う〜んとね・・・、はいこれがクンショウモ。これがイカダモね」
 といった感じで、すぐに面白い生き物が見つかり、名前も判るし、僕は厳密にピントを合わせ、絞りを調整してシャッターを押すだけでいい。第一、目の前にいる生き物に関して、日々、それを見ている人が解説をしてくれるのが面白い。
 子供の撮影の疲れを引きずっていた一日だったが、その面白さで、疲れが吹き飛んだ。やっぱり僕は、野生の生き物が好きだ。
  

11月17日(日)

 今日は、子供たちが生き物を飼育しているシーンの撮影だ。まずは、アマガエルに餌を与えている様子を撮影して、そしてメダカの水槽をのぞきこんでいる様子を撮影し、最後にザリガニを網ですくっている様子を撮影した。二家族、三人の子供が写ってくれた。

 子供の撮影は、その子の気分次第なので難しいところもある。今日、アマガエルといっしょに写真に写った子供は、「亀をあげるよ」と言ったら、とてもかわいい顔をして写ってくれた。亀をあげたら、益々かわいい顔をしていたので、あとフィルム一本分、写ってもらおうとすると、近くに置いてある亀が気になって、今度はうまくいかなかった。エクレアも準備していたが、全然喜ばなかったので、亀の方が好きなのだろう。
 ザリガニと一緒に写ってくれた子供は、アマガエルをあげたらとても喜び、たくさん写真に写ってくれた。ピンセットで釣り用のうじむしをつまみ、餌のやり方を教えてあげたら、もっとご機嫌になったが、その子も、シュークリームには全く興味を示さなかった。やっぱり、生き物は面白いのだと思う。
  

11月16日(土)

 今日は、10月末に下見に行った年輪の撮影だ。ただの年輪ではない。「地面に根を下ろしたままの切り株の年輪」という依頼なので、材木問屋で切り口を撮らせてもらい、「はい、おしまい」という訳にはいかない。撮影はフィールドでなければならない。
 ところが、野外に放置されている木の年輪は切り口が汚い。伐採の際の切り方も汚いし、切り口の表面は劣化して、とても写真に撮れるような雰囲気ではない。そこで、林業組合の方にお願をして、切り口をきれいに整えてもらったが、作業を見ていて、「これは、やはり素人には無理だ」と悟った。
 今日撮影した木は、樹齢が40年なので、かなり太い。チェーンソーの歯の長さよりも幹の太さのほうが太い。一刀両断に切ることができないので、四方から少しずつ切ることになる。右から、左から、手前から、奥から切って、その切り口をきれいな平面するのは至難の技だ。
 さすがに専門職の方は上手くて、きれいに切れた。所々、上手く切れなかった部分は、そこを削ぐように切り直し、撮影のためのきれいな切り口を整えてもらうことができた。 
 年輪をよく見ると、その木の歴史がわかる。中心部は年輪の幅が広い。これは、植えてから数年間は、とても成長が早いことを意味する。年を追うごとに、年輪の幅は狭くなっていくが、これは、周囲の木も大きくなり、木どうしの競争が激しくなっていくことを意味している。ところが突然、また年輪の幅が広くなっている年がある。それが、間伐をした年だ。間伐によって、日当たりがよくなり成長が盛んになるのだ。
 年輪は、僕の水辺や身近な動物というテーマからは、大きく外れるが、そんな経験も結構役に立つ。例えば、カタツムリの殻を見る時の見方と、年輪を見る際の見方はとてもよく似ている。カタツムリの殻にも、年輪のような成長の痕跡がある。ちょうど年輪を読むときのように、カタツムリの殻を見ると、そのカタツムリが何度冬を越しているのか?どんなテンポで成長してきたのかがよくわかる。
 生き物の種類に関係なく通用する自然の見方がある。色々な自然を楽しむゆとりも大切だし、僕は専門家になりたいと思うが、マニアにはなりたくない。
  

11月14〜15日(木〜金)

 昆虫写真の海野先生は、毎日身近な自然を撮影し、HPの小諸日記の中で発表しているが、そういった試みはデジカメでしかできない。その日撮ったものを、すぐに発表するのに、現像が必要なフィルムでは無理がある。すぐに画像が得られるというのは、デジカメの最大の特徴だ。
 だが、自然写真の仕事全体を考えてみると、すぐに画像が得られる必要がある仕事は、今のところ、ほとんどない。すぐに画像が得られる必要がないのであれば、デジカメよりも、銀塩フィルムに有利なこともたくさんある。
 例えば、車で寝泊りする生活では、電気製品の電源を自動車のバッテリーから得なくてはならないが、車のバッテリーには限界がある。電気なしで、すべての作業ができる銀塩フィルムのシステムの方が、そういった生活には適してる。
 また、僕は雨の中での撮影が大好きで、よく雨の沢を撮影するが、他に厳冬期の撮影など、電化されたシステムに不利な状況も、自然写真にはたくさんある。
 また、デジカメにはパソコンが不可欠だが、パソコン+デジカメの組み合わせの場合、銀塩カメラのシステムよりも、故障が生じる可能性が高い道具が多い。撮影時の機材のトラブルは、間違いなく今よりも増えるだろう。デジカメで、本格的に長期取材をするのであれば、予備も含めて、パソコン2台が必要だ。デジカメで得られる画質の良し悪しはまた別にして、もしも、すぐに画像が必要なのではなければ、デジカメには、デメリットも多い。
 
 遊びの道具として考えると、デジカメはとても面白い。つい先日、遊び専用のデジカメとして、キャノンのG2を購入したのだが、かなり自由に動く液晶画面や、付属の小さなリモコンを使うと、いろいろな試みができる。撮影機材のページに、デジカメを付け加えた。 
  

11月13日(水)

 日本には四季がある。生き物たちは一年のサイクルで生活をしているので、生き物を写真で捉えるときに、一年という区切り方には意味がある。例えば、「アマガエルの一年」というテーマで写真をまとめたなら、アマガエルの一通りの性質を網羅できる。
 だが、「アマガエルの一ヶ月」というテーマで写真をまとめようとしても、アマガエルの生活史の中にひと月の長さで変化する現象は見当たらないので、一ヶ月という区切り方には意味が無い。
 もしも海の生き物であれば、一ヶ月周期で変化する潮の満ち引きの影響を受けるだろうから、一ヶ月のリズムで変化する何らかの現象が観察されるかもしれないが、僕がテーマにしている淡水の水辺の自然には、一ヶ月というリズムは滅多に存在しないだろう。
 厳密に言うと、淡水や陸上の生き物でも月の引力の影響をどこかで受けている可能性はもちろんある。だが、はっきりと、それと分かるような現象は、まだ知られていないのではないだろうか?
 だから、海は例外として、他の自然を考える時に、ひと月という区切り方はナンセンスだと言える。
 このHPには、毎月の取材結果を紹介する「今月の水辺」というページがあるが、これは別に一ヶ月でなくても構わない。二ヶ月でもいいし、二週間でもいいが、二ヶ月では寂しいし、二週間では更新が大変だ。今月の水辺の更新には、いつも写真をまとめるという意識を持つように、自分自身にプレッシャーをかける意味が大きい。
 その効果が出てきたのだろうか?HPを作ったばかりの頃は、「今月は何にしようか?」と考えることもあったが、最近では、「今月はこれでいこう!」と思えるような写真が、必ず撮れるようになった。
 ただ、今月の水辺は、あくまでも通過点に過ぎない。だから、一年を過ぎたバックナンバーを残していない。出来がいいものは、「淡水記」や「ギャラリー」のページに作り変え、一ヶ月という区切りではなく別な形で残していくつもりだ。

 今日は、11月分の「今月の水辺」を更新するための準備をした。僕は645版のフィルムを取り込めるスキャナーを持たないので、借りるために知人宅をたずねた。僕の自宅から車で30分ほどかかるが、知人の一人が、「自由に家に入って勝手にスキャナーを使っていいよ」と申し出てくれて、家の鍵まで預かっている。更新は月末にしようと思うが、画像を準備した。
  

11月12日(火)

 昨日、撮影の準備をした水槽の中に、アメリカザリガニを入れて撮影した。
 撮影に使用したザリガニは、こんなこともあろうかと、この秋に採集をしておいた分のザリガニで、あまり臆病ではなく、おとなしい個体だ。予測どおり(期待通り?)、ちょっと棒で突付くと、僕が予定していた場所に踏ん張り、格好いいポーズで写真に写ってくれた。さっそく写真を現像しよう。
  

11月11日(月)

 スタジオにて準備中

 ザリガニの飼育の様子を撮影するための準備をしている。つい先頃、アマガエルの飼育のようすを撮影したが、今回も同じシリーズの仕事だ。
 アマガエルの場合は、水槽の中に、観葉植物と苔と小さな水溜りとで箱庭を作り、その中で撮影をしたが、アメリカザリガニは、水槽の中央部に石を組み、その後ろから覆い被さるように水草を植え、石組みの手前にプロポーションのいい、雄の真っ赤なザリガニを配置して撮影する予定だ。
 ザリガニの場合、カエルと違い、水槽の半分以上は水を張るので重量がかさむし、ホイホイと移動をさせるわけにはいかないので、準備に取りかかる前に、どんなアングルから撮影をするのか、そのためには水槽をどう配置し、照明等をどうするのか、よく検討をしてから準備に撮りかからないと、その場になって考えようとすると、面倒なことになる。そういった理由で、アマガエルの撮影よりも準備には時間がかかるが、一旦撮影をはじめると、ザリガニはカエルと違い、ピョ〜ンと飛び出して逃げるわけではないし、多分楽なのではないだろうか?というより、楽であってほしい!
  

11月10日(日)

 クサガメ

 水辺というと「夏」のイメージだし、実際、夏の水辺ではたくさんの小動物たちを見ることができる。だが、撮影をするとなると、活性の高い夏場は、生き物たちの逃げ足も速くてむずかしい。そこで、ちょっと寒くなり始めた頃に撮影すると、比較的思い通りに写真を撮ることができる。
 アマガエルなどは、気温が下がり植物の緑が少なくなると、体の色が茶色になるため、寒くなってから撮影するわけにはいかないが、亀には、これといった季節による違いがないので、今の時期の撮影が都合がいい。
 今日は、クサガメという亀を撮影したが、この亀は、日本産の亀の中で最も多く、僕が学生時代6年間を過ごした山口では、道路でひかれて死んでいる姿を頻繁に見かけるほど、たくさん生息していた。また、ペットショップで売られているゼニガメという亀は、この亀の子供だ。
  

11月09日(土)

 今日は、アマガエルの飼育の様子を撮影した。先月、この撮影のために、水槽に苔を敷きつめ、観葉植物を植えて準備をしたのだが、ちょうどいい感じに植物が育っている。そこに、モデルのアマガエルを2匹おき、そのようすを撮影したが、水槽のような狭い場所にカエルを入れると、カエルは、葉っぱの陰に隠れようとする。そのカエルを捕まえて葉っぱの上に置き、また逃げられて・・・この手の撮影には、案外時間がかかる。ただのワンシーンを撮影するのに、水槽のガラス磨きから含めると、3時間くらいの時間がかかった。
 そんな目で、色々な本を見てみると面白い。学生の頃は、大人向けの、自然の中で撮られた写真を集めた写真集が好きだったが、最近は、子供向けの自然関係の本も、とても楽しい。写真集の場合、写真家が一生懸命歩いて撮った写真が載せられているのだが、子供の本には、頭を使い、アイディアを絞りだし、工夫をして撮られた写真が多い。

淡水記を更新しました。今回は、カタツムリの卵の孵化の様子を紹介しています。
  

11月08日(金)

 風景の撮影では、とにかく下調べが物を言う。動物の場合は、それも大切だが、それ以上に自分の足で歩き、自分の目で探す気持ちを持ち、いつも、それを前面に押し出していかなければなかなか写真が撮れない。
 その違いからだろうか、動物写真出身の僕にとって、風景の撮影は最初はとても難しく感じられた。自分で一生懸命歩いて見つけた場所で撮った風景写真よりも、ガイドブックを見て、有名な撮影地で撮った写真の方が、断然に絵になるし、売れやすいのだ。
 僕は、パソコンにはほとんど興味がないし、インターネットを利用する頻度も低い方だと思うが、ここ一年くらいは、風景を撮影する際には、前もっていくつかのHPを見て、下調べをしてから撮影に出かけることにしている。棚田や紅葉や花の撮影には、インターネットの情報は、とても役に立つ。

 いろいろな情報をインターネットで検索しようとすると、検索しやすいHPと、検索しにくいHPとがあることが分かってきた。このHPは、「検索」ということを頭に入れて作られてはないので、当然、検索しにくい。ここのところ、検索されるということを意識して、HPに小さな改良を頻繁に加えている。
 自分がHPを作り、何かを提供するだけではわからないことがある。人が作ったものを、提供される側の立場で使ってみると、見えてくることもある。
  

11月07日(木)

 趣味で写真を撮っていた頃、僕は、撮影したフィルムを一枚一枚マウントと呼ばれる枠に入れ、マウントに各種データを書き込み、専用のファイルに収めて整理をしていた。フィルムの整理と言えば、そんなものだと思っていたのだが、昆虫写真の海野先生の事務所をはじめてたずねた時、先生がまったく違う方法で整理をしていることに驚かされた。
 海野先生は、当時の僕のように几帳面な整理をするのではなく、写真をある程度分類して、それを束にして箱の中に入れて整理をしていたのである。
 プロのカメラマンが使用するフィルムは、一般の人が使っているフィルムとは違うので、大半の人にはイメージができないかもしれないが、例えるなら、僕が写真を一枚一枚アルバムに張って整理しているとすると、海野先生は写真を束にして、ラベルを張った封筒に入れて整理をしていると考えてもらうと、よく分かるのではないだろうか?
 僕は、「結構雑なんだな・・・」とその時は感じたが、最近は、「なるほどな〜」と思う。多少なりとも写真が使われるようになると、写真を取り出して相手に送ったり、返却された写真をまた元の位置に戻して整理をしたりする手間がかかるようになる。几帳面に、きれいに整理し過ぎると、フィルムの整理に時間がかかり過ぎる。写真はきれいに整理するために撮っているのではないし、目的とするフィルムが効率よく取り出せ、すばやく元の位置に戻せるような、そんな方法がいい。

 今の僕は、過去に几帳面になりすぎていたことの反動から、今度は多少雑になり過ぎている。何事も、雑になり過ぎると作業が楽しくない。ここのところ、フィルムの整理がやたらに面倒な時間に感じているので、もう少し丁寧に、一枚一枚の写真に心を込め、効率と丁寧さのバランスと取りつつ、整理をしなければならないようだ。
 今の季節は、春〜夏に比べると、撮影する写真の量も少ないし、この時期に、今年撮影した分のフィルムをしっかり整理しておこうと考えている。今日は、先月撮影した分のフィルムを、今までのやり方に、ちょっとばかりの改良を加えて整理した。
  

11月06日(水)

 金曜日から5日間、フィールドでの取材に出かけていたが、今日は事務所での仕事だ。先月の撮影メモの中で、メダカやカタツムリやザリガニやアマガエルなどの飼育の様子を説明する写真を撮ることになったと書いたが、そのために生き物の世話をしなければならない。
 すでにカタツムリは撮影を終え、あとは、残りの3種を撮るのだが、メダカとザリガニに関しては、水槽に水草を自然な感じで生やしてから写真を撮ろうと考えている。
 その水草だが、通常、水槽の中で自然な感じに育てるのには、一ヶ月以上の日数がかかる。それを待っていると、写真の締め切りに間に合わなくなるので、今回は、やや強引に、育成のテクニックを駆使して、短期間で育てようとしているが、そうすると、水草と同時に、見苦しい苔も育ってしまうので、こまめな手入れが必要になる。
 具体的には、水槽の様子をよく観察しながら、水草は育つけれども苔は育ちにくい、そんな微妙な環境を整えてやらなければならない。水草も苔も同じ植物なので、両者が好む環境はよく似ているが、やはり違いがあり、その違いを利用するのだ。
 ただ、その違いは、微妙なものなので、日々水槽を見て手入れをすることが望ましい。わずか5日間、事務所を留守にしていただけで、少量だが、苔が生えはじめていた。
  

11月05日(火)

 熊本県 五家荘にて

 今朝は、熊本県の五家荘で、滝を撮影した。先週の月曜日にも下見を兼ねて撮影をした「せんだん轟」の滝だが、今週がちょうど見頃という感じだ。九州でも標高1000メーターを越えるような場所では、今日の画像のようにすでに冠雪をしていて、場所によっては冬用タイヤがなければ走行ができない。幸い、「せんだん轟」に通じる道は、路肩には結構な積雪があるものの、路上の雪は解けていて、今日の取材を決行することができた。
 滝の入り口には、小さな宿と食事ができるお店があるが、帰りにヤマメの塩焼きを食べて帰った。今回は同行者がいたので合計3本を買ったのだが、実は、焼かれているヤマメ200匹は、すべて予約済みだったらしい。きっと、今日は団体の観光客が滝を見に来るのだろう。
 そういったヤマメは、すべて養殖されたものだが、僕は、自分自身がヤマメ釣りをするので、釣り師のプライドがあり、これまで養殖ヤマメを一度も食べたことがなかった。が、炭火で、手馴れた人がじっくりと焼いたヤマメは、たとえ養殖物であろうとおいしくて、これを機に釣り師のプライドは捨てることにした。

 僕は撮影の中では、動物の撮影が何よりも好きだし、春〜夏にかけては、風景を撮影していても、動物のことが気になって仕方がない時もある。動物の撮影の際には、気合が入るし、体が戦闘状態になり、「三度の飯よりも、・・・・が好き」などとよく言われるが、何かを食べて帰ろうなどという気分には、僕は滅多にならない。
 だが、この時期になると、日頃僕が撮影をしているような小動物たちはほとんど活動をしていないので、風景の撮影にも集中できるし、地鶏やだんごやトウモロコシなど、色々な物を食べてみたくなる。一年を通して考えると、この時期の紅葉の撮影などが、いい気分転換になっているような気もする。
  

11月04日(月)

 熊本県 菊地渓谷

 人物には「写真写り」の良し悪しがあるが、人物以外の被写体にも、それに似たものがある。例えば、どんなに美しい植物でも、ひょろりと長くて、一本だけポツンと生えるような植物を、写真のフレームに美しく収めることは難しい。ひょろ長い植物を写真に撮ると、植物の左右に大きな無駄な空間が出来てしまい、画面に締りがなくなってしまうからだ。
 風景の撮影にも、似たようなことが言え、美しい場所はたくさんあるが、写真のフレームにおさまりやすい場所というと限られてくるし、風景の撮影場所として人気がある場所は、実際にそこをたずねて美しい場所というよりも、写真に収まりやすい場所であることが多い。
 渓谷では、「東の奥入瀬、西の菊池」という人がいるが、熊本県菊池渓谷の谷の様子は、大変に写真に収まりやすて、カッコよくきまる。今日は、その菊池渓谷で黄葉の沢を撮影した。
 明日は、同じ熊本県の五家荘で滝と紅葉を撮影する予定だ。
  

11月03日(日)

 宮崎県 藤河内渓谷

 今日も、昨日に引き続き、沢と紅葉の撮影だ。九州の紅葉は、一面に真っ赤な木々とはいかず、緑や黄色や赤がモザイク状に入り混ざることが多いが、それはそれで優しい感じがして、心が和む。
 カメラを持つと、ついつい赤く染まった木々にクローズアップして、真っ赤な紅葉のイメージを強調したくなるが、今日は、そうではなく、ありのままの九州の秋の雰囲気を写し取るように心がけた。
 ありのままに撮られた写真や説明写真=なんの変哲もない写真という誤ったイメージを持つ人も多いが、僕はそうではないと思う。美しいものを説明するのであれば、その写真は美しくなければならないし、そもそも、写真を撮るときには何かに心を動かされてカメラを持ち出すはずなので、たとえ、それが説明写真やありのままに撮られた写真でも、その感動は、写っていなければならない。
 ありのままに美しく写すことは、案外、芸術的に美しく撮ることよりも難しいように思う。
  

11月02日(土)

 宮崎県五ヶ瀬町 白滝

 紅葉と滝を宮崎県の五ヶ瀬町で撮影した。連休の初日でもあるので、渋滞するような場所を避けるのと、天気が晴れとも曇りとも雨とも、なんとも言えない天候になることが予測されたので、そのいずれに転んでも対応できるように考えた結果、思い浮かんだ場所だ。
 紅葉は、ピークよりも2〜3日早いかな?と思うが、十分に撮影に耐える状況で、いい撮影ができた。今日は、歩かに高千穂町にある滝でも撮影をしたが、中九州の山間部の紅葉は、これからが見頃だ。
 いつも不思議に思うことだが、滝のそばには、きれいに紅葉する木が、程よい場所に生えていることが多い。もしかしたら、そういった木は、誰か人の手で植えられたものなのかもしれない。
  

11月01日(金)

 今日から紅葉の撮影で、熊本県〜宮崎県に出かける。中九州の山間部で紅葉が綺麗な場所は、この時期、信じられないほどの渋滞が発生することがある。今週の月曜日に下見にいった五家荘なども、まさにその例で、そもそも大半の場所で自動車2台がすれ違えない細い山道に、次々と大型の観光バスが入ってくるため、いったん渋滞が発生すると、数時間、車を動かせないこともある。
 ただ五家荘の場合、コンビニはおろか、ほとんど店がないので、大半の人は紅葉を見物する日の朝、麓から登ってくることになる。麓から山の中まで車で1時間くらいの時間がかかるので、人が到着するのは午前9時過ぎくらいの時間帯になり、前の晩から撮影地で、車の中で眠っておけば、撮影には何の差し障りもない。撮影に一番適した時間帯は、少なくとも午前9時よりも早い時間帯なので、さっと撮影を終え、渋滞がはじめる前に、別の場所に移動をする予定だ。
 五家荘での撮影は、来週の月曜日に予定しているが、平日でさえ渋滞する場所で、祭日の撮影になる。撮影を終えたあと、山を降りようとしても、今度は山を降りられない可能性もある。そこで、一般の人が滅多に通らない林道を抜け、紅葉の撮影をしながら、宮崎県に抜ける計画を立てている。明日は、どこで撮影をするのか、まだ決めていない。今晩、これからよく考えて判断するつもりだ。
  
 
 

自然写真家・武田晋一のHP「水の贈り物」 毎日の撮影を紹介する撮影メモ 2002年11月


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